「きゃああああっ!」
雪が舞い、砕けた氷が飛び散る。
飛んできた氷の破片がリュードの頬をかすめて浅く切り裂く。
飛び上がったリュードは投げて壁に刺した剣の上に着地し、抱きかかえたラストに覆いかぶさるようにして氷の破片から守る。
「……ダ、ダリル!」
逃げるのに必死でダリルの方まで気が回らなかった。
ようやく轟音が止んで振り返ると、そこには砕けた氷壁が山となっていた。
リュードたちがいる位置よりも下では氷と雪の煙がまだ状況を隠している。
少しばかり無理矢理過ぎた。
ただまさか上部全体が崩壊するだなんて思いもしない。
ようやく晴れて来たけれど、見えるのは氷の山でダリルの姿はない。
「そんな……ダリル…………」
こんな大量の氷の下敷きになったら助からない。
万が一命があっても見つけ出すことは不可能に近い。
リュードの顔から血の気がひく。
こんなところで死んでいい人ではないのに。
みんなになんと説明したらいいのだと失意の視線でダリルの痕跡はないかと雪と氷の山を見下ろす。
「……とりあえず、降りようか」
地面に降りてラストを下ろす。
ラストも同じようなことを考えているのか泣きそうな顔をしている。
「ぬうわあっ!」
氷の山の一部が爆発する。
「ぬおおおっ!」
「ダリル……!」
「リュード、行こう!」
一瞬氷が吹き飛び、ダリルの声が聞こえてくる。
ただ吹き飛ばしても、雪と氷はすぐに崩れて来て再び埋まってしまう。
リュードとラストは顔を見合わせ、すぐに爆発が起きたところを掘り始めた。
「ぐぬぬ……こうなったら!」
この際、魔力の残量など気にしてられない。
火属性はあんまり得意じゃないけど魔力量だけならある。
リュードはとにかく熱を重視して火を起こす。
爆発させると衝撃で雪と氷の山が崩れてくる。
だからと言って手で掘り返していくのにも雪と氷は重たくて難しかった。
「うおおおっ!」
「私もやるよー!」
ラストも魔法で火を起こす。
基礎の基礎として火を起こすぐらいのことはラストも習っている。
二人で氷を溶かしていく。
想像していたよりも解けるのに時間がかかりダリルのことが心配になる。
「待ってろダリルー!」
ーーーーー
「ふっ……助かったよリュード。よくテレサに言われたものだ、もう少し考えて力を使いなさいとね。今ようやくその意味がわかった気がするよ」
こんな二次災害はリュードとて予想できなかった。
さらに三次災害としてビッシャビシャになったが、ダリルを無事に救い出すことができた。
上から氷を溶かしたために下にいたダリルは溶けた氷水を全て浴びた。
その甲斐あって助けられたのだけど、少しだけ溺れかけた。
「体を拭きながらでも早くここを移動しよう」
今は穴を開けた上部だけが今は崩壊しているが、他のところも崩壊しないとも限らない。
体を乾かすにしてもここにいては危険である。
もう一度生き埋めになったらそれこそ助からない。
ダリルは無傷であったが、それは神聖力による防御魔法を咄嗟に張ってなんとか氷に潰されずに済んでいたのだ。
リュードたちが頑張ってくれたから、ダリルも希望を捨てずになんとか持ち堪えていたのである。
「すまないな……」
神聖力も魔力も脱出のために使い果たしたダリルはぐったりしている。
あと少し助けるのが遅かったら危険であった。
リュードに肩を抱えられて氷の山を登っていく。
「誰かに肩を貸してもらうことなど長らく記憶にないな」
滑らないように気をつけて雪と氷の山の頂点を過ぎて降りていく。
これでようやく氷壁に囲まれたところから抜け出せた。
「リューちゃーん!」
「この声は……ルフォン!」
氷の山を降りたところで離れたところにルフォンたちの姿が見えた。
無事に帰って来たリュードやラストの姿を見て嬉しそうにルフォンが走ってくる。
「ダリルさん大丈夫?」
唯一無事でなさそうなのはダリルに見えた。
ルフォンがサッとリュードとは逆に回って肩をかす。
「力を使い果たしてしまった。少し休めば大丈夫だろう」
リュードたちはウィドウたちと合流する。
どうやらみんなの方も無事なようでリュードはホッと一安心した。
「よほど激しい戦いだったのですね……」
「いや……これは……」
「はい、激しい戦いでした」
ダリルの言葉を遮ってリュードがにこりと笑う。
考え甘く氷壁に穴を空けようとして生き埋めになって死にかけましたなんて言えない。
「神聖力を使い果たしてしまったにゃ? ならば休息を取るしかないにゃ」
ニャロがダリルの体を確認する。
魔力や体のケガと違って、神聖力を回復する手立ては自然回復しかない。
使い切ってしまったらゆっくりと休む他ないのである。
「リュードも無事で何よりだ」
「そちらの方もご無事で」
「ああ、むしろスノーケイブキングが抜けたことで、楽になったよ。ヤツが精神的支柱であり、リーダーとして指揮を取っていたんだろう。いきなりリーダーがいなくなってスノーケイブは動揺してしまってな。数はいたんで大変だったが倒すことはできたよ」
スノーケイブキングのあの行動は、スノーケイブたちにとってはいきなりリーダーが離脱したことに他ならない。
引くべきか闘うべきかの判断も勝手に下せないスノーケイブたちには動揺が広がり混乱した。
ウィドウたちはその隙をついてスノーケイブを倒すことができた。
スノーケイブを倒したウィドウたちはさっさと荷物を片付けてリュードたちを探しに来たのであった。
待つよりも向かった方向に探しに行ったほうがいい。
まるでスノーケイブの襲撃に合わせたような吹雪もいつの間にか止んでいたので、リスクも承知で探していたのだ。
「とんでもない轟音が聞こえてきて、お前たちだろうと思ったんだ」
なんの音かは分からないけど何かがあったことは明らか。
音のした方に向かって来たらリュードたちがいたのであった。
「ルフォン〜!」
「大丈夫?」
「だいじょばないよぉ!」
ルフォンにも抱きしめてもらうラスト。
なんとかかんとか、スノーケイブキングを討伐することに成功したのであった。
雪が舞い、砕けた氷が飛び散る。
飛んできた氷の破片がリュードの頬をかすめて浅く切り裂く。
飛び上がったリュードは投げて壁に刺した剣の上に着地し、抱きかかえたラストに覆いかぶさるようにして氷の破片から守る。
「……ダ、ダリル!」
逃げるのに必死でダリルの方まで気が回らなかった。
ようやく轟音が止んで振り返ると、そこには砕けた氷壁が山となっていた。
リュードたちがいる位置よりも下では氷と雪の煙がまだ状況を隠している。
少しばかり無理矢理過ぎた。
ただまさか上部全体が崩壊するだなんて思いもしない。
ようやく晴れて来たけれど、見えるのは氷の山でダリルの姿はない。
「そんな……ダリル…………」
こんな大量の氷の下敷きになったら助からない。
万が一命があっても見つけ出すことは不可能に近い。
リュードの顔から血の気がひく。
こんなところで死んでいい人ではないのに。
みんなになんと説明したらいいのだと失意の視線でダリルの痕跡はないかと雪と氷の山を見下ろす。
「……とりあえず、降りようか」
地面に降りてラストを下ろす。
ラストも同じようなことを考えているのか泣きそうな顔をしている。
「ぬうわあっ!」
氷の山の一部が爆発する。
「ぬおおおっ!」
「ダリル……!」
「リュード、行こう!」
一瞬氷が吹き飛び、ダリルの声が聞こえてくる。
ただ吹き飛ばしても、雪と氷はすぐに崩れて来て再び埋まってしまう。
リュードとラストは顔を見合わせ、すぐに爆発が起きたところを掘り始めた。
「ぐぬぬ……こうなったら!」
この際、魔力の残量など気にしてられない。
火属性はあんまり得意じゃないけど魔力量だけならある。
リュードはとにかく熱を重視して火を起こす。
爆発させると衝撃で雪と氷の山が崩れてくる。
だからと言って手で掘り返していくのにも雪と氷は重たくて難しかった。
「うおおおっ!」
「私もやるよー!」
ラストも魔法で火を起こす。
基礎の基礎として火を起こすぐらいのことはラストも習っている。
二人で氷を溶かしていく。
想像していたよりも解けるのに時間がかかりダリルのことが心配になる。
「待ってろダリルー!」
ーーーーー
「ふっ……助かったよリュード。よくテレサに言われたものだ、もう少し考えて力を使いなさいとね。今ようやくその意味がわかった気がするよ」
こんな二次災害はリュードとて予想できなかった。
さらに三次災害としてビッシャビシャになったが、ダリルを無事に救い出すことができた。
上から氷を溶かしたために下にいたダリルは溶けた氷水を全て浴びた。
その甲斐あって助けられたのだけど、少しだけ溺れかけた。
「体を拭きながらでも早くここを移動しよう」
今は穴を開けた上部だけが今は崩壊しているが、他のところも崩壊しないとも限らない。
体を乾かすにしてもここにいては危険である。
もう一度生き埋めになったらそれこそ助からない。
ダリルは無傷であったが、それは神聖力による防御魔法を咄嗟に張ってなんとか氷に潰されずに済んでいたのだ。
リュードたちが頑張ってくれたから、ダリルも希望を捨てずになんとか持ち堪えていたのである。
「すまないな……」
神聖力も魔力も脱出のために使い果たしたダリルはぐったりしている。
あと少し助けるのが遅かったら危険であった。
リュードに肩を抱えられて氷の山を登っていく。
「誰かに肩を貸してもらうことなど長らく記憶にないな」
滑らないように気をつけて雪と氷の山の頂点を過ぎて降りていく。
これでようやく氷壁に囲まれたところから抜け出せた。
「リューちゃーん!」
「この声は……ルフォン!」
氷の山を降りたところで離れたところにルフォンたちの姿が見えた。
無事に帰って来たリュードやラストの姿を見て嬉しそうにルフォンが走ってくる。
「ダリルさん大丈夫?」
唯一無事でなさそうなのはダリルに見えた。
ルフォンがサッとリュードとは逆に回って肩をかす。
「力を使い果たしてしまった。少し休めば大丈夫だろう」
リュードたちはウィドウたちと合流する。
どうやらみんなの方も無事なようでリュードはホッと一安心した。
「よほど激しい戦いだったのですね……」
「いや……これは……」
「はい、激しい戦いでした」
ダリルの言葉を遮ってリュードがにこりと笑う。
考え甘く氷壁に穴を空けようとして生き埋めになって死にかけましたなんて言えない。
「神聖力を使い果たしてしまったにゃ? ならば休息を取るしかないにゃ」
ニャロがダリルの体を確認する。
魔力や体のケガと違って、神聖力を回復する手立ては自然回復しかない。
使い切ってしまったらゆっくりと休む他ないのである。
「リュードも無事で何よりだ」
「そちらの方もご無事で」
「ああ、むしろスノーケイブキングが抜けたことで、楽になったよ。ヤツが精神的支柱であり、リーダーとして指揮を取っていたんだろう。いきなりリーダーがいなくなってスノーケイブは動揺してしまってな。数はいたんで大変だったが倒すことはできたよ」
スノーケイブキングのあの行動は、スノーケイブたちにとってはいきなりリーダーが離脱したことに他ならない。
引くべきか闘うべきかの判断も勝手に下せないスノーケイブたちには動揺が広がり混乱した。
ウィドウたちはその隙をついてスノーケイブを倒すことができた。
スノーケイブを倒したウィドウたちはさっさと荷物を片付けてリュードたちを探しに来たのであった。
待つよりも向かった方向に探しに行ったほうがいい。
まるでスノーケイブの襲撃に合わせたような吹雪もいつの間にか止んでいたので、リスクも承知で探していたのだ。
「とんでもない轟音が聞こえてきて、お前たちだろうと思ったんだ」
なんの音かは分からないけど何かがあったことは明らか。
音のした方に向かって来たらリュードたちがいたのであった。
「ルフォン〜!」
「大丈夫?」
「だいじょばないよぉ!」
ルフォンにも抱きしめてもらうラスト。
なんとかかんとか、スノーケイブキングを討伐することに成功したのであった。


