「いやほんと、誰も死なずにいられたのが不思議なぐらいだな」
腕の一本ぐらいは簡単に失いそうなダンジョンだった。
気を抜けば誰かが死んでいてもおかしくない。
けれどここにいるみんな五体満足で生きて帰ってきた。
不思議なほどの奇跡だ。
「……みんなと共にダンジョンを攻略することができて幸運だった。みんな、ありがとう」
酒が進んだせいか熱っぽい目をしたウィドウが頭を下げる。
冒険者というやつは最後に一仕事などと言って、そのまま帰ってこないやつは意外と多い。
最後だからと欲張ったり気を抜いたり、あるいは身の丈に合っていなかったりといろいろなことがある。
攻略不可ダンジョンを攻略することは、正直身の丈に合ったものではなかったかもしれない。
だが大きな幸運によって生き残った。
しかも攻略までやってのけた。
中でもリュードとの出会いは運が良かったとウィドウは思う。
若いが高い実力を持ち広い視野と冷静な判断力がある。
それなのにそれを驕ることもなく更なる精進を続けている。
仲間であるルフォンやラストとの連携も良く、魔人化という切り札まで持っている。
ウィドウは五尾の白キツネとの戦いでは、サポート的な動きに徹した。
若くて勢いのあるリュードが前に出た方が絶対に流れが良いと分かっていたからだ。
おそらくリュードは神にも愛されている。
リュードに支えられてのダンジョン攻略成功である。
他の人だって高い実力を兼ね備えてみんなよく戦ってくれた。
「ここにいる全員、神に導かれしメンバーだったと言っても過言ではない」
日常で神に頼りすぎることはよくないので、それほど祈りもささげないウィドウも今日は神に感謝をする。
「いつになく熱いな」
「そりゃあ不可能を可能にしたとあっちゃ興奮もするさ」
「みんなはこれからどうするにゃ?」
金も名声も手に入れた。
今は冒険者として破格の条件まで提示されている。
どこかに腰を据えようと思うのなら、これほど良い時もない。
リュードたちは仲間内の話し合いでもう腹積りは決まっているが、みんながどうするのかは気になる。
「俺は妻と子のところに帰るさ。冒険者は引退してそこでのんびりとやっていく。ここは寒すぎるから移住するつもりはないな」
ウィドウは前にも話していたが、この攻略を最後に冒険者を辞めるつもりだった。
失敗すれば死だし、成功すれば一生働かなくてもよくなる。
成功したのでこれまでの蓄えも合わせれば、贅沢に暮らしていてもお釣りが来る。
それにプラチナランク、しかも攻略不可ダンジョンを攻略したとなるとどこに行っても重宝される。
グルーウィンでなければいけない理由もどこにもない。
愛する人と残りの人生のんびりすることも許されるだろう。
「ウィドウは……そうか」
「となるとそういうことだよな」
ウィドウの決意は他の人の行動にも大きな影響を与える。
ケフィズサンのリーダーでもあるウィドウ。
ウィドウが辞めるということはケフィズサンは解散することになる。
リーダーを変えてということも考えられるけど、ケフィズサンのみんなの中でそんな選択肢はなかった。
みんなそれぞれ何をしたいのか軽く語る。
一致してるのはしばらくあったかいところでのんびりしたいってことだった。
少なくとも雪はうんざりだった。
「俺は神物を届けたらここにまた戻ってこようと思ってる」
「えっ!?」
「おい、ブレス……マジかよ!」
みんなサラッとやってみたいことを言う中で、言いにくそうにしていたブレスは一人違った道を語る。
ようやく口を開いたと思ったら予報外の言葉が飛び出してきた。
「まさかこの国でお偉いさんになるのか?」
「ん……いや、俺には嫁どころか恋人もいないからな。その、なんだ……パーティーの時は別にケツ揉まれただけじゃないし」
「ケツモミとくっつくのか?」
「そっちじゃねえよ! ケツ揉まれてるのを助けてくれた子がいてな。ま、なんか、悪くないかな、ってさ……」
あんまり宴に興味なさそうに参加していたグルーウィンの貴族のご令嬢もいた。
その子は他の人たちがリュードたちに取り入ろう、または取り入れようとしていた中でもパクパクと料理を食べていた。
その時にブレスがケツを揉まれて困っていることに気がついたのだ。
国の品格を貶めかねない行為。
颯爽と現れてブレスを助けてくれたその令嬢にブレスは惚れてしまったのだ。
ブレスには爵位もない平民なので身分差があって本来難しい恋愛になるが、グルーウィンに限ればすぐにでも爵位でも領地でも手に入る。
身分差なんてもの、心配しなくても大丈夫だ。
あとはそのご令嬢がどうかという話だけど、これからのことはブレス次第である。
「だからちょっと仕事でももらってさ、うまく行くようならこの国で家庭を持つのも悪かないかなって思ってる」
「はははっ! 急で驚いたが良い話じゃないか!」
ウィドウが笑う。
ブレスが決めたことだから止めるつもりもない。
ブレスにとっても良い話であるだけでなく、グルーウィンにとってもこれは良い話だ。
今回の件の英雄が一人でも国に留まってくれることを決めれば面目も立つ。
進んで残りたいと言ってくれているのだから望むところであろう。
「そうか……お前も結婚するかもしれないのか。ならば早く神物を届けねばなるまいな」
「結婚ってのは話が早いけどさ。もし結婚するとなったらそん時は歓迎するから来てくれよ?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
気の早い会話だけど、向こうにその気があるならそんなに遠い話でもないだろうとウィドウも思う。
腕の一本ぐらいは簡単に失いそうなダンジョンだった。
気を抜けば誰かが死んでいてもおかしくない。
けれどここにいるみんな五体満足で生きて帰ってきた。
不思議なほどの奇跡だ。
「……みんなと共にダンジョンを攻略することができて幸運だった。みんな、ありがとう」
酒が進んだせいか熱っぽい目をしたウィドウが頭を下げる。
冒険者というやつは最後に一仕事などと言って、そのまま帰ってこないやつは意外と多い。
最後だからと欲張ったり気を抜いたり、あるいは身の丈に合っていなかったりといろいろなことがある。
攻略不可ダンジョンを攻略することは、正直身の丈に合ったものではなかったかもしれない。
だが大きな幸運によって生き残った。
しかも攻略までやってのけた。
中でもリュードとの出会いは運が良かったとウィドウは思う。
若いが高い実力を持ち広い視野と冷静な判断力がある。
それなのにそれを驕ることもなく更なる精進を続けている。
仲間であるルフォンやラストとの連携も良く、魔人化という切り札まで持っている。
ウィドウは五尾の白キツネとの戦いでは、サポート的な動きに徹した。
若くて勢いのあるリュードが前に出た方が絶対に流れが良いと分かっていたからだ。
おそらくリュードは神にも愛されている。
リュードに支えられてのダンジョン攻略成功である。
他の人だって高い実力を兼ね備えてみんなよく戦ってくれた。
「ここにいる全員、神に導かれしメンバーだったと言っても過言ではない」
日常で神に頼りすぎることはよくないので、それほど祈りもささげないウィドウも今日は神に感謝をする。
「いつになく熱いな」
「そりゃあ不可能を可能にしたとあっちゃ興奮もするさ」
「みんなはこれからどうするにゃ?」
金も名声も手に入れた。
今は冒険者として破格の条件まで提示されている。
どこかに腰を据えようと思うのなら、これほど良い時もない。
リュードたちは仲間内の話し合いでもう腹積りは決まっているが、みんながどうするのかは気になる。
「俺は妻と子のところに帰るさ。冒険者は引退してそこでのんびりとやっていく。ここは寒すぎるから移住するつもりはないな」
ウィドウは前にも話していたが、この攻略を最後に冒険者を辞めるつもりだった。
失敗すれば死だし、成功すれば一生働かなくてもよくなる。
成功したのでこれまでの蓄えも合わせれば、贅沢に暮らしていてもお釣りが来る。
それにプラチナランク、しかも攻略不可ダンジョンを攻略したとなるとどこに行っても重宝される。
グルーウィンでなければいけない理由もどこにもない。
愛する人と残りの人生のんびりすることも許されるだろう。
「ウィドウは……そうか」
「となるとそういうことだよな」
ウィドウの決意は他の人の行動にも大きな影響を与える。
ケフィズサンのリーダーでもあるウィドウ。
ウィドウが辞めるということはケフィズサンは解散することになる。
リーダーを変えてということも考えられるけど、ケフィズサンのみんなの中でそんな選択肢はなかった。
みんなそれぞれ何をしたいのか軽く語る。
一致してるのはしばらくあったかいところでのんびりしたいってことだった。
少なくとも雪はうんざりだった。
「俺は神物を届けたらここにまた戻ってこようと思ってる」
「えっ!?」
「おい、ブレス……マジかよ!」
みんなサラッとやってみたいことを言う中で、言いにくそうにしていたブレスは一人違った道を語る。
ようやく口を開いたと思ったら予報外の言葉が飛び出してきた。
「まさかこの国でお偉いさんになるのか?」
「ん……いや、俺には嫁どころか恋人もいないからな。その、なんだ……パーティーの時は別にケツ揉まれただけじゃないし」
「ケツモミとくっつくのか?」
「そっちじゃねえよ! ケツ揉まれてるのを助けてくれた子がいてな。ま、なんか、悪くないかな、ってさ……」
あんまり宴に興味なさそうに参加していたグルーウィンの貴族のご令嬢もいた。
その子は他の人たちがリュードたちに取り入ろう、または取り入れようとしていた中でもパクパクと料理を食べていた。
その時にブレスがケツを揉まれて困っていることに気がついたのだ。
国の品格を貶めかねない行為。
颯爽と現れてブレスを助けてくれたその令嬢にブレスは惚れてしまったのだ。
ブレスには爵位もない平民なので身分差があって本来難しい恋愛になるが、グルーウィンに限ればすぐにでも爵位でも領地でも手に入る。
身分差なんてもの、心配しなくても大丈夫だ。
あとはそのご令嬢がどうかという話だけど、これからのことはブレス次第である。
「だからちょっと仕事でももらってさ、うまく行くようならこの国で家庭を持つのも悪かないかなって思ってる」
「はははっ! 急で驚いたが良い話じゃないか!」
ウィドウが笑う。
ブレスが決めたことだから止めるつもりもない。
ブレスにとっても良い話であるだけでなく、グルーウィンにとってもこれは良い話だ。
今回の件の英雄が一人でも国に留まってくれることを決めれば面目も立つ。
進んで残りたいと言ってくれているのだから望むところであろう。
「そうか……お前も結婚するかもしれないのか。ならば早く神物を届けねばなるまいな」
「結婚ってのは話が早いけどさ。もし結婚するとなったらそん時は歓迎するから来てくれよ?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
気の早い会話だけど、向こうにその気があるならそんなに遠い話でもないだろうとウィドウも思う。


