ラストにとっては最悪な一日だった。
まさか魔物に見染められて、戦いの最中に誘拐されることがあるとは誰も思わない。
非常に大きな恐怖とうっとりとした目で自分を見つめていたスノーケイブキングを思い出した時の気持ち悪さ凄まじい。
そんな時はリュードを思い描く。
颯爽と助けに来てくれたリュードを思い描き、リュードとラストのコンビネーションになすすべもなく倒されたスノーケイブキングの姿をイメージして、心の穏やかさを取り戻す。
寒いのであまり汗をかかないし服も脱ぎたくないのであまり体をタオルで拭くこともしない。
しかし抱きつくほどの距離に近づくと、流石に少しリュードの匂いがした。
それもまた良しだとスノーケイブキングの記憶を上塗りするように思い出す。
ついでに頬を氷で切った。
それを拭うふりをして指についた血をさっと舐めとった。
胸いっぱいお腹いっぱいな気分。
「よしよしラストちゃん怖かったね〜」
そんなことを考えているなんて知らないルフォンはラストはチヤホヤしていた。
けれどこのラスト、意外と強かなのであった。
リュードで嫌な記憶を上書きして、助けてもらったことをとにかく頭に刷り込む。
幼いことから楽しいことが少なかったラストの処世術の一つでもあった。
ほんの少しでも良いことがあればそれを思い、楽しかったのだと思い込む。
いや実際スノーケイブキングに接触していた時間を除けば割と楽しくやっていた。
あんな風に助けに来てくれるならさらわれても悪くなかったかなと思えてくるぐらいだった。
「何はともあれラストの魅力に助けられたってことだな」
「もー! やめてよー!」
慣れない環境の中でレッドットベアを倒して、雪の中を移動してきて、さらに周りが変化して気も休まる暇がない。
吹雪まで起きて気温はさらに下がって、その中でスノーケイブの大群に襲われる。
スノーケイブキングが指揮を取り、かなりの知能も見せつけながら戦ってくる。
過去に誰も攻略ができなかったことも納得の難易度だ。
リュードたちだって誰かが命を落としてもおかしくない状況だったのだけど、ラストに救われた。
スノーケイブキングがラストに一目惚れをしてさらうなんて選択をした。
結果スノーケイブの大群は統率を失い、単独になったスノーケイブキングは最後までラストに心惑わせたまま倒れた。
誰も予想しなかった結末だけど、リュードたちにとってかなり良い結末に落ち着いた。
どれもこれもラストがスノーケイブキングを落としたことによる功績である。
「ただ怖かっただけだかんね!」
けれどラストとしては、スノーケイブキングにモテたって嬉しかない。
ラストのおかげと持ち上げられても特別何かをして、あの結果が生まれたのでもない。
勝手に惚れられて勝手に自滅した。
ラストの認識はそれぐらいだった。
「ほんとムカつく、あの猿!」
「それだけ怒れるなら元気だな」
普通の人ならトラウマになってもおかしくない出来事であった。
精神的に弱い人なら参ってしまうこともあるのだが、ラストは平然と怒っていた。
多少のトラウマはあるだろうけれど、怒れるぐらいに精神は安定している。
かなり精神的に強い子であるとウィドウは驚いていた。
「まあ、誘拐されてもリュードが助けに来てくれるからね!」
ラストはフンと鼻息を立てる。
「そうだな。何度だって助けてやるけど……誘拐なんてされない方がいい」
「それは……そうだね」
「ボスを倒したせいか、スノーケイブも出てこなくなったな」
「周りも変化してきましたね」
リュードたちは道なき道を進む。
氷の壁で囲まれた不思議な場所は、これまでの場所から大きく環境が変化した場所なので進んだ場所だと考えられた。
なのでそのまま壁伝いに進んでみた。
それが正解だったのか、あるいはダンジョンが導いているのか知らないけど、氷の壁のあった不思議な場所からいつの間にかまた山になった。
けれど今度は上りではなく緩やかに下っていっている。
スノーケイブの襲撃もなく、ダリルも多少休んで回復し、歩くぐらいなら問題も無くなった。
体力や神聖力の回復を優先してもらうために夜の見張り番などはダリルは飛ばされることになった。
晩御飯もちょっと豪勢にして神聖力も戻ってきている。
「レッドットベアの時のことも考えるとあれが中ボスなんだろうな。……なんとなく、場所が階層のように分かれているみたいだな」
広いフィールド型ダンジョンだと思ったけれど、実際の作りとしては階層型のダンジョンのようなものではないかとウィドウは考えていた。
シームレス階層とでも言ったらいい。
第一階層がただの雪原でレッドットベアが出てくる。
ボスレッドットベアが第一階層のボスでダンジョン全体で言う中ボスだ。
第二階層が第一階層から進んで雪山。
やや起伏のある緩やかな坂が続いている地形になった。
出てくる魔物はスノーケイブで、スノーケイブキングが第二階層のボスになる。
おそらくスノーケイブキングもダンジョンとしてみるとダンジョン全体のボスでなく中ボスである。
目的のものも見つかっていないし、下りになったということはまだダンジョンの変化は続いていることになる。
「神物に関しての手かがりはありませんね」
そう、神物こそがこのダンジョンに来た最大の目的なのである。
今のところ神物っぽいものはなく、神物から感じられるという神性なる不思議な感じもしないらしい。
まさか魔物に見染められて、戦いの最中に誘拐されることがあるとは誰も思わない。
非常に大きな恐怖とうっとりとした目で自分を見つめていたスノーケイブキングを思い出した時の気持ち悪さ凄まじい。
そんな時はリュードを思い描く。
颯爽と助けに来てくれたリュードを思い描き、リュードとラストのコンビネーションになすすべもなく倒されたスノーケイブキングの姿をイメージして、心の穏やかさを取り戻す。
寒いのであまり汗をかかないし服も脱ぎたくないのであまり体をタオルで拭くこともしない。
しかし抱きつくほどの距離に近づくと、流石に少しリュードの匂いがした。
それもまた良しだとスノーケイブキングの記憶を上塗りするように思い出す。
ついでに頬を氷で切った。
それを拭うふりをして指についた血をさっと舐めとった。
胸いっぱいお腹いっぱいな気分。
「よしよしラストちゃん怖かったね〜」
そんなことを考えているなんて知らないルフォンはラストはチヤホヤしていた。
けれどこのラスト、意外と強かなのであった。
リュードで嫌な記憶を上書きして、助けてもらったことをとにかく頭に刷り込む。
幼いことから楽しいことが少なかったラストの処世術の一つでもあった。
ほんの少しでも良いことがあればそれを思い、楽しかったのだと思い込む。
いや実際スノーケイブキングに接触していた時間を除けば割と楽しくやっていた。
あんな風に助けに来てくれるならさらわれても悪くなかったかなと思えてくるぐらいだった。
「何はともあれラストの魅力に助けられたってことだな」
「もー! やめてよー!」
慣れない環境の中でレッドットベアを倒して、雪の中を移動してきて、さらに周りが変化して気も休まる暇がない。
吹雪まで起きて気温はさらに下がって、その中でスノーケイブの大群に襲われる。
スノーケイブキングが指揮を取り、かなりの知能も見せつけながら戦ってくる。
過去に誰も攻略ができなかったことも納得の難易度だ。
リュードたちだって誰かが命を落としてもおかしくない状況だったのだけど、ラストに救われた。
スノーケイブキングがラストに一目惚れをしてさらうなんて選択をした。
結果スノーケイブの大群は統率を失い、単独になったスノーケイブキングは最後までラストに心惑わせたまま倒れた。
誰も予想しなかった結末だけど、リュードたちにとってかなり良い結末に落ち着いた。
どれもこれもラストがスノーケイブキングを落としたことによる功績である。
「ただ怖かっただけだかんね!」
けれどラストとしては、スノーケイブキングにモテたって嬉しかない。
ラストのおかげと持ち上げられても特別何かをして、あの結果が生まれたのでもない。
勝手に惚れられて勝手に自滅した。
ラストの認識はそれぐらいだった。
「ほんとムカつく、あの猿!」
「それだけ怒れるなら元気だな」
普通の人ならトラウマになってもおかしくない出来事であった。
精神的に弱い人なら参ってしまうこともあるのだが、ラストは平然と怒っていた。
多少のトラウマはあるだろうけれど、怒れるぐらいに精神は安定している。
かなり精神的に強い子であるとウィドウは驚いていた。
「まあ、誘拐されてもリュードが助けに来てくれるからね!」
ラストはフンと鼻息を立てる。
「そうだな。何度だって助けてやるけど……誘拐なんてされない方がいい」
「それは……そうだね」
「ボスを倒したせいか、スノーケイブも出てこなくなったな」
「周りも変化してきましたね」
リュードたちは道なき道を進む。
氷の壁で囲まれた不思議な場所は、これまでの場所から大きく環境が変化した場所なので進んだ場所だと考えられた。
なのでそのまま壁伝いに進んでみた。
それが正解だったのか、あるいはダンジョンが導いているのか知らないけど、氷の壁のあった不思議な場所からいつの間にかまた山になった。
けれど今度は上りではなく緩やかに下っていっている。
スノーケイブの襲撃もなく、ダリルも多少休んで回復し、歩くぐらいなら問題も無くなった。
体力や神聖力の回復を優先してもらうために夜の見張り番などはダリルは飛ばされることになった。
晩御飯もちょっと豪勢にして神聖力も戻ってきている。
「レッドットベアの時のことも考えるとあれが中ボスなんだろうな。……なんとなく、場所が階層のように分かれているみたいだな」
広いフィールド型ダンジョンだと思ったけれど、実際の作りとしては階層型のダンジョンのようなものではないかとウィドウは考えていた。
シームレス階層とでも言ったらいい。
第一階層がただの雪原でレッドットベアが出てくる。
ボスレッドットベアが第一階層のボスでダンジョン全体で言う中ボスだ。
第二階層が第一階層から進んで雪山。
やや起伏のある緩やかな坂が続いている地形になった。
出てくる魔物はスノーケイブで、スノーケイブキングが第二階層のボスになる。
おそらくスノーケイブキングもダンジョンとしてみるとダンジョン全体のボスでなく中ボスである。
目的のものも見つかっていないし、下りになったということはまだダンジョンの変化は続いていることになる。
「神物に関しての手かがりはありませんね」
そう、神物こそがこのダンジョンに来た最大の目的なのである。
今のところ神物っぽいものはなく、神物から感じられるという神性なる不思議な感じもしないらしい。


