「集中……」
リュードは低めに構えた剣の先を見つめて集中力を高めていた。
剣に込める魔力は大きく、それでいながら勝手気ままに拡散しないようにコントロールする。
全体を美しく、均一に魔力のメッキでも施すように魔力を圧縮して薄くまとわせていく。
どこかを均一にしようとするとどこかが乱れる。
それでも集中が高まるに連れて、魔力が凪いだ水面のように滑らかに剣と一体になっていく。
「リューちゃん!」
戦いに参加していないリュードに五尾の白キツネが気づいた。
異様な雰囲気に危険を察知してリュードを倒さねばやられると本能的に感じる。
ただ今のリュードは危険な雰囲気がありながらも、集中するためにただ突っ立っているだけ。
五尾の白キツネは尻尾の先を一つに集めた。
三尾の時にやっていたように力を集中させて火球を作り出す。
リュードの身長ほどもある大きな火球が作り出されて、すぐさま撃ちだされた。
集中しているリュードはそれに気づいていない。
「危ない!」
「闇が魔を捉える!」
リュードは戦いの中で少し距離が離れていて、助けに入ろうにも間に合わない。
誰もが最悪の未来を予想した。
ただ一人、ウィドウだけが動いていた。
「やらせないぞ!」
リュードの影が地面から離れて、立体的に盛り上がった。
人型の影は風呂敷のように広がってリュードに向かって飛んでいく火球を包み込む。
「くっ……なんで力だ……」
ウィドウが発動させたのは本来なら魔法を捉えて消滅させる防御魔法だった。
しかし包み込んだ火球は込められた魔力が多く、威力が高くてウィドウですら消滅させられない。
「俺だってSランクとしての矜持がある!」
闇の隙間から炎が漏れ出してくる。
額に青筋が浮かぶほど力を込めているのに火球は闇を飛び出そうとしているのだ。
もはや火球を捉えておくことすら限界。
ウィドウは考え方を変えた。
「くっ!」
闇の中から火球が飛び出して魔法が破られてしまった。
「リュードは傷付けさせぬぞ!」
防げなくともリュードに当たらなければいい。
無力化出来ればベストだったが、出来なくてもただ諦めることなんてしない。
これ以上魔法が持たないと感じたウィドウは火球を消すのではない方法を思いついた。
「はああっ!」
影を破って飛び出した火球はリュードに向かって飛んでいったが、リュードに当たらず横を通り過ぎていった。
「ふっ……どうにか上手くいったな」
防ぎ切るのは無理でも軌道を変えるくらいなら出来る。
火球は魔法を破って飛び出したのではない。
ウィドウは軌道をリュードから逸らして闇から火球を出したのであった。
「この! リューちゃんばっかり狙って!」
最初の不意打ちもリュードに対してだった。
リュードに対しての当たりがなんだかすごく強い。
これ以上リュードは狙わせないとルフォンも魔人化して五尾の白キツネに迫る。
両手に持ったナイフを振るい、五尾の白キツネに斬りかかった。
右手のナイフ、そして左手のナイフを振るって五尾の白キツネの首を狙う。
それぞれのナイフを五尾の白キツネは尻尾で防ぐ。
魔力が込められている尻尾のしなやかさは非常に高くて、ナイフの威力が完全に殺されてしまう。
「くらえ!」
ならばこちらも! とルフォンはちょっと体をねじって尻尾を繰り出す。
予想外の攻撃に腕を上げて尻尾を防ぐ五尾の白キツネだけど、腕に衝撃はなくてポフっと優しく尻尾が触れただけだった。
五尾の白キツネのような攻撃力は、ルフォンの尻尾にありはしない。
もしかしたら魔人化して魔力を込めて、かなり練習したら使えるかもしれないけど、そんな練習したこともない。
ただ五尾の白キツネ基準では自分と同じく武器になり得ると思ったので防いだのだ。
ルフォンは当然尻尾で攻撃してやるつもりなんてなくて、一瞬気をひければ良いと思っていた。
「こっちが本命!」
ルフォンの蹴りが五尾の白キツネの腹部にモロに決まる。
大きく怯んだ五尾の白キツネだったけれど、その目はルフォンではなくリュードに向いていた。
五尾の白キツネから見た時、リュードの周りには魔力が渦巻いているように見えていた。
ここまでリュードは強い魔力をある程度コントロールしているものの、溢れ出ている魔力の全てを完全には抑えられていなかった。
そんな魔力がピタリと凪いでいる。
剣だけじゃない。
まるで膜のようにリュードの体を魔力が薄く覆っている。
次の瞬間、リュードの黒い瞳が五尾の白キツネを捉えた。
「ほお? あれは……」
表現するならゾーンに入ったとでも言ったらいいのか、とウィドウは戦いの最中にも関わらず思わず感心してしまった。
リュードは一瞬で五尾の白キツネと距離を詰めた。
五尾の白キツネはゾワッと全身の毛が逆立つ感覚に襲われた。
危険と恐怖を感じ、五尾の白キツネは尻尾を前に出してとりあえず何が来てもいいように防御しようとした。
尻尾に包まれて白い塊にも見えるようになった五尾の白キツネの前で、リュードは剣を大きく振り上げて剣に込められた魔力を雷属性に変化させる。
「若い世代の台頭は喜ばしいものだな」
縦に真っ直ぐ閃光が走ったようだった。
ほんの一瞬遅れて雷鳴の音が轟き、五尾の白キツネは体に広がる電撃にビクビクと体を震わせた。
リュードは低めに構えた剣の先を見つめて集中力を高めていた。
剣に込める魔力は大きく、それでいながら勝手気ままに拡散しないようにコントロールする。
全体を美しく、均一に魔力のメッキでも施すように魔力を圧縮して薄くまとわせていく。
どこかを均一にしようとするとどこかが乱れる。
それでも集中が高まるに連れて、魔力が凪いだ水面のように滑らかに剣と一体になっていく。
「リューちゃん!」
戦いに参加していないリュードに五尾の白キツネが気づいた。
異様な雰囲気に危険を察知してリュードを倒さねばやられると本能的に感じる。
ただ今のリュードは危険な雰囲気がありながらも、集中するためにただ突っ立っているだけ。
五尾の白キツネは尻尾の先を一つに集めた。
三尾の時にやっていたように力を集中させて火球を作り出す。
リュードの身長ほどもある大きな火球が作り出されて、すぐさま撃ちだされた。
集中しているリュードはそれに気づいていない。
「危ない!」
「闇が魔を捉える!」
リュードは戦いの中で少し距離が離れていて、助けに入ろうにも間に合わない。
誰もが最悪の未来を予想した。
ただ一人、ウィドウだけが動いていた。
「やらせないぞ!」
リュードの影が地面から離れて、立体的に盛り上がった。
人型の影は風呂敷のように広がってリュードに向かって飛んでいく火球を包み込む。
「くっ……なんで力だ……」
ウィドウが発動させたのは本来なら魔法を捉えて消滅させる防御魔法だった。
しかし包み込んだ火球は込められた魔力が多く、威力が高くてウィドウですら消滅させられない。
「俺だってSランクとしての矜持がある!」
闇の隙間から炎が漏れ出してくる。
額に青筋が浮かぶほど力を込めているのに火球は闇を飛び出そうとしているのだ。
もはや火球を捉えておくことすら限界。
ウィドウは考え方を変えた。
「くっ!」
闇の中から火球が飛び出して魔法が破られてしまった。
「リュードは傷付けさせぬぞ!」
防げなくともリュードに当たらなければいい。
無力化出来ればベストだったが、出来なくてもただ諦めることなんてしない。
これ以上魔法が持たないと感じたウィドウは火球を消すのではない方法を思いついた。
「はああっ!」
影を破って飛び出した火球はリュードに向かって飛んでいったが、リュードに当たらず横を通り過ぎていった。
「ふっ……どうにか上手くいったな」
防ぎ切るのは無理でも軌道を変えるくらいなら出来る。
火球は魔法を破って飛び出したのではない。
ウィドウは軌道をリュードから逸らして闇から火球を出したのであった。
「この! リューちゃんばっかり狙って!」
最初の不意打ちもリュードに対してだった。
リュードに対しての当たりがなんだかすごく強い。
これ以上リュードは狙わせないとルフォンも魔人化して五尾の白キツネに迫る。
両手に持ったナイフを振るい、五尾の白キツネに斬りかかった。
右手のナイフ、そして左手のナイフを振るって五尾の白キツネの首を狙う。
それぞれのナイフを五尾の白キツネは尻尾で防ぐ。
魔力が込められている尻尾のしなやかさは非常に高くて、ナイフの威力が完全に殺されてしまう。
「くらえ!」
ならばこちらも! とルフォンはちょっと体をねじって尻尾を繰り出す。
予想外の攻撃に腕を上げて尻尾を防ぐ五尾の白キツネだけど、腕に衝撃はなくてポフっと優しく尻尾が触れただけだった。
五尾の白キツネのような攻撃力は、ルフォンの尻尾にありはしない。
もしかしたら魔人化して魔力を込めて、かなり練習したら使えるかもしれないけど、そんな練習したこともない。
ただ五尾の白キツネ基準では自分と同じく武器になり得ると思ったので防いだのだ。
ルフォンは当然尻尾で攻撃してやるつもりなんてなくて、一瞬気をひければ良いと思っていた。
「こっちが本命!」
ルフォンの蹴りが五尾の白キツネの腹部にモロに決まる。
大きく怯んだ五尾の白キツネだったけれど、その目はルフォンではなくリュードに向いていた。
五尾の白キツネから見た時、リュードの周りには魔力が渦巻いているように見えていた。
ここまでリュードは強い魔力をある程度コントロールしているものの、溢れ出ている魔力の全てを完全には抑えられていなかった。
そんな魔力がピタリと凪いでいる。
剣だけじゃない。
まるで膜のようにリュードの体を魔力が薄く覆っている。
次の瞬間、リュードの黒い瞳が五尾の白キツネを捉えた。
「ほお? あれは……」
表現するならゾーンに入ったとでも言ったらいいのか、とウィドウは戦いの最中にも関わらず思わず感心してしまった。
リュードは一瞬で五尾の白キツネと距離を詰めた。
五尾の白キツネはゾワッと全身の毛が逆立つ感覚に襲われた。
危険と恐怖を感じ、五尾の白キツネは尻尾を前に出してとりあえず何が来てもいいように防御しようとした。
尻尾に包まれて白い塊にも見えるようになった五尾の白キツネの前で、リュードは剣を大きく振り上げて剣に込められた魔力を雷属性に変化させる。
「若い世代の台頭は喜ばしいものだな」
縦に真っ直ぐ閃光が走ったようだった。
ほんの一瞬遅れて雷鳴の音が轟き、五尾の白キツネは体に広がる電撃にビクビクと体を震わせた。


