「今思えばあれが始まりだったのかもしれない……」
サンジェルは事件としても妙で、掴みどころもない事件だったとため息をつく。
ある時不可解なことに数人の町の住人が忽然と消えた。
周りに相談もなくいなかったかのように姿を消したのだが、荷物はそのままで逃げるような事情もない。
しかも消えたのは全く関わりもなく住んでいる場所もバラバラの人たち。
「当初は関連性すら疑われなかった」
失踪したという以外に共通点もない人々だった。
そしてあまりにも急なことで失踪そのものも、いなくなってから少し待って指摘されたぐらいだった。
捜査が始まっても進展がないと困惑していると、失踪していた人はひょっこりと帰ってきた。
ケガもなく何事もなかったかのように戻ってきたのだけど、その様子は大きく変わってしまっていた。
「考えればおかしかった……」
どことなく生気がなく話しかけても反応が薄い。
失踪について話を聞いても上の空で、あいまいな返事を繰り返すばかりだった。
その後の行動も不可解。
仕事をしたり日常の生活を過ごしているのだけど、それだけなのだ。
全く同じ時間に全く同じことをする。
決められたことだけをやって生きるようになってしまったのだ。
「誰かは言った。ゴーレムのようだと。だけど無理に話を聞き出すこともできなかった」
原因も分からないが、病院にも行こうとしないので調べようもない。
おかしくなったけれど、生きていて生活はしている以上何も言えない。
おかしさは残る。
しかしそれ以上は調べられずに不可解な人々は生活の中に溶け込んで事件は忘れられていった。
奇妙さにも慣れて事件を忘れた頃、また失踪事件が起きた。
今度は前のものより人数が多く、二回目の失踪事件があったために注目もされた。
一回目の失踪事件も洗い直されて偶然のことではないとなって本格的な調査が始まった。
しかし調査をしたのにも関わらず失踪した人の足取りもなんの手かがりも掴めない。
そうしているうちにまた失踪した人が戻ってきた。
けれど戻ってきた人は前の失踪の人と同じくおかしくなってしまっていた。
「ただ二回目で違っていたのは、失踪者が戻ってくると同時に新しく失踪した人が出たことだ」
失踪する人が出て、帰ってきておかしくなり、また失踪する人が出る。
サンジェルも必死に調べたが、何も掴めないままに町に無気力な人が増えていく。
明るさが消え、活気がなくなり、失踪していない正常な人々は気味悪がり始めた。
そうして多くの人が失踪して戻ってきた。
そのうち自分にも起こるのではないかと思っていたサンジェルだったが本当にその時が来た。
朝起きると体の気だるさを感じた。
言いようもない感覚があって自分の体が小さくなっていることに気がついた。
人々の失踪、それがこれなのではないかとサンジェルはピンときた。
すぐに嫌な予感がした。
小さくなったので失踪したのはいい。
でも小さくなった人が見つかったことはない。
小さくなって、いなくなる何かがある。
誰かが家の中に入ってくる音が聞こえたサンジェルはぼんやりとする頭を振って、気だるい体を無理やり動かした。
シーツを伝ってベッドを降りて、ベッド下に隠れた。
誰が来たのかも確認する余裕はなかったが、サンジェルは見つかることもなくやり過ごせた。
運が良く入ってきた者はドアを開けっぱなしで出て行ってくれたからサンジェルも家を出ることができた。
まだ小さくなっていない町の警備隊の仲間のところに向かってどうにか事の次第を説明し、対策を取ろうとしたのだけど結局はみんな小さくなってしまった。
「……今でも俺たちを探しているのか家の方に時折行くやつがいる。その時だけ日常と異なった行動をしているみたいだ」
聞けば聞くほど変な事件だとリュードは思う。
「そして小さくなって初めて分かったのが……戻ってきたと思っていたのは偽物だったんだ」
「……どういうことですか?」
「俺は小さくなってここにいるが、今この町には大きな俺もいるのだ。そちらの方は町のみんなと同じでうつろで無気力だ。どうやらいなくなった人はいなくなったのではなく、小さくなり誘拐されて、あの変な見た目だけ同じ人と入れ替わっているみたいなんだ」
呪いだとも分からなかったが、小さいながらも周りを監視して分かったことはサンジェルだけが特別そうなったのではないということだ。
他の人も小さくなり、見た目だけ同じで日常を繰り返す人と入れ替わっていたのだ。
「旅の者や行商の人と接触を試みようとしたこともあったんだけど、そちらの方もどうやら見張っているようで捕まってしまった仲間もいる……ただあんたらのように小さくなってしまった外部のものは初めてだ」
「結局何もわかんないってことか……」
謎が多すぎるとリュードはため息をついた。
小さくなったことが呪いであることは、神聖力を持つコユキやニャロに効いていないことを考えると間違いない。
だがその他は分からない。
入れ替わった謎の人もそうだし、そもそもこんなことをしている目的が理解できない。
人を小さくして入れ替えることをして何がしたいのだ。
いくら考えてもタチの悪いイタズラぐらいしか筋の通る説明をつけられる理由を考えつけない。
すでに町は支配されていると言っていいのに明確に支配を誇っている人も見当たらない。
入れ替えて日常を継続させているのも意味が分からない。
サンジェルは事件としても妙で、掴みどころもない事件だったとため息をつく。
ある時不可解なことに数人の町の住人が忽然と消えた。
周りに相談もなくいなかったかのように姿を消したのだが、荷物はそのままで逃げるような事情もない。
しかも消えたのは全く関わりもなく住んでいる場所もバラバラの人たち。
「当初は関連性すら疑われなかった」
失踪したという以外に共通点もない人々だった。
そしてあまりにも急なことで失踪そのものも、いなくなってから少し待って指摘されたぐらいだった。
捜査が始まっても進展がないと困惑していると、失踪していた人はひょっこりと帰ってきた。
ケガもなく何事もなかったかのように戻ってきたのだけど、その様子は大きく変わってしまっていた。
「考えればおかしかった……」
どことなく生気がなく話しかけても反応が薄い。
失踪について話を聞いても上の空で、あいまいな返事を繰り返すばかりだった。
その後の行動も不可解。
仕事をしたり日常の生活を過ごしているのだけど、それだけなのだ。
全く同じ時間に全く同じことをする。
決められたことだけをやって生きるようになってしまったのだ。
「誰かは言った。ゴーレムのようだと。だけど無理に話を聞き出すこともできなかった」
原因も分からないが、病院にも行こうとしないので調べようもない。
おかしくなったけれど、生きていて生活はしている以上何も言えない。
おかしさは残る。
しかしそれ以上は調べられずに不可解な人々は生活の中に溶け込んで事件は忘れられていった。
奇妙さにも慣れて事件を忘れた頃、また失踪事件が起きた。
今度は前のものより人数が多く、二回目の失踪事件があったために注目もされた。
一回目の失踪事件も洗い直されて偶然のことではないとなって本格的な調査が始まった。
しかし調査をしたのにも関わらず失踪した人の足取りもなんの手かがりも掴めない。
そうしているうちにまた失踪した人が戻ってきた。
けれど戻ってきた人は前の失踪の人と同じくおかしくなってしまっていた。
「ただ二回目で違っていたのは、失踪者が戻ってくると同時に新しく失踪した人が出たことだ」
失踪する人が出て、帰ってきておかしくなり、また失踪する人が出る。
サンジェルも必死に調べたが、何も掴めないままに町に無気力な人が増えていく。
明るさが消え、活気がなくなり、失踪していない正常な人々は気味悪がり始めた。
そうして多くの人が失踪して戻ってきた。
そのうち自分にも起こるのではないかと思っていたサンジェルだったが本当にその時が来た。
朝起きると体の気だるさを感じた。
言いようもない感覚があって自分の体が小さくなっていることに気がついた。
人々の失踪、それがこれなのではないかとサンジェルはピンときた。
すぐに嫌な予感がした。
小さくなったので失踪したのはいい。
でも小さくなった人が見つかったことはない。
小さくなって、いなくなる何かがある。
誰かが家の中に入ってくる音が聞こえたサンジェルはぼんやりとする頭を振って、気だるい体を無理やり動かした。
シーツを伝ってベッドを降りて、ベッド下に隠れた。
誰が来たのかも確認する余裕はなかったが、サンジェルは見つかることもなくやり過ごせた。
運が良く入ってきた者はドアを開けっぱなしで出て行ってくれたからサンジェルも家を出ることができた。
まだ小さくなっていない町の警備隊の仲間のところに向かってどうにか事の次第を説明し、対策を取ろうとしたのだけど結局はみんな小さくなってしまった。
「……今でも俺たちを探しているのか家の方に時折行くやつがいる。その時だけ日常と異なった行動をしているみたいだ」
聞けば聞くほど変な事件だとリュードは思う。
「そして小さくなって初めて分かったのが……戻ってきたと思っていたのは偽物だったんだ」
「……どういうことですか?」
「俺は小さくなってここにいるが、今この町には大きな俺もいるのだ。そちらの方は町のみんなと同じでうつろで無気力だ。どうやらいなくなった人はいなくなったのではなく、小さくなり誘拐されて、あの変な見た目だけ同じ人と入れ替わっているみたいなんだ」
呪いだとも分からなかったが、小さいながらも周りを監視して分かったことはサンジェルだけが特別そうなったのではないということだ。
他の人も小さくなり、見た目だけ同じで日常を繰り返す人と入れ替わっていたのだ。
「旅の者や行商の人と接触を試みようとしたこともあったんだけど、そちらの方もどうやら見張っているようで捕まってしまった仲間もいる……ただあんたらのように小さくなってしまった外部のものは初めてだ」
「結局何もわかんないってことか……」
謎が多すぎるとリュードはため息をついた。
小さくなったことが呪いであることは、神聖力を持つコユキやニャロに効いていないことを考えると間違いない。
だがその他は分からない。
入れ替わった謎の人もそうだし、そもそもこんなことをしている目的が理解できない。
人を小さくして入れ替えることをして何がしたいのだ。
いくら考えてもタチの悪いイタズラぐらいしか筋の通る説明をつけられる理由を考えつけない。
すでに町は支配されていると言っていいのに明確に支配を誇っている人も見当たらない。
入れ替えて日常を継続させているのも意味が分からない。


