「お前は何をした?」

「お、俺は木こりだ! だから木を切った! それだけだ!」

「本当にそれだけか?」

「ほ、本当だ! ホルドが魔物が出るからと立ち入り禁止にしたところの木を広く切らされた。根っこまでひき抜かされて、その後どうしたかなんてのは俺の知ったことじゃない!」

「どこら辺の木を切ったのか覚えているか?」

「も、もちろんだ。テーブルの上に地図が置いてある。その地図に赤く印が付けられたところだ。な、なあ! 正直に全部話した……だから助けてくれ」

「……そうだな、命までは取らない」

「そ、そうか、じゃあ……」

「コユキ」

 コユキが頭に被せていたバケツをカポッと取り上げる。
 デルはコユキの顔が見えて余計に何が起きているのか分からないようだった。

「ガ、ガキ……? お、おい……それをどうするつもりだ?」

 裁きは別でしっかりと受けるべき。
 だからここで殺すなんてことはしない。

 ただし、自由にするのもそれは違うだろう。
 情報が漏れてしまうことや町から逃げられでもしたら厄介である。

 男が見上げるとコユキは大きくフライパンを振り上げていた。
 子供らしからぬ冷たい目に背筋がゾクっとする。
 
 どうするつもりなのかは深く考えずとも分かるだろう。

「や、やめ……」

 ゴイン! と大きな音が響き渡った。
 しかしそんな音を聞いて助けくる正常な人は町にいない。

「い……」

「コユキもう一回!」

 コユキ、フライパンフルスイング。
 神聖力で自己強化したコユキの力は案外バカにできない。

 ただまあ顔面を広めにフライパンで殴って気絶させるのは難しい。
 一、二回は気絶しなかったデルは何度もコユキにフライパンで殴られる。

「こ、の……人で……なし」

 都合5回。
 ようやくデルは気を失った。
 
 頭がめりこみ床板が割れるほどのフライパンアタックに死んだ方がマシだったのではとちょっとだけ思うが、悪行に手を貸した自業自得である。
 さっさと意識手放せば早かったのに。

「手足を縛るんだ!」
 
 殺しはしないが拘束はさせてもらう。
 みんなで協力してデルの体をひっくり返して手足を縛る。
 
 事件が終わるまでどれほどかかるか知らないけど、このままここで放置させてもらう。
 こちらだって閉じ込められて飯も与えられずに放置されていた人がいるのだからお互い様である。
 
 数日食わなくても死にゃしない。
 一応歪んだフライパンに水を入れておいた。
 
 水が飲めれば長い時間も大丈夫だろう。
 なんと優しい配慮だろうとリュードは思う。

「テーブルの上の地図って言ってたな」
 
 そしてテーブルの上の地図を回収してリュードたちは酒臭い家から退却した。

「上手くいったね!」

「ああ、思っていたよりもスムーズだった」

 作戦は大成功だ。
 リュードがひっそりとガリバー作戦などと作戦によって、小人化した人たちの総力と知恵が容易くデルを上回ったのであった。

 酒を飲んでくるだろうという予想は大当たりだった。
 酔っ払って判断力の鈍ったデルはリュードたちの作戦に手も足も出なかった。