「さすが……だにゃ?」
「なんで疑問形なんだよ」
大ホタテを倒した。
けどなんというか微妙に喜びにくい終わり方でニャロはちょっと首を傾げた。
大カニのような派手に倒した感はちょっとない。
電撃を流し続けるという戦い方も傍目に分かりにくいし、大ホタテの反応もパカパカするっていう滑稽な感じだったのも悪い。
絵面からして戦いの勝利と言いにくい。
リュードも勝った感は薄い。
「いやぁ!」
「ガラーシャ、私、ナガーシャだよ!」
あとはホタテの処理だ。
冒険者たちが殻に閉じこもって防御体勢を取るホタテを集める。
カニという移動手段も失ったのでなんの脅威でもない。
もうこの部屋における銭湯は終わったというのに、ガラーシャは未だに錯乱状態にあった。
首を振り縄に触られることを嫌がって部屋の隅に逃げている。
ナガーシャはどうしてしまったのかと動揺している。
よほど心に深い傷を負ってしまったというのなら、かなり厄介な問題である。
流石のリュードもカウンセリングのようなことはできない。
「ん……?」
ガラーシャは一見すると心に深い傷を負って、他者を激しく拒絶しているように見える。
しかしリュードはそんなガラーシャを見て違和感を覚えた。
ガラーシャというよりガラーシャを縛る縄に違和感を覚えたのだ。
単純に拘束したいならグルグル巻きにしてやればいい。
なのにガラーシャを縛っている縄の結び方はなんというか、テクニカルなのだ。
単に手足を縛っているのではなく、体のラインやパーツが強調されるようなそんな縛り方をしている。
「カニがあんな……」
そう考えるとおかしい。
あの場にいたのはカニとホタテだ。
ホタテは手すらなく、カニも不器用そうな爪があるのみだ。
ならば誰がガラーシャをこんな特殊な縛り方をしたのだと疑問が湧いてきた。
こんな縛り方をされたのならトラウマになってもおかしくないのだけど、ホタテやカニではこんな縛り方ができるはずがない。
仮に出来たとしてこんな複雑な縛り方をする必要がない。
辱めたいなら話は別だがカニやホタテがそんなことはしないだろう。
辱めることにも理由がない。
「……となると……」
「ガラーシャ……どうしたのよ。せめて縄だけでも解かせてよ」
「見ないで……お願い……誰も私を見ないで……」
「みんな、一度部屋を出よう。ナガーシャ、君はいてあげて。ガラーシャ、正直にナガーシャには話すんだ」
リュードは事情を察した。
騒がず、取り乱さず、素知らぬ顔をして解放してもらえば誰も気づかなかったのにとリュードは思った。
そう、あの拘束はおそらくガラーシャが自身でやったものだ。
自縛趣味、被虐趣味とでも言えばいいのか。
自分で自分を縛って楽しんでいたのだ。
多分趣味なんだろう。
誰なもバレたくない秘密の趣味というのはだれにでもある。
ガラーシャにとっての趣味は、バレると命を取られることほどに取り乱すほどのことだったのだろう。
きっとカニとホタテが襲来したタイミングはガラーシャにとって最悪と言えるものだったはずだ。
「大丈夫かな?」
「うん、あんなんになるなんて許せないね!」
ザ・ピュアルフォンとザ・ピュアラストの二人は純粋にガラーシャのことを心配している。
リュードもガラーシャの心配はしているがその意味合いは少し違っている。
冒険者にも何人か気づいている人がいるような様子ではあった。
自分で自分を縄で縛るなんて、やや特殊な性癖に近いものだから知らなくても無理はない。
「あっはっはっはっ!」
ガラーシャの体と心を心配していると、ナガーシャの爆笑の声が聞こえてきた。
縄を解いて白状したのだなとリュードは遠い目をした。
結構長めの爆笑。
途中咳き込んだりガラーシャの怒りの声が聞こえたりした。
程なくして笑いすぎて顔を真っ赤にしたナガーシャと、自分の趣味を白状して恥ずかしさで顔を真っ赤にしたガラーシャが部屋から出てきた。
「ご迷惑をおかけしました……」
「んふっ!」
「ナガーシャ!」
「んふっ……んんっ! ごめんって……だって真面目なガラーシャが……ふふっ!」
「もうそれ以上言ったら絶交だからね!」
「ごめんごめん!」
恥ずかしそうな顔をしているが、正直に話したことで助けを拒否するような姿勢ではなくなった。
こんなところに他に人もなく住んでいたら多少歪んだ趣味ができていてもおかしくはない。
それでも他人には知られたくない趣味。
こんな誤魔化しもできない状況で知られてしまったら取り乱すのも当然のことである。
ひとまず秘密を吐露して落ち着いたガラーシャは、顔を赤くしたままリュードたちに深々と頭を下げた。
趣味についての話は後で当人たちにしてもらうことにして、水出し部屋に戻る。
残ったホタテは火の魔法で蒸し焼きにして倒して終わらせる。
倒したカニとかも集めて冷凍しておく。
ナガーシャの部屋ではドラゴンを模したものであったが、ガラーシャの部屋には魚の頭のような大きな石像があった。
なぜか目線が部屋の中に向くように作られていて、どこから見ても目が合うような感じがして少し気味が悪い。
「なんで疑問形なんだよ」
大ホタテを倒した。
けどなんというか微妙に喜びにくい終わり方でニャロはちょっと首を傾げた。
大カニのような派手に倒した感はちょっとない。
電撃を流し続けるという戦い方も傍目に分かりにくいし、大ホタテの反応もパカパカするっていう滑稽な感じだったのも悪い。
絵面からして戦いの勝利と言いにくい。
リュードも勝った感は薄い。
「いやぁ!」
「ガラーシャ、私、ナガーシャだよ!」
あとはホタテの処理だ。
冒険者たちが殻に閉じこもって防御体勢を取るホタテを集める。
カニという移動手段も失ったのでなんの脅威でもない。
もうこの部屋における銭湯は終わったというのに、ガラーシャは未だに錯乱状態にあった。
首を振り縄に触られることを嫌がって部屋の隅に逃げている。
ナガーシャはどうしてしまったのかと動揺している。
よほど心に深い傷を負ってしまったというのなら、かなり厄介な問題である。
流石のリュードもカウンセリングのようなことはできない。
「ん……?」
ガラーシャは一見すると心に深い傷を負って、他者を激しく拒絶しているように見える。
しかしリュードはそんなガラーシャを見て違和感を覚えた。
ガラーシャというよりガラーシャを縛る縄に違和感を覚えたのだ。
単純に拘束したいならグルグル巻きにしてやればいい。
なのにガラーシャを縛っている縄の結び方はなんというか、テクニカルなのだ。
単に手足を縛っているのではなく、体のラインやパーツが強調されるようなそんな縛り方をしている。
「カニがあんな……」
そう考えるとおかしい。
あの場にいたのはカニとホタテだ。
ホタテは手すらなく、カニも不器用そうな爪があるのみだ。
ならば誰がガラーシャをこんな特殊な縛り方をしたのだと疑問が湧いてきた。
こんな縛り方をされたのならトラウマになってもおかしくないのだけど、ホタテやカニではこんな縛り方ができるはずがない。
仮に出来たとしてこんな複雑な縛り方をする必要がない。
辱めたいなら話は別だがカニやホタテがそんなことはしないだろう。
辱めることにも理由がない。
「……となると……」
「ガラーシャ……どうしたのよ。せめて縄だけでも解かせてよ」
「見ないで……お願い……誰も私を見ないで……」
「みんな、一度部屋を出よう。ナガーシャ、君はいてあげて。ガラーシャ、正直にナガーシャには話すんだ」
リュードは事情を察した。
騒がず、取り乱さず、素知らぬ顔をして解放してもらえば誰も気づかなかったのにとリュードは思った。
そう、あの拘束はおそらくガラーシャが自身でやったものだ。
自縛趣味、被虐趣味とでも言えばいいのか。
自分で自分を縛って楽しんでいたのだ。
多分趣味なんだろう。
誰なもバレたくない秘密の趣味というのはだれにでもある。
ガラーシャにとっての趣味は、バレると命を取られることほどに取り乱すほどのことだったのだろう。
きっとカニとホタテが襲来したタイミングはガラーシャにとって最悪と言えるものだったはずだ。
「大丈夫かな?」
「うん、あんなんになるなんて許せないね!」
ザ・ピュアルフォンとザ・ピュアラストの二人は純粋にガラーシャのことを心配している。
リュードもガラーシャの心配はしているがその意味合いは少し違っている。
冒険者にも何人か気づいている人がいるような様子ではあった。
自分で自分を縄で縛るなんて、やや特殊な性癖に近いものだから知らなくても無理はない。
「あっはっはっはっ!」
ガラーシャの体と心を心配していると、ナガーシャの爆笑の声が聞こえてきた。
縄を解いて白状したのだなとリュードは遠い目をした。
結構長めの爆笑。
途中咳き込んだりガラーシャの怒りの声が聞こえたりした。
程なくして笑いすぎて顔を真っ赤にしたナガーシャと、自分の趣味を白状して恥ずかしさで顔を真っ赤にしたガラーシャが部屋から出てきた。
「ご迷惑をおかけしました……」
「んふっ!」
「ナガーシャ!」
「んふっ……んんっ! ごめんって……だって真面目なガラーシャが……ふふっ!」
「もうそれ以上言ったら絶交だからね!」
「ごめんごめん!」
恥ずかしそうな顔をしているが、正直に話したことで助けを拒否するような姿勢ではなくなった。
こんなところに他に人もなく住んでいたら多少歪んだ趣味ができていてもおかしくはない。
それでも他人には知られたくない趣味。
こんな誤魔化しもできない状況で知られてしまったら取り乱すのも当然のことである。
ひとまず秘密を吐露して落ち着いたガラーシャは、顔を赤くしたままリュードたちに深々と頭を下げた。
趣味についての話は後で当人たちにしてもらうことにして、水出し部屋に戻る。
残ったホタテは火の魔法で蒸し焼きにして倒して終わらせる。
倒したカニとかも集めて冷凍しておく。
ナガーシャの部屋ではドラゴンを模したものであったが、ガラーシャの部屋には魚の頭のような大きな石像があった。
なぜか目線が部屋の中に向くように作られていて、どこから見ても目が合うような感じがして少し気味が悪い。


