神物はマジックボックスの魔法がかかったカバンなり袋なりに入らなかった。
なので周りから見えないように布で包んで、普通のリュックの中に入れて持ち運んでいる。
そのリュックを背負うのはリュードであった。
「やはり、リュードは神の子にゃ〜」
「うるさい、ニャロが持てよぅ」
「女の子にそんなこと言っちゃダメにゃ」
「なんだって俺が……」
「だってリュードの方が神聖力に強いからお願いするにゃ」
「俺自身には神聖力なんか微塵もないのに?」
本来なら聖職者たちが持つべき神物をリュードが持っているのには理由があった。
神物からは神聖力が溢れている。
強すぎる力はどうしても不都合を生みがちである。
聖職者たちは神聖力を普段から扱うので神聖力に対して耐性があるはずなのに、神物を長時間側に置いておくと具合が悪くなるのだ。
神聖力酔いとでもいうのだろうか。
そうした症状や病名があるのか誰も知らないけれど、不調の原因が神物にあると分かった。
なので神物を交代で持つようにしたのである。
聖職者じゃない人は具合が悪くなるのが早く、聖職者は割と具合が悪くなるのが遅かったのだが、その中でも平気だったのがリュードなのだ。
長時間神物を持っていてもケロリとしている。
「コユキも大丈夫そうだけど、小さい子に持たせるのはダメだからにゃ〜」
なので今はリュードがメインで神物を持っている。
リュードの体調が悪くならないようにとみんなも交代で持つけど、多くの時間をリュードが持つことになっている。
そんなに重たいものでもないけど、神物を持っている重圧はちょっとだけある。
しかもニャロが神物を持っていてもなんともないリュードのことを神の子なんて言い出した。
「リューちゃん、神の子、イケメン君にゃ」
「天罰!」
「にゃー! いたいにゃー!」
リュードをバカにした天罰としてニャロの頬をつねる。
神聖力はリュードにないが、今回の活躍で神に呼ばれたりなんか知らないけど謎の子コユキにパパと慕われている。
リュードが神の子でなくても並々ならぬ才能を持った天才であることはみんな認めていた。
「あっ! アンタら!」
こうして真っ白な世界を進んでいって、人の気配が視界にも入ってきた。
魔物が来ないか巡回していた冒険者が、雪の向こうから来るリュードたちに気がついて驚いた顔をしめいる。
「俺たちは魔物かっての」
どこかに走り去ってしまったので、知り合いだったかすらわからない。
ただこれまで人工物も全く見えないところを歩いてきたから家が見えるだけでホッとする。
「おっ? 何だか人が出てきたな」
どうやら走り去った冒険者が町でリュードたちの帰還を吹聴して回ったらしく、町の方に人だかりが出来始めていた。
町中を人々の視線を浴びながら移動して冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドの前でも多くの人がリュードたちを待っていた。
「ああ、本当に帰ってきた!」
ダンジョンブレイクを防ぐためにダンジョンの魔物を倒す討伐隊を率いていた冒険者は、ギルドに入ってきたリュードたちの姿を見て感動したように目を潤ませていた。
リュードたちと別れてから、それなりの日数が経っていた。
プラチナランクの冒険者でもダメだったのかと討伐隊に参加した冒険者の間でも諦めムードが漂っていた。
そんな中で1人も欠けることなく(むしろ1人増して)帰ってきた。
興奮して、もう泣いているような人もいる。
結果がどうあれ無事に帰ってきてくれたことだけでも大したものである。
「ま、まさかとは思うが……」
加えてリュードたちの顔は負けて逃げ帰ってきた人の顔ではない。
否が応でも期待を抱いてしまう。
「そのまさかだ」
誰かの言葉にウィドウが堂々と答えた。
「ほ、本当か!? これは大ニュースだ!」
「あっ……」
顔を真っ赤に高揚させて冒険者はどこかに走っていってしまう。
ダンジョン攻略を叫びながら。
「お待ちしておりました! そのお話ぜひともお聞かせください!」
冒険者の他にギルドの前で待っていた人たち、それはこのギルドの職員やギルド長であった。
最初にリュードたちに気づいて走り去った男が冒険者ギルドに伝えていて、職員総出での出迎えとなった。
「はははっ、大歓迎だな」
それどころか騒ぎを聞きつけ町の人たちも集まり始めている。
「ふむ……このままでは収拾もつかないな。どれ、ここは一
つ……」
ウィドウは咳払いをすると一度ギルドから出て、集まってきた人たちにグルリと視線を向けた。
「攻略不可ダンジョンと呼ばれた極寒のダンジョン……プラチナランクの冒険者、このウィドウ・アダランが攻略した!」
噂でザワザワと広まるよりも堂々と宣言してしまう方が早くていい。
期待した人々の目に応えるように発されたウィドウの言葉に人々が喜びを爆発させた。
ダンジョンの利用者やドロップ品などで多少の利益は生み出すが、攻略不可ダンジョンが近くにあることの不安はみんなの中にあった。
ダンジョンブレイクの話はどこからか聞こえてくることもあって、いつかそうなるのではと思って生きていた。
知らない隣の人と抱き合い喜び合う。
こうなればもうあとはほっといてもしっかり盛り上がって、しっかり大人しくなるだろうとウィドウは思った。
なので周りから見えないように布で包んで、普通のリュックの中に入れて持ち運んでいる。
そのリュックを背負うのはリュードであった。
「やはり、リュードは神の子にゃ〜」
「うるさい、ニャロが持てよぅ」
「女の子にそんなこと言っちゃダメにゃ」
「なんだって俺が……」
「だってリュードの方が神聖力に強いからお願いするにゃ」
「俺自身には神聖力なんか微塵もないのに?」
本来なら聖職者たちが持つべき神物をリュードが持っているのには理由があった。
神物からは神聖力が溢れている。
強すぎる力はどうしても不都合を生みがちである。
聖職者たちは神聖力を普段から扱うので神聖力に対して耐性があるはずなのに、神物を長時間側に置いておくと具合が悪くなるのだ。
神聖力酔いとでもいうのだろうか。
そうした症状や病名があるのか誰も知らないけれど、不調の原因が神物にあると分かった。
なので神物を交代で持つようにしたのである。
聖職者じゃない人は具合が悪くなるのが早く、聖職者は割と具合が悪くなるのが遅かったのだが、その中でも平気だったのがリュードなのだ。
長時間神物を持っていてもケロリとしている。
「コユキも大丈夫そうだけど、小さい子に持たせるのはダメだからにゃ〜」
なので今はリュードがメインで神物を持っている。
リュードの体調が悪くならないようにとみんなも交代で持つけど、多くの時間をリュードが持つことになっている。
そんなに重たいものでもないけど、神物を持っている重圧はちょっとだけある。
しかもニャロが神物を持っていてもなんともないリュードのことを神の子なんて言い出した。
「リューちゃん、神の子、イケメン君にゃ」
「天罰!」
「にゃー! いたいにゃー!」
リュードをバカにした天罰としてニャロの頬をつねる。
神聖力はリュードにないが、今回の活躍で神に呼ばれたりなんか知らないけど謎の子コユキにパパと慕われている。
リュードが神の子でなくても並々ならぬ才能を持った天才であることはみんな認めていた。
「あっ! アンタら!」
こうして真っ白な世界を進んでいって、人の気配が視界にも入ってきた。
魔物が来ないか巡回していた冒険者が、雪の向こうから来るリュードたちに気がついて驚いた顔をしめいる。
「俺たちは魔物かっての」
どこかに走り去ってしまったので、知り合いだったかすらわからない。
ただこれまで人工物も全く見えないところを歩いてきたから家が見えるだけでホッとする。
「おっ? 何だか人が出てきたな」
どうやら走り去った冒険者が町でリュードたちの帰還を吹聴して回ったらしく、町の方に人だかりが出来始めていた。
町中を人々の視線を浴びながら移動して冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドの前でも多くの人がリュードたちを待っていた。
「ああ、本当に帰ってきた!」
ダンジョンブレイクを防ぐためにダンジョンの魔物を倒す討伐隊を率いていた冒険者は、ギルドに入ってきたリュードたちの姿を見て感動したように目を潤ませていた。
リュードたちと別れてから、それなりの日数が経っていた。
プラチナランクの冒険者でもダメだったのかと討伐隊に参加した冒険者の間でも諦めムードが漂っていた。
そんな中で1人も欠けることなく(むしろ1人増して)帰ってきた。
興奮して、もう泣いているような人もいる。
結果がどうあれ無事に帰ってきてくれたことだけでも大したものである。
「ま、まさかとは思うが……」
加えてリュードたちの顔は負けて逃げ帰ってきた人の顔ではない。
否が応でも期待を抱いてしまう。
「そのまさかだ」
誰かの言葉にウィドウが堂々と答えた。
「ほ、本当か!? これは大ニュースだ!」
「あっ……」
顔を真っ赤に高揚させて冒険者はどこかに走っていってしまう。
ダンジョン攻略を叫びながら。
「お待ちしておりました! そのお話ぜひともお聞かせください!」
冒険者の他にギルドの前で待っていた人たち、それはこのギルドの職員やギルド長であった。
最初にリュードたちに気づいて走り去った男が冒険者ギルドに伝えていて、職員総出での出迎えとなった。
「はははっ、大歓迎だな」
それどころか騒ぎを聞きつけ町の人たちも集まり始めている。
「ふむ……このままでは収拾もつかないな。どれ、ここは一
つ……」
ウィドウは咳払いをすると一度ギルドから出て、集まってきた人たちにグルリと視線を向けた。
「攻略不可ダンジョンと呼ばれた極寒のダンジョン……プラチナランクの冒険者、このウィドウ・アダランが攻略した!」
噂でザワザワと広まるよりも堂々と宣言してしまう方が早くていい。
期待した人々の目に応えるように発されたウィドウの言葉に人々が喜びを爆発させた。
ダンジョンの利用者やドロップ品などで多少の利益は生み出すが、攻略不可ダンジョンが近くにあることの不安はみんなの中にあった。
ダンジョンブレイクの話はどこからか聞こえてくることもあって、いつかそうなるのではと思って生きていた。
知らない隣の人と抱き合い喜び合う。
こうなればもうあとはほっといてもしっかり盛り上がって、しっかり大人しくなるだろうとウィドウは思った。


