受け取った袋には袋分の重さしか感じられない。
それしか感じられないはずなのに、リュードにはそれがどこかとても重く感じられた。
「いろいろ勝手に話を進めたけど僕からはこんなところかな。あんまりこんなところに若い子を長く留め置くのも悪いからね」
「それでゼムトたちどうしたらいいんだ?」
まだスケルトンがいることは分かっている。
殺してくれというのなら1人1人倒していけば良いのか。
「そうだね……君たちを外に出すために僕は浮遊の魔法を使うからある程度飛んだら魔法でこの船ごと僕たちを殺してほしい。
僕が延命を施したけどこの船ももう本来なら死んでいてもおかしくないんだ。休ませてあげたい」
「…………」
「ちょっと難しかったかい?」
「魔法で燃やせばいいのか?」
「そうだね。出来れば盛大に燃やしてくれるといいけど、きっと魔法を解いたらこの船は簡単に燃えるから小さな火でも大丈夫さ」
「出来るか分からないが俺の扱える全力でやってみるよ」
正直なところ、リュードの魔法はまだまだ剣に比べて未熟だった。
一定以上の魔法も使えるし村の同年代やあるいは多少上と比較しても腕前はある。
ヴェルデガーは村一番と言っていい魔法使いでリュードも魔法に憧れてちょいちょい練習はしているが結構魔法は難しい。
それでも竜人族という環境は魔法の習得に特化環境に負けず劣らず優れている。
村全体が剣の腕を重んじる脳筋気味だから剣を握っている時間の方がはるかに長いが切磋琢磨できる仲間もいる。
「じゃあ上に行こうか。君たちを心配している人たちもいるみたいだしね」
なんの魔法を使おうか。
甲板に出るまでの間、リュードは自分に扱える魔法や本で見た魔法を思い出しながらどの魔法ならこの大きな船ごと綺麗に事を片付けられるかを考えた。
やはり火をつける必要があることやアンデット化してしまっている船員をちゃんと弔うことを考えると火の魔法だろう。
「ただなぁ」
リュードはあまり火の魔法が得意でない。
魔法の練習は村はずれか開けた場所として川のそばまで行ってやっていた。
それでも周りは森。
木でいっぱいの中で下手に火の魔法を放てば大惨事になりかねない。
火がつかないようにコントロールすることも可能だが万が一コントロールを外れた時が大変である。
だからその対策も兼ねて火の魔法の練習量は少なく、逆に水の魔法がやや得意になっている。
その上リュードは先祖返りプラス転生のおかげで魔力量が他の竜人族よりも多く、魔力のコントロールも大変なのであった。
「さてと、みんな集まるんだ」
甲板に出るとゼムトがスケルトン達を集める。
多少リュード達に倒されて減ったと思っていたのにまだまだスケルトンが下から上がってくる。
どこにこんなにいたのかと思うほどのスケルトンが出てきた。
船を動かし、大型の魔物と戦うために多くの騎士や兵士が集められたのである。
「ふふっ、結構いるだろ? 準備はいいかい? 忘れ物はないかい? ハンカチは持った?
それじゃいくよ…………」
杖を掲げるゼムト。
リュードも体が浮き上がる覚悟をするが待てど暮らせど魔法を使う気配がない。
「まさか……本当に君なのかい……」
ゼムトが振り返る。
そこにはガイデンかもしれないと紹介されたスケルトンが立っている。
ガイデンが前に出る。
どうにも会話をしているようだけれどスケルトン同士にしか分からない意思疎通方法なのか、声は聞こえないので何を話しているのか分からない。
「わかったよ。……ここまで来てなんだけど、もう一つ頼み事をしてもいいかな?」
「内容による」
ガイデンと話していたゼムトがリュードの方を振り向いた。
上で待っているみんながどうするのか分からない。
もしリュードたちのことを諦めて先に帰られてしまったらここを脱出できても厳しい状況になってしまう。
あまり時間もかけられないがすぐに済む用事なら引き受けることもやぶさかではない。
「分かった、ちょ、ちょっとだけ待って」
ガイデンの頭に杖の先をつけて何かをするゼムト。
魔力を感じるので魔法を使っていることは分かる。
「聞こえるか、客人よ」
ゼムトとは違う低い声がリュードとルフォンの頭に響く。
「私はガイデン・マクフェウス。元は騎士団長だったのだが今は見ての通りのスケルトンだ。
見たところ君は若いが立ち振る舞いに隙がない。相当腕が立つ……そう見込んで頼みがある」
「俺にできることなら」
「ありがどう。私と戦ってくれないか、というのが私のお願いだ」
眼球のない目がリュートを捉える。
リュードとルフォンを見て奥底に眠っていた人としての意識を取り戻したガイデン。
見聞きしていたことは覚えていたので今リュードが船に火を放って全てを終わらせようとくれていたことも分かっている。
けれどガイデンはもっと違った最後を望んでいた。
武人として死にたいと思った。
このまま終われば人の意識はあるので人として死ねるかもしれない。
けれどガイデンは生粋の武人であり、いつかは戦場で死ぬものだと考えていた。
戦って終わりにしたい。
最後の最後に出てきたワガママであるがリュードが受け入れてくれるならと思った。
「……いいですよ」
さほど時間のかかる頼みでもない。
それにこんな頼み断っては男が廃る。
誇りをかけたお願いをリュードは受け入れた。
甲板の荷物をスケルトン達が片付ける。
やはり非力なのか1人でも持てそうな物でも2体3体で持っていたりしてスペースを作る。
ガイデンはどこからかスケルトンが持ってきた盾を持ち、剣を抜いて待っている。
立ち姿はスケルトンなのに風格を感じさせ、ヒリヒリとした戦う前の空気が漂い始める。
「準備オッケー」
すっかり甲板は片付けられ、縁を描くようにスケルトンに囲まれる。
「いつでもかかってくるといい」
対面するはガイデン。
かつて一国の騎士団長にも上り詰めた男。
「いくぞ!」
リュードは床板を強く蹴ってガイデンに向かって走り出した。
それしか感じられないはずなのに、リュードにはそれがどこかとても重く感じられた。
「いろいろ勝手に話を進めたけど僕からはこんなところかな。あんまりこんなところに若い子を長く留め置くのも悪いからね」
「それでゼムトたちどうしたらいいんだ?」
まだスケルトンがいることは分かっている。
殺してくれというのなら1人1人倒していけば良いのか。
「そうだね……君たちを外に出すために僕は浮遊の魔法を使うからある程度飛んだら魔法でこの船ごと僕たちを殺してほしい。
僕が延命を施したけどこの船ももう本来なら死んでいてもおかしくないんだ。休ませてあげたい」
「…………」
「ちょっと難しかったかい?」
「魔法で燃やせばいいのか?」
「そうだね。出来れば盛大に燃やしてくれるといいけど、きっと魔法を解いたらこの船は簡単に燃えるから小さな火でも大丈夫さ」
「出来るか分からないが俺の扱える全力でやってみるよ」
正直なところ、リュードの魔法はまだまだ剣に比べて未熟だった。
一定以上の魔法も使えるし村の同年代やあるいは多少上と比較しても腕前はある。
ヴェルデガーは村一番と言っていい魔法使いでリュードも魔法に憧れてちょいちょい練習はしているが結構魔法は難しい。
それでも竜人族という環境は魔法の習得に特化環境に負けず劣らず優れている。
村全体が剣の腕を重んじる脳筋気味だから剣を握っている時間の方がはるかに長いが切磋琢磨できる仲間もいる。
「じゃあ上に行こうか。君たちを心配している人たちもいるみたいだしね」
なんの魔法を使おうか。
甲板に出るまでの間、リュードは自分に扱える魔法や本で見た魔法を思い出しながらどの魔法ならこの大きな船ごと綺麗に事を片付けられるかを考えた。
やはり火をつける必要があることやアンデット化してしまっている船員をちゃんと弔うことを考えると火の魔法だろう。
「ただなぁ」
リュードはあまり火の魔法が得意でない。
魔法の練習は村はずれか開けた場所として川のそばまで行ってやっていた。
それでも周りは森。
木でいっぱいの中で下手に火の魔法を放てば大惨事になりかねない。
火がつかないようにコントロールすることも可能だが万が一コントロールを外れた時が大変である。
だからその対策も兼ねて火の魔法の練習量は少なく、逆に水の魔法がやや得意になっている。
その上リュードは先祖返りプラス転生のおかげで魔力量が他の竜人族よりも多く、魔力のコントロールも大変なのであった。
「さてと、みんな集まるんだ」
甲板に出るとゼムトがスケルトン達を集める。
多少リュード達に倒されて減ったと思っていたのにまだまだスケルトンが下から上がってくる。
どこにこんなにいたのかと思うほどのスケルトンが出てきた。
船を動かし、大型の魔物と戦うために多くの騎士や兵士が集められたのである。
「ふふっ、結構いるだろ? 準備はいいかい? 忘れ物はないかい? ハンカチは持った?
それじゃいくよ…………」
杖を掲げるゼムト。
リュードも体が浮き上がる覚悟をするが待てど暮らせど魔法を使う気配がない。
「まさか……本当に君なのかい……」
ゼムトが振り返る。
そこにはガイデンかもしれないと紹介されたスケルトンが立っている。
ガイデンが前に出る。
どうにも会話をしているようだけれどスケルトン同士にしか分からない意思疎通方法なのか、声は聞こえないので何を話しているのか分からない。
「わかったよ。……ここまで来てなんだけど、もう一つ頼み事をしてもいいかな?」
「内容による」
ガイデンと話していたゼムトがリュードの方を振り向いた。
上で待っているみんながどうするのか分からない。
もしリュードたちのことを諦めて先に帰られてしまったらここを脱出できても厳しい状況になってしまう。
あまり時間もかけられないがすぐに済む用事なら引き受けることもやぶさかではない。
「分かった、ちょ、ちょっとだけ待って」
ガイデンの頭に杖の先をつけて何かをするゼムト。
魔力を感じるので魔法を使っていることは分かる。
「聞こえるか、客人よ」
ゼムトとは違う低い声がリュードとルフォンの頭に響く。
「私はガイデン・マクフェウス。元は騎士団長だったのだが今は見ての通りのスケルトンだ。
見たところ君は若いが立ち振る舞いに隙がない。相当腕が立つ……そう見込んで頼みがある」
「俺にできることなら」
「ありがどう。私と戦ってくれないか、というのが私のお願いだ」
眼球のない目がリュートを捉える。
リュードとルフォンを見て奥底に眠っていた人としての意識を取り戻したガイデン。
見聞きしていたことは覚えていたので今リュードが船に火を放って全てを終わらせようとくれていたことも分かっている。
けれどガイデンはもっと違った最後を望んでいた。
武人として死にたいと思った。
このまま終われば人の意識はあるので人として死ねるかもしれない。
けれどガイデンは生粋の武人であり、いつかは戦場で死ぬものだと考えていた。
戦って終わりにしたい。
最後の最後に出てきたワガママであるがリュードが受け入れてくれるならと思った。
「……いいですよ」
さほど時間のかかる頼みでもない。
それにこんな頼み断っては男が廃る。
誇りをかけたお願いをリュードは受け入れた。
甲板の荷物をスケルトン達が片付ける。
やはり非力なのか1人でも持てそうな物でも2体3体で持っていたりしてスペースを作る。
ガイデンはどこからかスケルトンが持ってきた盾を持ち、剣を抜いて待っている。
立ち姿はスケルトンなのに風格を感じさせ、ヒリヒリとした戦う前の空気が漂い始める。
「準備オッケー」
すっかり甲板は片付けられ、縁を描くようにスケルトンに囲まれる。
「いつでもかかってくるといい」
対面するはガイデン。
かつて一国の騎士団長にも上り詰めた男。
「いくぞ!」
リュードは床板を強く蹴ってガイデンに向かって走り出した。