みんな思っていたよりも消耗が激しくて、丸一日休むことになった。
他のみんなにもリュード特性のポーションを渡してのんびりと休んだ。
「飲みやすいな、これ」
「ああ、売ってくれるなら欲しいぐらいだ」
飲みやすいリュードのポーションはみんなにも好評で、ちゃんと体の回復を助けてくれる効果もあった。
魔力が濃いダンジョンの中ということもあって、一日でおおよそ回復した。
魔物に襲われるかもしれないという緊張感もあるので、完全な回復をしようと思ったらもっと時間は必要だ。
ただ時間をかけすぎるとボスなどが復活してくる可能性もある。
一日を限度と定めて休みを取ったので、これ以上は引き延ばさない。
「では、行こうか」
ここまで来て退く選択肢はない。
ウィドウの言葉にみんながうなずく。
先に進む、これが満場一致のみんなの意見である。
「開けるぞ」
扉を開けるのはダリル。
「みんな、準備はいいか?」
「ダリルも気をつけて」
「任せておけ」
ダリルはやや腰を落としてゆっくりと盾を扉に押し付ける。
少しずつ力を込めていくと、扉が動き始めた。
扉はすんなりと開いていき、ある程度押したところで最後まで勝手に開いていった。
警戒していたが特に襲撃もなく扉は開かれた。
「なんだここは?」
「……神殿……ですかね?」
「雰囲気変わりすぎだな」
「とりあえず寒くはないにゃ」
扉の向こうは別世界だった。
別世界というか、どこか巨大な建物の中のような空間が広がっている。
白い石で出来た大きな柱が立ち並び、天井ははるかに高く、正面には一段高くなった台座と黄金の盃が見える。
そして、その前には鎧の騎士がいた。
「神物にゃ……」
黄金の盃を見てニャロが言葉を漏らす。
リュードでも感じる。
見た目にはシンプルな黄金の盃なのに、神々しい気配を放っている。
「じゃあその前にいるのは……」
「神物を守るガーディアンってところだろうな」
真っ白な鎧の騎士は、こちらからも神聖な感じがしている。
威風堂々と神物の前に立つ姿はまさしく守護者といったところだ。
「なるほどな」
ウィドウは納得したようにつぶやいた。
「何がですか?」
「おかしな作りのダンジョンだと思っていた。元々あるダンジョンの中に神物を隠したのだと思っていたけれど……こんな風になっているところを見ると神物の影響でダンジョンが出来たのだな」
神物があるからダンジョンが出来た、ということはケーフィスに直接説明されたリュードしか知らない。
神物があるからそこがダンジョンになるなどと普通の人は考えず、ダンジョンに神物を置いてきたと考えるのが一般的だった。
しかし奇妙なほどに難易度が高く、こんな神物専用の場所まである。
そこに至ってウィドウはダンジョンが先ではなかったと気付いたのだ。
「ここはある種の防衛施設。神物が己を守ろうとして生み出した場所だったのだな」
もしくは神物が人に対する挑戦を叩きつけたのかもしれない。
自分を奪えるならやってみろと。
ケーフィスの神物なのだ、それぐらいのこともするかもしれない。
「あれを倒さなきゃならないのかな?」
「神聖な目的を持っていようとも、話が通じないなら私たちは略奪者に他なりませんからね」
いかに正当な目的があり、正しいものであったとしてもガーディアンにそれを思考して判断する能力はない。
現在リュードたちは神物を奪おうとする略奪者、侵入者である。
崇高な目的を持つ神聖なる略奪者であるけれども、いくらそれを叫んでもガーディアンが神物を明け渡してくれることなどないだろう。
「これが最後の戦いになる……準備はいいか?」
リュードたちも見えているはずなのにガーディアンは動かない。
どうやら近づかなきゃ動き出さないようだ。
このガーディアンとの戦いが最後であるとみんなが確信めいた予感を持っていた。
「待ってくれ」
「ダリル……?」
「私にやらせてくれないか」
前に出たダリルから放たれた予想外の言葉。
真剣な眼差しは冗談ではないことを物語っている。
「……本気なのか?」
「この戦いは俺の、テレサを助けたいというワガママから始まった。神は俺をリュードの下に導き、この場所をお示しくださった。俺はまだ何もなし得ていない。これが俺に与えられた神の試練なのだ」
ここに来るまでにダリルは目立った活躍はしていない。
みんなの力があってここまで来ることができたが、テレサのためにと協力してくれるリュードのためにもここで自分が戦わなければいけないと感じていた。
「俺にやらせてくれ。これは神でも、教会でもない、たった1人の男のケジメのため、やらねばならないのだ」
ダリルはリュードを見据えていた。
他の人も言葉は発さず、リュードとダリルを見ている。
多分リュードがダメと言ったなら周りのみんなもダリルも引いただろう。
「負けたら承知しないぞ」
ただこれは神の試練。
ダリルがテレサを、愛する人を救うために課された試練なのである。
理由は分からない。
でもダリルが乗り越えねばならないような気がしたのだ。
リュードが独断で決めた判断だけど、反対する人はいない。
相手は1体、ガーディアンのみ。
全員でかかれば楽だし、なんなら隙を見て神物だって奪えそうな気もするけれど、ダリルが戦うことが必然のようにみんながそれに納得した。
「行ってこいよ」
「せめて強化はさせてください。それぐらいは神もお許しになるでしょう」
「負けるなよ! 負けそうだったらなんと言われようとも戦いに入るからな」
「がんばるにゃ!」
「みんな……ありがとう」
直接戦いには参加しないけれど、神聖力による強化の支援は行う。
ちょっとズルスレスレな気もするけど、これぐらいはいいだろう。
他のみんなにもリュード特性のポーションを渡してのんびりと休んだ。
「飲みやすいな、これ」
「ああ、売ってくれるなら欲しいぐらいだ」
飲みやすいリュードのポーションはみんなにも好評で、ちゃんと体の回復を助けてくれる効果もあった。
魔力が濃いダンジョンの中ということもあって、一日でおおよそ回復した。
魔物に襲われるかもしれないという緊張感もあるので、完全な回復をしようと思ったらもっと時間は必要だ。
ただ時間をかけすぎるとボスなどが復活してくる可能性もある。
一日を限度と定めて休みを取ったので、これ以上は引き延ばさない。
「では、行こうか」
ここまで来て退く選択肢はない。
ウィドウの言葉にみんながうなずく。
先に進む、これが満場一致のみんなの意見である。
「開けるぞ」
扉を開けるのはダリル。
「みんな、準備はいいか?」
「ダリルも気をつけて」
「任せておけ」
ダリルはやや腰を落としてゆっくりと盾を扉に押し付ける。
少しずつ力を込めていくと、扉が動き始めた。
扉はすんなりと開いていき、ある程度押したところで最後まで勝手に開いていった。
警戒していたが特に襲撃もなく扉は開かれた。
「なんだここは?」
「……神殿……ですかね?」
「雰囲気変わりすぎだな」
「とりあえず寒くはないにゃ」
扉の向こうは別世界だった。
別世界というか、どこか巨大な建物の中のような空間が広がっている。
白い石で出来た大きな柱が立ち並び、天井ははるかに高く、正面には一段高くなった台座と黄金の盃が見える。
そして、その前には鎧の騎士がいた。
「神物にゃ……」
黄金の盃を見てニャロが言葉を漏らす。
リュードでも感じる。
見た目にはシンプルな黄金の盃なのに、神々しい気配を放っている。
「じゃあその前にいるのは……」
「神物を守るガーディアンってところだろうな」
真っ白な鎧の騎士は、こちらからも神聖な感じがしている。
威風堂々と神物の前に立つ姿はまさしく守護者といったところだ。
「なるほどな」
ウィドウは納得したようにつぶやいた。
「何がですか?」
「おかしな作りのダンジョンだと思っていた。元々あるダンジョンの中に神物を隠したのだと思っていたけれど……こんな風になっているところを見ると神物の影響でダンジョンが出来たのだな」
神物があるからダンジョンが出来た、ということはケーフィスに直接説明されたリュードしか知らない。
神物があるからそこがダンジョンになるなどと普通の人は考えず、ダンジョンに神物を置いてきたと考えるのが一般的だった。
しかし奇妙なほどに難易度が高く、こんな神物専用の場所まである。
そこに至ってウィドウはダンジョンが先ではなかったと気付いたのだ。
「ここはある種の防衛施設。神物が己を守ろうとして生み出した場所だったのだな」
もしくは神物が人に対する挑戦を叩きつけたのかもしれない。
自分を奪えるならやってみろと。
ケーフィスの神物なのだ、それぐらいのこともするかもしれない。
「あれを倒さなきゃならないのかな?」
「神聖な目的を持っていようとも、話が通じないなら私たちは略奪者に他なりませんからね」
いかに正当な目的があり、正しいものであったとしてもガーディアンにそれを思考して判断する能力はない。
現在リュードたちは神物を奪おうとする略奪者、侵入者である。
崇高な目的を持つ神聖なる略奪者であるけれども、いくらそれを叫んでもガーディアンが神物を明け渡してくれることなどないだろう。
「これが最後の戦いになる……準備はいいか?」
リュードたちも見えているはずなのにガーディアンは動かない。
どうやら近づかなきゃ動き出さないようだ。
このガーディアンとの戦いが最後であるとみんなが確信めいた予感を持っていた。
「待ってくれ」
「ダリル……?」
「私にやらせてくれないか」
前に出たダリルから放たれた予想外の言葉。
真剣な眼差しは冗談ではないことを物語っている。
「……本気なのか?」
「この戦いは俺の、テレサを助けたいというワガママから始まった。神は俺をリュードの下に導き、この場所をお示しくださった。俺はまだ何もなし得ていない。これが俺に与えられた神の試練なのだ」
ここに来るまでにダリルは目立った活躍はしていない。
みんなの力があってここまで来ることができたが、テレサのためにと協力してくれるリュードのためにもここで自分が戦わなければいけないと感じていた。
「俺にやらせてくれ。これは神でも、教会でもない、たった1人の男のケジメのため、やらねばならないのだ」
ダリルはリュードを見据えていた。
他の人も言葉は発さず、リュードとダリルを見ている。
多分リュードがダメと言ったなら周りのみんなもダリルも引いただろう。
「負けたら承知しないぞ」
ただこれは神の試練。
ダリルがテレサを、愛する人を救うために課された試練なのである。
理由は分からない。
でもダリルが乗り越えねばならないような気がしたのだ。
リュードが独断で決めた判断だけど、反対する人はいない。
相手は1体、ガーディアンのみ。
全員でかかれば楽だし、なんなら隙を見て神物だって奪えそうな気もするけれど、ダリルが戦うことが必然のようにみんながそれに納得した。
「行ってこいよ」
「せめて強化はさせてください。それぐらいは神もお許しになるでしょう」
「負けるなよ! 負けそうだったらなんと言われようとも戦いに入るからな」
「がんばるにゃ!」
「みんな……ありがとう」
直接戦いには参加しないけれど、神聖力による強化の支援は行う。
ちょっとズルスレスレな気もするけど、これぐらいはいいだろう。


