「あ、兄貴!」
「……なんでこんなところに……」
囚われた竜人族、それはロセアであった。
リュードが村を出る時に行動を共にした、村の商人の息子である竜人族だ。
リュードに憧れを持っていると言い、リュードのことを兄貴と呼ぶことになった。
村で商人としての修行をしているはずのロセアがなんでこんなところにいるのか。
「うわぁ〜ん! ここから出してぇ!」
ロセアは泣き顔で檻の中からリュードに手を伸ばす
ロセアはリュードの魔人化した姿を見たことがあるので、一発でリュードだと分かった。
リュードも幻かと思ったけど、ロセアは本当にそこにいる。
「はぁ……」
リュードはマージェに鍵を開けさせる。
お前だけ入ってろとは言えないので、同部屋のやつも出ることになる。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「うぅ……色々あって。それより大変なんだ! 捕まったのは僕だけじゃなく、テユノもなんだ!」
「なんだと!?」
テユノ。
こちらもリュードとルフォンの同郷で、リュードがいた村の村長の娘。
リュードとルフォンとはちょっと表現しにくい関係性であったが、仲が悪かったものではない。
切磋琢磨する同年代のライバルとでも言うべきだろう。
特にルフォンとは戦友のような関係だった。
「話によるともう買い手が決まっていて、買い手が来たらすぐ引き取られる予定だって……」
「ここに売られたのか?」
「違う……えっと、ビシュクルっていう女性専門の奴隷市場に」
奴隷商人の話はそっちだったのか、と内心で舌打ちするリュードは顔をしかめる。
ロセアの情報は囚われていたために古い。
今現在テユノがどうなっているのか分からない。
「リューちゃん……!」
「分かってる」
「えっ!? ルル、ルフォンさんまで!」
「ど、どこから……」
たまらず影からルフォンも飛び出してくる。
ロセアやマージェは突然現れたルフォンに驚く。
「そんなことはいい。まずはテユノだ」
選択肢は一つしかない。
テユノも囚われているなら助けに行く。
けれど問題はどう助けに行くかだ。
まだ奴隷市場にいるかも分からない。
これまでの経緯を考えると、もうテユノが売られている可能性の方が高い
「えーと、にいちゃん助かったわ。俺は行ってもいいか?」
「……なあ、本当に感謝してるか?」
「お、おう」
「じゃあ一つ頼まれてくれないか?」
「なんだ? 出来ることならしてやるが、俺はなんも持ってへんよ」
「これを」
「……鍵?」
リュードはロセアと同部屋だった奴隷の男に鍵を投げる。
「他の奴隷も是非とも解放してやってくれないか?」
「なっ……それは!」
「へぇ、そりゃ面白そうだ」
マージェの顔が一気に青くなる。
逆に奴隷の男はニヤリと笑う。
「出来れば派手に扇動してくれ。出来そうか?」
「俺は捕まってここにぶち込まれた。売れねえしお先真っ暗だったけど……ここに復讐出来るならやってやるよ」
「そんなことされたら……」
「あんたは案内してくれたしな……逃してやる。今のうちに家に帰って荷物まとめて遠くに逃げろ」
命奪わないだけの慈悲はかけてやる。
だけど邪魔するようなら殺さねばならない。
どの道奴隷が解放された後、ここにいたら奴隷にやられるだろう。
「うっ……」
「分かったな? 早く行け」
「うぅ……はい!」
マージェは走り去っていく。
もはや正常な判断も下せていなさそうなので、どうなるかは知らない。
「それじゃあ頼むぞ」
「お安い御用や。暴れてみせるわ」
男は違法な奴隷ではあるが、帰るべき場所も失うものもない。
自分をさらった連中、自分を売ろうとしている連中に復讐出来るならそうしてやる。
そう思って喜んで引き受けた。
「行くぞ」
「どこに?」
「まずは戻ってここを離れられる準備をする」
ーーーーー
「作戦はこうだ」
奴隷の男が他の奴隷たちを解放して大暴れして町中の注目を引く。
その間にリュードたちはテユノを助け出してそのままこの町を出るのだ。
かなりの無理矢理な作戦にはなる。
けれど一日に二カ所も侵入して竜人族の奴隷を助け出せば、何もバレないなんてことはないだろう。
そもそも一カ所の時点で次の日にはバレる話で、ここまできたら無理にでもやるしかない。
リュードとルフォンとロセアが帰るとそこにラストと寝ているコユキがいた。
リュードに旅の仲間が増えているとは思わなくて、ロセアはとても驚いていた。
ロセアにはリュードの服と簡単に食事を与え、その間に移動できるように荷物を詰め込む。
そしてコユキには申し訳ないが、起きてもらってビシュクルという奴隷市場に向かった。
「どうやら騒ぎが広がってるようだな」
町の中はもうすでに騒ぎが広がり始めている。
聞こえてくる噂では奴隷の男が上手くやったようで、E区画以外の奴隷も解放に成功していっているらしい。
たとえ素手でも大量の奴隷に暴れられると、夜間の少ない警備ではとてもじゃないが間に合わないだろう。
「力づくで制圧するぞ! 影が道をつなぐ」
リュードはウィドウから闇魔法を習った。
ついでにウィドウは本に闇魔法の練習や扱い方なんかを本にまとめてくれて、リュードに渡してもくれたのだ。
コツコツと魔法の練習も繰り返していたリュードは闇魔法も少し扱えるようになっている。
特にウィドウが使っていた影渡りという魔法は見ていたこともあり、習得が早かった。
短距離の瞬間移動を現実にする強力な魔法で、魔法でありながら接近戦闘のための魔法である。
女性専門の奴隷市場はなにかと狙われる危険性がある。
なので松明を多く置いて明るくし、警備も意外と多かった。
悠長に警備のパターンを見抜いて隙をついている時間などない。
今に町中に奴隷が広がり、騒ぎがさらに大きくなる。
そこに乗じて逃げたいから今のうちにテユノを助け出したい思いがある。
リュードは影渡りで警備兵の後ろに一瞬にして回り込むと、鞘ごと抜いた剣で後頭部を殴りつけて気絶させる。
「……なんでこんなところに……」
囚われた竜人族、それはロセアであった。
リュードが村を出る時に行動を共にした、村の商人の息子である竜人族だ。
リュードに憧れを持っていると言い、リュードのことを兄貴と呼ぶことになった。
村で商人としての修行をしているはずのロセアがなんでこんなところにいるのか。
「うわぁ〜ん! ここから出してぇ!」
ロセアは泣き顔で檻の中からリュードに手を伸ばす
ロセアはリュードの魔人化した姿を見たことがあるので、一発でリュードだと分かった。
リュードも幻かと思ったけど、ロセアは本当にそこにいる。
「はぁ……」
リュードはマージェに鍵を開けさせる。
お前だけ入ってろとは言えないので、同部屋のやつも出ることになる。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「うぅ……色々あって。それより大変なんだ! 捕まったのは僕だけじゃなく、テユノもなんだ!」
「なんだと!?」
テユノ。
こちらもリュードとルフォンの同郷で、リュードがいた村の村長の娘。
リュードとルフォンとはちょっと表現しにくい関係性であったが、仲が悪かったものではない。
切磋琢磨する同年代のライバルとでも言うべきだろう。
特にルフォンとは戦友のような関係だった。
「話によるともう買い手が決まっていて、買い手が来たらすぐ引き取られる予定だって……」
「ここに売られたのか?」
「違う……えっと、ビシュクルっていう女性専門の奴隷市場に」
奴隷商人の話はそっちだったのか、と内心で舌打ちするリュードは顔をしかめる。
ロセアの情報は囚われていたために古い。
今現在テユノがどうなっているのか分からない。
「リューちゃん……!」
「分かってる」
「えっ!? ルル、ルフォンさんまで!」
「ど、どこから……」
たまらず影からルフォンも飛び出してくる。
ロセアやマージェは突然現れたルフォンに驚く。
「そんなことはいい。まずはテユノだ」
選択肢は一つしかない。
テユノも囚われているなら助けに行く。
けれど問題はどう助けに行くかだ。
まだ奴隷市場にいるかも分からない。
これまでの経緯を考えると、もうテユノが売られている可能性の方が高い
「えーと、にいちゃん助かったわ。俺は行ってもいいか?」
「……なあ、本当に感謝してるか?」
「お、おう」
「じゃあ一つ頼まれてくれないか?」
「なんだ? 出来ることならしてやるが、俺はなんも持ってへんよ」
「これを」
「……鍵?」
リュードはロセアと同部屋だった奴隷の男に鍵を投げる。
「他の奴隷も是非とも解放してやってくれないか?」
「なっ……それは!」
「へぇ、そりゃ面白そうだ」
マージェの顔が一気に青くなる。
逆に奴隷の男はニヤリと笑う。
「出来れば派手に扇動してくれ。出来そうか?」
「俺は捕まってここにぶち込まれた。売れねえしお先真っ暗だったけど……ここに復讐出来るならやってやるよ」
「そんなことされたら……」
「あんたは案内してくれたしな……逃してやる。今のうちに家に帰って荷物まとめて遠くに逃げろ」
命奪わないだけの慈悲はかけてやる。
だけど邪魔するようなら殺さねばならない。
どの道奴隷が解放された後、ここにいたら奴隷にやられるだろう。
「うっ……」
「分かったな? 早く行け」
「うぅ……はい!」
マージェは走り去っていく。
もはや正常な判断も下せていなさそうなので、どうなるかは知らない。
「それじゃあ頼むぞ」
「お安い御用や。暴れてみせるわ」
男は違法な奴隷ではあるが、帰るべき場所も失うものもない。
自分をさらった連中、自分を売ろうとしている連中に復讐出来るならそうしてやる。
そう思って喜んで引き受けた。
「行くぞ」
「どこに?」
「まずは戻ってここを離れられる準備をする」
ーーーーー
「作戦はこうだ」
奴隷の男が他の奴隷たちを解放して大暴れして町中の注目を引く。
その間にリュードたちはテユノを助け出してそのままこの町を出るのだ。
かなりの無理矢理な作戦にはなる。
けれど一日に二カ所も侵入して竜人族の奴隷を助け出せば、何もバレないなんてことはないだろう。
そもそも一カ所の時点で次の日にはバレる話で、ここまできたら無理にでもやるしかない。
リュードとルフォンとロセアが帰るとそこにラストと寝ているコユキがいた。
リュードに旅の仲間が増えているとは思わなくて、ロセアはとても驚いていた。
ロセアにはリュードの服と簡単に食事を与え、その間に移動できるように荷物を詰め込む。
そしてコユキには申し訳ないが、起きてもらってビシュクルという奴隷市場に向かった。
「どうやら騒ぎが広がってるようだな」
町の中はもうすでに騒ぎが広がり始めている。
聞こえてくる噂では奴隷の男が上手くやったようで、E区画以外の奴隷も解放に成功していっているらしい。
たとえ素手でも大量の奴隷に暴れられると、夜間の少ない警備ではとてもじゃないが間に合わないだろう。
「力づくで制圧するぞ! 影が道をつなぐ」
リュードはウィドウから闇魔法を習った。
ついでにウィドウは本に闇魔法の練習や扱い方なんかを本にまとめてくれて、リュードに渡してもくれたのだ。
コツコツと魔法の練習も繰り返していたリュードは闇魔法も少し扱えるようになっている。
特にウィドウが使っていた影渡りという魔法は見ていたこともあり、習得が早かった。
短距離の瞬間移動を現実にする強力な魔法で、魔法でありながら接近戦闘のための魔法である。
女性専門の奴隷市場はなにかと狙われる危険性がある。
なので松明を多く置いて明るくし、警備も意外と多かった。
悠長に警備のパターンを見抜いて隙をついている時間などない。
今に町中に奴隷が広がり、騒ぎがさらに大きくなる。
そこに乗じて逃げたいから今のうちにテユノを助け出したい思いがある。
リュードは影渡りで警備兵の後ろに一瞬にして回り込むと、鞘ごと抜いた剣で後頭部を殴りつけて気絶させる。


