強い魔物ほどその味は美味しく、かつ魔力も含んでいる。
戦った強い相手を食べることは、すなわち魔力の回復にもつながるので非常に理に適った行為でもある。
そのまま捨て置くのも気が引けるし、多少なりとも食べて供養みたいな気持ちもリュードにはあった。
冒険者でもないミルトは一々倒した相手を食べることに抵抗感があったけど、体力は実際回復するし体の調子が良くなれば神聖力も多少回復するので魔物食を受け入れた。
「次はアリーシャのところですね」
「……次は何食べられるかな」
リュードからポソリと本音が漏れる。
もはやここに出る魔物を美味しい海産物として見ている。
立派なマグロでも出てこないかなと思う反面、マグロだった時にはそれこそ醤油で刺身が食べたくなるだろう。
焼いてもいいけど……なんて考えるが、何が出てくるかはまだ分からない。
「ああした魔物を従えていても神様なんだな」
「一応神ですね。人よりもビジネスライクで多少の力を与える代わりに信仰のようなものを得るんです。純粋に信仰するという行為をする魔物もいますが、魔物と神との関係は一般的な人と神との関係とは少し違います」
「不思議なもんだな」
「神に協力している魔物の感じをみると、水の神というより水生生物の神に近いのかもしれませんね」
水を信仰するにも種類がある。
今戦っている神様は水の神だろうけど、広い定義でみると水の神と言える存在なのではないかと思った。
コアルームのコア、つまりは石像は完全に乗っ取られていない。
ウンディーネたちが関われずに機能が停止していた。
それは魔物の知能が低いこともあるのだろうけれども、敵対する水の神の水に対する支配力が低いからではないかとナガーシャは考えた。
「神様も色々だな」
「まあ信仰は人の概念だから魔物には魔物の形があるんです」
「面白いな」
「増えすぎてこんな事態も起きるから大変ですよ」
川を下っていけば、水そのものではなく川を信仰しているところもある。
こちらは神格化するほどの信仰もないけど、広く言えば水を信仰しているとも言える。
ここを襲撃した神は純粋な水の神でないから水の主神という座を欲しがったのかもしれない。
しかしこんな形で力を奪ったとしても、信仰に繋がるのか甚だ疑問である。
「変だな……何もいないのか?」
続いて向かうのは四か所めのコアルームだ。
コアルームは四つ角に位置しているので、ぐるっと大きく城を一周してきたような形になる。
これまでのところならちらほらと魔物が邪魔をしてきてもおかしくないのに魔物のまの字もない。
「綺麗……」
「ちょっと怖いかな……」
今度は床が透明のガラスのようになっていてその下には水が満ちている。
ラストは綺麗だと感じるが、ルフォンはちょっと怖いと思っていた。
「ただ……何かの痕跡はあるな」
敵はいないのだけど、様子はおかしい。
壁が砕けていたり床がひび割れていたりと戦いの跡のようなものが見られる。
「ホント……力業だな」
何が出てきてもいいように警戒していたが、結局何も出てこないままコアルームの前まで来てしまった。
何事もなかったのはいいのだけど、何事もないのは少し不気味である。
コアルームの扉は例によって大きくひしゃげて倒れている。
「これはなんだ?」
コアルームの前の小部屋には何かが散らばっている。
「足……カニじゃない。エビ?」
「……残骸のみで分かりにくいですけどビエマルク……でしょうか? これまで戦った魔物の流れからもあり得ると思います」
それはエビの足のようにリュードには見えた。
何だってこんなものが床に散らばっているのか。
足の形から魔物をナガーシャが予想する。
魔物の正体が何にしても、今は足しか残っていない。
リュードは剣を抜いて不安を振り払うように大きく息を吐くとコアルームを覗き込む。
「何が……あったんだ…………」
「あれは…………ボッウルベタとビエイレキですね」
「相変わらず知識すごいな」
コアルームの石像に巻きつく蛇のように細長い生き物が見えた。
黄褐色の体に濃褐色の斑点が見えるそれは、リュードの知識が正しければウツボであった。
そしてその周りには派手な色をした小型のエビがいる。
本当にナガーシャは水に棲む魔物について詳しいものだと感心する。
そしてその周りにエビと思わしき足やなんかが転がっている。
ただウツボの側にいる派手なエビとは違っているので、違う種類のエビであったことは分かる。
覗き込むリュードに気づいているようで、ウツボの目は警戒するようにリュードを見ていた。
首をもたげて口を大きく開けて威嚇してくる。
「ウツボか。別にそれはいいんだけど何があったんだよ、これ」
なぜエビの死骸が至る所に転がっているのか。
そして派手なエビの方はなぜ無事なのか。
海のギャングなんて呼ばれるウツボ。
リュードもそんなに細かくは知らないので、何が起きたのか予想もできない。
けれどもウツボも食べられるという変な知識はあった。
強そう、だけど食べてみたい。
ウツボすら半ば食材のように捉えて始めているリュードである。
戦った強い相手を食べることは、すなわち魔力の回復にもつながるので非常に理に適った行為でもある。
そのまま捨て置くのも気が引けるし、多少なりとも食べて供養みたいな気持ちもリュードにはあった。
冒険者でもないミルトは一々倒した相手を食べることに抵抗感があったけど、体力は実際回復するし体の調子が良くなれば神聖力も多少回復するので魔物食を受け入れた。
「次はアリーシャのところですね」
「……次は何食べられるかな」
リュードからポソリと本音が漏れる。
もはやここに出る魔物を美味しい海産物として見ている。
立派なマグロでも出てこないかなと思う反面、マグロだった時にはそれこそ醤油で刺身が食べたくなるだろう。
焼いてもいいけど……なんて考えるが、何が出てくるかはまだ分からない。
「ああした魔物を従えていても神様なんだな」
「一応神ですね。人よりもビジネスライクで多少の力を与える代わりに信仰のようなものを得るんです。純粋に信仰するという行為をする魔物もいますが、魔物と神との関係は一般的な人と神との関係とは少し違います」
「不思議なもんだな」
「神に協力している魔物の感じをみると、水の神というより水生生物の神に近いのかもしれませんね」
水を信仰するにも種類がある。
今戦っている神様は水の神だろうけど、広い定義でみると水の神と言える存在なのではないかと思った。
コアルームのコア、つまりは石像は完全に乗っ取られていない。
ウンディーネたちが関われずに機能が停止していた。
それは魔物の知能が低いこともあるのだろうけれども、敵対する水の神の水に対する支配力が低いからではないかとナガーシャは考えた。
「神様も色々だな」
「まあ信仰は人の概念だから魔物には魔物の形があるんです」
「面白いな」
「増えすぎてこんな事態も起きるから大変ですよ」
川を下っていけば、水そのものではなく川を信仰しているところもある。
こちらは神格化するほどの信仰もないけど、広く言えば水を信仰しているとも言える。
ここを襲撃した神は純粋な水の神でないから水の主神という座を欲しがったのかもしれない。
しかしこんな形で力を奪ったとしても、信仰に繋がるのか甚だ疑問である。
「変だな……何もいないのか?」
続いて向かうのは四か所めのコアルームだ。
コアルームは四つ角に位置しているので、ぐるっと大きく城を一周してきたような形になる。
これまでのところならちらほらと魔物が邪魔をしてきてもおかしくないのに魔物のまの字もない。
「綺麗……」
「ちょっと怖いかな……」
今度は床が透明のガラスのようになっていてその下には水が満ちている。
ラストは綺麗だと感じるが、ルフォンはちょっと怖いと思っていた。
「ただ……何かの痕跡はあるな」
敵はいないのだけど、様子はおかしい。
壁が砕けていたり床がひび割れていたりと戦いの跡のようなものが見られる。
「ホント……力業だな」
何が出てきてもいいように警戒していたが、結局何も出てこないままコアルームの前まで来てしまった。
何事もなかったのはいいのだけど、何事もないのは少し不気味である。
コアルームの扉は例によって大きくひしゃげて倒れている。
「これはなんだ?」
コアルームの前の小部屋には何かが散らばっている。
「足……カニじゃない。エビ?」
「……残骸のみで分かりにくいですけどビエマルク……でしょうか? これまで戦った魔物の流れからもあり得ると思います」
それはエビの足のようにリュードには見えた。
何だってこんなものが床に散らばっているのか。
足の形から魔物をナガーシャが予想する。
魔物の正体が何にしても、今は足しか残っていない。
リュードは剣を抜いて不安を振り払うように大きく息を吐くとコアルームを覗き込む。
「何が……あったんだ…………」
「あれは…………ボッウルベタとビエイレキですね」
「相変わらず知識すごいな」
コアルームの石像に巻きつく蛇のように細長い生き物が見えた。
黄褐色の体に濃褐色の斑点が見えるそれは、リュードの知識が正しければウツボであった。
そしてその周りには派手な色をした小型のエビがいる。
本当にナガーシャは水に棲む魔物について詳しいものだと感心する。
そしてその周りにエビと思わしき足やなんかが転がっている。
ただウツボの側にいる派手なエビとは違っているので、違う種類のエビであったことは分かる。
覗き込むリュードに気づいているようで、ウツボの目は警戒するようにリュードを見ていた。
首をもたげて口を大きく開けて威嚇してくる。
「ウツボか。別にそれはいいんだけど何があったんだよ、これ」
なぜエビの死骸が至る所に転がっているのか。
そして派手なエビの方はなぜ無事なのか。
海のギャングなんて呼ばれるウツボ。
リュードもそんなに細かくは知らないので、何が起きたのか予想もできない。
けれどもウツボも食べられるという変な知識はあった。
強そう、だけど食べてみたい。
ウツボすら半ば食材のように捉えて始めているリュードである。


