「すまない、ブレス!」
ダリルがメイスと盾を投げ捨てる。
両手神聖力を集めると光に包まれた。
「ふうん!」
「ううっ! た、助かった……けど」
ダリルは聖壁を応用し、両手を防御魔法で包み込んで炎を防いで、ブレスの服を力一杯に引き裂いたのである。
ブレスは情けなく服を破り捨てられて渋い顔をする。
恥ずかしくはあるだろうが、恥ずかしさを感じられるのも生きてこそだ。
「消えない火……やはり聖火なのか?」
「そうかもしれません。あのキツネ……神聖力を感じます」
聖職者たちは白キツネが放つ火に引っ掛かりを覚えていた。
「聖火?」
「そうだ。神聖力があれば決して消えない希望の炎だ」
消えない性質を持つ特殊な火といえば聖火というものがある。
神聖力があるうちは消えずに燃え続ける不思議なもので、ダリルたちはずっと魔物がそのような火を魔物が扱えることに疑問を感じていた。
ここにきて五尾の白キツネからわずかに神聖力を感じるようになった。
やはり消えない火というのは何かの秘密があり、それが聖なる力なのではないかと考えた。
「いや、確かに神性かもしれないにゃ」
「ということは……」
ダリルたち聖職者たちの意見が一致した。
「聖火……それに神性。もしかしたら神物が近いのかもしれません!」
「さ、寒い……」
とんでもないことに気づいた一行の中でブレスは一人で震えている。
雪がなくとも空気の冷たさは健在だ。
下着一枚では寒さも防げない。
みんなでフォローしないながらブレスは下がる。
五尾の白キツネは女性のような見た目をしているのでためらいを最初は感じていたダリルだったけれど、ためらっていると誰かがケガをするほどの力があることはすぐに理解した。
「ふぅん!」
ダリルは横殴りの尻尾を体で受けながら掴む。
体の芯に響くような衝撃があるが、なんとか一本尻尾を押さえる。
これで相手も動けないはずだと力を込めて尻尾を掴まえ続ける。
「ぬわああ!」
そのまま動きを制限してやろう、と思ったダリルだったが甘かった。
相手は魔物。
四尾の白キツネだってパワーでいくと相当なものだった。
五尾になり人化して、さらにボスにまでなるとパワーだって人を遥かに上回る。
尻尾を縦に振った五尾の白キツネに、ダリルがブンと空中に投げ出されて地面に落ちる。
「君の犠牲は忘れない」
五尾の白キツネの背後にウィドウが迫る。
逃げようとした五尾の白キツネは何かに引っ張れたように動けないことに気づいた。
足元の影にはウィドウの黒い魔力をまとったナイフが刺さっている。
逃げられないように闇魔法で移動を制限していたのだ。
これまでの白キツネも防御は低かった。
一撃で終わらせる。
そのつもりで刃が見えなくなるほど真っ黒な魔力を剣に込め横一閃に剣を振った。
「ウィドウ!」
尻尾でウィドウの剣を防ごうとしているのは見えた。
同時に何か白いものが迫ってきてウィドウの顔を殴りつけた。
「ぐっ!?」
五尾の白キツネは肉を切らせて骨を断ってきた。
防御しようとした尻尾の一本は切り落とせた。
しかしそのかわり他の尻尾でウィドウの顔面を殴りつけたのである。
まさか尻尾を犠牲に反撃を繰り出すなんて思いもしなかった。
殴り飛ばされて剣を振り切れなかったので攻撃も尻尾一本の切断にとどまってしまった。
「ふざけたことを……!」
攻撃は最大の防御という言葉もある。
攻撃を中断させるのに攻撃するという荒技で対抗してきたのであった。
とっさに闇魔法でガードしたけれども、白キツネの尻尾はダリルすら軽々と投げる力がある。
大きく弾き返されたウィドウは顔をしかめている。
対して五尾の白キツネは尻尾を一本失っても眉一つ動かさない。
「ここにきてもリュードだと!?」
「来るなら来い! 簡単にはやられるかよ!」
魔法を発動させていたウィドウが尻尾に殴り飛ばされて、五尾の白キツネを拘束していた魔法が解けた。
ウィドウにトドメを刺そうと動き出した五尾の白キツネにリュードが飛びかかった。
てっきりそのままウィドウに追撃するのかと思ったら、治療を終えたばかりで後ろにいるリュードに向かっていってみんな驚く。
「はああっ!」
出し惜しみしている場合じゃない。
リュードは上着を投げ捨て魔人化する。
「あの姿……」
ニャロの支援を受けて強化されたリュードは突撃してくる五尾の白キツネをかわして、左手で五尾の白キツネの左腕を掴む。
力一杯に五尾の白キツネを引き寄せてウィドウのお返しとばかりに顔を殴りつけた。
地面を転がっていく五尾の白キツネ。
鼻が折れるような感触があったので全くのノーダメージではないはずだ。
「リューちゃん!」
「心配かけてすまないな」
聖者の治療はすごいものだとリュードは思った。
完全に折れていた腕が繋がり、痛みすら微塵もなくなった。
殴りつけても折れたところは全く痛まない。
「久々にあったまきた!」
とんでもない不意打ちかまされて、無様な姿を晒した。
女性の姿をしているので戦うのちょっとばかり嫌だなと思っていたけどそんな感情は不意打ちと共に消し飛んだ。
気づいたらウィドウもやられているし、魔人化したためにウロコが急速に冷えていくような感覚があるが、寒さを気にする場合じゃない。
ダリルがメイスと盾を投げ捨てる。
両手神聖力を集めると光に包まれた。
「ふうん!」
「ううっ! た、助かった……けど」
ダリルは聖壁を応用し、両手を防御魔法で包み込んで炎を防いで、ブレスの服を力一杯に引き裂いたのである。
ブレスは情けなく服を破り捨てられて渋い顔をする。
恥ずかしくはあるだろうが、恥ずかしさを感じられるのも生きてこそだ。
「消えない火……やはり聖火なのか?」
「そうかもしれません。あのキツネ……神聖力を感じます」
聖職者たちは白キツネが放つ火に引っ掛かりを覚えていた。
「聖火?」
「そうだ。神聖力があれば決して消えない希望の炎だ」
消えない性質を持つ特殊な火といえば聖火というものがある。
神聖力があるうちは消えずに燃え続ける不思議なもので、ダリルたちはずっと魔物がそのような火を魔物が扱えることに疑問を感じていた。
ここにきて五尾の白キツネからわずかに神聖力を感じるようになった。
やはり消えない火というのは何かの秘密があり、それが聖なる力なのではないかと考えた。
「いや、確かに神性かもしれないにゃ」
「ということは……」
ダリルたち聖職者たちの意見が一致した。
「聖火……それに神性。もしかしたら神物が近いのかもしれません!」
「さ、寒い……」
とんでもないことに気づいた一行の中でブレスは一人で震えている。
雪がなくとも空気の冷たさは健在だ。
下着一枚では寒さも防げない。
みんなでフォローしないながらブレスは下がる。
五尾の白キツネは女性のような見た目をしているのでためらいを最初は感じていたダリルだったけれど、ためらっていると誰かがケガをするほどの力があることはすぐに理解した。
「ふぅん!」
ダリルは横殴りの尻尾を体で受けながら掴む。
体の芯に響くような衝撃があるが、なんとか一本尻尾を押さえる。
これで相手も動けないはずだと力を込めて尻尾を掴まえ続ける。
「ぬわああ!」
そのまま動きを制限してやろう、と思ったダリルだったが甘かった。
相手は魔物。
四尾の白キツネだってパワーでいくと相当なものだった。
五尾になり人化して、さらにボスにまでなるとパワーだって人を遥かに上回る。
尻尾を縦に振った五尾の白キツネに、ダリルがブンと空中に投げ出されて地面に落ちる。
「君の犠牲は忘れない」
五尾の白キツネの背後にウィドウが迫る。
逃げようとした五尾の白キツネは何かに引っ張れたように動けないことに気づいた。
足元の影にはウィドウの黒い魔力をまとったナイフが刺さっている。
逃げられないように闇魔法で移動を制限していたのだ。
これまでの白キツネも防御は低かった。
一撃で終わらせる。
そのつもりで刃が見えなくなるほど真っ黒な魔力を剣に込め横一閃に剣を振った。
「ウィドウ!」
尻尾でウィドウの剣を防ごうとしているのは見えた。
同時に何か白いものが迫ってきてウィドウの顔を殴りつけた。
「ぐっ!?」
五尾の白キツネは肉を切らせて骨を断ってきた。
防御しようとした尻尾の一本は切り落とせた。
しかしそのかわり他の尻尾でウィドウの顔面を殴りつけたのである。
まさか尻尾を犠牲に反撃を繰り出すなんて思いもしなかった。
殴り飛ばされて剣を振り切れなかったので攻撃も尻尾一本の切断にとどまってしまった。
「ふざけたことを……!」
攻撃は最大の防御という言葉もある。
攻撃を中断させるのに攻撃するという荒技で対抗してきたのであった。
とっさに闇魔法でガードしたけれども、白キツネの尻尾はダリルすら軽々と投げる力がある。
大きく弾き返されたウィドウは顔をしかめている。
対して五尾の白キツネは尻尾を一本失っても眉一つ動かさない。
「ここにきてもリュードだと!?」
「来るなら来い! 簡単にはやられるかよ!」
魔法を発動させていたウィドウが尻尾に殴り飛ばされて、五尾の白キツネを拘束していた魔法が解けた。
ウィドウにトドメを刺そうと動き出した五尾の白キツネにリュードが飛びかかった。
てっきりそのままウィドウに追撃するのかと思ったら、治療を終えたばかりで後ろにいるリュードに向かっていってみんな驚く。
「はああっ!」
出し惜しみしている場合じゃない。
リュードは上着を投げ捨て魔人化する。
「あの姿……」
ニャロの支援を受けて強化されたリュードは突撃してくる五尾の白キツネをかわして、左手で五尾の白キツネの左腕を掴む。
力一杯に五尾の白キツネを引き寄せてウィドウのお返しとばかりに顔を殴りつけた。
地面を転がっていく五尾の白キツネ。
鼻が折れるような感触があったので全くのノーダメージではないはずだ。
「リューちゃん!」
「心配かけてすまないな」
聖者の治療はすごいものだとリュードは思った。
完全に折れていた腕が繋がり、痛みすら微塵もなくなった。
殴りつけても折れたところは全く痛まない。
「久々にあったまきた!」
とんでもない不意打ちかまされて、無様な姿を晒した。
女性の姿をしているので戦うのちょっとばかり嫌だなと思っていたけどそんな感情は不意打ちと共に消し飛んだ。
気づいたらウィドウもやられているし、魔人化したためにウロコが急速に冷えていくような感覚があるが、寒さを気にする場合じゃない。


