「おっと!」
動かなきゃ死んでしまう。
どうにか体の痺れを押して振り向き状に拳を振るうがそこにリュードはもういない。
本来なら戦おうと思うともっと厳しい相手なはずだった。
だがラストという存在のおかげで正常な判断能力を失っている。
ラストにとっては不本意な協力の仕方かもしれないけれど、一人で倒し切るには中々厳しそうだったので助かった。
「うわああああ!」
荒く呼吸するスノーケイブキングとリュードが睨み合っているとダリルが穴から滑り落ちてきた。
ダリルもどうにかして穴まで登って入ってきたのだ。
「し……死ぬかと思った…………」
ダリルは顔が真っ青になっている。
これまでそんな情けない姿を他の人には見せたことがない。
ダリルがそんなことになっているのは、ジェットコースターなどがダメなタイプの人だったからである。
ツルツルとして高速で落ちるように滑る穴の中はダリルにとって天敵であった。
「ダリル、手伝ってくれ!」
「う、うむ……分かった」
乗り物酔いのような感覚もあって、直接戦うのはもう少し時間が欲しいところである。
ダリルは地面にへたり込んだまま、リュードに神聖力を送り込んで強化する。
残念ながら神聖力では自分を治せないので状態を回復させられない。
動いたら吐いてしまいそうだから支援強化しかできないのはしょうがない。
「さて大切な仲間を誘拐した変態魔物を倒すとするか!」
ダリルの強化もある。
その上スノーケイブキングが受けた背中の傷は決して軽くない。
雪にはスノーケイブキングの血が垂れて赤く染まっていた。
「お前なんかにラストは渡さない!」
「リュード……!」
二人の男が一人の女性を取り合う。
なんとなく耳にしたことがあるちょっと憧れるシチュエーション。
一方が魔物であるのでどちらを選ぶのかは明白であるけれど、リュードが自分のために怒ってくれているということがラストにとっては嬉しい。
今度はリュードの方から仕掛ける。
スノーケイブキングもリュードの剣を食らうと体が痺れることを理解した。
多少大げさでも掠ることすら嫌がって大きく避ける。
けれども大きく避けるとスノーケイブキングは次の行動に繋げられない。
反撃に出られないのである。
「ん?」
一瞬スノーケイブキングの動きが鈍った。
すぐに立て直してリュードの剣をギリギリかわしたけれど、何かの異常が起きているとリュードは感じた。
よく観察してみるとその理由が分かった。
ダリルの強化もあって戦いに余裕が出たので、周りを気にすることできていたのである。
スノーケイブキングは魔物であるが、もっと大きく言えば生き物だ。
その体は骨や筋肉があり、血が流れている。
リュードが切りつけた傷はかなり深い。
その上リュードと戦って動き続けているので治りも遅く、気づけばそこら中スノーケイブキングの血で真っ赤になっている。
怒りで頭に血が上っているのもまずかった。
スノーケイブキングは血の流しすぎによって貧血になっていたのだ。
こんなに攻撃を受けたことがないスノーケイブキングは、なぜ自分の体に不調が起きているのか分かっていない。
「かなり辛そうだな!」
たとえ魔物だろうと血を多く失えば命に関わる。
血が足りなくてスノーケイブキングの視界が歪む。
頭がクラクラとして、リュードの攻撃をかわすのが少しずつ遅れてくる。
リュードはあえて攻撃を単調に、かわしやすく繰り出した。
一定のリズム、一定の動きで回避を誘導する。
これが通常の状態なら簡単に見抜かれて反撃されてしまっただろうが、スノーケイブキングはリュードの思惑通りに攻撃をかわした。
「所詮は猿……か」
完全にリュードの思惑にハマって、リュードとスノーケイブキングの攻防はお遊戯のようになった。
どうとでも出来ると確証したリュードは剣に変化を持たせた。
シンプルなフェイント。
狙うのは足だ。
スノーケイブキングはリュードのフェイントにまんまと騙されて、ザックリと右足を切り裂かれる。
背中の傷も治っていない状況でさらに深い傷が増えた。
足を傷つけたことで大きく機動力も削がれてしまった。
「こっちもいるんだからね!」
リュードの攻めに意識の外に追いやられていたラストも動いた。
ずっと隙を狙っていた。
リュードの動きがやたらと単調になったことを、離れてみていたラストは分かっていたから時を待っていたのである。
ダリルの強化を受けて目一杯に引き絞った弦から手を離す。
結構動き回るので狙いは確実に当てられる胴体だ。
右胸に突き刺さる矢はラストの魔力を受けて貫通力が増していた。
時間にすれば、矢がスノーケイブキングの体にあったのはわずかな間だった。
小さな穴を残してラストの矢はスノーケイブキングの胸を貫通していった。
「人のこと誘拐して!」
ラストの怒りの一撃である。
それでも、致命傷じゃない。
スノーケイブキングは血を失い、ふらつきながらも目だけは闘志が燃えている。
大きく勝負に出ても勝てただろうと思えるまでにスノーケイブキングは弱っていた。
だが手負いの獣ほど危険なものもない。
油断はせず徐々に体力を削り確実に勝利をものにする。
リュードが攻めたてるとラストへの注意が散漫となる。
隙をついてラストが矢を射り、スノーケイブキングを弱らせていく。
やがて単調なリュードの攻撃すら回避できなくなる。
動かなきゃ死んでしまう。
どうにか体の痺れを押して振り向き状に拳を振るうがそこにリュードはもういない。
本来なら戦おうと思うともっと厳しい相手なはずだった。
だがラストという存在のおかげで正常な判断能力を失っている。
ラストにとっては不本意な協力の仕方かもしれないけれど、一人で倒し切るには中々厳しそうだったので助かった。
「うわああああ!」
荒く呼吸するスノーケイブキングとリュードが睨み合っているとダリルが穴から滑り落ちてきた。
ダリルもどうにかして穴まで登って入ってきたのだ。
「し……死ぬかと思った…………」
ダリルは顔が真っ青になっている。
これまでそんな情けない姿を他の人には見せたことがない。
ダリルがそんなことになっているのは、ジェットコースターなどがダメなタイプの人だったからである。
ツルツルとして高速で落ちるように滑る穴の中はダリルにとって天敵であった。
「ダリル、手伝ってくれ!」
「う、うむ……分かった」
乗り物酔いのような感覚もあって、直接戦うのはもう少し時間が欲しいところである。
ダリルは地面にへたり込んだまま、リュードに神聖力を送り込んで強化する。
残念ながら神聖力では自分を治せないので状態を回復させられない。
動いたら吐いてしまいそうだから支援強化しかできないのはしょうがない。
「さて大切な仲間を誘拐した変態魔物を倒すとするか!」
ダリルの強化もある。
その上スノーケイブキングが受けた背中の傷は決して軽くない。
雪にはスノーケイブキングの血が垂れて赤く染まっていた。
「お前なんかにラストは渡さない!」
「リュード……!」
二人の男が一人の女性を取り合う。
なんとなく耳にしたことがあるちょっと憧れるシチュエーション。
一方が魔物であるのでどちらを選ぶのかは明白であるけれど、リュードが自分のために怒ってくれているということがラストにとっては嬉しい。
今度はリュードの方から仕掛ける。
スノーケイブキングもリュードの剣を食らうと体が痺れることを理解した。
多少大げさでも掠ることすら嫌がって大きく避ける。
けれども大きく避けるとスノーケイブキングは次の行動に繋げられない。
反撃に出られないのである。
「ん?」
一瞬スノーケイブキングの動きが鈍った。
すぐに立て直してリュードの剣をギリギリかわしたけれど、何かの異常が起きているとリュードは感じた。
よく観察してみるとその理由が分かった。
ダリルの強化もあって戦いに余裕が出たので、周りを気にすることできていたのである。
スノーケイブキングは魔物であるが、もっと大きく言えば生き物だ。
その体は骨や筋肉があり、血が流れている。
リュードが切りつけた傷はかなり深い。
その上リュードと戦って動き続けているので治りも遅く、気づけばそこら中スノーケイブキングの血で真っ赤になっている。
怒りで頭に血が上っているのもまずかった。
スノーケイブキングは血の流しすぎによって貧血になっていたのだ。
こんなに攻撃を受けたことがないスノーケイブキングは、なぜ自分の体に不調が起きているのか分かっていない。
「かなり辛そうだな!」
たとえ魔物だろうと血を多く失えば命に関わる。
血が足りなくてスノーケイブキングの視界が歪む。
頭がクラクラとして、リュードの攻撃をかわすのが少しずつ遅れてくる。
リュードはあえて攻撃を単調に、かわしやすく繰り出した。
一定のリズム、一定の動きで回避を誘導する。
これが通常の状態なら簡単に見抜かれて反撃されてしまっただろうが、スノーケイブキングはリュードの思惑通りに攻撃をかわした。
「所詮は猿……か」
完全にリュードの思惑にハマって、リュードとスノーケイブキングの攻防はお遊戯のようになった。
どうとでも出来ると確証したリュードは剣に変化を持たせた。
シンプルなフェイント。
狙うのは足だ。
スノーケイブキングはリュードのフェイントにまんまと騙されて、ザックリと右足を切り裂かれる。
背中の傷も治っていない状況でさらに深い傷が増えた。
足を傷つけたことで大きく機動力も削がれてしまった。
「こっちもいるんだからね!」
リュードの攻めに意識の外に追いやられていたラストも動いた。
ずっと隙を狙っていた。
リュードの動きがやたらと単調になったことを、離れてみていたラストは分かっていたから時を待っていたのである。
ダリルの強化を受けて目一杯に引き絞った弦から手を離す。
結構動き回るので狙いは確実に当てられる胴体だ。
右胸に突き刺さる矢はラストの魔力を受けて貫通力が増していた。
時間にすれば、矢がスノーケイブキングの体にあったのはわずかな間だった。
小さな穴を残してラストの矢はスノーケイブキングの胸を貫通していった。
「人のこと誘拐して!」
ラストの怒りの一撃である。
それでも、致命傷じゃない。
スノーケイブキングは血を失い、ふらつきながらも目だけは闘志が燃えている。
大きく勝負に出ても勝てただろうと思えるまでにスノーケイブキングは弱っていた。
だが手負いの獣ほど危険なものもない。
油断はせず徐々に体力を削り確実に勝利をものにする。
リュードが攻めたてるとラストへの注意が散漫となる。
隙をついてラストが矢を射り、スノーケイブキングを弱らせていく。
やがて単調なリュードの攻撃すら回避できなくなる。


