やたらと窓が分厚いと思っていたけれど、すぐにその理由が分かった。
ニャロの言う通りに、黒く重たい雲はヴァネルアの上までやってきてみるみる天候が荒れてきた。
大粒の雨が降り出してあっという間に嵐なった。
それも宿の人が言うには、その中でもとりわけ激しい大嵐になってしまったのである。
「すーごいにゃー」
「にゃー」
風が強くバケツでもひっくり返したかのような土砂降り。
ゴロゴロと低い音が聞こえて雷まで落ち始めた。
雷が落ちてコユキはそれを目を輝かせて見ている。
窓が丈夫でないと雨風に負けてしまう。
だから集めで丈夫な窓にしているのだと納得した。
窓が厚めなので雨の激しく叩きつける音も多少和らいで聞こえる。
「リューちゃん……」
「ルフォン、大丈夫か?」
「うん……」
コユキは雨風雷もなんのそので楽しんでいる。
逆にルフォンはミミをペタンとたたんでリュードの服の裾を掴んでいた。
普通の川は特段などもないのだけど、雨の影響で荒れた川は溺れたことを思い出せるのか苦手なようである。
こんな風に荒れた川の側にいることがないので、ルフォン自身も知らない感情になんだか胸がキュッとなる。
リュードはそれを察してルフォンの頭を優しく撫でてやる。
やはり溺れて死にかけたことはルフォンの中でトラウマとして残っていたのである。
「聞いていた以上の迫力があるな」
川の本気はすごいものだ。
川の荒れ具合も川の場所によって違っている。
透明に澄んでいた川は今は濁流となっていて、ヴァネルア側の川は荒れているが割と透明に近く早い流れになっているだけ。
それに対して川の中心に行くに従って川の混濁は酷くなり、濁っていっている。
波飛沫も立っていて端よりも激しさが凄まじいことが見て取れる。
そしてその奥をさらに見ていくと向こう岸に近づくに従ってまた透明度が高く、荒れ具合も穏やかになっている。
俯瞰してみると川全体で濁り具合でグラデーションになっている。
とても不思議な荒れ方をしていた。
「すごいね〜」
「確かにこりゃすごい」
意外とこの大嵐の川を見に来ても悪くないのでは、とラストは思った。
汚濁した川なので色味が悪く綺麗ではないが、不思議な光景で他で絶対に見られない面白いものだ。
「あっ、舟で出てる人がいるよ」
濁流グラデーションを興味深く見守っているとそんな川の中に舟を出している人が見えた。
小さい舟の揺れ具合を見ると遠くからじゃ分かりにくい川の荒れ具合がよく分かる。
なぜこんな荒天の時に舟を出しているのだろうか。
それは漁業のためである。
大荒れの天候の時は大物が取れるのである。
荒れた川で取れる魚はサイズが大きく味も良い。
なのでリスクは伴っても荒れた川に出る者がいる。
そんなに川岸から離れることはしないが、特別に許可された者だけが出られる特別な漁業だ。
「ということは明日も美味しいお魚が食べられるってことにゃ?」
「そうだな」
意図したわけじゃないが、大嵐の川を見ることになってしまった。
そうなるとおじさんが言っていた通りに町は外出禁止となる。
外出禁止というよりは町の外に出ることを禁じられる。
町の水路のうちの危険なところも通行止めとなったりしていて大嵐の影響は町中に出ている。
だから町から出られない。
別に強制力があるわけじゃないが、町近くの道は川に沿うように伸びているので安全を考えると町から出ない方がいい。
どうせ出られないなら前向きに考える。
色々魚料理を食べる良い機会だと捉えて、リュードは川の波に乗る舟を眺める。
もしかしたら川で取れた大物が料理として並ぶかもしれない。
「さて……どれぐらい嵐は続くかな?」
急がないので構わないけれど曇天が続くと気分も晴れやかにならない。
嵐は数日続くらしい。
宿の人に聞いてみたところ例年通りなら数日で嵐は過ぎ去るというので数日ならちょうど色々食べられていいだろうと思った。
ーーーーー
「流石に魚スイーツは厳しかったな……」
色々なお店を巡った。
それぞれの店で色んな特徴があって面白い。
ただ数日に及ぶ大嵐は止む気配もなくて、一巡りしてしまった。
しまいには何を狂ったのか魚スイーツなるものに手を出してみたけど失敗だった。
魚もスイーツも好きなニャロがゲンナリした顔してたので、どこに需要があるのか不明でならない。
そして雨が弱まることがあっても、空には常に黒い雲が立ち込めていて光が差すことがない。
気分もなんだか落ち込む。
ラストも観光には向かないなと思い直した。
こう何日も荒天が続くと川のグラデーションも見飽きてしまう。
というか澄んだ川を見たのは最初だけなので、荒れた川を見ている方が長くなってしまっている。
「こんなに長いのは珍しいって言ってたしね」
「代わりに大物がバンバン取れるみたいだけどな」
川も天候も大荒れだけど代わりに大きな魚が結構取れるらしい。
最初に行ったお店にもう一回行ってみたら大物が入っていたなんてこともある。
普通のものも美味かったけれど、大物はさらに脂が乗っていて美味かった。
「んー……そろそろ魚飽きたなぁ」
ラストが体をグーっと伸ばしてベッドに倒れ込んだ。
肉が好きなラストは魚に飽きが来るのも早い。
ルフォンみたいに料理そのものに興味があればまた違ったのかもしれない。
「寝て起きて魚食べて……ムフフ……幸せにゃ」
そんな中で幸せそうなのはニャロ。
魚食って一日中のんびり過ごせる。
教会で軽いお祈りするぐらいで仕事もしなくていい。
なぜならここはケーフィス教が強い勢力を持っているところじゃないからだ。
グルーウィンのような一神教ではないが、ケーフィスを始めとする聖教一派がメインの宗教ではなく聖者であっても特にお仕事がないのだ。
毎日雨なのは湿度も高くて多少嫌だけどただお魚食って寝るだけの日々はニャロにとってハッピーな毎日であった。
ニャロの言う通りに、黒く重たい雲はヴァネルアの上までやってきてみるみる天候が荒れてきた。
大粒の雨が降り出してあっという間に嵐なった。
それも宿の人が言うには、その中でもとりわけ激しい大嵐になってしまったのである。
「すーごいにゃー」
「にゃー」
風が強くバケツでもひっくり返したかのような土砂降り。
ゴロゴロと低い音が聞こえて雷まで落ち始めた。
雷が落ちてコユキはそれを目を輝かせて見ている。
窓が丈夫でないと雨風に負けてしまう。
だから集めで丈夫な窓にしているのだと納得した。
窓が厚めなので雨の激しく叩きつける音も多少和らいで聞こえる。
「リューちゃん……」
「ルフォン、大丈夫か?」
「うん……」
コユキは雨風雷もなんのそので楽しんでいる。
逆にルフォンはミミをペタンとたたんでリュードの服の裾を掴んでいた。
普通の川は特段などもないのだけど、雨の影響で荒れた川は溺れたことを思い出せるのか苦手なようである。
こんな風に荒れた川の側にいることがないので、ルフォン自身も知らない感情になんだか胸がキュッとなる。
リュードはそれを察してルフォンの頭を優しく撫でてやる。
やはり溺れて死にかけたことはルフォンの中でトラウマとして残っていたのである。
「聞いていた以上の迫力があるな」
川の本気はすごいものだ。
川の荒れ具合も川の場所によって違っている。
透明に澄んでいた川は今は濁流となっていて、ヴァネルア側の川は荒れているが割と透明に近く早い流れになっているだけ。
それに対して川の中心に行くに従って川の混濁は酷くなり、濁っていっている。
波飛沫も立っていて端よりも激しさが凄まじいことが見て取れる。
そしてその奥をさらに見ていくと向こう岸に近づくに従ってまた透明度が高く、荒れ具合も穏やかになっている。
俯瞰してみると川全体で濁り具合でグラデーションになっている。
とても不思議な荒れ方をしていた。
「すごいね〜」
「確かにこりゃすごい」
意外とこの大嵐の川を見に来ても悪くないのでは、とラストは思った。
汚濁した川なので色味が悪く綺麗ではないが、不思議な光景で他で絶対に見られない面白いものだ。
「あっ、舟で出てる人がいるよ」
濁流グラデーションを興味深く見守っているとそんな川の中に舟を出している人が見えた。
小さい舟の揺れ具合を見ると遠くからじゃ分かりにくい川の荒れ具合がよく分かる。
なぜこんな荒天の時に舟を出しているのだろうか。
それは漁業のためである。
大荒れの天候の時は大物が取れるのである。
荒れた川で取れる魚はサイズが大きく味も良い。
なのでリスクは伴っても荒れた川に出る者がいる。
そんなに川岸から離れることはしないが、特別に許可された者だけが出られる特別な漁業だ。
「ということは明日も美味しいお魚が食べられるってことにゃ?」
「そうだな」
意図したわけじゃないが、大嵐の川を見ることになってしまった。
そうなるとおじさんが言っていた通りに町は外出禁止となる。
外出禁止というよりは町の外に出ることを禁じられる。
町の水路のうちの危険なところも通行止めとなったりしていて大嵐の影響は町中に出ている。
だから町から出られない。
別に強制力があるわけじゃないが、町近くの道は川に沿うように伸びているので安全を考えると町から出ない方がいい。
どうせ出られないなら前向きに考える。
色々魚料理を食べる良い機会だと捉えて、リュードは川の波に乗る舟を眺める。
もしかしたら川で取れた大物が料理として並ぶかもしれない。
「さて……どれぐらい嵐は続くかな?」
急がないので構わないけれど曇天が続くと気分も晴れやかにならない。
嵐は数日続くらしい。
宿の人に聞いてみたところ例年通りなら数日で嵐は過ぎ去るというので数日ならちょうど色々食べられていいだろうと思った。
ーーーーー
「流石に魚スイーツは厳しかったな……」
色々なお店を巡った。
それぞれの店で色んな特徴があって面白い。
ただ数日に及ぶ大嵐は止む気配もなくて、一巡りしてしまった。
しまいには何を狂ったのか魚スイーツなるものに手を出してみたけど失敗だった。
魚もスイーツも好きなニャロがゲンナリした顔してたので、どこに需要があるのか不明でならない。
そして雨が弱まることがあっても、空には常に黒い雲が立ち込めていて光が差すことがない。
気分もなんだか落ち込む。
ラストも観光には向かないなと思い直した。
こう何日も荒天が続くと川のグラデーションも見飽きてしまう。
というか澄んだ川を見たのは最初だけなので、荒れた川を見ている方が長くなってしまっている。
「こんなに長いのは珍しいって言ってたしね」
「代わりに大物がバンバン取れるみたいだけどな」
川も天候も大荒れだけど代わりに大きな魚が結構取れるらしい。
最初に行ったお店にもう一回行ってみたら大物が入っていたなんてこともある。
普通のものも美味かったけれど、大物はさらに脂が乗っていて美味かった。
「んー……そろそろ魚飽きたなぁ」
ラストが体をグーっと伸ばしてベッドに倒れ込んだ。
肉が好きなラストは魚に飽きが来るのも早い。
ルフォンみたいに料理そのものに興味があればまた違ったのかもしれない。
「寝て起きて魚食べて……ムフフ……幸せにゃ」
そんな中で幸せそうなのはニャロ。
魚食って一日中のんびり過ごせる。
教会で軽いお祈りするぐらいで仕事もしなくていい。
なぜならここはケーフィス教が強い勢力を持っているところじゃないからだ。
グルーウィンのような一神教ではないが、ケーフィスを始めとする聖教一派がメインの宗教ではなく聖者であっても特にお仕事がないのだ。
毎日雨なのは湿度も高くて多少嫌だけどただお魚食って寝るだけの日々はニャロにとってハッピーな毎日であった。


