「お願いって?」
「水の未来と私の子どもたちをお救いください」
「水の未来? それに子どもって」
今現在のリュードはコユキのために、子どもと聞くとちょっと弱い。
面倒なら断るつもりもあったが、一気に断りにくくなった。
「リュード様がいらっしゃいますあの城は、ノーヴィスヴォルガンと言いまして私の領域なのです」
「の……」
あまりに長くて城の名前を一回で聞き取りきれない。
「ノーヴィスヴォルガンです。まあそこはどうでもよくて、大切なことはあそこは私の力を受けて世界に水を生み出す役割を担っているのです」
だから水が城から噴き出していたのかと納得してしまう。
「じゃあ聖域って呼ばれているのもあながち間違いじゃないのか」
「そうですね。ちょっと世界に魔力が足りず私の力も弱かった影響で正式に聖域にはなっていないのですが、そうしたいとは思っています。そして水を生み出しているのですが、私が直接中世界に行って管理もできず、私の子、つまりは私の代わりに管理してくれている子たちがいるのです」
子と表現したものの、実際には子供ではない。
子供にも近しい存在ではあるが、正確にいうのなら部下のようなものである。
「困っている原因は?」
「ご存知かと思いますが、今あそこでは異常が起きています」
「水が少ないとかそういうことか?」
「はいそうです。本来あそこには魔物は寄り付かないようになっているのですが……不覚にも魔物にも侵入されてしまいました」
「なんでそんなことに?」
「私はいわゆる水の神ですが他にも水の神はいます。水の神々の中でも信仰が多いことから、私は水の主神として崇められています。主神として崇められれば神としての格もかなり上がるのです」
「だから主神の座を狙って?」
ウォークアはうなずく。
「主神の座を狙っている神というのはいつの時代でもいます。どこの神かは分かりませんが、今回のことも水に関わる神の仕業です」
神々の争い。
ただそこに存在しても、ただ崇められるほど神様だって甘くない。
神は神である努力も必要である。
主神と呼ばれる分野の代表の神様みたいなものが存在している。
当然代表となればその分野における信仰を集められ、大きな力を得られるのである。
過去には主神と呼ばれるその分野のトップの神が入れ替わったり、主神の座をかけて争ったこともある。
神の世界だけでなく、人の世界でも神々の争いが元になった戦いや戦争が起きたこともあるのだ。
雷なんかは大きく種類もないので神様もたくさんおらず、ほとんど一枚岩と変わりない。
けれど水や火なんかは信仰者も多くて種類も多い。
今回のことは水の主神の座が欲しい他の水の神様がウォークアの信用を落とそうとしている侵略行為であった。
「嵐になるとどうしても川が荒れたりします。その時に水の生産をそのままにすると川が氾濫してしまいます。だから水の量を絞ったりして調整するのですがこれも大変な作業なんです」
どうして侵入を許したのか。
それはかなり激しい嵐のせいだった。
「今季の嵐は特に激しく長く続きました。私の子たちも頑張ってくれていたのですが、その隙をつかれてしまいました」
「相手の神が魔物を送り込んできたのか?」
「魔物にも信仰するという行為をするものもいますし、中には魔物に関わる神もいます」
神も人のものだけではない。
知恵のある魔物が神を信仰していることもあるし、人が魔物と関連づけて神を信仰していることもある。
魔物が城にいたので魔物も関わる水の神だとは予想はできる。
「ノーヴィスヴォルガンにいる私の子であるのはウンディーネなのですが、今どうなっているのかの確認もできていません。神である私が直接介入することもできないので、神託を下して教会の聖騎士を動かすか、誰かが解決するのを待つしかないのです」
「それなら教会の聖騎士に頼んだ方がいいんじゃないのか? なんか問題でもあるのか?」
神の問題はそっちで解決してくれとリュードは思う。
「もちろん私の子であるウンディーネたちが危険であるという問題もありますが、人の方にも問題が生じる可能性があります」
「どんな問題だよ?」
「仮にこのままノーヴィスヴォルガンが落とされると支配者が変わることになります。仮にそれで上手くいくならそれはそれでいいのですが、問題は上手くいかなかった時です」
「上手くいくってなんの話だ?」
「ノーヴィスヴォルガンの機能維持です。あのお城が水を生み出しているのですけれど、それだって誰でも簡単にできることじゃありません。支配者が変わって上手く水が生み出せなかったらどうなるのかはお分かりになられますよね?」
「……そうだな」
城が水を生み出せなくなったら川は枯れる。
単純に川が枯れるだけじゃない。
水がなくなることは河川域全ての都市に影響を及ぼす。
川の魚が取れなくなり水が得られず、飲料水や農業に悪影響が出る。
ヴァネルアで考えると都市の交通を担う水路が使えなくなる。
川の先には海がある。
どこまで影響が出るのかまで想像は及ばないが、甚大な被害が出ることだけは想像できた。
「ですので教会の関係者に神託を下して騎士団を動かしてもらうのも悪くないのですけどそうなると少し時間がかかりますので……」
「もういい」
再び大きくため息をついたリュード。
結局のところ拒否権なんてあってないようなもの。
そんな被害が出る可能性があると聞かされて、ほっとくリュードではない。
もしかしたら話を聞くと言った時点で腹は決まっていたのかもしれない。
「どうすればいい? 魔物を倒していけばいいのか?」
「お引き受けいただけるんですね!」
ウォークアの顔が明るくなる。
神様がお願いしてくるということは重大案件だ。
自慢じゃないが、それを解決できるだけの能力は備えていると自負している。
なんだかんだと頼られるのも嫌いじゃないし自分に出来ることならやってみよう。
「水の未来と私の子どもたちをお救いください」
「水の未来? それに子どもって」
今現在のリュードはコユキのために、子どもと聞くとちょっと弱い。
面倒なら断るつもりもあったが、一気に断りにくくなった。
「リュード様がいらっしゃいますあの城は、ノーヴィスヴォルガンと言いまして私の領域なのです」
「の……」
あまりに長くて城の名前を一回で聞き取りきれない。
「ノーヴィスヴォルガンです。まあそこはどうでもよくて、大切なことはあそこは私の力を受けて世界に水を生み出す役割を担っているのです」
だから水が城から噴き出していたのかと納得してしまう。
「じゃあ聖域って呼ばれているのもあながち間違いじゃないのか」
「そうですね。ちょっと世界に魔力が足りず私の力も弱かった影響で正式に聖域にはなっていないのですが、そうしたいとは思っています。そして水を生み出しているのですが、私が直接中世界に行って管理もできず、私の子、つまりは私の代わりに管理してくれている子たちがいるのです」
子と表現したものの、実際には子供ではない。
子供にも近しい存在ではあるが、正確にいうのなら部下のようなものである。
「困っている原因は?」
「ご存知かと思いますが、今あそこでは異常が起きています」
「水が少ないとかそういうことか?」
「はいそうです。本来あそこには魔物は寄り付かないようになっているのですが……不覚にも魔物にも侵入されてしまいました」
「なんでそんなことに?」
「私はいわゆる水の神ですが他にも水の神はいます。水の神々の中でも信仰が多いことから、私は水の主神として崇められています。主神として崇められれば神としての格もかなり上がるのです」
「だから主神の座を狙って?」
ウォークアはうなずく。
「主神の座を狙っている神というのはいつの時代でもいます。どこの神かは分かりませんが、今回のことも水に関わる神の仕業です」
神々の争い。
ただそこに存在しても、ただ崇められるほど神様だって甘くない。
神は神である努力も必要である。
主神と呼ばれる分野の代表の神様みたいなものが存在している。
当然代表となればその分野における信仰を集められ、大きな力を得られるのである。
過去には主神と呼ばれるその分野のトップの神が入れ替わったり、主神の座をかけて争ったこともある。
神の世界だけでなく、人の世界でも神々の争いが元になった戦いや戦争が起きたこともあるのだ。
雷なんかは大きく種類もないので神様もたくさんおらず、ほとんど一枚岩と変わりない。
けれど水や火なんかは信仰者も多くて種類も多い。
今回のことは水の主神の座が欲しい他の水の神様がウォークアの信用を落とそうとしている侵略行為であった。
「嵐になるとどうしても川が荒れたりします。その時に水の生産をそのままにすると川が氾濫してしまいます。だから水の量を絞ったりして調整するのですがこれも大変な作業なんです」
どうして侵入を許したのか。
それはかなり激しい嵐のせいだった。
「今季の嵐は特に激しく長く続きました。私の子たちも頑張ってくれていたのですが、その隙をつかれてしまいました」
「相手の神が魔物を送り込んできたのか?」
「魔物にも信仰するという行為をするものもいますし、中には魔物に関わる神もいます」
神も人のものだけではない。
知恵のある魔物が神を信仰していることもあるし、人が魔物と関連づけて神を信仰していることもある。
魔物が城にいたので魔物も関わる水の神だとは予想はできる。
「ノーヴィスヴォルガンにいる私の子であるのはウンディーネなのですが、今どうなっているのかの確認もできていません。神である私が直接介入することもできないので、神託を下して教会の聖騎士を動かすか、誰かが解決するのを待つしかないのです」
「それなら教会の聖騎士に頼んだ方がいいんじゃないのか? なんか問題でもあるのか?」
神の問題はそっちで解決してくれとリュードは思う。
「もちろん私の子であるウンディーネたちが危険であるという問題もありますが、人の方にも問題が生じる可能性があります」
「どんな問題だよ?」
「仮にこのままノーヴィスヴォルガンが落とされると支配者が変わることになります。仮にそれで上手くいくならそれはそれでいいのですが、問題は上手くいかなかった時です」
「上手くいくってなんの話だ?」
「ノーヴィスヴォルガンの機能維持です。あのお城が水を生み出しているのですけれど、それだって誰でも簡単にできることじゃありません。支配者が変わって上手く水が生み出せなかったらどうなるのかはお分かりになられますよね?」
「……そうだな」
城が水を生み出せなくなったら川は枯れる。
単純に川が枯れるだけじゃない。
水がなくなることは河川域全ての都市に影響を及ぼす。
川の魚が取れなくなり水が得られず、飲料水や農業に悪影響が出る。
ヴァネルアで考えると都市の交通を担う水路が使えなくなる。
川の先には海がある。
どこまで影響が出るのかまで想像は及ばないが、甚大な被害が出ることだけは想像できた。
「ですので教会の関係者に神託を下して騎士団を動かしてもらうのも悪くないのですけどそうなると少し時間がかかりますので……」
「もういい」
再び大きくため息をついたリュード。
結局のところ拒否権なんてあってないようなもの。
そんな被害が出る可能性があると聞かされて、ほっとくリュードではない。
もしかしたら話を聞くと言った時点で腹は決まっていたのかもしれない。
「どうすればいい? 魔物を倒していけばいいのか?」
「お引き受けいただけるんですね!」
ウォークアの顔が明るくなる。
神様がお願いしてくるということは重大案件だ。
自慢じゃないが、それを解決できるだけの能力は備えていると自負している。
なんだかんだと頼られるのも嫌いじゃないし自分に出来ることならやってみよう。


