「いいか、お前はドワーフと共に生き、ドワーフを守るんだ」

 スズは一番重要であり、中のスペースも広いミスリルの鉱山に棲むことになった。
 要はそのままということである。

 キラービーとの共生では色々なことを考えた。
 ただ棲んでいるだけでも他の魔物に対する抑圧的な効果は発揮するけれど、やるべき仕事も決まった。

 定期的な見回りやハチミツの生産などをキラービーはすることになって、ドワーフはハチミツを売ったり食料の提供をする。
 鉱山周りに花を植えるなんてことも決まったり、温泉と花がドワーフの町の観光産業にもなりうるかもしれない。

 町にキラービーが常駐したりすることとかドワーフがそれを周知するとかスズとかドワーフたちの負担も大きいけれど、あとはやりながら慣れていくしかない。
 リュードたちもしばらくドワガルに残って様子を見ていたけど、大丈夫そうだと判断した。

 いつまでもドワガルに残っていることも出来ないのでそろそろ出発しようと思った。

「本当に行っちゃうの?」

「ああ、そのつもりだ」

「そう……分かった!」

 リュードたちが出発することを伝えるとスズはひどくごねた。
 予想はしていたが、一緒に行きたいだの行かないでほしいだのとワガママを言った。

 キラービーはスズがいないと成り立たないので根気強く説得を重ねてなんとかスズはドワガルに残ることになった。
 まだリュードのことを完全に諦めてはいないようだけど、また必ずドワガルに来るからというと何かを考えていた。

 スズとしてもリュードのお願いだし断れない。
 しっかりとドワーフを守るように真っ直ぐにスズを見つめると、スズも真っ直ぐにリュードを見つめ返してうなずいた。

「私……頑張るよ、ご主人様!」

 スズは知能も高い。
 やるべきことを理解して自分なりにしっかりと適応させてこなしている。

 よほどのことがない限り問題はない。
 仮に問題があっても冒険者たちとの縁も繋げた。

 依頼をすることもできるし疾風の剣はドワガルを離れるけど近くで活動してくれるとも言っていた。

「私が頑張って……ドワーフたちと仲良く暮らしてたらご褒美くれる?」

「……分かった。良い子にやってたらだけどな。それに何が欲しいんだ?」

「ふふふっ、それは秘密です」

 スズは羽を広げて少し浮き上がるとリュードの頬にキスをした。

「任せてください! 私スズはこのドワガルを守り抜きます。そしてまた会う時には私はもっと良いオンナになっておきます!」

 ドワーフとキラービー。
 相容れなかったはずの2つの存在は共に手を取り生きていく。

 武器を直しにきてこんなことになるとはリュードも全く予想していなかった。
 鍛冶の国ドワガルは後に温泉とハチミツの効能で療養地として有名になる。
 
 他種族にも開かれ始めたドワガルは新たなる歴史を歩み始めたのだ。
 そして、その歴史の中でドワガルを救った黒いツノの英雄は語り継がれることだろう。

「じゃあなリュード!」

「ご主人様ー! 絶対にまたきてねー! 美味しいハチミツ作っておくからー!」

 デルデやスズを始めとしたドワーフとキラービーに見送られ、リュードたちはドワガルを出発した。
 絶対またいつか戻ってこよう、そう思わせてくれる面白い国だったとリュードは思いながら手を振り返し、再び旅に出たのであった。

 ーーー第六章完結ーーー