「彼女は俺を助けようとしたのだ」
テレサから強い神聖力を感じだけれども、ダリルはゴブリンオーガの相手をしていて確認も取れなかった。
テレサは“降臨”という神聖魔法を使おうとしていたのである。
降臨とは神の力を一時的に借りて自分が与えられたよりもはるかに大きな神聖力を引き出す魔法だ。
神聖力が溢れ出し輝くテレサがダリルに神聖力を送り込む。
重く感じつつあった体が再び強い強化を受けて非常に軽く感じる。
見えてはいなくともテレサが何をしたのかダリルは悟った。
止められない以上は早く片をつけて、やめさせなければならない。
雄叫びを上げたダリルは盾を投げ捨てた。
回復はテレサに任せてゴブリンオーガに突っ込む。
テレサのためにゴブリンオーガを倒すと覚悟を決めた。
「あの時の俺は……ゴブリンオーガよりも魔物みたいだったかもしれないな」
相手をよりもぎらついた目をしたダリルはゴブリンオーガをメイスで殴りつける。
ゴブリンオーガも負けじと反撃するが回復が早い上に強化されて力の強くなったダリルにゴブリンオーガは二体でも押された。
ゴブリンオーガよりもよほど魔物のような荒々しい戦い。
メイスがへし折れるほどの一撃でゴブリンオーガの首が飛んでいき、相手の斧を奪い取ってもう一体を倒した。
リーダーであったゴブリンオーガが倒されたことがゴブリンたちにはすぐに広まった。
途端にゴブリンたちの統率が取れなくなり、死を恐れなかったゴブリンたちがためらいを見せた。
数が多いだけのゴブリンとなり第三次討伐隊は一気に攻勢を強めた。
「勝利した……だが過ぎたる力には代償が伴うのだ」
“テレサ! 目を開けてくれ!”
本来持っているはずの神聖力を超える力を身に受けて、それを使って何事もないとはいかない。
ゴブリンオーガを倒したのを確認してテレサはその場に倒れ込んだ。
グッタリと目を閉じて力なく眠るテレサに駆け寄ったダリルだったが、神聖力の治療も通じなかった。
テレサの犠牲、あるいは多くの人の命を失って小国はモンスターパニックの鎮圧に成功したのであった。
「テレサは今降臨の代償に蝕まれている」
強すぎる神聖力が体にダメージを与えている。
長い時間起きていることができず、体を保護するために眠る時間が長くなっていっている。
日を追うごと、眠るごとに睡眠時間が伸びていき、今では十日に一度だけ目を覚ます。
それもほんのわずかな時間だけ目を覚ますぐらいになっていた。
ムシュカはそうした眠るテレサのことを献身的に世話してくれているのだ。
「俺にもっと力があったなら……」
ダリルはベッドに腰掛けてテレサの手を握る。
あれほど暖かかった手が今はヒンヤリとしている。
「テレサは生きている。生きているのだがテレサが笑っていられる時間はとても短いものになってしまった」
テレサを見るダリルは今にも泣き出しそうだ。
「俺はケーフィス様に祈った。毎日、テレサをお助けくださいと。ある時に俺は声を聞いたのだ。神の、天啓であった」
使徒であるダリルでも神の声を聞いたのは初めてだった。
けれどもハッキリと神の声だと分かった。
「その声はテレサを救うために君を探せと言っていたのだ。正確には黒いツノのある竜人族の男性がテレサを救いに導いてくれると。話をすれば向こうもすぐに理解してくれるだろうと俺にお言葉を下さった」
リュードが聞いた話からするとテレサがまだ死ぬことはない。
けれど日に日に寝る時間が長くなって、気力が衰えていくテレサの様子を見てる周りは気が気でない。
ダリルの熱心なお願いに心打たれたケーフィスはちょっとしたヒントを与えた。
神ができる介入としてはそれぐらいが限界だった。
リュードの名前すら出すことも制限されていたけれど、特徴的な見た目を伝えるぐらいならギリギリセーフである。
この広い世界でリュードを探し出せるかは知らないけど、ダリルなら探し出せるだろうとケーフィスも確信を持っていた。
結果ダリルはリュードにたどり着いた。
きっとそれは必然だったのである。
「ついでこうも言っていた。何か騒ぎがあるところに君がいるだろうとね」
「ケーフィス……」
制限に引っかからない程度で伝えられるヒントとしては多くない。
リュードが結構事件を起こしていることを知っていたケーフィスはできる限りの中でそんなヒントも出していた。
「巷に数多くある騒ぎの噂を集め、その中から黒いツノの魔人族を探した。結果的にはそれを君を探し当てることができた」
当然簡単に見つけられたものではなくハズレ続きだったけれど、ダリルは諦めなかった。
最初は愛と正義と雷と竜人族の神なる変な存在がいると聞いて、仮にも神に仕える身として気になったのだ。
神を名乗る存在なので教会関係の中でも噂になっていて、それがリュードの尻尾を掴むきっかけとなったのである。
ダリルはリュードの痕跡を追った。
「見失いかけるたびに黒いツノの男の噂が耳に入ってきた。まるで俺を導いてくれるようだった」
「導いちゃ……いないけどな」
リュードは自分のことがそんな噂になっていると言われてむず痒い気持ちになる。
そしてダリルはトゥジュームのマヤノブッカでリュードに追いついた。
たまたま悪魔が出たというので行ってみたらリュードがいたのだけど、狙っていないのに出会った。
これこそ必然だとダリルは深くうなずいた。
こう聞くと数カ国にわたり、結構な時間をかけて追いかけてきている。
ものすごい執念である。
いかに見た目が特徴的であってもいくつかの国での噂を頼りに探し出すとは感心してしまう。
テレサから強い神聖力を感じだけれども、ダリルはゴブリンオーガの相手をしていて確認も取れなかった。
テレサは“降臨”という神聖魔法を使おうとしていたのである。
降臨とは神の力を一時的に借りて自分が与えられたよりもはるかに大きな神聖力を引き出す魔法だ。
神聖力が溢れ出し輝くテレサがダリルに神聖力を送り込む。
重く感じつつあった体が再び強い強化を受けて非常に軽く感じる。
見えてはいなくともテレサが何をしたのかダリルは悟った。
止められない以上は早く片をつけて、やめさせなければならない。
雄叫びを上げたダリルは盾を投げ捨てた。
回復はテレサに任せてゴブリンオーガに突っ込む。
テレサのためにゴブリンオーガを倒すと覚悟を決めた。
「あの時の俺は……ゴブリンオーガよりも魔物みたいだったかもしれないな」
相手をよりもぎらついた目をしたダリルはゴブリンオーガをメイスで殴りつける。
ゴブリンオーガも負けじと反撃するが回復が早い上に強化されて力の強くなったダリルにゴブリンオーガは二体でも押された。
ゴブリンオーガよりもよほど魔物のような荒々しい戦い。
メイスがへし折れるほどの一撃でゴブリンオーガの首が飛んでいき、相手の斧を奪い取ってもう一体を倒した。
リーダーであったゴブリンオーガが倒されたことがゴブリンたちにはすぐに広まった。
途端にゴブリンたちの統率が取れなくなり、死を恐れなかったゴブリンたちがためらいを見せた。
数が多いだけのゴブリンとなり第三次討伐隊は一気に攻勢を強めた。
「勝利した……だが過ぎたる力には代償が伴うのだ」
“テレサ! 目を開けてくれ!”
本来持っているはずの神聖力を超える力を身に受けて、それを使って何事もないとはいかない。
ゴブリンオーガを倒したのを確認してテレサはその場に倒れ込んだ。
グッタリと目を閉じて力なく眠るテレサに駆け寄ったダリルだったが、神聖力の治療も通じなかった。
テレサの犠牲、あるいは多くの人の命を失って小国はモンスターパニックの鎮圧に成功したのであった。
「テレサは今降臨の代償に蝕まれている」
強すぎる神聖力が体にダメージを与えている。
長い時間起きていることができず、体を保護するために眠る時間が長くなっていっている。
日を追うごと、眠るごとに睡眠時間が伸びていき、今では十日に一度だけ目を覚ます。
それもほんのわずかな時間だけ目を覚ますぐらいになっていた。
ムシュカはそうした眠るテレサのことを献身的に世話してくれているのだ。
「俺にもっと力があったなら……」
ダリルはベッドに腰掛けてテレサの手を握る。
あれほど暖かかった手が今はヒンヤリとしている。
「テレサは生きている。生きているのだがテレサが笑っていられる時間はとても短いものになってしまった」
テレサを見るダリルは今にも泣き出しそうだ。
「俺はケーフィス様に祈った。毎日、テレサをお助けくださいと。ある時に俺は声を聞いたのだ。神の、天啓であった」
使徒であるダリルでも神の声を聞いたのは初めてだった。
けれどもハッキリと神の声だと分かった。
「その声はテレサを救うために君を探せと言っていたのだ。正確には黒いツノのある竜人族の男性がテレサを救いに導いてくれると。話をすれば向こうもすぐに理解してくれるだろうと俺にお言葉を下さった」
リュードが聞いた話からするとテレサがまだ死ぬことはない。
けれど日に日に寝る時間が長くなって、気力が衰えていくテレサの様子を見てる周りは気が気でない。
ダリルの熱心なお願いに心打たれたケーフィスはちょっとしたヒントを与えた。
神ができる介入としてはそれぐらいが限界だった。
リュードの名前すら出すことも制限されていたけれど、特徴的な見た目を伝えるぐらいならギリギリセーフである。
この広い世界でリュードを探し出せるかは知らないけど、ダリルなら探し出せるだろうとケーフィスも確信を持っていた。
結果ダリルはリュードにたどり着いた。
きっとそれは必然だったのである。
「ついでこうも言っていた。何か騒ぎがあるところに君がいるだろうとね」
「ケーフィス……」
制限に引っかからない程度で伝えられるヒントとしては多くない。
リュードが結構事件を起こしていることを知っていたケーフィスはできる限りの中でそんなヒントも出していた。
「巷に数多くある騒ぎの噂を集め、その中から黒いツノの魔人族を探した。結果的にはそれを君を探し当てることができた」
当然簡単に見つけられたものではなくハズレ続きだったけれど、ダリルは諦めなかった。
最初は愛と正義と雷と竜人族の神なる変な存在がいると聞いて、仮にも神に仕える身として気になったのだ。
神を名乗る存在なので教会関係の中でも噂になっていて、それがリュードの尻尾を掴むきっかけとなったのである。
ダリルはリュードの痕跡を追った。
「見失いかけるたびに黒いツノの男の噂が耳に入ってきた。まるで俺を導いてくれるようだった」
「導いちゃ……いないけどな」
リュードは自分のことがそんな噂になっていると言われてむず痒い気持ちになる。
そしてダリルはトゥジュームのマヤノブッカでリュードに追いついた。
たまたま悪魔が出たというので行ってみたらリュードがいたのだけど、狙っていないのに出会った。
これこそ必然だとダリルは深くうなずいた。
こう聞くと数カ国にわたり、結構な時間をかけて追いかけてきている。
ものすごい執念である。
いかに見た目が特徴的であってもいくつかの国での噂を頼りに探し出すとは感心してしまう。


