「ま、まあともかく楽に終わったってことで終わりにしようか」
このことを深く考えてもリザードマンはもういないし、話題にされるのもリュードは嫌だった。
会話を切り上げて戦士長リザードマンが壊そうとしていた扉に近寄る。
なぜこの扉を壊して中に入ろうとしていたのだろうか。
「し、静かになった……あ、あのー、誰かいますかー? リザードマンはもういませんかー?」
戦士長リザードマンが何度も叩きつけて、ボロボロになった扉はそれでもまだ壊れ切ってはいなかった。
つまりは押しても引いても開かないわけで、どうしたらいいのかリュードも立ち尽くしていた。
すると扉の中から、恐る恐るといった女性の声が聞こえてきた。
「囚われのリザードマンの姫様だったりして」
「んな状況意味わからなすぎるだろ」
「リザードマンは実はドレスを着て化粧したメスリザードマンを助けようとしてたのかもしれないでしょ?」
「ステキな物語っぽいが、そうなると俺たち悪役になるぞ」
「リュードはねぇ、姫様を助ける王子様だよ」
「なんの会話してるにゃ」
一瞬化粧したリザードマンをイメージしてしまった。
リュードはウンディーネがいると知っているけど、ラストは知らないのでトンデモ予想を打ち立てた。
半ば冗談だけど、リザードマンが必死になって扉を壊そうとしていたことに合理的な理由を付けてみようとしたのである。
女性の声は姫様リザードマンの声で、リザードマンたちは姫様を助けようとしていた。
子供に聞かせる物語の中でならあり得そうな話だ。
リザードマンがここにいる理由の説明にはなるかもしれけれど、リザードマンの姫様がこんなところに囚われている理由が必要になる。
「まあ、そんなわけないって分かってるけど」
ラストも分かって言っているので肩をすくめてみせる。
「でも最後はリザードマンの王国で……」
「ラスト、怒るぞ?」
「ははっ、ごめーん」
リザードマンの様子なら、リュードが望めば本当にリザードマンの王になれる気がする。
少し笑えない冗談にラストはやりすぎたと笑ってごまかそうとする。
「あのー?」
「リザードマンはもういないにゃ!」
くだらない会話しているうちに、中からした声を無視する形になってしまった。
ニャロが中の声に答えると少し間があって扉がゆっくりと開き始めた。
思いの外、簡単に開いた。
「ありがとうございます!」
中から出てきたのは透き通るブルーの髪と瞳を持った女性であった。
リザードマンでなくてリュードは少しだけ安心した。
見た目は普通の女性っぽいが、まとっている雰囲気がただの人でないことを感じさせている。
彼女がウォークアの子でウンディーネなのだとリュードにはすぐに分かった。
その目はまっすぐにリュードに向けられている。
「あなた様がお話ありました神様お助け人でございますね!」
「神様……お助け?」
「はい!」
出来るならそのダッサイ呼び方やめてくれとリュードは顔をしかめた。
ラストとニャロがウンディーネの視線の先がリュードっぽいことに気づいて、二人はリュードに視線を向ける。
リュードはサッと顔を逸らして黙秘する。
知らぬ存ぜぬがこういう時は一番である。
「私、ウンディーネのナガーシャと申します。様が来てくださらなければ危ないところでした」
扉もよく持ってくれた方だとナガーシャはベコベコになった扉を見る。
あともうちょっとリュードたちの到着が遅れていたら、扉は破壊されてリザードマンが中に雪崩れ込んできたことだろう。
「う、ウンディーネということは水の上級精霊ですか? まさか水の神ウォークア様と御関係が?」
ミルトが少し頬を高揚させてながら前に出る。
知性があって、人の言葉を話して、人に友好的な水の上級精霊が水の神の聖域と呼ばれているところにいる。
ナガーシャが何に関わっているのかは一目瞭然。
「そうです。私はウォークア様にお仕えしております精霊です」
「お一つ聞かせてください!」
「なんでしょうか?」
「ここは一体なんですか、その、どんな場所というか……」
ここまでずっと抱えてきた疑問。
ただの魔物の巣ではないという明確な答えがミルトは欲しかった。
「ちゃんと説明はいたします。とりあえず中に。ここはリザードマンの死体が転がっているので……」
リザードマンたちは仲間の死体も回収しなかった。
だから扉前にはリザードマンの死体がそのままに転がっている。
視界の端にデロリと舌を出して倒れているリザードマンが映っているのは精神衛生上良くない。
ナガーシャのお招きを受けて扉の中に入る。
「なにこれ〜」
「カッコいい!」
入ってみると意外と広い部屋になっている。
壁の一部がなくて外が見えている。
その外に向かってドラゴンの頭のような巨大な石像が置いてあった。
大きく開かれた口からは水が噴き出していて外に流れ出ている。
あれが城の外に飛び出している水の正体だったのかとリュードは納得した。
部屋の中には他にもテーブルやイス、ベッドなども置いてあって居住空間としても成り立っている。
ナガーシャの部屋でもあるようだ。
このことを深く考えてもリザードマンはもういないし、話題にされるのもリュードは嫌だった。
会話を切り上げて戦士長リザードマンが壊そうとしていた扉に近寄る。
なぜこの扉を壊して中に入ろうとしていたのだろうか。
「し、静かになった……あ、あのー、誰かいますかー? リザードマンはもういませんかー?」
戦士長リザードマンが何度も叩きつけて、ボロボロになった扉はそれでもまだ壊れ切ってはいなかった。
つまりは押しても引いても開かないわけで、どうしたらいいのかリュードも立ち尽くしていた。
すると扉の中から、恐る恐るといった女性の声が聞こえてきた。
「囚われのリザードマンの姫様だったりして」
「んな状況意味わからなすぎるだろ」
「リザードマンは実はドレスを着て化粧したメスリザードマンを助けようとしてたのかもしれないでしょ?」
「ステキな物語っぽいが、そうなると俺たち悪役になるぞ」
「リュードはねぇ、姫様を助ける王子様だよ」
「なんの会話してるにゃ」
一瞬化粧したリザードマンをイメージしてしまった。
リュードはウンディーネがいると知っているけど、ラストは知らないのでトンデモ予想を打ち立てた。
半ば冗談だけど、リザードマンが必死になって扉を壊そうとしていたことに合理的な理由を付けてみようとしたのである。
女性の声は姫様リザードマンの声で、リザードマンたちは姫様を助けようとしていた。
子供に聞かせる物語の中でならあり得そうな話だ。
リザードマンがここにいる理由の説明にはなるかもしれけれど、リザードマンの姫様がこんなところに囚われている理由が必要になる。
「まあ、そんなわけないって分かってるけど」
ラストも分かって言っているので肩をすくめてみせる。
「でも最後はリザードマンの王国で……」
「ラスト、怒るぞ?」
「ははっ、ごめーん」
リザードマンの様子なら、リュードが望めば本当にリザードマンの王になれる気がする。
少し笑えない冗談にラストはやりすぎたと笑ってごまかそうとする。
「あのー?」
「リザードマンはもういないにゃ!」
くだらない会話しているうちに、中からした声を無視する形になってしまった。
ニャロが中の声に答えると少し間があって扉がゆっくりと開き始めた。
思いの外、簡単に開いた。
「ありがとうございます!」
中から出てきたのは透き通るブルーの髪と瞳を持った女性であった。
リザードマンでなくてリュードは少しだけ安心した。
見た目は普通の女性っぽいが、まとっている雰囲気がただの人でないことを感じさせている。
彼女がウォークアの子でウンディーネなのだとリュードにはすぐに分かった。
その目はまっすぐにリュードに向けられている。
「あなた様がお話ありました神様お助け人でございますね!」
「神様……お助け?」
「はい!」
出来るならそのダッサイ呼び方やめてくれとリュードは顔をしかめた。
ラストとニャロがウンディーネの視線の先がリュードっぽいことに気づいて、二人はリュードに視線を向ける。
リュードはサッと顔を逸らして黙秘する。
知らぬ存ぜぬがこういう時は一番である。
「私、ウンディーネのナガーシャと申します。様が来てくださらなければ危ないところでした」
扉もよく持ってくれた方だとナガーシャはベコベコになった扉を見る。
あともうちょっとリュードたちの到着が遅れていたら、扉は破壊されてリザードマンが中に雪崩れ込んできたことだろう。
「う、ウンディーネということは水の上級精霊ですか? まさか水の神ウォークア様と御関係が?」
ミルトが少し頬を高揚させてながら前に出る。
知性があって、人の言葉を話して、人に友好的な水の上級精霊が水の神の聖域と呼ばれているところにいる。
ナガーシャが何に関わっているのかは一目瞭然。
「そうです。私はウォークア様にお仕えしております精霊です」
「お一つ聞かせてください!」
「なんでしょうか?」
「ここは一体なんですか、その、どんな場所というか……」
ここまでずっと抱えてきた疑問。
ただの魔物の巣ではないという明確な答えがミルトは欲しかった。
「ちゃんと説明はいたします。とりあえず中に。ここはリザードマンの死体が転がっているので……」
リザードマンたちは仲間の死体も回収しなかった。
だから扉前にはリザードマンの死体がそのままに転がっている。
視界の端にデロリと舌を出して倒れているリザードマンが映っているのは精神衛生上良くない。
ナガーシャのお招きを受けて扉の中に入る。
「なにこれ〜」
「カッコいい!」
入ってみると意外と広い部屋になっている。
壁の一部がなくて外が見えている。
その外に向かってドラゴンの頭のような巨大な石像が置いてあった。
大きく開かれた口からは水が噴き出していて外に流れ出ている。
あれが城の外に飛び出している水の正体だったのかとリュードは納得した。
部屋の中には他にもテーブルやイス、ベッドなども置いてあって居住空間としても成り立っている。
ナガーシャの部屋でもあるようだ。


