「人もたくましいもんだな」

 リュードたちもゆったり過ごして、昼過ぎに冒険者ギルドに向かった。
 冒険者ギルドの方も昨日よりは落ち着いて見えたが、噂話は絶えず何か新しい情報でもないかと人は多かった。

 けれどもまだ動きらしい動きはない。
 迅速に動こうにも何も分からないので、中々話が前に進まないかもしれない。

 これからどうするかの方策は偉い人が集まって会議でもするのだろう。
 川についての情報はないが、川の氾濫の恐れなしとしてヴァネルアから出ることは解禁された旨の貼り紙はしてあった。

 ヴァネルアがどうなろうと知ったこっちゃない。
 なんて言う人はリュードたちの中にはいなかった。

 この異常事態がどうなるのか気になったし、もうちょっと滞在することになった。
 何か手助けできることがあればしたいぐらいには考えていた。

「こうなるとやっぱり何かが起きてるんだな……」

「工夫しているのはすごいね」

 さらに数日が過ぎたが水量は相変わらず少ないままだった。
 水路に流れ込む水も少なかったのだけど、人の知恵ってのは侮れない。

 魔法で川底の形を変えたり少し深く掘り下げるなどして町中に流れる水量を確保した。
 これによって平時よりは少なくても舟が航行できるぐらいの水量は水路に流れ込むことになったのだ。

 工夫すれば何とかはなるものだなと感心してしまう。
 水路を泳ぐお魚が元気になってコユキも安心だ。

 しかしそろそろ不満が高まってきている。
 冒険者ギルドや町の支配者層に向けて、行動を起こさないことに対する文句が聞こえ始めてきた。

 そんな時にギルドから冒険者に依頼が出された。

「ステュルス川上流域の調査依頼……」

 やはりかという依頼だ。
 川に何かが起きたとしたら、見に行くのは上流になる。

 少し依頼の様子を見ていたが、どうやら冒険者の集まりが悪いようである。
 依頼料も悪くない調査なので無理に戦闘もする必要はないし、すぐにでも人が集まると思っていたリュードの読みは外れた。

 やはり異常事態に対して慎重になっている人が多かった。
 調査ぐらいなら受けてみようかなんて思ってもう少し様子を見て人が集まらなさそうなら宿で相談だなと考えていた。

『どうか……どうかおひとつお力をお貸しください!』

 明日みんなと話し合おうと思って寝た時だった。
 リュードは土下座する青い女性が迫ってくる夢を見た。

 神託と神様の世界に呼び出された時の間のような妙な感覚があって、とにかく寝覚めは悪い。

「受けんの、やめようかな……」

 なぜだろう。
 一気に厄介ごとの気配がしてきた気がしたリュードだった。