「大丈夫ですか?」
リュードはどうしても気になったのでミルトに声をかけた。
青い顔をしていて元気がない。
「大丈夫です……」
ゆっくりと首を振るミルトは、大丈夫そうに見えない。
ミルトの顔色が悪い原因はマーマンを食べたくないからではない。
この城のせいである。
これまでは神のおわす場所、聖域だと言われてきたのに蓋を開けてみると魔物がいた。
しかもマーマンという低級の魔物。
異常が起きていて一時的に魔物がいるだけなのか、それとも元より魔物の巣だったのか。
魔物の棲家を聖域なんて言って大事にしていたなんてことは笑い話ではない。
だからミルトの顔は青くなっているのだ。
どう報告すべきとか教会の対応とかで頭がいっぱいになっているのだった。
「はぁ……」
「まだ決まったわけじゃないだろ?」
「そうかもしれませんが……」
人のいない巨大な城は魔物の棲家となっていてもおかしくない場所だけど、そうだと説明のつかないことがいくつもある。
魔物の棲家から綺麗な水が出ていることだったり、城そのものが綺麗に保たれている理由など単なる魔物の棲家としちゃ不思議な場所すぎる。
ただ魔物の棲家ではない、まだ解き明かされていない秘密がある。
リュードの励ましにミルトは弱々しくうなずいた。
ただの魔物の巣窟である可能性も否定できるものではないが、不安や心配を抱えても疲れてしまうだけである。
悩むのは調査してからでも遅くはない。
リュードはポンとミルトの肩を叩くと自分のテントに入る。
見張りは比較的後の番なのでリュードは早めに寝ておくことにした。
ーーーーー
「おい、ケーフィス!」
「神様のことを呼び捨てにして、おいだなんて君ぐらいだよ、そんな風に言うの」
「なら人の安眠妨害すんじゃねえよ! 見張りあるから少ししか寝らんないんだぞ! ここに来ると寝た気がしないんだよ……」
「ここに来て僕たちと言葉を交わすことに全財産投げ打ってもいい人だってたくさんいるぐらいなのにねぇ。こりゃまた随分な言いようだ」
「俺はそこに価値を見出していないんでね。神様なんだろ? 安眠妨害しない呼び出し方を作ってくれよ」
「まあ努力はしてみるよ。君たちの世界にあった電話があればね、便利そうなんだけどね。いきなりこの世界に電話なんて持ち出すことはできないから」
大袈裟に肩をくすめてみせるケーフィスがリュードの目の前にいる。
眠ったリュードは例によって、神様の世界に呼び出されていた。
ここはいる時は実家のような安心感があって安らぐのだけど、いざ目を覚まして起きてみるとなぜなのか眠った気がしなくてぐったりしてしまう。
今回も日本家屋風の場所にいた。
縁側っぽくて砂利を敷き詰めた枯山水の庭に、鹿威しのある池まで完備されている。
なんか来るたびに日本家屋が完成していっている気がする。
「んで呼ばれたのはあの人……神様のせいか?」
「うん。彼女はウォークア。なんかやっぱり僕と君との繋がりはそれなりに強いみたいで僕が君を呼ぶのが一番浪費が少ないんだ。それに彼女がいきなり呼んだら警戒するだろうし…………それに彼女の領域の部屋、汚いんだ」
声を抑えてこっそりと教えてくれるケーフィス。
「きた……」
「シー! 僕が言ったって知れたら怒られるから!」
ケーフィスだけではなく、チラチラとリュードの方を見ながら縁側でお茶を飲んでいる青い髪の女性もそばにいる。
夢で土下座していたのに似ているなとリュードは思った。
いかにも清楚で綺麗な女性だけど、ケーフィスによると部屋が汚いらしい。
リュードは大切なお客様である。
ケーフィスとしてはそんなリュードを汚部屋に呼ぶわけにはいかないという小さな配慮。
それもあってケーフィス同伴でリュードは、ケーフィスのところに呼び出されたのである。
「神の友、神のお助け人リュード様ですね? 私、水の神ウォークアと申します」
縁側から足を上げてサッと正座するウォークアは顔だけ見ると非常に綺麗な容姿をしている。
それこそ水を思わせる。
「いやいや、神の友とか神のお助け人とかの二つ名は知らない……神のお助け人は前にも……聞いたような」
誰だそんな望まない変なあだ名付けたやつは、とリュードは険しい顔をする。
「……お前か」
テヘッと可愛くなく自分の頭をコツンとするケーフィス見て犯人が分かった。
「私は水を司る神であるウォークアと申します。どうかあなた様に助けてほしいのです!」
そしてそのまま床につくほど頭を下げる。
体勢的にはいわゆる土下座である。
「ちなみにその話俺に拒否権は……」
「あります!」
「あるんだ……」
こういう時拒否権なんてないものだけど、あるとサラッと言われてしまった。
だけど話を聞くと大体拒否するなんて出来ないことが多い。
「とりあえず話は聞くよ。だから頭を上げてくれ」
もはや安眠が妨げられたのは確定だ。
ここでウダウダしていても時間を食うだけで、まして話を聞かなければ気になって眠れなくもなる。
結局お願いの内容を聞くしかない。
「ありがとうございます!」
顔を上げたウォークアはニコニコと笑顔を浮かべている。
笑うとさらに容姿が引き立つ。
今は現実に美人が多くて、だいぶ目も肥えているリュードであっても驚くぐらいだ。
さすがは神様である。
しかし汚部屋だと聞いているので見た目だけには騙されない。
見た目はいいけど第一印象土下座であるので、あまりいいとは言い切れない。
「しかしやっぱり水の神様か」
抑えきれないため息がもれる。
リュードはどうしても気になったのでミルトに声をかけた。
青い顔をしていて元気がない。
「大丈夫です……」
ゆっくりと首を振るミルトは、大丈夫そうに見えない。
ミルトの顔色が悪い原因はマーマンを食べたくないからではない。
この城のせいである。
これまでは神のおわす場所、聖域だと言われてきたのに蓋を開けてみると魔物がいた。
しかもマーマンという低級の魔物。
異常が起きていて一時的に魔物がいるだけなのか、それとも元より魔物の巣だったのか。
魔物の棲家を聖域なんて言って大事にしていたなんてことは笑い話ではない。
だからミルトの顔は青くなっているのだ。
どう報告すべきとか教会の対応とかで頭がいっぱいになっているのだった。
「はぁ……」
「まだ決まったわけじゃないだろ?」
「そうかもしれませんが……」
人のいない巨大な城は魔物の棲家となっていてもおかしくない場所だけど、そうだと説明のつかないことがいくつもある。
魔物の棲家から綺麗な水が出ていることだったり、城そのものが綺麗に保たれている理由など単なる魔物の棲家としちゃ不思議な場所すぎる。
ただ魔物の棲家ではない、まだ解き明かされていない秘密がある。
リュードの励ましにミルトは弱々しくうなずいた。
ただの魔物の巣窟である可能性も否定できるものではないが、不安や心配を抱えても疲れてしまうだけである。
悩むのは調査してからでも遅くはない。
リュードはポンとミルトの肩を叩くと自分のテントに入る。
見張りは比較的後の番なのでリュードは早めに寝ておくことにした。
ーーーーー
「おい、ケーフィス!」
「神様のことを呼び捨てにして、おいだなんて君ぐらいだよ、そんな風に言うの」
「なら人の安眠妨害すんじゃねえよ! 見張りあるから少ししか寝らんないんだぞ! ここに来ると寝た気がしないんだよ……」
「ここに来て僕たちと言葉を交わすことに全財産投げ打ってもいい人だってたくさんいるぐらいなのにねぇ。こりゃまた随分な言いようだ」
「俺はそこに価値を見出していないんでね。神様なんだろ? 安眠妨害しない呼び出し方を作ってくれよ」
「まあ努力はしてみるよ。君たちの世界にあった電話があればね、便利そうなんだけどね。いきなりこの世界に電話なんて持ち出すことはできないから」
大袈裟に肩をくすめてみせるケーフィスがリュードの目の前にいる。
眠ったリュードは例によって、神様の世界に呼び出されていた。
ここはいる時は実家のような安心感があって安らぐのだけど、いざ目を覚まして起きてみるとなぜなのか眠った気がしなくてぐったりしてしまう。
今回も日本家屋風の場所にいた。
縁側っぽくて砂利を敷き詰めた枯山水の庭に、鹿威しのある池まで完備されている。
なんか来るたびに日本家屋が完成していっている気がする。
「んで呼ばれたのはあの人……神様のせいか?」
「うん。彼女はウォークア。なんかやっぱり僕と君との繋がりはそれなりに強いみたいで僕が君を呼ぶのが一番浪費が少ないんだ。それに彼女がいきなり呼んだら警戒するだろうし…………それに彼女の領域の部屋、汚いんだ」
声を抑えてこっそりと教えてくれるケーフィス。
「きた……」
「シー! 僕が言ったって知れたら怒られるから!」
ケーフィスだけではなく、チラチラとリュードの方を見ながら縁側でお茶を飲んでいる青い髪の女性もそばにいる。
夢で土下座していたのに似ているなとリュードは思った。
いかにも清楚で綺麗な女性だけど、ケーフィスによると部屋が汚いらしい。
リュードは大切なお客様である。
ケーフィスとしてはそんなリュードを汚部屋に呼ぶわけにはいかないという小さな配慮。
それもあってケーフィス同伴でリュードは、ケーフィスのところに呼び出されたのである。
「神の友、神のお助け人リュード様ですね? 私、水の神ウォークアと申します」
縁側から足を上げてサッと正座するウォークアは顔だけ見ると非常に綺麗な容姿をしている。
それこそ水を思わせる。
「いやいや、神の友とか神のお助け人とかの二つ名は知らない……神のお助け人は前にも……聞いたような」
誰だそんな望まない変なあだ名付けたやつは、とリュードは険しい顔をする。
「……お前か」
テヘッと可愛くなく自分の頭をコツンとするケーフィス見て犯人が分かった。
「私は水を司る神であるウォークアと申します。どうかあなた様に助けてほしいのです!」
そしてそのまま床につくほど頭を下げる。
体勢的にはいわゆる土下座である。
「ちなみにその話俺に拒否権は……」
「あります!」
「あるんだ……」
こういう時拒否権なんてないものだけど、あるとサラッと言われてしまった。
だけど話を聞くと大体拒否するなんて出来ないことが多い。
「とりあえず話は聞くよ。だから頭を上げてくれ」
もはや安眠が妨げられたのは確定だ。
ここでウダウダしていても時間を食うだけで、まして話を聞かなければ気になって眠れなくもなる。
結局お願いの内容を聞くしかない。
「ありがとうございます!」
顔を上げたウォークアはニコニコと笑顔を浮かべている。
笑うとさらに容姿が引き立つ。
今は現実に美人が多くて、だいぶ目も肥えているリュードであっても驚くぐらいだ。
さすがは神様である。
しかし汚部屋だと聞いているので見た目だけには騙されない。
見た目はいいけど第一印象土下座であるので、あまりいいとは言い切れない。
「しかしやっぱり水の神様か」
抑えきれないため息がもれる。


