城に入ってすぐのところではあるけど、一晩過ごしても魔物に襲われることはなかった。
「なんだが慣れちゃったね」
「美味けりゃなんでもいいもんな」
朝もいただくのはマーマン料理だった。
一回食べれば諦めというか、抵抗も少なくなる。
味は良いから元の姿をあまり思い描かなきゃ、そんなに食べられないものじゃない。
「さてと……どうするか、だな」
朝の間に少し議論があった。
このまま進むべきか、戻るべきか。
あくまで今回の目的は調査であり、これ以上進めば調査に留まらないことになる。
けれど、ここまで来て帰るのも中途半端である。
聖域とされる場所にあるお城に足を踏み込んだので、水神信仰の人が怖気付いてしまっていることも理由である。
どうすべきなのか意見が分かれている。
「行く。やる」
「まあコユキちゃんが行くなら……」
「コユキちゃんを置いていけないな」
最終的には鶴の一声ならぬコユキの一声だった。
リュードが行くならコユキも行く。
そしてコユキが行くならコユキを守るためにみんなも行く。
なぜかそんな流れになってしまった。
「コユキ教にゃ」
戻るにしても進むにしても決定的なものはなかった。
だから何かに押してほしいところのコユキの一言に乗っかった形でもある。
下手するとウォークアより信仰を集めているんじゃないかと思える傾き方ではあった。
「このまま調査を続けます。気をつけて進みましょう」
調査を続けることになったので、本格的に城の中を捜索していく。
ウォークアの話によると、今現在この城にはウォークアの配下であるウンディーネとウォークアに敵対する神の勢力の配下がいるはずである。
ウンディーネとは上級の水の精霊だ。
味方になってくれたらありがたい。
「正門、ここを北として南西の方向に進みましょう」
さて城の中を調査することにはしたが、今のところなんの足がかりもない。
闇雲に歩き回るのも危険が伴うし、時間がかかる。
城を隅々まで歩いて回るにしてもどこから行くべきかの指針が欲しいとみんな悩んでいた。
そこでリュードの提案。
見たところ城は四角く作られている。
入ってきた正門を北ととりあえず決めて動く。
「なんでそこを目指すの?」
ルフォンがリュードの意図がわからなくて首を傾げる。
その場にいる誰もリュードが南西という中途半端なところに行こうと提案した理由を分かっていない。
「外から見た時に1番強く水が噴き出していたところだったからだよ」
リュードとてウォークアから何も聞かされていないので手かがりはない。
ほんの少しの違いから、とりあえずそこが1番可能性がありそうだとリュードら思ったのだ。
その違いとは城から噴き出る水である。
ミルトによると、城からはもっと水が出ていたという。
つまり水が勢いよく噴き出ているのが通常であり、それに1番近い状態のところが1番異常が少ない場所なのではないかと推測した。
それにリュードの持つ情報を掛け合わせると、ウンディーネがいる場所の可能性がある。
「正常に近いなら異常が少なく危険も低いはずだ。どうせ他に判断の材料もないのだから試しにどうだ」
「悪くない考えだと思います」
ミルトもうなずく。
この状況では最もらしい考えだ。
同じく城の様子を見たはずなのに、そのような考えに思い至らない自分が恥ずかしく思える。
外から見た時の水の量の違いと聞いて他の人も納得する。
行動する理由としても一定の説得力があった。
他に提案できる考えもないので、リュードの提案通りのところに向かってみる。
「なんだかダンジョンみたいな雰囲気あるね」
床や壁はうっすら濡れていて、中の作りも普通の城というにはかなり巨大になっている。
人が住んでいるような気配はないのに、痛んだ様子もなく綺麗な城の中は不思議な雰囲気があった。
窓はなく光が入ってこないが、天井には魔力で光る魔光石が埋め込まれていて明るく視界の確保には困らない。
一般の城でこんなに魔光石を埋め込もうと思ったら莫大な費用がかかる。
それに城全体に漂う雰囲気はどこかで感じたこともある。
「これって……あれかな?」
「まあこんなところにこんな城建てる物好きはいないからあながちそうなのかもな」
ダンジョン城。
ここはダンジョンなのではないかという印象をリュードもルフォンも感じていた。
そんなことあり得ない、なんて言葉を吐ける場合の方がこの世界においては少ない。
どんなにあり得なさそうな出来事や事象であっても、この世界では起こり得る可能性がある。
常識に囚われて考えると痛い目見ることもあるのだ。
この場所には神様が関わっている。
そうなってくると摩訶不思議なことが起こり得る可能性が高まるので、荒唐無稽な考えのような見えても否定し切れたものじゃない。
神様が神の力で作ったとか、実は元ダンジョンだったとか可能性はいくらでもある。
途中で現れるマーマンを倒しながら先に進む。
ただ普通の場所ではない。
聖域候補になるぐらいなので、当然といえば当然の話なのである。
「なんだが慣れちゃったね」
「美味けりゃなんでもいいもんな」
朝もいただくのはマーマン料理だった。
一回食べれば諦めというか、抵抗も少なくなる。
味は良いから元の姿をあまり思い描かなきゃ、そんなに食べられないものじゃない。
「さてと……どうするか、だな」
朝の間に少し議論があった。
このまま進むべきか、戻るべきか。
あくまで今回の目的は調査であり、これ以上進めば調査に留まらないことになる。
けれど、ここまで来て帰るのも中途半端である。
聖域とされる場所にあるお城に足を踏み込んだので、水神信仰の人が怖気付いてしまっていることも理由である。
どうすべきなのか意見が分かれている。
「行く。やる」
「まあコユキちゃんが行くなら……」
「コユキちゃんを置いていけないな」
最終的には鶴の一声ならぬコユキの一声だった。
リュードが行くならコユキも行く。
そしてコユキが行くならコユキを守るためにみんなも行く。
なぜかそんな流れになってしまった。
「コユキ教にゃ」
戻るにしても進むにしても決定的なものはなかった。
だから何かに押してほしいところのコユキの一言に乗っかった形でもある。
下手するとウォークアより信仰を集めているんじゃないかと思える傾き方ではあった。
「このまま調査を続けます。気をつけて進みましょう」
調査を続けることになったので、本格的に城の中を捜索していく。
ウォークアの話によると、今現在この城にはウォークアの配下であるウンディーネとウォークアに敵対する神の勢力の配下がいるはずである。
ウンディーネとは上級の水の精霊だ。
味方になってくれたらありがたい。
「正門、ここを北として南西の方向に進みましょう」
さて城の中を調査することにはしたが、今のところなんの足がかりもない。
闇雲に歩き回るのも危険が伴うし、時間がかかる。
城を隅々まで歩いて回るにしてもどこから行くべきかの指針が欲しいとみんな悩んでいた。
そこでリュードの提案。
見たところ城は四角く作られている。
入ってきた正門を北ととりあえず決めて動く。
「なんでそこを目指すの?」
ルフォンがリュードの意図がわからなくて首を傾げる。
その場にいる誰もリュードが南西という中途半端なところに行こうと提案した理由を分かっていない。
「外から見た時に1番強く水が噴き出していたところだったからだよ」
リュードとてウォークアから何も聞かされていないので手かがりはない。
ほんの少しの違いから、とりあえずそこが1番可能性がありそうだとリュードら思ったのだ。
その違いとは城から噴き出る水である。
ミルトによると、城からはもっと水が出ていたという。
つまり水が勢いよく噴き出ているのが通常であり、それに1番近い状態のところが1番異常が少ない場所なのではないかと推測した。
それにリュードの持つ情報を掛け合わせると、ウンディーネがいる場所の可能性がある。
「正常に近いなら異常が少なく危険も低いはずだ。どうせ他に判断の材料もないのだから試しにどうだ」
「悪くない考えだと思います」
ミルトもうなずく。
この状況では最もらしい考えだ。
同じく城の様子を見たはずなのに、そのような考えに思い至らない自分が恥ずかしく思える。
外から見た時の水の量の違いと聞いて他の人も納得する。
行動する理由としても一定の説得力があった。
他に提案できる考えもないので、リュードの提案通りのところに向かってみる。
「なんだかダンジョンみたいな雰囲気あるね」
床や壁はうっすら濡れていて、中の作りも普通の城というにはかなり巨大になっている。
人が住んでいるような気配はないのに、痛んだ様子もなく綺麗な城の中は不思議な雰囲気があった。
窓はなく光が入ってこないが、天井には魔力で光る魔光石が埋め込まれていて明るく視界の確保には困らない。
一般の城でこんなに魔光石を埋め込もうと思ったら莫大な費用がかかる。
それに城全体に漂う雰囲気はどこかで感じたこともある。
「これって……あれかな?」
「まあこんなところにこんな城建てる物好きはいないからあながちそうなのかもな」
ダンジョン城。
ここはダンジョンなのではないかという印象をリュードもルフォンも感じていた。
そんなことあり得ない、なんて言葉を吐ける場合の方がこの世界においては少ない。
どんなにあり得なさそうな出来事や事象であっても、この世界では起こり得る可能性がある。
常識に囚われて考えると痛い目見ることもあるのだ。
この場所には神様が関わっている。
そうなってくると摩訶不思議なことが起こり得る可能性が高まるので、荒唐無稽な考えのような見えても否定し切れたものじゃない。
神様が神の力で作ったとか、実は元ダンジョンだったとか可能性はいくらでもある。
途中で現れるマーマンを倒しながら先に進む。
ただ普通の場所ではない。
聖域候補になるぐらいなので、当然といえば当然の話なのである。


