リュードは気付いた。
そもそも魔法を使う気なら手ではなく補助具である杖の方を前に出すだろうことに。
ならば魔法も使わないのに手のひらをこちらに向けている意思は何なのか。
「戦う気がない……ということか?」
元々意志のない魔物であるスケルトンから敵意なんてものを感じはしない。
さらにこのスケルトンからは攻撃の意思すら感じさせない。
リュードとルフォンは顔を見合わせる。
まだ距離もあるし攻撃されても反応できる。
試しにリュードが剣を下ろすとスケルトンメイジが1度うなずいた、気がした。
「あーあー、聞こえますか」
「リューちゃん、何か変な声聞こえる!」
「大丈夫だ、俺にも聞こえてる」
「あぁ、良かった」
スケルトンメイジが手を振っている。
「今話してる、というか伝えてるのはあんた……なのか?」
耳で聞こえている感覚よりも頭の中に響いてくるみたいに言葉が聞こえてきている感じがする。
「そうだよ。初めまして、初めてのお客さん」
カチカチと音を立ててスケルトンメイジが笑っている。
笑っているように見えているだけなのだが間違いなく笑っていると思えるから不思議だ。
「そう警戒しないでおくれ。他のみんなも僕が言い聞かせてるからもう攻撃もしないから」
スケルトンメイジがスッと手振ると後ろのスケルトンたちが一歩下がる。
「…………いいだろう」
「ありがとう。歓迎するよ。こんなところで話すのも何だからどうぞこっちに」
リュードは剣の鞘をカバンから取り出して腰につけて剣を収め、ルフォンもリュードにならってナイフをしまう。
背を向けて階段の方に向かうスケルトンメイジを追いかけるか一瞬悩んだ。
ルフォンも不安そうだしこのまま切り倒してしまった方がいいなんて考えも浮かぶも、なるようにしかならないかと考え直して付いて行ってみる。
いざとなれば竜人化でもすれば負けはしない。
ルフォンはリュードにピタリとくっついて離れない。
ついていった先はリュードたちが落ちた階にある一室だった。
隅にベッド、壁際に大きめのデスクと客室のような雰囲気のある部屋になっている。
部屋にはデスクのためのイスが1つに、リュードたち用なのかイス2つが部屋の真ん中に不自然に置かれている。
物が少なく整然と整理された部屋なのに真ん中に元々イスが2つ置いてあったとは考えにくい。
「まあ座っておくれ。そのクッション付きの良いイスはこの船に2つしかないんだ。といってももう座る人もいないからね、イスも座ってもらった方が嬉しいだろうさ」
そう言ってデスクのイスに座るスケルトンメイジ。
確かに見てみるとスケルトンメイジが座っているイスは木で作られたシンプルなもので勧められたイスはクッションが打ち付けてある少しお高めのイスだった。
勧められるままにリュードとルフォンはイスに座る。
ルフォンは少しイスをリュードの近くに寄せていた。
「さぁて、まずは自己紹介といこうか。僕はゼムト。ゼムシュトーム・ヘーランドって名前で、僕の横に控えているのが多分ガイデン・マクフェウス」
「多分……?」
「そっ、多分さ、お嬢さん。あいにく僕は骨で個人を認識できる能力はなくてね」
「俺はシューナリュードでこっちはルフォンだ」
「よろしくね。そうだな……僕の、僕達の身の上話を聞いてもらいたいところだけど長くなるから先に君達がどうしてここにいるのか聞こうかな」
「どうしてと言ったって……」
リュードは簡単にここまでの経緯、特に話すこともないのでサラッと穴が空いて落ちたらここに居た旨の話をした。
「それはまた運がなかったね。ここは西の山脈、僕らからすれば東の山脈のシコウザン山脈だね。それにしても驚いたな。山脈を越えた先、さらに東にあるルーロニアまでの間の死の森に住んでいる人がいるなんてね」
「死の森?」
「濃い魔力に覆われ凶悪な魔物が闊歩する不干渉地帯が死の森さ。僕達の間では普通の生き物は近寄ることすらできない超危険な森と言われてるんだよ。
そもそも大きい山を越えなきゃいけないから行こうと思っても行けるものでもないけどさ」
「へぇ〜……」
知らなかったとリュードは感心した。
言われてみれば強い魔物が多く危険なところかもしれないとは思っていた。
しかしそんな物騒な名前で呼ばれているなんて思いもしなかった。
村の大人達が強いからリュードの村では魔物に苦しんだこともない。
長らく住んできたのでちゃんと危険なラインも分かっているのでよほどのことがなければ死者なんかは出ない。
魔力についても薬草の品質が良くなる程度の認識しかない。
これはヤバいなとリュードは頭の片隅で感じた。
旅に出る前に思わぬところで常識のズレが見つかった。
これは幸運なのか不幸なのか分からないけれど自分で自分のことをそれなりに常識的だと考えていたのは危険な考えだったことを思い知った。
ベラベラと死の森にある村から出てきたと言わない方がいいかもしれない。
死の森に普通に住んでいるリュードたちは実は異常者集団になるのかもしれないのだから。
「上の穴からね……じゃあ半分僕達のせいみたいなものかな!」
ゼムトがカラカラ音を立てて笑う。
「それってどういうこと?」
人間臭さ溢れるゼムトに恐怖も薄れてきたのかルフォンの態度もいつも通りになってきている。
そもそも魔法を使う気なら手ではなく補助具である杖の方を前に出すだろうことに。
ならば魔法も使わないのに手のひらをこちらに向けている意思は何なのか。
「戦う気がない……ということか?」
元々意志のない魔物であるスケルトンから敵意なんてものを感じはしない。
さらにこのスケルトンからは攻撃の意思すら感じさせない。
リュードとルフォンは顔を見合わせる。
まだ距離もあるし攻撃されても反応できる。
試しにリュードが剣を下ろすとスケルトンメイジが1度うなずいた、気がした。
「あーあー、聞こえますか」
「リューちゃん、何か変な声聞こえる!」
「大丈夫だ、俺にも聞こえてる」
「あぁ、良かった」
スケルトンメイジが手を振っている。
「今話してる、というか伝えてるのはあんた……なのか?」
耳で聞こえている感覚よりも頭の中に響いてくるみたいに言葉が聞こえてきている感じがする。
「そうだよ。初めまして、初めてのお客さん」
カチカチと音を立ててスケルトンメイジが笑っている。
笑っているように見えているだけなのだが間違いなく笑っていると思えるから不思議だ。
「そう警戒しないでおくれ。他のみんなも僕が言い聞かせてるからもう攻撃もしないから」
スケルトンメイジがスッと手振ると後ろのスケルトンたちが一歩下がる。
「…………いいだろう」
「ありがとう。歓迎するよ。こんなところで話すのも何だからどうぞこっちに」
リュードは剣の鞘をカバンから取り出して腰につけて剣を収め、ルフォンもリュードにならってナイフをしまう。
背を向けて階段の方に向かうスケルトンメイジを追いかけるか一瞬悩んだ。
ルフォンも不安そうだしこのまま切り倒してしまった方がいいなんて考えも浮かぶも、なるようにしかならないかと考え直して付いて行ってみる。
いざとなれば竜人化でもすれば負けはしない。
ルフォンはリュードにピタリとくっついて離れない。
ついていった先はリュードたちが落ちた階にある一室だった。
隅にベッド、壁際に大きめのデスクと客室のような雰囲気のある部屋になっている。
部屋にはデスクのためのイスが1つに、リュードたち用なのかイス2つが部屋の真ん中に不自然に置かれている。
物が少なく整然と整理された部屋なのに真ん中に元々イスが2つ置いてあったとは考えにくい。
「まあ座っておくれ。そのクッション付きの良いイスはこの船に2つしかないんだ。といってももう座る人もいないからね、イスも座ってもらった方が嬉しいだろうさ」
そう言ってデスクのイスに座るスケルトンメイジ。
確かに見てみるとスケルトンメイジが座っているイスは木で作られたシンプルなもので勧められたイスはクッションが打ち付けてある少しお高めのイスだった。
勧められるままにリュードとルフォンはイスに座る。
ルフォンは少しイスをリュードの近くに寄せていた。
「さぁて、まずは自己紹介といこうか。僕はゼムト。ゼムシュトーム・ヘーランドって名前で、僕の横に控えているのが多分ガイデン・マクフェウス」
「多分……?」
「そっ、多分さ、お嬢さん。あいにく僕は骨で個人を認識できる能力はなくてね」
「俺はシューナリュードでこっちはルフォンだ」
「よろしくね。そうだな……僕の、僕達の身の上話を聞いてもらいたいところだけど長くなるから先に君達がどうしてここにいるのか聞こうかな」
「どうしてと言ったって……」
リュードは簡単にここまでの経緯、特に話すこともないのでサラッと穴が空いて落ちたらここに居た旨の話をした。
「それはまた運がなかったね。ここは西の山脈、僕らからすれば東の山脈のシコウザン山脈だね。それにしても驚いたな。山脈を越えた先、さらに東にあるルーロニアまでの間の死の森に住んでいる人がいるなんてね」
「死の森?」
「濃い魔力に覆われ凶悪な魔物が闊歩する不干渉地帯が死の森さ。僕達の間では普通の生き物は近寄ることすらできない超危険な森と言われてるんだよ。
そもそも大きい山を越えなきゃいけないから行こうと思っても行けるものでもないけどさ」
「へぇ〜……」
知らなかったとリュードは感心した。
言われてみれば強い魔物が多く危険なところかもしれないとは思っていた。
しかしそんな物騒な名前で呼ばれているなんて思いもしなかった。
村の大人達が強いからリュードの村では魔物に苦しんだこともない。
長らく住んできたのでちゃんと危険なラインも分かっているのでよほどのことがなければ死者なんかは出ない。
魔力についても薬草の品質が良くなる程度の認識しかない。
これはヤバいなとリュードは頭の片隅で感じた。
旅に出る前に思わぬところで常識のズレが見つかった。
これは幸運なのか不幸なのか分からないけれど自分で自分のことをそれなりに常識的だと考えていたのは危険な考えだったことを思い知った。
ベラベラと死の森にある村から出てきたと言わない方がいいかもしれない。
死の森に普通に住んでいるリュードたちは実は異常者集団になるのかもしれないのだから。
「上の穴からね……じゃあ半分僕達のせいみたいなものかな!」
ゼムトがカラカラ音を立てて笑う。
「それってどういうこと?」
人間臭さ溢れるゼムトに恐怖も薄れてきたのかルフォンの態度もいつも通りになってきている。