「それではご案内いたします」
ビドゥーが貸し切っているのは町を一望できるぐらいの高さもある最上階だ。
そんなとこまでどうやって行くのか。
「こちらで上まで上がります」
なんとこの宿にはエレベーターが存在していた。
リュードが前世でいた世界ほどのクオリティのものではなく、木で作られた箱のようなもので、壁にいくつかヘコミがある。
そのヘコミの上には階数が書いてあってそこにダッチが魔石をはめ込む。
するとエレベーターが動き出す。
魔石の魔力によって昇降するシステムであり、魔石をはめ込む穴によってどこの階まで上がるのかをコントロールしているのだ。
中々面白い作りだとリュードは思った。
そんなに高い建物をこれまで見なかったのでこうしたものの必要性を感じたことがなく、考えてきたことがなかったけれどちょっと細かな作りが知りたいと興味が湧いた。
「すごい……」
自動に閉まる扉もないエレベーターがギュンと上がっていく。
ルフォンは初めて見るエレベーターに驚いていた。
「これは……」
「こちらは古代の魔道具を応用したものでございます」
「なるほど」
ダッチに構造を聞いてみようとしたが、古代の魔道具を使っているならきっとダッチもそんなに仕組みを分かっていないだろうと諦める。
多分ここに来る客で、細かく気にする人もいないはずだ。
「ここが最上階になります」
瞬く間に最上階に着いてしまった。
速度的にはかなり速い。
「ええと、では、お願いいたします」
リュードたちを降ろして、ダッチはさっさとエレベーターで下がっていってしまった。
帰る時はどうすんだと思うが、交渉に成功すればそのまま部屋に泊まればよく、ダメだったら階段を使ってくださいということなのだ。
ダッチはビドゥーとあまり関わりたくない様子である。
権力も金もあるのだろうが、人間性はよくなさそうだと感じた。
どの道ダッチがいなくなってくれるならありがたい。
「どちら様ですか? ビドゥー様は今……」
「済まないな」
エレベーターを降りてすぐ正面がビドゥーの部屋である。
部屋のドアの前に二人の護衛が立っていた。
護衛には流石に知り合いですなんてウソは通じない。
それに話し合いも通じないことは分かりきっている。
リュードとルフォンは一瞬視線を交差させると、すぐさま護衛に襲いかかった。
剣すら抜くことが出来ずにそれぞれの護衛はリュードとルフォンに倒された。
普段なら悪人がどうか気にするところだけどそうしている暇などない。
殺しはしていないので、それで許してほしい。
「いくぞ」
丁寧にノックなんてしない。
剣に魔力を込めてドアを切り裂いて中に突入する。
入った瞬間になんとも言えない甘い匂いを感じた。
「な、なんだお前たちは!?」
「……貴様!」
どうしてこうした人間は醜いものなのか。
ほんの一瞬以前に美を追求して多くの人を犠牲にしたガマガエルを思い出させるような、ずんぐりむっくりとして不細工な顔をしたバスローブ姿の男がベッドの上にいた。
手には紐を持っていて、その先は首輪に繋がれていた。
そしてその首輪が繋がれているのは見知った女性、テユノの首にであった。
下着姿のテユノは目がうつろで焦点があっていない。
頬が赤く腫れていて少なくとも何かの暴力を振るわれたことは明白であった。
「……貴様ぁ!」
リュードの頭に一瞬で血が昇る。
テーブルの上に置いてあるグラスにヒビが入るほどに重たい魔力がリュードから溢れ出して、ビドゥーは蛇に睨まれたカエルの如く動くことが出来なくなる。
「な……あ……」
「黙れ! 今お前の汚い弁解を聞くつもりはない!」
言い訳も、事情も聞くつもりはない。
護衛の血に濡れた剣を手に近づくリュードに、ビドゥーはただただ恐怖することしかできない。
しかし相手を苦しめる趣味はない。
「お前に慈悲はない」
体も首も動かしていないのにビドゥーは自分の視界が刹那に移り変わるのを見た。
首が刎ねられて頭が飛んだから天井が見えたのだと理解することはなくビドゥーは死んでいった。
「テユノ! 大丈夫か!」
リュードはビドゥーの体を乱雑にベッドから突き飛ばすと、テユノに近寄る。
リュードが目の前に来てもテユノの目は焦点が合わず、リュードの呼びかけにも反応しない。
肩を掴んで揺すってみる。
「リュード……」
「テユノ、そうだ俺だ!」
何回か声をかけたらわずかにデルカンが反応を見せた。
「リュードォッ!」
「テ……ムッ!」
ほんのわずかに目に光が戻ったテユノはリュードの呼びかけにようやく反応したかと思ったら、手を伸ばしてリュードの頬に触れた。
そして、グッと抱き締めるようにしてリュードの唇を奪った。
頬をホールドして舌まで差し込んでくる。
力が強く、いきなりのことにリュードも身動きが取れなくなってしまう。
「な、何してんのよー!」
チュッチュとリュードの唇を奪い続けるテユノをルフォンが大人しく見ているはずもない。
ガッとリュードを掴んでテユノから引き剥がす。
「あれ……ルフォン?」
いまだにトロンとして寝起きのような声色のテユノは、ようやくルフォンに気づいた。
「分かった……これは媚薬だ」
キスされたから、もあるかもしれないが、この部屋に入ってからなんだかおかしいと思っていた。
妙な感覚を覚え、体が熱くなってきた。
入った時からしている甘い匂いの正体、それは媚薬であった。
抵抗が強く、体にも触れさせないテユノを落とすためにビドゥーは強い媚薬を部屋で焚いていたのだ。
一般的には禁止されている強い薬で、竜人族にすら効果がある。
「ルフォンはなんとも……ん!」
「ん……プハァ」
当然毒耐性が竜人族より低く、嗅覚にも優れた人狼族のルフォンに媚薬が効いていないわけもなかった。
怒りの表情を浮かべたルフォンはリュードの頭を掴んで自分の方に向けさせると唇を重ねた。
ビドゥーが貸し切っているのは町を一望できるぐらいの高さもある最上階だ。
そんなとこまでどうやって行くのか。
「こちらで上まで上がります」
なんとこの宿にはエレベーターが存在していた。
リュードが前世でいた世界ほどのクオリティのものではなく、木で作られた箱のようなもので、壁にいくつかヘコミがある。
そのヘコミの上には階数が書いてあってそこにダッチが魔石をはめ込む。
するとエレベーターが動き出す。
魔石の魔力によって昇降するシステムであり、魔石をはめ込む穴によってどこの階まで上がるのかをコントロールしているのだ。
中々面白い作りだとリュードは思った。
そんなに高い建物をこれまで見なかったのでこうしたものの必要性を感じたことがなく、考えてきたことがなかったけれどちょっと細かな作りが知りたいと興味が湧いた。
「すごい……」
自動に閉まる扉もないエレベーターがギュンと上がっていく。
ルフォンは初めて見るエレベーターに驚いていた。
「これは……」
「こちらは古代の魔道具を応用したものでございます」
「なるほど」
ダッチに構造を聞いてみようとしたが、古代の魔道具を使っているならきっとダッチもそんなに仕組みを分かっていないだろうと諦める。
多分ここに来る客で、細かく気にする人もいないはずだ。
「ここが最上階になります」
瞬く間に最上階に着いてしまった。
速度的にはかなり速い。
「ええと、では、お願いいたします」
リュードたちを降ろして、ダッチはさっさとエレベーターで下がっていってしまった。
帰る時はどうすんだと思うが、交渉に成功すればそのまま部屋に泊まればよく、ダメだったら階段を使ってくださいということなのだ。
ダッチはビドゥーとあまり関わりたくない様子である。
権力も金もあるのだろうが、人間性はよくなさそうだと感じた。
どの道ダッチがいなくなってくれるならありがたい。
「どちら様ですか? ビドゥー様は今……」
「済まないな」
エレベーターを降りてすぐ正面がビドゥーの部屋である。
部屋のドアの前に二人の護衛が立っていた。
護衛には流石に知り合いですなんてウソは通じない。
それに話し合いも通じないことは分かりきっている。
リュードとルフォンは一瞬視線を交差させると、すぐさま護衛に襲いかかった。
剣すら抜くことが出来ずにそれぞれの護衛はリュードとルフォンに倒された。
普段なら悪人がどうか気にするところだけどそうしている暇などない。
殺しはしていないので、それで許してほしい。
「いくぞ」
丁寧にノックなんてしない。
剣に魔力を込めてドアを切り裂いて中に突入する。
入った瞬間になんとも言えない甘い匂いを感じた。
「な、なんだお前たちは!?」
「……貴様!」
どうしてこうした人間は醜いものなのか。
ほんの一瞬以前に美を追求して多くの人を犠牲にしたガマガエルを思い出させるような、ずんぐりむっくりとして不細工な顔をしたバスローブ姿の男がベッドの上にいた。
手には紐を持っていて、その先は首輪に繋がれていた。
そしてその首輪が繋がれているのは見知った女性、テユノの首にであった。
下着姿のテユノは目がうつろで焦点があっていない。
頬が赤く腫れていて少なくとも何かの暴力を振るわれたことは明白であった。
「……貴様ぁ!」
リュードの頭に一瞬で血が昇る。
テーブルの上に置いてあるグラスにヒビが入るほどに重たい魔力がリュードから溢れ出して、ビドゥーは蛇に睨まれたカエルの如く動くことが出来なくなる。
「な……あ……」
「黙れ! 今お前の汚い弁解を聞くつもりはない!」
言い訳も、事情も聞くつもりはない。
護衛の血に濡れた剣を手に近づくリュードに、ビドゥーはただただ恐怖することしかできない。
しかし相手を苦しめる趣味はない。
「お前に慈悲はない」
体も首も動かしていないのにビドゥーは自分の視界が刹那に移り変わるのを見た。
首が刎ねられて頭が飛んだから天井が見えたのだと理解することはなくビドゥーは死んでいった。
「テユノ! 大丈夫か!」
リュードはビドゥーの体を乱雑にベッドから突き飛ばすと、テユノに近寄る。
リュードが目の前に来てもテユノの目は焦点が合わず、リュードの呼びかけにも反応しない。
肩を掴んで揺すってみる。
「リュード……」
「テユノ、そうだ俺だ!」
何回か声をかけたらわずかにデルカンが反応を見せた。
「リュードォッ!」
「テ……ムッ!」
ほんのわずかに目に光が戻ったテユノはリュードの呼びかけにようやく反応したかと思ったら、手を伸ばしてリュードの頬に触れた。
そして、グッと抱き締めるようにしてリュードの唇を奪った。
頬をホールドして舌まで差し込んでくる。
力が強く、いきなりのことにリュードも身動きが取れなくなってしまう。
「な、何してんのよー!」
チュッチュとリュードの唇を奪い続けるテユノをルフォンが大人しく見ているはずもない。
ガッとリュードを掴んでテユノから引き剥がす。
「あれ……ルフォン?」
いまだにトロンとして寝起きのような声色のテユノは、ようやくルフォンに気づいた。
「分かった……これは媚薬だ」
キスされたから、もあるかもしれないが、この部屋に入ってからなんだかおかしいと思っていた。
妙な感覚を覚え、体が熱くなってきた。
入った時からしている甘い匂いの正体、それは媚薬であった。
抵抗が強く、体にも触れさせないテユノを落とすためにビドゥーは強い媚薬を部屋で焚いていたのだ。
一般的には禁止されている強い薬で、竜人族にすら効果がある。
「ルフォンはなんとも……ん!」
「ん……プハァ」
当然毒耐性が竜人族より低く、嗅覚にも優れた人狼族のルフォンに媚薬が効いていないわけもなかった。
怒りの表情を浮かべたルフォンはリュードの頭を掴んで自分の方に向けさせると唇を重ねた。


