「影が道をつなぐ」

 ウィドウが火球を避けるために姿を消す。
 今度は流石に白キツネも不用心に後ろを取られるマネはしなかったけれど、全ての白キツネが後ろを確認してしまう。

 けれども後ろにウィドウはいない。
 横に周り込んでナイフを投げていた。

 戦っているのは何もウィドウだけではない。
 ケフィズサンのメンバーもウィドウに合わせて白キツネに突っ込んで倒す。

「すごいにゃあ〜」

 巧みに白キツネをかき乱し、有利に立ち回って白キツネを倒していく。
 プラチナランクにまで上がった実力の秘訣を見たとリュードは思った。

 ウィドウの切り札により白キツネは冷静さを取り戻すことができないままに倒された。

「お疲れ様、リュード」

「ウィドウさん、あれって……」

「闇魔法だ。どうやら知っているようだな?」

 闇属性の魔法、闇魔法。
 言葉だけ聞くと怪しく聞こえる属性だけど、決して怪しいものではない。

 呪術とか禁忌とされる魔法とは全く違って、火属性や雷属性と同じ魔法の一属性である。
 ただし闇魔法はやや特殊で、独学での習得が難しい。

 才能がなきゃ扱うこともできない魔法属性である。
 それゆえに扱える人も少ない秘伝的な属性となっている。

「俺は闇魔法の使い手だ」

 けれども雷属性みたいに受け継ぐ人がいないのではなく、脈々と受け継がられてきた属性ではあるので一定数の使える人はいる。
 その一人がウィドウであった。

「うわぁ、本当に使える人がいたんですね」

 リュードも男子なので闇的な魔法にも多少の憧れはあった。
 希少性に加えて闇を操るなんてカッコいいなんて思っていた時期もあるので、使ってみたいと思ったのだけど村に闇属性を扱える人はいなかった。

 文献も少なく独学での習得はできないので諦めた属性だった。
 特殊な効果を発動することもできる闇魔法は他の魔法と違った魔法も多い。

 白キツネの影に刺さった闇魔法は白キツネをその場に拘束していた。
 そして消えたウィドウは闇魔法で影へと瞬間移動していたのである。

 ウィドウをプラチナランクたらしめるのが、闇魔法だった。

「す……すごいですね!」

「ほう?」

「どうやってやっているんですか! 一番簡単な闇魔法でも自分では難しくて……」

 珍しく興奮した様子のリュードにウィドウも驚いたように眉を上げた。
 諦めた過去があるために闇魔法に関して聞ける人がいることにテンションが上がっている。

 リュードも魔法に関して少々オタク気質なところもある。
 知りたいことがあると聞かずにはいられなかったので、ヴェルデガーを一日中質問攻めにしたこともあった。

「あっ、す、すいません。人に教えられるものじゃないですよね……」

「いやいや、構わんさ。中には一子相伝何ていう使い手もいるが使える人がいるなら教えるものだ。難しいから人を選ぶというだけの話。今はあれだが、後で時間があれば教えることもやぶさかではないぞ」

「ほ、本当ですか!」

「はははっ、なんだかこれまでで1番嬉しそうな顔をしているな! 俺としては優秀なものが闇魔法を使ってくれる方がいい。無理なら諦めればいい話だ」

「うわー、ありがとうございます!」

「熱意があるなら誰でも歓迎だ。リュードならもちろん、才能もありそうだ」

 むしろ闇魔法を使う人は、闇魔法の使い手を増やしたいとすら思っているものも多い。
 習得難易度が高くて挫折した人も多く、良くない噂も流されることもあるので自然と教える人を厳選してしまうのだ。

「あんなリュード初めて見た」

「意外と熱くなりやすいんだよ、リューちゃん」

 魔法に関することだけじゃない。
 剣に関しても何かが掴めそうなら納得がいくまでトコトンやった。

 ウォーケックが休ませてくれと懇願するほど付き合わせたこともある。
 外に出てからは割と冷静に見えているかもしれないけど疑問は解消して、知りたいことはちゃんと調べたい人なのであった。

「まずはここを攻略して神物を見つけることだな」

 闇魔法に夢を抱くような年ではないけれど、憧れはある。
 魔人化した時も黒い見た目でもあるし闇魔法のなじみは良さそうだとずっと思っていた。

 もちろん他の魔法も使えることは戦いの幅を広げてくれることになる。

「さてと、じゃあより気を引き締めて進んでいこうか」

 攻略する理由も増えた。
 リュードはよりやる気に満ち溢れていた。