『しゅごじゅーになって強くなれるなら良いことだけどボクのやりたいことの邪魔になるならボクはやらない』

「ふふっ、ステキですね。大丈夫、いてくれると助かりますが守護獣であることは貴方を縛り付けるものではありません。リュードと旅をしたいというならそうしてくれてもいいんですよ。もちろん守護獣なので私が困ったら助けてほしいですけど」

『困ってるなら助けるのは当然!』

「そうですね。では引き受けてくださいますか?」

『アニキ……』

「何で俺に聞く? いいじゃないか、お前の心の赴くままにやればいい」

 迷ったような視線を向けられるけど、選ぶのはウツボだ。
 ウォークアが騙そうとしているなら止めるけど、そんなことリュードの前でするはずがない。
 
『やります!』

 好きにすればいいというリュードの言葉を聞いてウツボは元気よく答えた。

「では貴方は今から水の神ウォークアの任命する守護獣です。そうですね、貴方のお名前は……」

『待ってください!』

「どうかしましたか?」

「ん?」

 ウツボはリュードの方を振り向いた。
 ジッと目を見つめてくるのでリュードもウツボの言葉を待つ。

『アニキ、ボクに名前をつけてください!』

「えっ?」

『何か一つでもアニキとボクとの間に残るものが欲しい。ボクはものなんかいらないから名前をつけてほしいんだ!』

「それはいい考えですね。付けてあげてください、リュード」

「おいおい……」

 リュードは困った顔をする。
 なぜかウォークアの方が先に許可してしまったので、なんだかリュードが名前をつける流れになった。

「まあ、俺でいいなら。……何がいいだろうな」

 ウツボウツボと呼んでいるけどウツボと名付けるのは違う。
 なんならドラゴンっぽい名前がいいと思う。

 強そうで、もしウツボがドラゴンになっても名前負けしないような名前を付けてやろう。

「……リヴァイア」

 海における強力な聖獣の名前を多少文字る。
 というかほとんどそのままいただく形になった。

『おおっ! なんか強そうな名前だ』

「どうだ?」

『リヴァイア……うん、この名前に相応しいボクになれるような頑張るよ!』

「決まりましたね。リヴァイアよ、今から貴方は私の子です!」

 ポワッとリヴァイアの体が光る。
 これだけのことだったが、これでリヴァイアはウォークアの守護獣となったのである。

「もう限界ですね……私の子よ、しかと恩人を町まで送り届け…………頼み…………まし……」

 声がブツブツと途切れ始めて、聞こえなくなる。
 神の力の限界を迎えて交信出来なくなったようだ。

「……これで一件落着か」

 その後リュードたちは城に一泊してから城を去ることになった。
 すぐには川の水量も戻らないけれど、数日もすれば元の通りになるとウンディーネたちは言う。

 戦いの最中ではアドレナリンが出ていて気づかなかったが、戦いを終えて時間が経つと体に残された疲労感は凄まじく、用意された不思議なウォーターベッドの上で眠りこけた。

 ーーーーー

『ウオオォ! アニキぃ!』

 号泣するウツボ、改めてリヴァイアはなんやかんや良いやつだった。

『待っててください! ボク魔法も使えるようになってすぐにアニキのところに行きますからー!』

 非常に別れを惜しんでくれるリヴァイアは号泣している。
 今ここにいるメンツならともかく、他のところにリヴァイアが行くとただの魔物なので襲われてしまう。

 だからここでお別れである。

「おおっ、こんなふうに通れるのか」
 
 城の外は城から大量の水が溢れているので通れなくなっていた。
 ただもちろん出られないわけじゃない。

 ウンディーネたちが一時的に水を止めてくれて、最初に入ってきた道を通って城から離れることができるのだ。

「一緒に旅できる時を待ってるぞ!」

『はい! どうかその時までご達者で!!』

 リヴァイアとウンディーネたちに手を振り、リュードたちはヴァネルアに向かう。
 後に水の神の聖域を守る心優しき守護獣の話は、ミルトたちを通じてヴァネルアに広まることになる。

 何か川で困ったことがあると心優しき魔物が助けくれることも噂になった。
 人呼んで水獣竜。

 ドラゴンではないけどドラゴンのように強く優しい川を守る魔物がいる。
 ヴァネルアではリヴァイアのことを認識するようになるのもそう遠くない話なのだった。

『ウオオーン! アニキー!』

「こいつうっさいわね……」

「まあこのおかげ魔物が来てもこれで安心だから……」

『ボク頑張るからぁーー!』

「うっさい!」