「思ってたより少ないね」
「まあ……しょうがないよな」
調査に向かうことになった人数は思いの外少なかった。
この辺りの冒険者がいないとか実力不足とか臆病者だとかそんなことではない。
ヴァネルアは川が近く町中にも水路が走っている。
水と関わりが深いために、水神がよく信仰されているのである。
そのためにステュルス川は、恵みをもたらしてくれる川であり神聖な川としても見られていた。
中でも川の上流域は水神を信仰する人たちにとって聖域であると言われている。
勝手にそう言っているだけで、他の人が行くことも止めはしないがよくも思わない。
もちろん自分たちが上流域に行くこともしないのである。
ちなみに水神がケーフィス教と仲が悪いかというとそうでもない。
国や地域によってはケーフィス教と同じく聖派に並ぶこともあるのでケーフィスとは仲良し神様である。
ケーフィランドではお城の教会に水神の教会も入っている。
ただヴァネルアにおいては水神信仰の方が強くて、聖派一まとまりとまた別として水神が単独で信仰されているのである。
蒼き神と言われる女神らしくて、なんだか嫌な予感のするリュードである。
ヴァネルアにいる冒険者は大多数ヴァネルア出身の人で、程度の差はあるけれど水神信仰の人も多い。
よって聖域と言われる川の上流域に行きたがらない冒険者が多くて、調査依頼を受けないのであった。
「女の人も多いにゃ」
さらに依頼を受けたのはほとんどが女性である。
これも理由がある。
水神は不純な者を嫌い、特に男性を好ましく思わないという話がある。
だから男性が少ない。
水神信仰でない人か、水神信仰でも信仰心の弱い人で男性でない人が依頼を受けているのである。
依頼を受けたのはリュードたちを除いて10人。
そのうち男性は二人しかいない
その二人も他の国から来た人だ。
つまりは水神信仰じゃないのである。
目的は調査なので、そんなに大人数がいなくても依頼を始めることになった。
やることは単純で、川をさかのぼっていって、上流で問題が起きていないか確かめるのだ。
ということで調査のために出発した。
「子供連れて……」
「危険じゃないのか?」
最初は視線が痛かった。
その理由はコユキである。
子連れで依頼に来たものだから、周りはいい顔をしなかった。
特にリュードは女性だらけのパーティーに一人だけ男性で、ちょっと誰の子かも分かりにくい子供を連れている。
余計によくない目で見られるというのも仕方ない。
けれども周りの冷たい視線はすぐに変わった。
「みんな頑張るにゃー!」
川やその周りには魔物がいる。
川の水が減ったことで魔物が外に出てきていて、道中にも意外と魔物の姿があった。
「しょーりにゃー!」
「にゃー!」
コユキの支援はリュードたちだけでなく、全体に広くかけていた。
戦いが終われば簡単な傷はサッと治してくれるし、リュードの実力はともかくコユキがただの子供ではないことは分かったのだ。
神聖力の支援も治療も素晴らしい。
最も素晴らしいのは天真爛漫で明るい笑顔だ。
リュードやルフォンですら簡単に心を掴まれた。
女性が多い調査隊のみんなの心をコユキが掴むのも早かったのである。
実際にコユキの強化支援を受けてみればただのお下がりではないことはハッキリする。
そしてお礼を言えばニッコリと笑う。
みんなちびっ子聖者の強化を受けたくて、積極的に戦ってくれるようになった。
コユキ大人気。
「コユキちゃーん、こっちに来なーい?」
「んー、ん!」
日が落ちてきたので野営する。
リュードたちとは別にテントを張った冒険者のパーティーがコユキに手を振っている。
少し悩んだコユキはひしっとリュードに抱きついて行かない意思を表した。
「きゃー! 可愛い!」
「フッ……」
ヤレヤレと首を振るコユキ。
なぜそんなにモテモテみたいな仕草をしているんだ。
「すごいねコユキ」
「なんでラストが誇らしげにゃ?」
「私もそうだけどコユキは色んな人の心をあっという間に落としちゃうね」
コユキを抱き上げて、リュードはルフォンたちのところに戻る。
リュードに抱き上げられて、嬉しそうに笑いながら小さくバイバイと手を振るコユキのファンサービスにまた他の冒険者たちが騒ぐ。
「申し訳ございませんが一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
透き通るようなライトグリーンの髪の女性がリュードたちに近づいてきた。
ゆったりとした服を身にまとったこの女性は冒険者ではない。
名前をミルトといい、聖職者であって冒険者らしくないゆったりとした服は神官の服であった。
彼女は水神に仕える聖職者である。
調査で川の上流域に行く。
上流域は水神信仰の宗教にとって聖域となっているので、監視や神への報告や許しのために聖職者が同行することになったのだ。
ミルトは最近高位の神官になったばかりで、面倒ごとを押し付けられた。
「改めてご挨拶申し上げます。
ウォークア教の聖職者のミルトと申します」
「なんですか、聞きたいことって?」
「コユキちゃ……コホン、コユキさんは何者ですか? どちらの神様にお仕えなのでしょうか?」
「何者とは何がお聞きしたいんですか?」
なぜそんなことを聞きたがるのか理由が分からない。
「いえ、とても強い神聖力を持っておられるので気になりまして」
「コユキはケーフィス神にお仕えしておられるにゃ。今はまだ修行中の身で神官としての役職も拝命も受けていないにゃ」
「そうなんですか。ニャロさんも聖職者でらっしゃいますよね?」
ニャロがリュード代わりに答える。
コユキに所属している宗派はないけれど、ケーフィス教がコユキを保護してくれるのでケーフィス教に所属していると言ってもいい。
ケーフィスを信じているのではないが、そんな細かいことケーフィス教はこだわらない。
だからニャロが矢面に立ってくれた。
「まあ……しょうがないよな」
調査に向かうことになった人数は思いの外少なかった。
この辺りの冒険者がいないとか実力不足とか臆病者だとかそんなことではない。
ヴァネルアは川が近く町中にも水路が走っている。
水と関わりが深いために、水神がよく信仰されているのである。
そのためにステュルス川は、恵みをもたらしてくれる川であり神聖な川としても見られていた。
中でも川の上流域は水神を信仰する人たちにとって聖域であると言われている。
勝手にそう言っているだけで、他の人が行くことも止めはしないがよくも思わない。
もちろん自分たちが上流域に行くこともしないのである。
ちなみに水神がケーフィス教と仲が悪いかというとそうでもない。
国や地域によってはケーフィス教と同じく聖派に並ぶこともあるのでケーフィスとは仲良し神様である。
ケーフィランドではお城の教会に水神の教会も入っている。
ただヴァネルアにおいては水神信仰の方が強くて、聖派一まとまりとまた別として水神が単独で信仰されているのである。
蒼き神と言われる女神らしくて、なんだか嫌な予感のするリュードである。
ヴァネルアにいる冒険者は大多数ヴァネルア出身の人で、程度の差はあるけれど水神信仰の人も多い。
よって聖域と言われる川の上流域に行きたがらない冒険者が多くて、調査依頼を受けないのであった。
「女の人も多いにゃ」
さらに依頼を受けたのはほとんどが女性である。
これも理由がある。
水神は不純な者を嫌い、特に男性を好ましく思わないという話がある。
だから男性が少ない。
水神信仰でない人か、水神信仰でも信仰心の弱い人で男性でない人が依頼を受けているのである。
依頼を受けたのはリュードたちを除いて10人。
そのうち男性は二人しかいない
その二人も他の国から来た人だ。
つまりは水神信仰じゃないのである。
目的は調査なので、そんなに大人数がいなくても依頼を始めることになった。
やることは単純で、川をさかのぼっていって、上流で問題が起きていないか確かめるのだ。
ということで調査のために出発した。
「子供連れて……」
「危険じゃないのか?」
最初は視線が痛かった。
その理由はコユキである。
子連れで依頼に来たものだから、周りはいい顔をしなかった。
特にリュードは女性だらけのパーティーに一人だけ男性で、ちょっと誰の子かも分かりにくい子供を連れている。
余計によくない目で見られるというのも仕方ない。
けれども周りの冷たい視線はすぐに変わった。
「みんな頑張るにゃー!」
川やその周りには魔物がいる。
川の水が減ったことで魔物が外に出てきていて、道中にも意外と魔物の姿があった。
「しょーりにゃー!」
「にゃー!」
コユキの支援はリュードたちだけでなく、全体に広くかけていた。
戦いが終われば簡単な傷はサッと治してくれるし、リュードの実力はともかくコユキがただの子供ではないことは分かったのだ。
神聖力の支援も治療も素晴らしい。
最も素晴らしいのは天真爛漫で明るい笑顔だ。
リュードやルフォンですら簡単に心を掴まれた。
女性が多い調査隊のみんなの心をコユキが掴むのも早かったのである。
実際にコユキの強化支援を受けてみればただのお下がりではないことはハッキリする。
そしてお礼を言えばニッコリと笑う。
みんなちびっ子聖者の強化を受けたくて、積極的に戦ってくれるようになった。
コユキ大人気。
「コユキちゃーん、こっちに来なーい?」
「んー、ん!」
日が落ちてきたので野営する。
リュードたちとは別にテントを張った冒険者のパーティーがコユキに手を振っている。
少し悩んだコユキはひしっとリュードに抱きついて行かない意思を表した。
「きゃー! 可愛い!」
「フッ……」
ヤレヤレと首を振るコユキ。
なぜそんなにモテモテみたいな仕草をしているんだ。
「すごいねコユキ」
「なんでラストが誇らしげにゃ?」
「私もそうだけどコユキは色んな人の心をあっという間に落としちゃうね」
コユキを抱き上げて、リュードはルフォンたちのところに戻る。
リュードに抱き上げられて、嬉しそうに笑いながら小さくバイバイと手を振るコユキのファンサービスにまた他の冒険者たちが騒ぐ。
「申し訳ございませんが一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
透き通るようなライトグリーンの髪の女性がリュードたちに近づいてきた。
ゆったりとした服を身にまとったこの女性は冒険者ではない。
名前をミルトといい、聖職者であって冒険者らしくないゆったりとした服は神官の服であった。
彼女は水神に仕える聖職者である。
調査で川の上流域に行く。
上流域は水神信仰の宗教にとって聖域となっているので、監視や神への報告や許しのために聖職者が同行することになったのだ。
ミルトは最近高位の神官になったばかりで、面倒ごとを押し付けられた。
「改めてご挨拶申し上げます。
ウォークア教の聖職者のミルトと申します」
「なんですか、聞きたいことって?」
「コユキちゃ……コホン、コユキさんは何者ですか? どちらの神様にお仕えなのでしょうか?」
「何者とは何がお聞きしたいんですか?」
なぜそんなことを聞きたがるのか理由が分からない。
「いえ、とても強い神聖力を持っておられるので気になりまして」
「コユキはケーフィス神にお仕えしておられるにゃ。今はまだ修行中の身で神官としての役職も拝命も受けていないにゃ」
「そうなんですか。ニャロさんも聖職者でらっしゃいますよね?」
ニャロがリュード代わりに答える。
コユキに所属している宗派はないけれど、ケーフィス教がコユキを保護してくれるのでケーフィス教に所属していると言ってもいい。
ケーフィスを信じているのではないが、そんな細かいことケーフィス教はこだわらない。
だからニャロが矢面に立ってくれた。


