「大丈夫です。それに言っておきますが俺にはテレサさんは治せません」
「なんと……」
もちろんリュードにテレサを治す術など持ち合わせているはずがない。
リュードの作るポーションで治せるなら話は別だがリュードのポーションにもそんな力はない。
「ただ治すための方法、治すために必要なものはわかります」
「それは本当か!」
「ダリル、落ち着きなさい!」
「むう……すまない」
ダリルは大きな声を出して立ち上がる。
ルフォンがあまりの声の大きさにミミを押さえる。
リュードもちょっと耳がキーンとしてるぐらいなのだからミミのいいルフォンだときっとキツイ音量だっただろう。
「コホン……すまない。それで必要なものとは?」
気まずそうに咳払いをしてダリルはまた席に座る。
今度ルフォンを驚かせたら許さないぞとダリルを軽く睨みつけておく。
「テレサさんを治すために必要なものは神物です」
「し、神物だって……?」
オルタンタスとダリルが顔を見合わせた。
困ったような複雑な顔をしている。
ダリルは少し絶望したような、そんな表情を浮かべている。
「神物……なるほど、そうか」
「分からない話ではない。しかしそれでは治せないと言っているのと変わりがない」
ヒョルドが渋い顔をして長いため息をついた。
「すまないね……表立っては知られていないことですが我々はケーフィス様の神物を持っていないんです。手の内から失われて久しく、その行方はわかっていないんです。数百年前の真魔大戦の時に失われて以来探しているのですが、今や神物を見つけることは我々の悲願ともなっています」
「神物が必要ではテレサは……」
ドヨンとした重たい雰囲気に包まれる。
ちょうどその時にスープが運ばれてきた。
非常に持ってきにくそうだったけど、ためらっているとスープが冷めてしまうので勇気を出して持ってきた。
「まあお食べになってください。神物が必要だと分かっただけでも前進だ」
「ただ、まだお話は終わってませんよ?」
勝手に諦めムードになられても困るとリュードは思った。
「なに?」
「神物の在り処もわかっています……大体の場所ですけどね」
「な、なんと、それは本当か!」
ヒョルドが口に運びかけていたスプーンを落とした。
「おおよその場所……詳細は調べてみないと分かりませんけど」
「もちろんそれで構わない! ああ、神よ! 私の世代で神物を取り戻す機会を得られるとは!」
三人が目をぎらつかせてリュードに詰め寄る。
長らく失われていた神物を取り戻すことはケーフィス教にとっての悲願である。
大まかな場所を知れるだけでも大発見なことであった。
「まあ少し落ち着いてください」
良い年をした大人たちが目をぎらつかせているのは少し怖い。
「まま、まずはスープ食べましょう。冷めてしまいますよ」
一口食べてみたけど高い店だけあって美味い。
せっかくの料理が冷めてしまうのはもったいないので料理が来た以上は食べよう。
食べなきゃ教えてもらえない。
なんてことはないのだけどそんなふうに勘違いした三人は黙々と食べる。
「ふぅ……それで神物はどこにあるのですか?」
別に今聞こうと後で聞こうとさほど違いはないのに、せっかくの美味しいスープをサクッと食べてリュードに話を促す。
ただリュードの方は焦ることもなくスープを食べる。
「この国よりも北にあるグルーウィンという国にダンジョンはありませんか? おそらく長らく攻略されていないものがあるはずです」
スープを食べたのを確認して次の料理が運ばれてくる。
「ダンジョンだと……? まさか…………」
「そうです。そのダンジョンの中に神物があるはずです」
「ダンジョンに神物が……」
「正確に言うと神物があった場所がダンジョンになったみたいですけどね」
「ううむ、なるほど」
神物の影響で周りがダンジョンになる。
聞いたこともない話だけど神物が長いこと外に置かれていた事例も他にないのであり得ないことだと断言はできない。
むしろダンジョンになっているから発見できなかったと説明されれば納得もできる。
「……とりあえずグルーウィンについて調べてみましょう。それと一つお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「神物について、どこでお聞きなったのでしょうか?」
神物が失われたことは教会の恥であり、これまでひた隠しにされてきた。
今でも神物がなくなって久しいことを知っているのはごくわずかな者しかいない。
それでいながら長年神物の存在については探し続けていたのに未だに発見には至っていない。
もし本当に神物の場所を教えてくれたのだとしたら大恩人になるのだけど、どうやって神物のことをどうやって知ったのかは気になってしまう。
「それは言えません」
「ううむ……」
リュードは真っ直ぐにオルタンタスの目を見て答えた。
強い意志を感じさせる純粋な瞳にオルタンタスは渋い顔をした。
言ってしまえば本人というか本神に教えてもらったものだけど、それを伝える気はなかった。
こうなることは当然に予想できていた。
結局どのように言い訳をしたところで疑問が残ってしまう。
しかし正直にケーフィスに教えてもらったと答えるとどうなる。
この世界において神様の存在は大きく、神の声を聞けるだけでも保護の対象にすらなりうる。
必要以上に持ち上げられたり宗教に拘束されたりするのは避けたい。
言い訳できない以上答えない。
どのように解釈するかは勝手だけど何も答えていない以上リュードに手を出す理由はない。
こうして答えることでそこについて触れられたくない意思表示にもなる。
「なんと……」
もちろんリュードにテレサを治す術など持ち合わせているはずがない。
リュードの作るポーションで治せるなら話は別だがリュードのポーションにもそんな力はない。
「ただ治すための方法、治すために必要なものはわかります」
「それは本当か!」
「ダリル、落ち着きなさい!」
「むう……すまない」
ダリルは大きな声を出して立ち上がる。
ルフォンがあまりの声の大きさにミミを押さえる。
リュードもちょっと耳がキーンとしてるぐらいなのだからミミのいいルフォンだときっとキツイ音量だっただろう。
「コホン……すまない。それで必要なものとは?」
気まずそうに咳払いをしてダリルはまた席に座る。
今度ルフォンを驚かせたら許さないぞとダリルを軽く睨みつけておく。
「テレサさんを治すために必要なものは神物です」
「し、神物だって……?」
オルタンタスとダリルが顔を見合わせた。
困ったような複雑な顔をしている。
ダリルは少し絶望したような、そんな表情を浮かべている。
「神物……なるほど、そうか」
「分からない話ではない。しかしそれでは治せないと言っているのと変わりがない」
ヒョルドが渋い顔をして長いため息をついた。
「すまないね……表立っては知られていないことですが我々はケーフィス様の神物を持っていないんです。手の内から失われて久しく、その行方はわかっていないんです。数百年前の真魔大戦の時に失われて以来探しているのですが、今や神物を見つけることは我々の悲願ともなっています」
「神物が必要ではテレサは……」
ドヨンとした重たい雰囲気に包まれる。
ちょうどその時にスープが運ばれてきた。
非常に持ってきにくそうだったけど、ためらっているとスープが冷めてしまうので勇気を出して持ってきた。
「まあお食べになってください。神物が必要だと分かっただけでも前進だ」
「ただ、まだお話は終わってませんよ?」
勝手に諦めムードになられても困るとリュードは思った。
「なに?」
「神物の在り処もわかっています……大体の場所ですけどね」
「な、なんと、それは本当か!」
ヒョルドが口に運びかけていたスプーンを落とした。
「おおよその場所……詳細は調べてみないと分かりませんけど」
「もちろんそれで構わない! ああ、神よ! 私の世代で神物を取り戻す機会を得られるとは!」
三人が目をぎらつかせてリュードに詰め寄る。
長らく失われていた神物を取り戻すことはケーフィス教にとっての悲願である。
大まかな場所を知れるだけでも大発見なことであった。
「まあ少し落ち着いてください」
良い年をした大人たちが目をぎらつかせているのは少し怖い。
「まま、まずはスープ食べましょう。冷めてしまいますよ」
一口食べてみたけど高い店だけあって美味い。
せっかくの料理が冷めてしまうのはもったいないので料理が来た以上は食べよう。
食べなきゃ教えてもらえない。
なんてことはないのだけどそんなふうに勘違いした三人は黙々と食べる。
「ふぅ……それで神物はどこにあるのですか?」
別に今聞こうと後で聞こうとさほど違いはないのに、せっかくの美味しいスープをサクッと食べてリュードに話を促す。
ただリュードの方は焦ることもなくスープを食べる。
「この国よりも北にあるグルーウィンという国にダンジョンはありませんか? おそらく長らく攻略されていないものがあるはずです」
スープを食べたのを確認して次の料理が運ばれてくる。
「ダンジョンだと……? まさか…………」
「そうです。そのダンジョンの中に神物があるはずです」
「ダンジョンに神物が……」
「正確に言うと神物があった場所がダンジョンになったみたいですけどね」
「ううむ、なるほど」
神物の影響で周りがダンジョンになる。
聞いたこともない話だけど神物が長いこと外に置かれていた事例も他にないのであり得ないことだと断言はできない。
むしろダンジョンになっているから発見できなかったと説明されれば納得もできる。
「……とりあえずグルーウィンについて調べてみましょう。それと一つお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「神物について、どこでお聞きなったのでしょうか?」
神物が失われたことは教会の恥であり、これまでひた隠しにされてきた。
今でも神物がなくなって久しいことを知っているのはごくわずかな者しかいない。
それでいながら長年神物の存在については探し続けていたのに未だに発見には至っていない。
もし本当に神物の場所を教えてくれたのだとしたら大恩人になるのだけど、どうやって神物のことをどうやって知ったのかは気になってしまう。
「それは言えません」
「ううむ……」
リュードは真っ直ぐにオルタンタスの目を見て答えた。
強い意志を感じさせる純粋な瞳にオルタンタスは渋い顔をした。
言ってしまえば本人というか本神に教えてもらったものだけど、それを伝える気はなかった。
こうなることは当然に予想できていた。
結局どのように言い訳をしたところで疑問が残ってしまう。
しかし正直にケーフィスに教えてもらったと答えるとどうなる。
この世界において神様の存在は大きく、神の声を聞けるだけでも保護の対象にすらなりうる。
必要以上に持ち上げられたり宗教に拘束されたりするのは避けたい。
言い訳できない以上答えない。
どのように解釈するかは勝手だけど何も答えていない以上リュードに手を出す理由はない。
こうして答えることでそこについて触れられたくない意思表示にもなる。


