「うりゃ! おーーーりゃ!」
リュードは荷物の中から剣を取り出した。
普段使っているものと違って剣の厚みがかなり薄いドワーフ特製の剣だ。
本当はもっと薄く透明に近い剣にしたかったらしいが、耐久力の問題で薄くて軽い剣ぐらいの出来になっている。
リュードは貝の僅かな隙間に剣を差し込んでグリグリと動かす。
するとホタテが突然パカッと開いた。
「おぉ〜!」
「パパすごい!」
「へっ、これぐらい朝飯前よ」
カニに続いて新鮮なホタテまでゲット。
ちゃんとした調理器具でなく剣なので多少は雑な開け方だけど、ホタテは肉厚な身が詰まっていて美味そうだとリュードは思った。
ヴァネリアでは川魚が中心だった。
美味しかったし色々な種類もあったけどこうした海の幸も少し恋しくなってはいた。
剣を使えば貝を開くことができるけど、それも時間はかかるし意外とコツがいる。
リュード以外の人には上手くできなかった。
そんな方法よりも軽く電気ショックを与えた方が早いと気づいたのは3枚ほどホタテを開けてからだった。
「くらえ!」
「ぱかっ!」
リュードが軽く電気ショックを与えるとホタテはビクンと震えて貝がパカッと開く。
その隙に中を攻撃して倒してしまうのが早かった。
電気ショックに使う魔力もそんなに多くないから、効率的で簡単でよかった。
近づいてしまえばホタテに移動手段はなくて攻撃もしてこないので危険もない。
リュードにしか使えない方法だからホタテの方も予想外だろう。
「リュードさんは海のご出身なのですか?」
途中にある大部屋で休憩を取る。
床は湿っていて休憩にはふさわしくないが、倒して中身を取ったホタテの貝殻を下に敷いて防水し、火も貝殻の上に焚く。
水に囲まれているせいか気温は低めで、意外と体が冷えるのだ。
「ふんふふーん」
リュードはご機嫌に鼻歌を歌いながら、倒さないで紐で縛って持ってきたホタテを焚き火の上にセットする。
みんな何をするのかと遠巻きに見学していたが、火で炙られたホタテはブルブルと震え、そして少しずつ貝を開いていった。
「ぱかっ!」
「開いちゃった」
炙り焼きにされて倒しながら調理もできる。
貝殻で身を守っても、こちらには知恵があるのだよとリュードはニヤリと笑う。
そんなリュードを見てミルトが感じていた疑問を口にした。
最初に剣を差し込んで貝を開けさせたことといい、カニや貝を食べようとしていることといい、リュードはこれらの魔物について知っているようだと思ったのだ。
カニやホタテは川沿いにはおらず、川に沿って下っていって海近くまで行けばこうした魔物も出てくる。
海出身ならこうした魔物について知っていてもおかしくない。
逆に水辺じゃないと見かけないので、他のところにいては聞く機会もないはずだ。
つまりリュードには海出身の可能性があると考えた。
「いや、森出身だよ。あっても川かな」
醤油欲しいななんて思いながらリュードは焼きホタテを食べる。
異世界転生者にありがちな考えをこんなところで抱くとは予想外だった。
「イナデニカやラシバイカについてはどこでお知りに?」
マーマンは抵抗ありそうだったのに、ホタテは当然のように食べている。
ミルトにとっては全くもって謎である。
「んーと、たまたま知ることがね。あっつ、うっま」
焼きホタテを頬張る。
海の魔物だからだろうか、肉厚な身には程よい塩味がついていてそのままでも美味しい。
魔物だから身の旨みも溢れている。
これならカニの方も期待できそう。
「こっちもちょっと食べてみるか」
ということでカニも取り出して剥いて食べる。
大きいとむしろ剥きやすい。
ザックリと殻を切り裂いて中身を取り出す。
小さかったらほじくる必要もあるけどデカいから簡単に身を取り出せる。
多少は細かいところもあるけど、ここは贅沢に大きめの身のところだけを食べる。
「うみゃあ……」
「美味しいね」
「お魚もあれだけどこんなのもまたいいね」
みんなでカニとホタテを食べて体力を回復する。
やはりいつか醤油に近いものは探そうと決意を新たにしたリュードたちは束の間の休憩を終えて、城の奪還に向けて再び動き出す。
「あ……あぁ! ガラーシャ!」
カニやホタテを倒しながら進んでいき、ナガーシャがいたような巨大な扉がある部屋の前まできた。
巨大な扉は見るも無惨に破壊されてしまっていて、侵入者を拒む働きは果たせていない。
ナガーシャの顔が真っ青になる。
「な、なんてこと……」
「ナガーシャ、下がれ!」
フラフラと前に出るナガーシャをルフォンが慌てて止めなければ、そのまま部屋の中に飛び込んでいったかもしれない。
ナガーシャが落ち着くの待ってリュードたちは部屋の中を覗き込む。
部屋の中には多くのカニとホタテがいた。
「デカいのがいるな」
そして中でも大きなカニとホタテが一体ずついる。
おそらくカニやホタテのリーダーだろう。
そしてその近くに転がっている青い髪の女性が見えた。
ガラーシャと呼ばれていたウンディーネだ。
体を縄で縛られているみたいであるが、どうやら命に別状はないようでモジモジと動いていることが確認できた。
「……素早くカニから数を減らそう。一発かますからみんな頼むぞ」
水に住み、水属性に強いことの裏を返すと、雷属性に弱いと言える。
リュードが飛び出して、雷属性の魔法を放った。
今回の場所はリザードマンのところほど床が水に覆われておらず、ちょっと湿っている程度なので直接雷をぶつけていく。
手前にいるカニ群に当たればいいぐらいの気持ちだった。
みんなも飛び出してカニに切り掛かる。
ルフォンのように魔力を込めてカニを切り裂ける人はそうして、そうでないものは思い切り剣を突き立てるようにして無理矢理カニの殻を突き破る。
「下がれ!」
リュードの指示に従ってサッと攻撃してみんな後退する。
戦略的にカニやホタテと距離を取る。
扉からは見えなかったが、ホタテは部屋の至るところにいた。
このままでは四方から魔法を打たれることになる、と咄嗟に判断した。
ホタテは基本動かない。
だからこの水出し部屋の扉付近まで下がるとホタテと距離を取りながらカニだけを誘き寄せられる。
リュードは荷物の中から剣を取り出した。
普段使っているものと違って剣の厚みがかなり薄いドワーフ特製の剣だ。
本当はもっと薄く透明に近い剣にしたかったらしいが、耐久力の問題で薄くて軽い剣ぐらいの出来になっている。
リュードは貝の僅かな隙間に剣を差し込んでグリグリと動かす。
するとホタテが突然パカッと開いた。
「おぉ〜!」
「パパすごい!」
「へっ、これぐらい朝飯前よ」
カニに続いて新鮮なホタテまでゲット。
ちゃんとした調理器具でなく剣なので多少は雑な開け方だけど、ホタテは肉厚な身が詰まっていて美味そうだとリュードは思った。
ヴァネリアでは川魚が中心だった。
美味しかったし色々な種類もあったけどこうした海の幸も少し恋しくなってはいた。
剣を使えば貝を開くことができるけど、それも時間はかかるし意外とコツがいる。
リュード以外の人には上手くできなかった。
そんな方法よりも軽く電気ショックを与えた方が早いと気づいたのは3枚ほどホタテを開けてからだった。
「くらえ!」
「ぱかっ!」
リュードが軽く電気ショックを与えるとホタテはビクンと震えて貝がパカッと開く。
その隙に中を攻撃して倒してしまうのが早かった。
電気ショックに使う魔力もそんなに多くないから、効率的で簡単でよかった。
近づいてしまえばホタテに移動手段はなくて攻撃もしてこないので危険もない。
リュードにしか使えない方法だからホタテの方も予想外だろう。
「リュードさんは海のご出身なのですか?」
途中にある大部屋で休憩を取る。
床は湿っていて休憩にはふさわしくないが、倒して中身を取ったホタテの貝殻を下に敷いて防水し、火も貝殻の上に焚く。
水に囲まれているせいか気温は低めで、意外と体が冷えるのだ。
「ふんふふーん」
リュードはご機嫌に鼻歌を歌いながら、倒さないで紐で縛って持ってきたホタテを焚き火の上にセットする。
みんな何をするのかと遠巻きに見学していたが、火で炙られたホタテはブルブルと震え、そして少しずつ貝を開いていった。
「ぱかっ!」
「開いちゃった」
炙り焼きにされて倒しながら調理もできる。
貝殻で身を守っても、こちらには知恵があるのだよとリュードはニヤリと笑う。
そんなリュードを見てミルトが感じていた疑問を口にした。
最初に剣を差し込んで貝を開けさせたことといい、カニや貝を食べようとしていることといい、リュードはこれらの魔物について知っているようだと思ったのだ。
カニやホタテは川沿いにはおらず、川に沿って下っていって海近くまで行けばこうした魔物も出てくる。
海出身ならこうした魔物について知っていてもおかしくない。
逆に水辺じゃないと見かけないので、他のところにいては聞く機会もないはずだ。
つまりリュードには海出身の可能性があると考えた。
「いや、森出身だよ。あっても川かな」
醤油欲しいななんて思いながらリュードは焼きホタテを食べる。
異世界転生者にありがちな考えをこんなところで抱くとは予想外だった。
「イナデニカやラシバイカについてはどこでお知りに?」
マーマンは抵抗ありそうだったのに、ホタテは当然のように食べている。
ミルトにとっては全くもって謎である。
「んーと、たまたま知ることがね。あっつ、うっま」
焼きホタテを頬張る。
海の魔物だからだろうか、肉厚な身には程よい塩味がついていてそのままでも美味しい。
魔物だから身の旨みも溢れている。
これならカニの方も期待できそう。
「こっちもちょっと食べてみるか」
ということでカニも取り出して剥いて食べる。
大きいとむしろ剥きやすい。
ザックリと殻を切り裂いて中身を取り出す。
小さかったらほじくる必要もあるけどデカいから簡単に身を取り出せる。
多少は細かいところもあるけど、ここは贅沢に大きめの身のところだけを食べる。
「うみゃあ……」
「美味しいね」
「お魚もあれだけどこんなのもまたいいね」
みんなでカニとホタテを食べて体力を回復する。
やはりいつか醤油に近いものは探そうと決意を新たにしたリュードたちは束の間の休憩を終えて、城の奪還に向けて再び動き出す。
「あ……あぁ! ガラーシャ!」
カニやホタテを倒しながら進んでいき、ナガーシャがいたような巨大な扉がある部屋の前まできた。
巨大な扉は見るも無惨に破壊されてしまっていて、侵入者を拒む働きは果たせていない。
ナガーシャの顔が真っ青になる。
「な、なんてこと……」
「ナガーシャ、下がれ!」
フラフラと前に出るナガーシャをルフォンが慌てて止めなければ、そのまま部屋の中に飛び込んでいったかもしれない。
ナガーシャが落ち着くの待ってリュードたちは部屋の中を覗き込む。
部屋の中には多くのカニとホタテがいた。
「デカいのがいるな」
そして中でも大きなカニとホタテが一体ずついる。
おそらくカニやホタテのリーダーだろう。
そしてその近くに転がっている青い髪の女性が見えた。
ガラーシャと呼ばれていたウンディーネだ。
体を縄で縛られているみたいであるが、どうやら命に別状はないようでモジモジと動いていることが確認できた。
「……素早くカニから数を減らそう。一発かますからみんな頼むぞ」
水に住み、水属性に強いことの裏を返すと、雷属性に弱いと言える。
リュードが飛び出して、雷属性の魔法を放った。
今回の場所はリザードマンのところほど床が水に覆われておらず、ちょっと湿っている程度なので直接雷をぶつけていく。
手前にいるカニ群に当たればいいぐらいの気持ちだった。
みんなも飛び出してカニに切り掛かる。
ルフォンのように魔力を込めてカニを切り裂ける人はそうして、そうでないものは思い切り剣を突き立てるようにして無理矢理カニの殻を突き破る。
「下がれ!」
リュードの指示に従ってサッと攻撃してみんな後退する。
戦略的にカニやホタテと距離を取る。
扉からは見えなかったが、ホタテは部屋の至るところにいた。
このままでは四方から魔法を打たれることになる、と咄嗟に判断した。
ホタテは基本動かない。
だからこの水出し部屋の扉付近まで下がるとホタテと距離を取りながらカニだけを誘き寄せられる。


