「あったぞ!」
階段は特に隠されているのでもなく、普通にドアを開けると下への階段があった。
「うぅ……なんだこの臭い?」
ドアを開けた瞬間に、下からひどい臭いが立ち上ってくる。
何かが腐ったような臭いがしていて、その場にいた全員が顔をしかめる。
「臭い」
ルフォンなんかは死にそうな顔をしていた。
「ルフォンはここにいろ」
「うぅ……私もいくよ」
コユキとラストも行くならルフォンもいく。
そんなに階段も広くないので少数精鋭で下に向かう。
服で鼻を覆って涙目で耐えながら下に降りていった。
「ううう……」
降りていくと、泣き声のような低い声が聞こえてくる。
下まで行ったら地下はそれなりに広い部屋であった。
町の外にあったものよりも大きく、床一面に描かれた呪いの模様がまず目に入る。
真ん中に魔石が積んであり、その横に何かがいた。
「ううぅ……誰だ!」
「な、なんだあれ……」
壁につけられた松明に照らされたそれは、薄紫色の肌をしていてブヨブヨとした巨大な塊だった。
謎の塊から声がしてリュードたちは身構える。
リュード五人分はありそうな塊がゆっくりと動いてグルリと180度回転した。
「カ……カイーダ、なのか?」
異様に肥大化した塊の真ん中に顔があった。
紫色に変色し、目は真っ赤に充血しているが、それはカイーダの顔であった。
みんな驚愕して後ずさる。
リュードですらカイーダの姿の醜悪さに気持ち悪さを感じずにはいられない。
「な、なんなんだその姿!」
「あ……見るな……みぃるな! 俺を、俺を見るんじゃない!」
謎の塊となったカイーダが動くと、体の一部が破裂してプシュッと黒い液体が噴き出す。
また強い不快な臭いが広がる。
「クサイ……呪いの反動に違いないにゃ」
「呪いの反動だと?」
「呪いには失敗したり正当な方法以外で破壊されると、術者に反動が返ってくるにゃ」
呪術が廃れた理由の一つに、呪いには反動が返ってくることがあることが挙げられる。
町一つを支配下に置くようなとんでもない威力を持つのに、使われなくなったのは私欲による利用の危険性だけではないのだ。
例えば準備段階で正しくないやり方や準備不足なのに無理矢理呪いを敢行するとか、相手に呪いがかけられず失敗する、あるいは呪いを正当じゃない方法で破壊されるなどすると呪いの効果が術者に返ってくることがある。
弱い呪いならば帰ってきても問題ないのだが、強い呪いが破られて返ってきた時にどうなるかは術者ですら分からない。
そのようなリスクがあるために呪いという技術は衰退していくことになったのである。
「じゃあ、あれは……」
「リュードたちが呪いを破壊した反動だと思うにゃ」
今回の場合はリュードたちは呪いの模様を破壊した。
当然ながらそれは正当な呪いの解除方法ではない。
人を呪わば穴二つという言葉はリュードの前世での言葉であるが、この世界においても大きくは変わらない。
「リュードに呪いの邪魔をされたからその反動が襲ってきているに違いないにゃ」
「呪いの反動で……あんなことに?」
「おそらく術者が未熟なんだったにゃ。だから反動を軽減するとかなんの対策も取らなかったのかもしれないにゃ」
「やめろ……見るな……ヤメロ……ミル……ナ!」
「みんな下がるにゃ! 聖壁!」
カイーダは充血した目を見開いて手を伸ばした。
すると手から黒いモヤのようなものが出てきてリュードたちの方に飛んできた。
それをニャロが神聖力のバリアで防ぐ。
「なんだアレ?」
「自分の呪いで呪われているにゃ。おそらくアレも呪いのエネルギーにゃ」
「ふぅ、気味が悪いな」
ブツブツと呟くカイーダは体を動かすたびに全身がブルブルと揺れて気持ち悪い。
目の焦点はあっておらずとても正気には思えない。
「コユキ、今のうちに魔石を狙えるか?」
「うん、分かった」
もはや名ピッチャーなコユキ。
神聖力の球、ホーリーボールを作り出して振りかぶって投げる。
勢いよく飛んでいく神聖力の球は見事魔石の上の方にぶち当たってバラバラと吹き飛ばした。
飛んでいった魔石は黒い色を失い砕け散る。
「ぐわああああ!」
カイーダが苦しみ出し、リュードたちは体が大きくなり始める。
魔石は全部崩したのではないので、まだ完全に大きさが戻り切らない。
「ヤメロ……ヤメロォ!」
「こっち来るなにゃ!」
カイーダはこれ以上魔石を崩されたらたまらない、とコユキに襲いかかってくる。
ちょっとコユキをびくつかせたにっくきカイーダにニャロがホーリーボールを放つ。
コユキと違ってニャロの周りに複数のホーリーボールが浮かび、投げることもなく打ち出される。
聖壁も維持しながらのホーリーボールを放つのはかなりの高等技術だ。
これが聖者たるニャロの実力でもある。
「きったな!」
ホーリーボールが直撃したカイーダの体のあちこちが破裂し、黒い何かが噴き出してビチャビチャと床に飛び散る。
「クサイよぅ……」
飛び散る何かからは相変わらずひどい異臭がしている。
ラストも目にまで来る臭いに気を失いそうだ。
「うりゃあ!」
そうしてカイーダが怯んでいるうちにコユキによる第二投が放たれた。
ホーリーボールによって残った魔石の山の下半分が吹き飛ぶ。
見事なピッチングにコユキガッツポーズ。
「ウ、ウワアアアア!」
リュードたちの体がさらに大きくなるが同時にカイーダの体もボコボコと膨張する。
階段は特に隠されているのでもなく、普通にドアを開けると下への階段があった。
「うぅ……なんだこの臭い?」
ドアを開けた瞬間に、下からひどい臭いが立ち上ってくる。
何かが腐ったような臭いがしていて、その場にいた全員が顔をしかめる。
「臭い」
ルフォンなんかは死にそうな顔をしていた。
「ルフォンはここにいろ」
「うぅ……私もいくよ」
コユキとラストも行くならルフォンもいく。
そんなに階段も広くないので少数精鋭で下に向かう。
服で鼻を覆って涙目で耐えながら下に降りていった。
「ううう……」
降りていくと、泣き声のような低い声が聞こえてくる。
下まで行ったら地下はそれなりに広い部屋であった。
町の外にあったものよりも大きく、床一面に描かれた呪いの模様がまず目に入る。
真ん中に魔石が積んであり、その横に何かがいた。
「ううぅ……誰だ!」
「な、なんだあれ……」
壁につけられた松明に照らされたそれは、薄紫色の肌をしていてブヨブヨとした巨大な塊だった。
謎の塊から声がしてリュードたちは身構える。
リュード五人分はありそうな塊がゆっくりと動いてグルリと180度回転した。
「カ……カイーダ、なのか?」
異様に肥大化した塊の真ん中に顔があった。
紫色に変色し、目は真っ赤に充血しているが、それはカイーダの顔であった。
みんな驚愕して後ずさる。
リュードですらカイーダの姿の醜悪さに気持ち悪さを感じずにはいられない。
「な、なんなんだその姿!」
「あ……見るな……みぃるな! 俺を、俺を見るんじゃない!」
謎の塊となったカイーダが動くと、体の一部が破裂してプシュッと黒い液体が噴き出す。
また強い不快な臭いが広がる。
「クサイ……呪いの反動に違いないにゃ」
「呪いの反動だと?」
「呪いには失敗したり正当な方法以外で破壊されると、術者に反動が返ってくるにゃ」
呪術が廃れた理由の一つに、呪いには反動が返ってくることがあることが挙げられる。
町一つを支配下に置くようなとんでもない威力を持つのに、使われなくなったのは私欲による利用の危険性だけではないのだ。
例えば準備段階で正しくないやり方や準備不足なのに無理矢理呪いを敢行するとか、相手に呪いがかけられず失敗する、あるいは呪いを正当じゃない方法で破壊されるなどすると呪いの効果が術者に返ってくることがある。
弱い呪いならば帰ってきても問題ないのだが、強い呪いが破られて返ってきた時にどうなるかは術者ですら分からない。
そのようなリスクがあるために呪いという技術は衰退していくことになったのである。
「じゃあ、あれは……」
「リュードたちが呪いを破壊した反動だと思うにゃ」
今回の場合はリュードたちは呪いの模様を破壊した。
当然ながらそれは正当な呪いの解除方法ではない。
人を呪わば穴二つという言葉はリュードの前世での言葉であるが、この世界においても大きくは変わらない。
「リュードに呪いの邪魔をされたからその反動が襲ってきているに違いないにゃ」
「呪いの反動で……あんなことに?」
「おそらく術者が未熟なんだったにゃ。だから反動を軽減するとかなんの対策も取らなかったのかもしれないにゃ」
「やめろ……見るな……ヤメロ……ミル……ナ!」
「みんな下がるにゃ! 聖壁!」
カイーダは充血した目を見開いて手を伸ばした。
すると手から黒いモヤのようなものが出てきてリュードたちの方に飛んできた。
それをニャロが神聖力のバリアで防ぐ。
「なんだアレ?」
「自分の呪いで呪われているにゃ。おそらくアレも呪いのエネルギーにゃ」
「ふぅ、気味が悪いな」
ブツブツと呟くカイーダは体を動かすたびに全身がブルブルと揺れて気持ち悪い。
目の焦点はあっておらずとても正気には思えない。
「コユキ、今のうちに魔石を狙えるか?」
「うん、分かった」
もはや名ピッチャーなコユキ。
神聖力の球、ホーリーボールを作り出して振りかぶって投げる。
勢いよく飛んでいく神聖力の球は見事魔石の上の方にぶち当たってバラバラと吹き飛ばした。
飛んでいった魔石は黒い色を失い砕け散る。
「ぐわああああ!」
カイーダが苦しみ出し、リュードたちは体が大きくなり始める。
魔石は全部崩したのではないので、まだ完全に大きさが戻り切らない。
「ヤメロ……ヤメロォ!」
「こっち来るなにゃ!」
カイーダはこれ以上魔石を崩されたらたまらない、とコユキに襲いかかってくる。
ちょっとコユキをびくつかせたにっくきカイーダにニャロがホーリーボールを放つ。
コユキと違ってニャロの周りに複数のホーリーボールが浮かび、投げることもなく打ち出される。
聖壁も維持しながらのホーリーボールを放つのはかなりの高等技術だ。
これが聖者たるニャロの実力でもある。
「きったな!」
ホーリーボールが直撃したカイーダの体のあちこちが破裂し、黒い何かが噴き出してビチャビチャと床に飛び散る。
「クサイよぅ……」
飛び散る何かからは相変わらずひどい異臭がしている。
ラストも目にまで来る臭いに気を失いそうだ。
「うりゃあ!」
そうしてカイーダが怯んでいるうちにコユキによる第二投が放たれた。
ホーリーボールによって残った魔石の山の下半分が吹き飛ぶ。
見事なピッチングにコユキガッツポーズ。
「ウ、ウワアアアア!」
リュードたちの体がさらに大きくなるが同時にカイーダの体もボコボコと膨張する。


