「ダンジョンのボス……」
「にしてはちっちゃいな」
見た目的にはダンジョンのボスであった五尾の白キツネのミニ版、子供版といったところ。
みんなの頭にハテナマークが浮かぶ。
「これはどういうことでしょうか?」
「……分からん」
ダンジョンの中では大人の姿であった五尾の白キツネが、子供姿になってダンジョンの外にいる。
見たことも聞いたこともない話にウィドウすら動揺を隠せない。
「と、とりあえず助けてあげようか……」
このままにしておくのもかわいそう。
攻撃してくるわけでもないしルフォンが助けようと手を伸ばす。
「なんで?」
白キツネ少女が手を伸ばし、ルフォンも手を伸ばす。
届く距離に手があるのに白キツネ少女はルフォンの手を取らない。
白キツネ少女はプクッと頬を膨らませる。
「どうやらお前をご指名だぞ、リュード」
「えっ、俺?」
「多分な」
ウィドウは白キツネ少女の視線を辿る。
その先にはリュードがいる。
もしかしてと思う。
リュードが顔を覗かせると白キツネ少女の目が少し輝く。
「……パパ!」
「ぱ……パパァ?」
伸ばしたリュードの手を取る白キツネ少女はとんでもない言葉を口にした。
「え、えええっ!?」
「リュード、いつの間に子供を!?」
「い、いやいやいや! 変なこと言うなよ! 子供なんていないって!」
白キツネ少女はリュードの手を握ったまま穴から出てこず、リュードをジッと見つめる。
もちろんリュードの子でないことはみんな分かりきっているが、パパと呼んだことに大騒ぎになる。
「ひとまず出してやれよ」
「いや……あっちが力を……うわっ!」
リュードが白キツネ少女を引っ張り上げないのではなく、白キツネ少女の方が力を込めてリュードを引っ張っている。
「リューちゃん!」
白キツネ少女の方が脱出しようとしてこないから無理だと言おうとした瞬間、リュードが穴に落ちた。
白キツネ少女がさらに力を込めてリュードを引っ張ったのだ。
やはり敵だったかとみんなが慌てて穴を覗き込むとリュードは無事だった。
「パパァ〜」
「な、なんなんだよ……」
穴の中でリュードは白キツネ少女に抱きつかれて、頬を擦り寄せられていた。
「大……丈夫そうだな」
襲われたのだと焦った。
ある意味では襲われているけど、平和的な襲われだ。
ーーーーー
リュード命名コユキ。
白キツネ少女の名前だ。
極寒のダンジョンの扉は消えてしまい、コユキだけが残された。
コユキに敵意は無く、リュードのことをパパと呼んで懐いている。
「パパ!」
「ダーメ、ママがいるでしょ?」
「むう、ママ……」
そして今はルフォンのことをママと呼んでいる。
どうにも頭にあるミミが同じことからママと認識したようだ。
なんだか色々あったけどとりあえず極寒のダンジョンはクリアして神物を取り戻すことには成功した。
「私が抱っこするから」
コユキは手を伸ばしてリュードに抱っこを要求するが、ルフォンの方がそれを許さずコユキを抱っこする。
別に危害を加えてくるのではないから抱っこぐらいいいのだけど、コユキはリュードに抱っこされるとニッコニコしてスリスリと甘える。
小さい女の子だけど、ちょっとだけメスを感じてルフォンも警戒していた。
ルフォンの抱っこも嫌じゃないらしく、コユキら唇を尖らせて頬を膨らませながらも拒否はしない。
こう見ているとコユキは非常に可愛らしく、父性を刺激される思いがするリュードだった。
興味本位で伸ばされた手にリュードが指を近づけてみるとキュッと指を握ってコユキが笑う。
幸せな夫婦みたいで照れくさくなる。
「ふぅ……判断は任せる」
ウィドウは思考を放棄した。
コユキが何者だとか敵じゃないのかとか考えても答えは出ない。
神物を取り戻せた、それでいい。
神物という人知を超えた代物を相手取った冒険だったのだ。
自分には思いもつかない何かが起きても、それは神のみわざであると思うことにする。
「リュードとルフォンに懐いているからな。俺がどうこうするよりも二人に任せる方がいいだろう」
人の親でもあるウィドウには、コユキぐらいの女の子に関する決断をするのも楽ではない。
判断を押し付けられたリュードだったが、とりあえず連れて行くことにした。
何となくだけど神の世界からの去り際の言葉、イレギュラーなことというのがこのコユキのことでないかと思っていたからである。
そのまま雪原のど真ん中に自分をパパと呼ぶ女の子を放置していけるようなサイコパスでもない。
少なくとも今は敵ではない。
それで十分だ。
「しかし不思議な子ですね」
「不思議なところをあげたら山のようにある。どこの不思議さを指して言っているんだ?」
「この子からは魔力を感じません」
「代わりに神聖力は感じるにゃ」
「そうですね、それが不思議なのです」
生物のみならず世界にあるほとんどのものは魔力を持つ。
この世界で魔力を持たないのは特殊なものか、聖者ぐらいのものだ。
コユキからは魔力は一切感じない。
けれども強い神聖力を感じている。
つまりはコユキは聖者ということになる。
神に愛されしものである、聖者と同じ気配がするのだ。
「にしてはちっちゃいな」
見た目的にはダンジョンのボスであった五尾の白キツネのミニ版、子供版といったところ。
みんなの頭にハテナマークが浮かぶ。
「これはどういうことでしょうか?」
「……分からん」
ダンジョンの中では大人の姿であった五尾の白キツネが、子供姿になってダンジョンの外にいる。
見たことも聞いたこともない話にウィドウすら動揺を隠せない。
「と、とりあえず助けてあげようか……」
このままにしておくのもかわいそう。
攻撃してくるわけでもないしルフォンが助けようと手を伸ばす。
「なんで?」
白キツネ少女が手を伸ばし、ルフォンも手を伸ばす。
届く距離に手があるのに白キツネ少女はルフォンの手を取らない。
白キツネ少女はプクッと頬を膨らませる。
「どうやらお前をご指名だぞ、リュード」
「えっ、俺?」
「多分な」
ウィドウは白キツネ少女の視線を辿る。
その先にはリュードがいる。
もしかしてと思う。
リュードが顔を覗かせると白キツネ少女の目が少し輝く。
「……パパ!」
「ぱ……パパァ?」
伸ばしたリュードの手を取る白キツネ少女はとんでもない言葉を口にした。
「え、えええっ!?」
「リュード、いつの間に子供を!?」
「い、いやいやいや! 変なこと言うなよ! 子供なんていないって!」
白キツネ少女はリュードの手を握ったまま穴から出てこず、リュードをジッと見つめる。
もちろんリュードの子でないことはみんな分かりきっているが、パパと呼んだことに大騒ぎになる。
「ひとまず出してやれよ」
「いや……あっちが力を……うわっ!」
リュードが白キツネ少女を引っ張り上げないのではなく、白キツネ少女の方が力を込めてリュードを引っ張っている。
「リューちゃん!」
白キツネ少女の方が脱出しようとしてこないから無理だと言おうとした瞬間、リュードが穴に落ちた。
白キツネ少女がさらに力を込めてリュードを引っ張ったのだ。
やはり敵だったかとみんなが慌てて穴を覗き込むとリュードは無事だった。
「パパァ〜」
「な、なんなんだよ……」
穴の中でリュードは白キツネ少女に抱きつかれて、頬を擦り寄せられていた。
「大……丈夫そうだな」
襲われたのだと焦った。
ある意味では襲われているけど、平和的な襲われだ。
ーーーーー
リュード命名コユキ。
白キツネ少女の名前だ。
極寒のダンジョンの扉は消えてしまい、コユキだけが残された。
コユキに敵意は無く、リュードのことをパパと呼んで懐いている。
「パパ!」
「ダーメ、ママがいるでしょ?」
「むう、ママ……」
そして今はルフォンのことをママと呼んでいる。
どうにも頭にあるミミが同じことからママと認識したようだ。
なんだか色々あったけどとりあえず極寒のダンジョンはクリアして神物を取り戻すことには成功した。
「私が抱っこするから」
コユキは手を伸ばしてリュードに抱っこを要求するが、ルフォンの方がそれを許さずコユキを抱っこする。
別に危害を加えてくるのではないから抱っこぐらいいいのだけど、コユキはリュードに抱っこされるとニッコニコしてスリスリと甘える。
小さい女の子だけど、ちょっとだけメスを感じてルフォンも警戒していた。
ルフォンの抱っこも嫌じゃないらしく、コユキら唇を尖らせて頬を膨らませながらも拒否はしない。
こう見ているとコユキは非常に可愛らしく、父性を刺激される思いがするリュードだった。
興味本位で伸ばされた手にリュードが指を近づけてみるとキュッと指を握ってコユキが笑う。
幸せな夫婦みたいで照れくさくなる。
「ふぅ……判断は任せる」
ウィドウは思考を放棄した。
コユキが何者だとか敵じゃないのかとか考えても答えは出ない。
神物を取り戻せた、それでいい。
神物という人知を超えた代物を相手取った冒険だったのだ。
自分には思いもつかない何かが起きても、それは神のみわざであると思うことにする。
「リュードとルフォンに懐いているからな。俺がどうこうするよりも二人に任せる方がいいだろう」
人の親でもあるウィドウには、コユキぐらいの女の子に関する決断をするのも楽ではない。
判断を押し付けられたリュードだったが、とりあえず連れて行くことにした。
何となくだけど神の世界からの去り際の言葉、イレギュラーなことというのがこのコユキのことでないかと思っていたからである。
そのまま雪原のど真ん中に自分をパパと呼ぶ女の子を放置していけるようなサイコパスでもない。
少なくとも今は敵ではない。
それで十分だ。
「しかし不思議な子ですね」
「不思議なところをあげたら山のようにある。どこの不思議さを指して言っているんだ?」
「この子からは魔力を感じません」
「代わりに神聖力は感じるにゃ」
「そうですね、それが不思議なのです」
生物のみならず世界にあるほとんどのものは魔力を持つ。
この世界で魔力を持たないのは特殊なものか、聖者ぐらいのものだ。
コユキからは魔力は一切感じない。
けれども強い神聖力を感じている。
つまりはコユキは聖者ということになる。
神に愛されしものである、聖者と同じ気配がするのだ。


