「あいつ……遠距離に専念するつもりか!」
三尾の白キツネは再び尻尾の先に青い炎の球を作り出す。
自分の役割をよく理解しているなとリュードは感じた。
二尾の白キツネがかき乱しながら、三尾の白キツネが離れたところから火球を飛ばしてくる。
当たっても多少痛いで済むスノーケイブの雪玉とは大違いで、当たれば焼死の白キツネの火球は気を使う。
「奴は私に任せろ!」
戦いの中をウィドウが飛び出して三尾の白キツネに向かう。
悠長に二尾の白キツネを倒してからよりも、誰かが三尾の白キツネの気をひいた方がいいと判断した。
三尾の白キツネは火球をウィドウに放つ。
「黒い魔力……」
火属性に耐性のある白キツネに、火属性をまとった剣では効果が薄い。
ウィドウの剣がまとった魔力が黒く変化をして、リュードは思わずウィドウの戦いに目を引かれてしまった。
連続して放たれた火球をかわし、切って捨てる。
黒い魔力は剣を保護して、燃えないように防いでいる。
「あれなら俺でもできそうだな」
黒い魔力は出せないが、どうやら魔力を属性変化させているようだと気がついた。
雷属性の魔力をまとって戦えば、白キツネの火球も剣で切れそうだとリュードは学んだ。
リュードやルフォンは速さで無理やりついていっている感じだが、ウィドウは相手をよく観察し、先読みして白キツネの動きについていっている。
三尾の白キツネは逃げ回りながら火球を放つが、ウィドウには通じない。
熟練した戦い方であると感心してしまう。
まだ二尾の白キツネも片付いていないのに参考になるなとリュードはついついウィドウの戦いに視線が向いてしまった。
経験と確かな観察眼に裏打ちされた冷徹で無情な剣は見習うことが多い。
「楽な相手ではなくなったな」
ケガ人もなく白キツネは倒したけれど、戦闘における余裕はだいぶなくなった。
相手も遠距離攻撃を仕掛けてくることが分かったので、これまでと戦い方も変えていかねばならない。
消えない炎の方が厄介なので先に遠距離攻撃を倒したいという思いがある。
けれども懸念はある。
「なあ、あの尻尾……どこまで増えると思う?」
倒木を見つけたのでそこで休憩を取ることにした。
倒れた木を切って薪木にして大きめの焚き火にする。
ポツリとブレスがつぶやいた。
ここまでで白キツネの尻尾は一本から三本に増えた。
尻尾が増えるたびに白キツネの戦闘力は増して、三本になると魔法まで放つようになった。
実際に気にしているのは尻尾の本数よりもどこまで白キツネが強くなるかである。
それともう一つ予想されることがある。
「少なくとも次の白キツネの集団に一尾はいないだろうな」
最初は一尾だけで二尾が混ざり、二尾だけになり、次は二尾に三尾が混ざり、ときている。
となると次の襲撃は三尾の白キツネだけになることが予想されるのだ。
全部の白キツネが消えない炎を放ってくるととても面倒な相手になるとブレスは大きなため息をついた。
四尾、五尾と尻尾が増えていくとどうなるのか予想もつかない。
「案外ここで終わりとか?」
ラストの楽観的な予想。
希望でもあるかもしれない。
三尾まで増えて次はボス。
流れ的には悪くないので全然あり得る予想ではある。
それなら全然戦える。
「九かな?」
「九!? そりゃあ辛いだろ」
リュードの大胆予想。
前世の記憶があるリュードにしてみると、九尾の狐なんてイメージがあるのでもしかすると、あり得るもかもしれないと思っていた。
今の速さで強くなって九尾まで増えたら一体相手にするだけでも無理になるかもしれない。
ただ妄想するのは自由だ。
みんな口々に九は無いと言う。
みんなからしてみれば中途半端な数字だし、いないだろうというよりはそこまでいってほしくないのが本音である。
「今のやつの三倍だぞ? 三倍強くなるわけじゃないけど……そこまでいったら本当に攻略不可になっちまう」
「そうだにゃ……いっても五ぐらいかにゃ?」
「それでも多いが妥当なとこかな。あんまり増えないでほしいけどさ」
どこが終わりか分からない。
どこまで戦い、どこで退くか、どれほど力を温存し、どれほど力を出すか。
先の見えない戦いにペース配分すらもままならない。
けれど温存して戦うのも辛くはなってきてしまった。
仮にリュードの言うように九まであるとしたら多少の余力を残しておかないとその前に力尽きてしまう。
難しい選択を迫られている。
幸いなことに休んでいる最中に白キツネの襲撃はなかった。
外のような環境ではあるが、今いるのはダンジョンの中だ。
一定程度進むと次の魔物が出てくるウェーブタイプの出現パターンなのではないかとウィドウは言っていた。
レッドットベアは何ヶ所かにあるリスポーンポイントにランダムに出現するタイプ。
スノーケイブは向こうのほうから襲撃してくるタイプ。
よくみるとパターンというか、ルールのようなものがある。
「一応ダンジョンなんだな……」
「自然環境にも近いが……よく観察すると自然にはあり得ないようなルールが存在していることもある。それを利用すればこちらの攻略も少しは楽になる」
休憩のつもりだったけれど、安全そうなのでそのままそこに泊まることにした。
ダリルも完全な本調子ではないし休めるタイミングで休んでおく。
白キツネの襲撃が本当に進むと出てくるウェーブタイプなら一戦ごとに休んでもいい。
ルフォンのご飯を食べてしっかりとテントの中を温めて眠る。
常に緊張状態あった中でも、こうして一度ゆるりと休めるとかなり体の調子が回復した気がした。
三尾の白キツネは再び尻尾の先に青い炎の球を作り出す。
自分の役割をよく理解しているなとリュードは感じた。
二尾の白キツネがかき乱しながら、三尾の白キツネが離れたところから火球を飛ばしてくる。
当たっても多少痛いで済むスノーケイブの雪玉とは大違いで、当たれば焼死の白キツネの火球は気を使う。
「奴は私に任せろ!」
戦いの中をウィドウが飛び出して三尾の白キツネに向かう。
悠長に二尾の白キツネを倒してからよりも、誰かが三尾の白キツネの気をひいた方がいいと判断した。
三尾の白キツネは火球をウィドウに放つ。
「黒い魔力……」
火属性に耐性のある白キツネに、火属性をまとった剣では効果が薄い。
ウィドウの剣がまとった魔力が黒く変化をして、リュードは思わずウィドウの戦いに目を引かれてしまった。
連続して放たれた火球をかわし、切って捨てる。
黒い魔力は剣を保護して、燃えないように防いでいる。
「あれなら俺でもできそうだな」
黒い魔力は出せないが、どうやら魔力を属性変化させているようだと気がついた。
雷属性の魔力をまとって戦えば、白キツネの火球も剣で切れそうだとリュードは学んだ。
リュードやルフォンは速さで無理やりついていっている感じだが、ウィドウは相手をよく観察し、先読みして白キツネの動きについていっている。
三尾の白キツネは逃げ回りながら火球を放つが、ウィドウには通じない。
熟練した戦い方であると感心してしまう。
まだ二尾の白キツネも片付いていないのに参考になるなとリュードはついついウィドウの戦いに視線が向いてしまった。
経験と確かな観察眼に裏打ちされた冷徹で無情な剣は見習うことが多い。
「楽な相手ではなくなったな」
ケガ人もなく白キツネは倒したけれど、戦闘における余裕はだいぶなくなった。
相手も遠距離攻撃を仕掛けてくることが分かったので、これまでと戦い方も変えていかねばならない。
消えない炎の方が厄介なので先に遠距離攻撃を倒したいという思いがある。
けれども懸念はある。
「なあ、あの尻尾……どこまで増えると思う?」
倒木を見つけたのでそこで休憩を取ることにした。
倒れた木を切って薪木にして大きめの焚き火にする。
ポツリとブレスがつぶやいた。
ここまでで白キツネの尻尾は一本から三本に増えた。
尻尾が増えるたびに白キツネの戦闘力は増して、三本になると魔法まで放つようになった。
実際に気にしているのは尻尾の本数よりもどこまで白キツネが強くなるかである。
それともう一つ予想されることがある。
「少なくとも次の白キツネの集団に一尾はいないだろうな」
最初は一尾だけで二尾が混ざり、二尾だけになり、次は二尾に三尾が混ざり、ときている。
となると次の襲撃は三尾の白キツネだけになることが予想されるのだ。
全部の白キツネが消えない炎を放ってくるととても面倒な相手になるとブレスは大きなため息をついた。
四尾、五尾と尻尾が増えていくとどうなるのか予想もつかない。
「案外ここで終わりとか?」
ラストの楽観的な予想。
希望でもあるかもしれない。
三尾まで増えて次はボス。
流れ的には悪くないので全然あり得る予想ではある。
それなら全然戦える。
「九かな?」
「九!? そりゃあ辛いだろ」
リュードの大胆予想。
前世の記憶があるリュードにしてみると、九尾の狐なんてイメージがあるのでもしかすると、あり得るもかもしれないと思っていた。
今の速さで強くなって九尾まで増えたら一体相手にするだけでも無理になるかもしれない。
ただ妄想するのは自由だ。
みんな口々に九は無いと言う。
みんなからしてみれば中途半端な数字だし、いないだろうというよりはそこまでいってほしくないのが本音である。
「今のやつの三倍だぞ? 三倍強くなるわけじゃないけど……そこまでいったら本当に攻略不可になっちまう」
「そうだにゃ……いっても五ぐらいかにゃ?」
「それでも多いが妥当なとこかな。あんまり増えないでほしいけどさ」
どこが終わりか分からない。
どこまで戦い、どこで退くか、どれほど力を温存し、どれほど力を出すか。
先の見えない戦いにペース配分すらもままならない。
けれど温存して戦うのも辛くはなってきてしまった。
仮にリュードの言うように九まであるとしたら多少の余力を残しておかないとその前に力尽きてしまう。
難しい選択を迫られている。
幸いなことに休んでいる最中に白キツネの襲撃はなかった。
外のような環境ではあるが、今いるのはダンジョンの中だ。
一定程度進むと次の魔物が出てくるウェーブタイプの出現パターンなのではないかとウィドウは言っていた。
レッドットベアは何ヶ所かにあるリスポーンポイントにランダムに出現するタイプ。
スノーケイブは向こうのほうから襲撃してくるタイプ。
よくみるとパターンというか、ルールのようなものがある。
「一応ダンジョンなんだな……」
「自然環境にも近いが……よく観察すると自然にはあり得ないようなルールが存在していることもある。それを利用すればこちらの攻略も少しは楽になる」
休憩のつもりだったけれど、安全そうなのでそのままそこに泊まることにした。
ダリルも完全な本調子ではないし休めるタイミングで休んでおく。
白キツネの襲撃が本当に進むと出てくるウェーブタイプなら一戦ごとに休んでもいい。
ルフォンのご飯を食べてしっかりとテントの中を温めて眠る。
常に緊張状態あった中でも、こうして一度ゆるりと休めるとかなり体の調子が回復した気がした。


