重たくデカいスノーケイブキングの足跡は、吹雪でもすぐには消えない。
ただ見失うともう見つける事は不可能なので、リュードは注意深く足跡を探しながら迅速に後を追いかけていた。
リュードとダリルは気づいていなかったが、いつの間にか吹雪は止み、周りの環境はさらに変化していた。
これまでは岩肌が見えていた雪山を上っていた。
なのに緩やかな上りも平坦になり、周りは大きな氷の塊が突き出たように生える不思議な場所になっている。
「はなせ! この! はーなーせー!」
スノーケイブはそれほど遠くに逃げたわけじゃなかった。
走りにくい雪の上を走って追いかけていくと、遠くからラストの声が聞こえる。
吹雪もなく他に音がないので、響く声だけがよく聞こえてくるのだ。
切迫したような声だけど、命の危機にあるような感じではなくてとりあえず安心する。
「待ってろよ、ラスト!」
それもいつまで持つか分からないのでリュードは先を急ぐ。
「これは……」
「どうやらこの向こうらしいな……」
分厚い氷の壁の前でスノーケイブキングの足跡が途切れている。
壁の向こう側の方から声が聞こえてきたので向こう側にいるのだろうと予想はできる。
しかしリュードは氷壁を見上げて顔をしかめる。
「高いな」
かなり壁は高くてどこが一番上になるのかも分からない。
壁に触れてみるとツルツルとしている。
登るのはそれこそ猿並みであっても大変そう。
「ふっ! ……くっ!」
ダリルが壁を殴りつけてみる。
表面の氷が砕けるが、氷壁はかなり分厚いのか返ってきた衝撃でダリルの手の方が痺れてしまう。
「壁に穴を開けるのは無理そうだな」
壁がどれだけ分厚いのかも不明だ。
壊せるかも分からない上に、変に壊して氷壁全体が崩壊してしまうとリュードとダリルも危ない。
隙間や亀裂がないか壁に沿って移動して探してみる。
壁はわずかに湾曲していて丸く中を囲んでいることが分かったが、通り抜けられそうなところがない。
「リュード、あそこはどうだ?」
入れそうなところもなくて、焦りが大きくなってきた。
やはりこの氷の壁をクライミングするしかない、と思い始めていたらダリルが壁に穴を見つけた。
見上げるほど高い位置にあるもので、穴が空いているのが見えるだけで穴の中がどうなっているのかまでは見えない。
「……他に道もないし時間もない。通れる可能性もあるし行ってみよう」
これ以上入れそうな場所を探し回っている時間もない。
穴を確認してみようとリュードは思った。
「ほれ、足をかけろ」
「ありがとう」
単純に飛び上がっても届かなそうなほどの高さがある。
ダリルが腰を落として手を組む。
リュードはその手に足をかけて今一度穴の位置を確認する。
「すぐに追いかけるから気にせず先に行っていろ」
「分かった」
「3……2……1……はっ!」
ダリルが腕を振り上げ、リュードはその勢いを借りて高く飛び上がる。
「よっと……届いた、あぁ! うわああああ!」
「どうしたリュード! ……リュード!」
幸い穴の中は奥に続いていた。
けれど中もツルツルとしていてとても体勢を保てず、その上穴の奥は下りになっていた。
つるりと転んだリュードは穴の奥に滑っていく。
ーーーーー
「気持ち悪い顔近づけんな!」
高い氷壁に囲まれた不思議な場所をスノーケイブキングは棲家としていた。
棲家に帰ってきたスノーケイブキングはそっとラストを下ろす。
まるで大切なものを扱うかのように、壊れないようにと連れてくる時も優しく持つようにしていた。
「うひぃ……そのやめてぇ……」
艶やかな白い毛を持つメスというダンジョンにはいない存在にスノーケイブキングは一目で虜になった。
スノーケイブキングは連れてきたラストをうっとりとした表情で撫でたり、匂いを嗅いだりと愛でる。
まさかラストは自分の魅力で、スノーケイブキングを落としているなんて思ってもない。
不可解で気味が悪く気持ちの悪い行動に泣きそうになっている。
「もうやだぁ……助けて、リュードぉ……」
敵意がないのがまた怖い。
「う、わぁ! ブホッ!」
このままスノーケイブキングに好き勝手やられるぐらいなら自分で死んでやろうか、ぐらいに思っていると壁から何か飛び出してくるのがラストに見えた。
よくみると氷壁の上側に穴が空いている。
穴から飛び出してものは雪に突き刺さって雪を白く舞い上がらせたのでよく見えない。
けれど出てきたその一瞬に見えた黒い姿で誰なのか、ラストには分かった。
「プハッ!」
「リュ、リュードぉ!」
謎の穴だったとリュードは雪に突き刺さった体を起こしながら思った。
中で行き止まりだったらラストどころではなく、死んでしまうなと思っていたがどこかに抜けた。
勢いがつきすぎたけどツルツルの穴の中ではブレーキもかけられず雪に突っ込んで止まった。
「リュード、助けて!」
「ラスト……! 助けに来たぞ!」
顔を上げるとそこに泣きそうになっているラストと、未だにうっとりとラストを見つめてリュードがいることになど気づいていないスノーケイブキングがいた。
ただ見失うともう見つける事は不可能なので、リュードは注意深く足跡を探しながら迅速に後を追いかけていた。
リュードとダリルは気づいていなかったが、いつの間にか吹雪は止み、周りの環境はさらに変化していた。
これまでは岩肌が見えていた雪山を上っていた。
なのに緩やかな上りも平坦になり、周りは大きな氷の塊が突き出たように生える不思議な場所になっている。
「はなせ! この! はーなーせー!」
スノーケイブはそれほど遠くに逃げたわけじゃなかった。
走りにくい雪の上を走って追いかけていくと、遠くからラストの声が聞こえる。
吹雪もなく他に音がないので、響く声だけがよく聞こえてくるのだ。
切迫したような声だけど、命の危機にあるような感じではなくてとりあえず安心する。
「待ってろよ、ラスト!」
それもいつまで持つか分からないのでリュードは先を急ぐ。
「これは……」
「どうやらこの向こうらしいな……」
分厚い氷の壁の前でスノーケイブキングの足跡が途切れている。
壁の向こう側の方から声が聞こえてきたので向こう側にいるのだろうと予想はできる。
しかしリュードは氷壁を見上げて顔をしかめる。
「高いな」
かなり壁は高くてどこが一番上になるのかも分からない。
壁に触れてみるとツルツルとしている。
登るのはそれこそ猿並みであっても大変そう。
「ふっ! ……くっ!」
ダリルが壁を殴りつけてみる。
表面の氷が砕けるが、氷壁はかなり分厚いのか返ってきた衝撃でダリルの手の方が痺れてしまう。
「壁に穴を開けるのは無理そうだな」
壁がどれだけ分厚いのかも不明だ。
壊せるかも分からない上に、変に壊して氷壁全体が崩壊してしまうとリュードとダリルも危ない。
隙間や亀裂がないか壁に沿って移動して探してみる。
壁はわずかに湾曲していて丸く中を囲んでいることが分かったが、通り抜けられそうなところがない。
「リュード、あそこはどうだ?」
入れそうなところもなくて、焦りが大きくなってきた。
やはりこの氷の壁をクライミングするしかない、と思い始めていたらダリルが壁に穴を見つけた。
見上げるほど高い位置にあるもので、穴が空いているのが見えるだけで穴の中がどうなっているのかまでは見えない。
「……他に道もないし時間もない。通れる可能性もあるし行ってみよう」
これ以上入れそうな場所を探し回っている時間もない。
穴を確認してみようとリュードは思った。
「ほれ、足をかけろ」
「ありがとう」
単純に飛び上がっても届かなそうなほどの高さがある。
ダリルが腰を落として手を組む。
リュードはその手に足をかけて今一度穴の位置を確認する。
「すぐに追いかけるから気にせず先に行っていろ」
「分かった」
「3……2……1……はっ!」
ダリルが腕を振り上げ、リュードはその勢いを借りて高く飛び上がる。
「よっと……届いた、あぁ! うわああああ!」
「どうしたリュード! ……リュード!」
幸い穴の中は奥に続いていた。
けれど中もツルツルとしていてとても体勢を保てず、その上穴の奥は下りになっていた。
つるりと転んだリュードは穴の奥に滑っていく。
ーーーーー
「気持ち悪い顔近づけんな!」
高い氷壁に囲まれた不思議な場所をスノーケイブキングは棲家としていた。
棲家に帰ってきたスノーケイブキングはそっとラストを下ろす。
まるで大切なものを扱うかのように、壊れないようにと連れてくる時も優しく持つようにしていた。
「うひぃ……そのやめてぇ……」
艶やかな白い毛を持つメスというダンジョンにはいない存在にスノーケイブキングは一目で虜になった。
スノーケイブキングは連れてきたラストをうっとりとした表情で撫でたり、匂いを嗅いだりと愛でる。
まさかラストは自分の魅力で、スノーケイブキングを落としているなんて思ってもない。
不可解で気味が悪く気持ちの悪い行動に泣きそうになっている。
「もうやだぁ……助けて、リュードぉ……」
敵意がないのがまた怖い。
「う、わぁ! ブホッ!」
このままスノーケイブキングに好き勝手やられるぐらいなら自分で死んでやろうか、ぐらいに思っていると壁から何か飛び出してくるのがラストに見えた。
よくみると氷壁の上側に穴が空いている。
穴から飛び出してものは雪に突き刺さって雪を白く舞い上がらせたのでよく見えない。
けれど出てきたその一瞬に見えた黒い姿で誰なのか、ラストには分かった。
「プハッ!」
「リュ、リュードぉ!」
謎の穴だったとリュードは雪に突き刺さった体を起こしながら思った。
中で行き止まりだったらラストどころではなく、死んでしまうなと思っていたがどこかに抜けた。
勢いがつきすぎたけどツルツルの穴の中ではブレーキもかけられず雪に突っ込んで止まった。
「リュード、助けて!」
「ラスト……! 助けに来たぞ!」
顔を上げるとそこに泣きそうになっているラストと、未だにうっとりとラストを見つめてリュードがいることになど気づいていないスノーケイブキングがいた。


