「わあ……キレイ」
ガラスの向こうには水が満ちていて、魚が泳いでいるのが見える。
平時なら綺麗な場所に思えるだろうが、今はそんなこと楽しんでいられない。
コユキは楽しそうだけど。
「カニ……?」
「イナデニカですね。外骨格が硬く両の爪は人の体ぐらい簡単に切断してしまいますので気をつけてください。結構素早いので油断なさらないように」
進んでいって現れた魔物はカニだった。
リュードの腰ぐらいまでの高さがあり胴体も容易く挟んでしまえそうな爪のハサミを持っている。
「前に走んのかよ!」
カニだし横向きに、と思っていたら普通に前に走ってきた。
そのまま前にいたリュードを爪で挟み込もうとする。
リュードは後ろに下がって爪をかわして、剣を振り下ろす。
魔力を込めない剣では表面に軽く傷をつける程度で通らない。
「硬いな!」
今度は爪で殴りつけてくるのを飛び上がって回避する。
「うりゃ!」
こちらもと剣に魔力を込めて突き出す。
剣先がカニの甲羅を突き破る。
刺した場所が悪くて大きなダメージにもならなかったが一定以上の強さがあれば攻撃は通りそうである。
「終わりだ!」
両側から挟み込もうと迫る両手の爪。
リュードはあえてさらに一歩踏み込んで、襲いくる爪より早くカニの懐に入り込んだ。
剣先に魔力を集中させてカニの口をめがけて思い切り剣を突き出す。
反対側の甲羅から剣が突き出てきてカニの体がビクンビクンと震える。
「いっちょ上がり!」
カニに足を当てて押すようにしながら剣を抜く。
そのまま後ろに倒れてカニは動かなくなってしまった。
「爪での攻撃がメイン。挟んだり叩きつけてきたりする接近物理攻撃タイプだな」
試しちゃいないが切断力は高いだろうから要注意だろうと思う。
あとはやや硬いこととやや速いことが特徴で、今のところ苦労する要素は少ない。
「なあ、これってもしかして……美味い?」
「あら、よくご存知ですね? 町に近いステュルス川だとあまり見かけませんが、ずっと下流域ではこのイナデニカが現れるそうです。味はとても美味しいですよ。私も食べたことがあります」
ジッとカニを見つめるリュードにケガでもしたのかとミルトが近づいてきた。
もちろんケガをしたのではなく、どう見てもこれカニだよなとリュードは考えていたのだ。
カニなら美味しくいただけるはず。
マーマンですら食べられたのだ、見た目に巨大なカニであるだけならなんの抵抗もない。
「もらってもいいか?」
リュードはナガーシャに視線を向ける。
一応城の中でのことなので尋ねてみる。
「私たちは食事を必要としませんし、全て片付いたら外に捨てるだけなのでお好きにどうぞ」
デカいのでどうするか悩んだけど、足を紐で縛って小さく丸め、魔法で凍らせてマジックボックスの袋に突っ込んでおいた。
今日のお昼にでもしようと思う。
その後もマーマンやリザードマンの姿はなくなり、イナデニカがちょいちょい出てくるようになった。
そんなに数がいっぺんに出てこないので冒険者数人でしっかりと相手すれば危険はなかった。
倒したカニも何杯かはリュードが持ち帰ることになったが流石に全部は無理であった。
「今度はホタテか?」
「ホタテ? そういった呼び方をしているところもあるのでしょうか? あれはラシバイカです」
カニを倒してさらに進んでいくと魔物の種類が増えた。
「気をつけてください。イナデニカよりも硬くて魔法を使ってきますので!」
イナデニカの時もそうだけど、よく知ってんなとリュードはナガーシャの解説に感心する。
カニの後ろには大きな二枚貝が見えた。
リュードにとってはそれはホタテに見えるが、大きさはカニ同様にデカい。
主に床に転がっているものもいれば、天井に張り付いているホタテもいる。
「くるよ!」
カニが突っ込んでくる。
そしてその後ろからホタテが出した水の玉が飛んでくる。
「水の玉には死ぬほどの殺傷力はありませんが、衝撃はあって直撃すると大きく吹き飛ばされてダメージはあるので気をつけてください!」
冒険者の一人が水の玉にやられて吹き飛ぶ。
「だいじょぶ?」
「あ、ああ、大丈夫! むしろコユキちゃんのおかげで元気になったよ!」
やられた冒険者はみんなのフォローとコユキの素早い治療にむしろ興奮気味に復活した。
ホタテは水の魔法を行使してくる。
素早いカニの動きと上手くタッグを組んでくると思いの外面倒だ。
カニに関しては水の玉が当たっても構わないようで、射線が被ろうが迫ってくる。
水属性に対する耐性が高いが故の、無茶苦茶なやり方である。
しかし水の玉の軌道は直線的で回避は難しくない。
注意すべきことが1つ増えただけなのでそんなに怖くない。
リュードなんかは上手くタイミングを合わせてカニにホタテの水の玉が当たるように立ち回ってすらいた。
「ちょ……ずっこくない!?」
まずは前にいるカニから片付けた。
そしてお次はホタテをと思ったのだけど、カニを全て倒されてしまったホタテはパタンと貝を閉じてこもってしまった。
戦いの時は開いてそこから魔法を放っていたのに、近づいた途端にこれである。
ラストが剣でつついてみるけれどびくともしない。
ルフォンが魔力を込めたナイフを突き立ててもわずかに傷をつけたのみに終わってしまう。
リュードの全力ならいけるかもしれないけど、ホタテ一枚一枚に魔力を使って本気で切り裂いていくのも非効率的で無駄になる。
無視していくのも方法の一つであるものの、後ろに不安を抱えて進むのも良くはない。
ガラスの向こうには水が満ちていて、魚が泳いでいるのが見える。
平時なら綺麗な場所に思えるだろうが、今はそんなこと楽しんでいられない。
コユキは楽しそうだけど。
「カニ……?」
「イナデニカですね。外骨格が硬く両の爪は人の体ぐらい簡単に切断してしまいますので気をつけてください。結構素早いので油断なさらないように」
進んでいって現れた魔物はカニだった。
リュードの腰ぐらいまでの高さがあり胴体も容易く挟んでしまえそうな爪のハサミを持っている。
「前に走んのかよ!」
カニだし横向きに、と思っていたら普通に前に走ってきた。
そのまま前にいたリュードを爪で挟み込もうとする。
リュードは後ろに下がって爪をかわして、剣を振り下ろす。
魔力を込めない剣では表面に軽く傷をつける程度で通らない。
「硬いな!」
今度は爪で殴りつけてくるのを飛び上がって回避する。
「うりゃ!」
こちらもと剣に魔力を込めて突き出す。
剣先がカニの甲羅を突き破る。
刺した場所が悪くて大きなダメージにもならなかったが一定以上の強さがあれば攻撃は通りそうである。
「終わりだ!」
両側から挟み込もうと迫る両手の爪。
リュードはあえてさらに一歩踏み込んで、襲いくる爪より早くカニの懐に入り込んだ。
剣先に魔力を集中させてカニの口をめがけて思い切り剣を突き出す。
反対側の甲羅から剣が突き出てきてカニの体がビクンビクンと震える。
「いっちょ上がり!」
カニに足を当てて押すようにしながら剣を抜く。
そのまま後ろに倒れてカニは動かなくなってしまった。
「爪での攻撃がメイン。挟んだり叩きつけてきたりする接近物理攻撃タイプだな」
試しちゃいないが切断力は高いだろうから要注意だろうと思う。
あとはやや硬いこととやや速いことが特徴で、今のところ苦労する要素は少ない。
「なあ、これってもしかして……美味い?」
「あら、よくご存知ですね? 町に近いステュルス川だとあまり見かけませんが、ずっと下流域ではこのイナデニカが現れるそうです。味はとても美味しいですよ。私も食べたことがあります」
ジッとカニを見つめるリュードにケガでもしたのかとミルトが近づいてきた。
もちろんケガをしたのではなく、どう見てもこれカニだよなとリュードは考えていたのだ。
カニなら美味しくいただけるはず。
マーマンですら食べられたのだ、見た目に巨大なカニであるだけならなんの抵抗もない。
「もらってもいいか?」
リュードはナガーシャに視線を向ける。
一応城の中でのことなので尋ねてみる。
「私たちは食事を必要としませんし、全て片付いたら外に捨てるだけなのでお好きにどうぞ」
デカいのでどうするか悩んだけど、足を紐で縛って小さく丸め、魔法で凍らせてマジックボックスの袋に突っ込んでおいた。
今日のお昼にでもしようと思う。
その後もマーマンやリザードマンの姿はなくなり、イナデニカがちょいちょい出てくるようになった。
そんなに数がいっぺんに出てこないので冒険者数人でしっかりと相手すれば危険はなかった。
倒したカニも何杯かはリュードが持ち帰ることになったが流石に全部は無理であった。
「今度はホタテか?」
「ホタテ? そういった呼び方をしているところもあるのでしょうか? あれはラシバイカです」
カニを倒してさらに進んでいくと魔物の種類が増えた。
「気をつけてください。イナデニカよりも硬くて魔法を使ってきますので!」
イナデニカの時もそうだけど、よく知ってんなとリュードはナガーシャの解説に感心する。
カニの後ろには大きな二枚貝が見えた。
リュードにとってはそれはホタテに見えるが、大きさはカニ同様にデカい。
主に床に転がっているものもいれば、天井に張り付いているホタテもいる。
「くるよ!」
カニが突っ込んでくる。
そしてその後ろからホタテが出した水の玉が飛んでくる。
「水の玉には死ぬほどの殺傷力はありませんが、衝撃はあって直撃すると大きく吹き飛ばされてダメージはあるので気をつけてください!」
冒険者の一人が水の玉にやられて吹き飛ぶ。
「だいじょぶ?」
「あ、ああ、大丈夫! むしろコユキちゃんのおかげで元気になったよ!」
やられた冒険者はみんなのフォローとコユキの素早い治療にむしろ興奮気味に復活した。
ホタテは水の魔法を行使してくる。
素早いカニの動きと上手くタッグを組んでくると思いの外面倒だ。
カニに関しては水の玉が当たっても構わないようで、射線が被ろうが迫ってくる。
水属性に対する耐性が高いが故の、無茶苦茶なやり方である。
しかし水の玉の軌道は直線的で回避は難しくない。
注意すべきことが1つ増えただけなのでそんなに怖くない。
リュードなんかは上手くタイミングを合わせてカニにホタテの水の玉が当たるように立ち回ってすらいた。
「ちょ……ずっこくない!?」
まずは前にいるカニから片付けた。
そしてお次はホタテをと思ったのだけど、カニを全て倒されてしまったホタテはパタンと貝を閉じてこもってしまった。
戦いの時は開いてそこから魔法を放っていたのに、近づいた途端にこれである。
ラストが剣でつついてみるけれどびくともしない。
ルフォンが魔力を込めたナイフを突き立ててもわずかに傷をつけたのみに終わってしまう。
リュードの全力ならいけるかもしれないけど、ホタテ一枚一枚に魔力を使って本気で切り裂いていくのも非効率的で無駄になる。
無視していくのも方法の一つであるものの、後ろに不安を抱えて進むのも良くはない。


