「はははっ、さすがだな!」
リュードが最後のレッドットベアから剣を抜く。
後ろから胸を突き刺したリュードの剣は的確にレッドットベアの心臓を貫いていて、ダリルは感心したように笑っている。
赤い血が雪に広がるがじわりと広がり始めた瞬間には、レッドットベアはもう魔力となって消えていっていた。
「さすが大司教様が見込んだ人にゃ!」
支援しててこれほど楽しい人もいないとニャロも腕を組んで大きく頷く。
リュードの戦いっぷりを見ていると、力を引き出している感覚があって、軽やかで力強い戦いの一部は自分のおかげなのだと軽い興奮を覚えた。
リュードの方もどうして上級者のパーティーが宗教関係と仲良くして、聖職者をパーティーに引き入れたいかよく分かった。
多少の無理な戦いでレッドットベアの爪が頬をかすめたりもした。
しかしニャロは強化をしながら同時に治療も行い、リュードを常に万全の状態に保ってくれていた。
強化も、聖者ほどの神聖力でのものとなると自分の力を勘違いしてしまいそうなほどだった。
強化支援というものの効果を身をもって知った。
治療もできて強化もできる。
今後も冒険を続けていくなら聖職者をパーティーに引き入れたいとリュードも思った。
「やるじゃないか!」
剣の血も払うまでもなく魔力になって消えていく。
幸いにして、ケーフィス教との関係は悪くないから冒険者に同行を志望している聖職者を紹介してもらおうかなんて考えていた。
バンッと背中を叩かれて、驚きに振り返るとウィドウがいた。
とても気分が良さそうに笑顔を浮かべている。
レッドットベアを引きつけながら雪原を駆け、隙を見て雷をまとった剣で倒していく姿は雷そのもののようだった。
教会側から用意されたメンバーなので文句は言わないが、多少の心配はしていた。
足手まといにはならないほどの実力はありそうだと思っていたが、そんな心配は杞憂だった。
むしろ大きな戦力になってくれることを喜ばずにはいられない。
「素晴らしい実力だ」
「あ、ありがとうございます」
ある程度戦況に余裕が出てきたので、ウィドウはリュードたちの戦いを見ていた。
リュード、ルフォン、ラストは想像していたよりも高い実力を有している。
連携も取れているし、周りを見る視野の広さもある。
まだシルバーだと聞いていたのに実力はもっと高い。
ランクの低さは若い人、しかも旅をするタイプの冒険者にありがちな実績の足りなさがあるのだろうとウィドウはすぐに分かった。
これだからランクは信用しすぎてもいけないのだ。
「プラチナランクの大先輩にお褒めいただいて光栄です」
「ふふ、私は普段めったに人を褒めない。ありがたく思うといい」
「はい、そうします」
「ははっ! そう素直に受け取らないでくれ。冗談を言った私が恥ずかしいではないか」
「やっぱり褒めるには値しませんか?」
「分かってるくせに君も人が悪い。褒めたことは冗談ではないよ」
冗談なのはありがたく思うといいという部分である。
リュードもそれを分かっていて答えている。
「それは良かったです」
「ユーモアも持ち合わせているとはな……欠点が見当たらない」
「そうですね……俺は酸っぱいものが苦手です」
「……ハッハッハッ! いやはや、使えなさそうなら討伐隊と共にダンジョンから帰ってもらうつもりだったけど、是非ともこのまま力を貸してほしいな」
「もちろんそのために来ています」
「心強い。期待しているよ」
ウィドウがリュードに手を差し出す。
背中を預けてもよい実力と信頼の相手だと認める。
リュードもウィドウの手を握り返して握手を交わす。
「俺は辛いもんがダメだ。こんな時には体を温めるのにも辛いもんがいいんだろうけど、ちょっとした辛味も苦手でな」
だから料理において刺激が少なめだったのか、と道中ケフィズサンが料理を担当した時のものを思い出す。
「食えないわけじゃないけど、出来るだけ辛くない方がいい」
お互いに弱点を暴露しあって仲を深めた。
プラチナランクまで駆け上がった人なのに、とても気さくで接しやすく、これぞ冒険者といった人だとリュードは思った。
「本当にあんたたちがいてくれて助かったよ」
戦いは終わったけど、事後処理は残っている。
ただ外なら死体の処理だが、ここはダンジョンで死体はほっとけばなくなる。
それどころか死んだそばから死体が魔力となるのでやるべきことはケガ人の処置とドロップ品を拾って整理するぐらいだ。
「おい、そっちにもあるぞ!」
討伐隊の冒険者がニコニコとしながらドロップ品を拾う。
冒険者たちはレッドットベアの数が多くて死をも覚悟していたのだけど、逆に上質なドロップ品を大量入手することができたと喜んでいる。
討伐隊のみんなはリュードたちに感謝をしていた。
「あんなに強い聖職者連れてるのも羨ましいな」
「強いから集まるのか、それとも集まったから強いのか分からないな」
明らかに力の強すぎる聖職者たちについてもこれほどの実力者のパーティーならむしろ自然だと考えた。
他教徒の聖者や使徒なんじゃやいかと疑問に思うような人も中にはいたけれど、恩人とも言えるリュードたちに疑問に思う以上のアクションを起こすような人はいなかった。
リュードが最後のレッドットベアから剣を抜く。
後ろから胸を突き刺したリュードの剣は的確にレッドットベアの心臓を貫いていて、ダリルは感心したように笑っている。
赤い血が雪に広がるがじわりと広がり始めた瞬間には、レッドットベアはもう魔力となって消えていっていた。
「さすが大司教様が見込んだ人にゃ!」
支援しててこれほど楽しい人もいないとニャロも腕を組んで大きく頷く。
リュードの戦いっぷりを見ていると、力を引き出している感覚があって、軽やかで力強い戦いの一部は自分のおかげなのだと軽い興奮を覚えた。
リュードの方もどうして上級者のパーティーが宗教関係と仲良くして、聖職者をパーティーに引き入れたいかよく分かった。
多少の無理な戦いでレッドットベアの爪が頬をかすめたりもした。
しかしニャロは強化をしながら同時に治療も行い、リュードを常に万全の状態に保ってくれていた。
強化も、聖者ほどの神聖力でのものとなると自分の力を勘違いしてしまいそうなほどだった。
強化支援というものの効果を身をもって知った。
治療もできて強化もできる。
今後も冒険を続けていくなら聖職者をパーティーに引き入れたいとリュードも思った。
「やるじゃないか!」
剣の血も払うまでもなく魔力になって消えていく。
幸いにして、ケーフィス教との関係は悪くないから冒険者に同行を志望している聖職者を紹介してもらおうかなんて考えていた。
バンッと背中を叩かれて、驚きに振り返るとウィドウがいた。
とても気分が良さそうに笑顔を浮かべている。
レッドットベアを引きつけながら雪原を駆け、隙を見て雷をまとった剣で倒していく姿は雷そのもののようだった。
教会側から用意されたメンバーなので文句は言わないが、多少の心配はしていた。
足手まといにはならないほどの実力はありそうだと思っていたが、そんな心配は杞憂だった。
むしろ大きな戦力になってくれることを喜ばずにはいられない。
「素晴らしい実力だ」
「あ、ありがとうございます」
ある程度戦況に余裕が出てきたので、ウィドウはリュードたちの戦いを見ていた。
リュード、ルフォン、ラストは想像していたよりも高い実力を有している。
連携も取れているし、周りを見る視野の広さもある。
まだシルバーだと聞いていたのに実力はもっと高い。
ランクの低さは若い人、しかも旅をするタイプの冒険者にありがちな実績の足りなさがあるのだろうとウィドウはすぐに分かった。
これだからランクは信用しすぎてもいけないのだ。
「プラチナランクの大先輩にお褒めいただいて光栄です」
「ふふ、私は普段めったに人を褒めない。ありがたく思うといい」
「はい、そうします」
「ははっ! そう素直に受け取らないでくれ。冗談を言った私が恥ずかしいではないか」
「やっぱり褒めるには値しませんか?」
「分かってるくせに君も人が悪い。褒めたことは冗談ではないよ」
冗談なのはありがたく思うといいという部分である。
リュードもそれを分かっていて答えている。
「それは良かったです」
「ユーモアも持ち合わせているとはな……欠点が見当たらない」
「そうですね……俺は酸っぱいものが苦手です」
「……ハッハッハッ! いやはや、使えなさそうなら討伐隊と共にダンジョンから帰ってもらうつもりだったけど、是非ともこのまま力を貸してほしいな」
「もちろんそのために来ています」
「心強い。期待しているよ」
ウィドウがリュードに手を差し出す。
背中を預けてもよい実力と信頼の相手だと認める。
リュードもウィドウの手を握り返して握手を交わす。
「俺は辛いもんがダメだ。こんな時には体を温めるのにも辛いもんがいいんだろうけど、ちょっとした辛味も苦手でな」
だから料理において刺激が少なめだったのか、と道中ケフィズサンが料理を担当した時のものを思い出す。
「食えないわけじゃないけど、出来るだけ辛くない方がいい」
お互いに弱点を暴露しあって仲を深めた。
プラチナランクまで駆け上がった人なのに、とても気さくで接しやすく、これぞ冒険者といった人だとリュードは思った。
「本当にあんたたちがいてくれて助かったよ」
戦いは終わったけど、事後処理は残っている。
ただ外なら死体の処理だが、ここはダンジョンで死体はほっとけばなくなる。
それどころか死んだそばから死体が魔力となるのでやるべきことはケガ人の処置とドロップ品を拾って整理するぐらいだ。
「おい、そっちにもあるぞ!」
討伐隊の冒険者がニコニコとしながらドロップ品を拾う。
冒険者たちはレッドットベアの数が多くて死をも覚悟していたのだけど、逆に上質なドロップ品を大量入手することができたと喜んでいる。
討伐隊のみんなはリュードたちに感謝をしていた。
「あんなに強い聖職者連れてるのも羨ましいな」
「強いから集まるのか、それとも集まったから強いのか分からないな」
明らかに力の強すぎる聖職者たちについてもこれほどの実力者のパーティーならむしろ自然だと考えた。
他教徒の聖者や使徒なんじゃやいかと疑問に思うような人も中にはいたけれど、恩人とも言えるリュードたちに疑問に思う以上のアクションを起こすような人はいなかった。


