「ア……アア……アアアア!」
「にゃにゃ!」
「みんな避けろ!」
何を思ったのか突撃してきたカイーダは聖壁にぶち当たった。
聖者のニャロが展開した聖壁はかなりの強度を誇る。
しかし気味の悪い叫び声を上げながら突撃してきたカイーダによって聖壁にヒビが入った。
みんなが左右に割れるようにして回避すると、カイーダは間を通り抜けて階段を上がっていってしまった。
「……逃げた?」
「コユキ、魔石を壊すんだ!」
「うぃ!」
完全フリーになった魔石をコユキがサッと吹き飛ばす。
「……マズイ、みんな早く上にあがるんだ!」
普通に吹き飛ばしてしまっていたが、リュードは忘れていた。
これまで呪いの模様を維持していた魔石がどうなったかを。
体が大きくなる奇妙な感覚に襲われながらリュードたちは慌てて階段を上る。
カタカタと揺れ出す魔石。
そう、これまでの魔石はいきなり爆発してしまっていた。
この地下に置いてある魔石は外にあるものよりも大きいものが多かった。
つまり大きな爆発が起こるかもしれないと気づいたのだ。
「ニャロ!」
「にゃ! 聖壁!」
地下から飛び出してニャロが階段に聖壁を張る。
直後、魔石が地下で大爆発を起こして地面が大きく揺れた。
一瞬衝撃でみんなの体が浮き上がるほどの爆発であった。
「み、みんな無事か?」
「だ、大丈夫……」
「大きさも元に戻ってるね」
「ほんとだ……」
「やったぞ! 元に戻ったぞ!」
中心である元領主の館の呪いの模様を破壊したことで呪いが完全に効力を失った。
気づいたらリュードたちの体のサイズも元に戻っていた。
しかし喜んでもいられない。
この事件の犯人であるカイーダは逃げてしまった。
階段上で待機していた人たちに聞いてみるとカイーダは地下から飛び出してきて、そのまま外に逃げていってしまったようだ。
初見ではとんでもなく臭う紫色の気持ち悪い塊なので、止められなくとも無理はない。
呪われてあんな状態のカイーダをどうすべきなのか誰にも分からないが、野晒しにもしていられない。
「お、おい、アレを見ろ!」
「うわっ、なんだ?」
カイーダが逃げたと思われる割れた窓から外を見ると、塀を乗り越えて一人、また一人と町の人たちが入ってきていた。
頭から落ちて首が変な方向に曲がっても平然と立ち上がりゆっくりと屋敷の方に向かってくる。
目からは正気を感じない様子を見るに、ホルドを守った女性たちのことを思い出させる。
「今度はなんなんだよ!」
「偽物……の人だよな」
どうやら屋敷を囲む塀の外に押し寄せているようで、次々と人が入ってくる。
呪いが解けたはずだから町の人たちも普通の大きさに戻っているはず。
町の人がこんな風に襲ってくるわけがないので、この乗り越えてくる人たちは偽物の人たちということになる。
困惑している間にも塀の中に入ってきた人たちは、屋敷の近くまで迫ってきている。
「ダメだったら頼むぞ、ニャロ!」
割れた窓を乗り越えて入ってこようとする男性の腕をリュードが切り落とす。
仮に本物の人であっても綺麗に切り落とした腕ならニャロがいれば繋げられる。
「……大丈夫、偽物だ!」
切り落とされた腕が黒い塊と化す。
予想通りであるけれど、迫り来る人々は偽物であった。
「クソッ……数が多すぎる!」
見るとリュードが壊した門からも次々とゾンビのように偽物たちが入ってくる。
偽物は町の人と同じ数だけいる。
そんな数を全て相手にすることなどとても出来はしない。
「カイーダの野郎……」
「最後の悪あがきってやつか」
「呪いは止まったんじゃないのか?」
「うーん、おそらく小人化する呪いと偽物を作り出す呪いはまた別物なのにゃ。だから偽物は消えていない……けどカイーダの統制もカイーダ自身が呪いで出来ていないから、暴走してしまっているのかもしれないにゃ」
「こんな数どうしろってんだよ」
ホルドを守っていた女性たちですら怪我も恐れずすごい力で襲いかかってくるので苦労した。
今視界に映っているだけでも数は多く、とてもじゃないがここにいる人だけでは対処しきれない。
町の人が全てこちらに来ているとしたら途方もない数を倒さねばならない。
遅かれ早かれこの偽物ゾンビに飲み込まれてしまうことだろう。
流石のリュードにも焦りの表情が浮かぶ。
良い逆転の手段が思いつかないのだ。
「……コユキ、力を貸してほしいにゃ!」
「うん!」
「私に神聖力を全力で注いでほしいにゃ」
「分かったにゃ!」
「ニャロ、どうするつもりだ?」
「ここで全力出さなきゃ聖者が廃るにゃ!」
コユキの神聖力が送られてニャロの体が淡く輝く。
「神よ! あなたの子に悪しき呪いを打ち破る力をお貸しくださいにゃ! 降臨!」
ニャロは決断を下した。
呪いには神聖力で対抗するしかない
しかし丸々町一つかけられた呪いにニャロ一人では神聖力が足りない。
そこでニャロは降臨を使うことにした。
今みんなを助けるためにはどんな反動があろうと降臨しかなかった。
限界を越える神聖力をニャロは引き出す。
降臨で引き出した神聖力に加えてコユキの強い神聖力があれば百人力である。
「ニャロ……!」
「先生!」
ニャロの体が眩く光る。
心なしか偽物の人たちが引いている。
「にゃにゃ!」
「みんな避けろ!」
何を思ったのか突撃してきたカイーダは聖壁にぶち当たった。
聖者のニャロが展開した聖壁はかなりの強度を誇る。
しかし気味の悪い叫び声を上げながら突撃してきたカイーダによって聖壁にヒビが入った。
みんなが左右に割れるようにして回避すると、カイーダは間を通り抜けて階段を上がっていってしまった。
「……逃げた?」
「コユキ、魔石を壊すんだ!」
「うぃ!」
完全フリーになった魔石をコユキがサッと吹き飛ばす。
「……マズイ、みんな早く上にあがるんだ!」
普通に吹き飛ばしてしまっていたが、リュードは忘れていた。
これまで呪いの模様を維持していた魔石がどうなったかを。
体が大きくなる奇妙な感覚に襲われながらリュードたちは慌てて階段を上る。
カタカタと揺れ出す魔石。
そう、これまでの魔石はいきなり爆発してしまっていた。
この地下に置いてある魔石は外にあるものよりも大きいものが多かった。
つまり大きな爆発が起こるかもしれないと気づいたのだ。
「ニャロ!」
「にゃ! 聖壁!」
地下から飛び出してニャロが階段に聖壁を張る。
直後、魔石が地下で大爆発を起こして地面が大きく揺れた。
一瞬衝撃でみんなの体が浮き上がるほどの爆発であった。
「み、みんな無事か?」
「だ、大丈夫……」
「大きさも元に戻ってるね」
「ほんとだ……」
「やったぞ! 元に戻ったぞ!」
中心である元領主の館の呪いの模様を破壊したことで呪いが完全に効力を失った。
気づいたらリュードたちの体のサイズも元に戻っていた。
しかし喜んでもいられない。
この事件の犯人であるカイーダは逃げてしまった。
階段上で待機していた人たちに聞いてみるとカイーダは地下から飛び出してきて、そのまま外に逃げていってしまったようだ。
初見ではとんでもなく臭う紫色の気持ち悪い塊なので、止められなくとも無理はない。
呪われてあんな状態のカイーダをどうすべきなのか誰にも分からないが、野晒しにもしていられない。
「お、おい、アレを見ろ!」
「うわっ、なんだ?」
カイーダが逃げたと思われる割れた窓から外を見ると、塀を乗り越えて一人、また一人と町の人たちが入ってきていた。
頭から落ちて首が変な方向に曲がっても平然と立ち上がりゆっくりと屋敷の方に向かってくる。
目からは正気を感じない様子を見るに、ホルドを守った女性たちのことを思い出させる。
「今度はなんなんだよ!」
「偽物……の人だよな」
どうやら屋敷を囲む塀の外に押し寄せているようで、次々と人が入ってくる。
呪いが解けたはずだから町の人たちも普通の大きさに戻っているはず。
町の人がこんな風に襲ってくるわけがないので、この乗り越えてくる人たちは偽物の人たちということになる。
困惑している間にも塀の中に入ってきた人たちは、屋敷の近くまで迫ってきている。
「ダメだったら頼むぞ、ニャロ!」
割れた窓を乗り越えて入ってこようとする男性の腕をリュードが切り落とす。
仮に本物の人であっても綺麗に切り落とした腕ならニャロがいれば繋げられる。
「……大丈夫、偽物だ!」
切り落とされた腕が黒い塊と化す。
予想通りであるけれど、迫り来る人々は偽物であった。
「クソッ……数が多すぎる!」
見るとリュードが壊した門からも次々とゾンビのように偽物たちが入ってくる。
偽物は町の人と同じ数だけいる。
そんな数を全て相手にすることなどとても出来はしない。
「カイーダの野郎……」
「最後の悪あがきってやつか」
「呪いは止まったんじゃないのか?」
「うーん、おそらく小人化する呪いと偽物を作り出す呪いはまた別物なのにゃ。だから偽物は消えていない……けどカイーダの統制もカイーダ自身が呪いで出来ていないから、暴走してしまっているのかもしれないにゃ」
「こんな数どうしろってんだよ」
ホルドを守っていた女性たちですら怪我も恐れずすごい力で襲いかかってくるので苦労した。
今視界に映っているだけでも数は多く、とてもじゃないがここにいる人だけでは対処しきれない。
町の人が全てこちらに来ているとしたら途方もない数を倒さねばならない。
遅かれ早かれこの偽物ゾンビに飲み込まれてしまうことだろう。
流石のリュードにも焦りの表情が浮かぶ。
良い逆転の手段が思いつかないのだ。
「……コユキ、力を貸してほしいにゃ!」
「うん!」
「私に神聖力を全力で注いでほしいにゃ」
「分かったにゃ!」
「ニャロ、どうするつもりだ?」
「ここで全力出さなきゃ聖者が廃るにゃ!」
コユキの神聖力が送られてニャロの体が淡く輝く。
「神よ! あなたの子に悪しき呪いを打ち破る力をお貸しくださいにゃ! 降臨!」
ニャロは決断を下した。
呪いには神聖力で対抗するしかない
しかし丸々町一つかけられた呪いにニャロ一人では神聖力が足りない。
そこでニャロは降臨を使うことにした。
今みんなを助けるためにはどんな反動があろうと降臨しかなかった。
限界を越える神聖力をニャロは引き出す。
降臨で引き出した神聖力に加えてコユキの強い神聖力があれば百人力である。
「ニャロ……!」
「先生!」
ニャロの体が眩く光る。
心なしか偽物の人たちが引いている。


