「オホン! よく集まってくれた!」
ドワガルの町の中心部にある大きな広場には町中のドワーフが集まっていた。
ステージが設けられ、その前には布がかけられた山がある。
「この度我々ドワーフは魔物に奪われてしまった鉱山を取り戻すことに成功した!」
ドッとドワーフが沸く。
鉱山を取り戻すのに犠牲になってしまったドワーフもいる。
完全な閉鎖によって生活も厳しくなってきていたのでドワーフたちも大喜びである。
「鉱山を取り戻すことに成功したのは真人族の冒険者たち、それにリュード、ルフォン、ラストという友があってのことだ!」
名指しはやめろと言いたい。
ドワーフが広場に作ったステージの上にデルデたちドワーフのトップ四人とリュードたちとリザーセツたち冒険者が上がっていた。
ついでにハチもいる。
ドゥルビョが広場全体に聞こえるほどにしっかりと腹から声を出して、ドワーフたちに集まってもらった理由を述べようとする。
「そしてさらに! 我々は魔物の友も迎え入れようとしている。しかしこれに関してはドワーフ全ての総意である必要がある。なので同胞に問いたい!」
ドゥルビョが手を振るとステージ前に置かれていた大きな山にかけられた布が取られた。
「話は単純。賛成なら酒の樽から酒を飲み、反対なら水の樽から水を飲むといい! その投票結果によって賛否が決まる!」
「えっ!? そんな方法あり?」
ドワーフ以外のリュードたちが驚く。
公平でも公正でもなく、正確性もない、投票とも言えない行為でハチのことを決めようとしていた。
リュードがデルデを見るとニヤリと笑って見返してきた。
「なるほどな……」
こんなもの結果が見えているやり方だが、誰かの勝手な行いではなかった。
「わざとやってるんだな」
もはやドワガルの世論はほとんど賛成の意見が占めていた。
根強い反対の意見もあったけど、若いドワーフが酒を飲み交わしながら説得を重ねていた。
頭の固かったドワーフたちも若いドワーフの熱意に押されていつの間にかドワガルに新しい動きをもたらすことに積極的になっていたのである。
ついでに賛成で酒が飲めるなら文句があるドワーフも少ない。
「鉱山も奪還した宴のついでに投票してくれればよい。さて、同胞が意見を示してくれ!」
こうして宴が始まった。
もう結構な量をリュードたちがいる間にも飲んでいたはずなのにドワーフたちはどこから酒を持ってくるのか疑問である。
ドワーフたちが一斉に賛成に集まり、酒を持っていく。
「お姉様、おつまみはいかがですか?」
「もらおうかな」
「ご主人様はいかがですか?」
「俺ももらっておこうかな。ありがとう、ハチ」
ハチはルフォンに負けて以来ルフォンのことをお姉様と呼んでいた。
リュードのことはなぜかご主人様である。
誰が教えたのか知らないけどいつの間にか呼んでいたので正すタイミングも逃してしまった。
「ラストは?」
「私は呼び捨てなの納得いかない……」
ラストのことはラスト呼び捨てなのでラストは不満そうだけど、接近戦が得意ではないラストはハチに勝負は挑まない。
ルフォンとの戦いも見ていたラストは接近戦では勝てないと察したので完全に勝敗をつけることは避けた。
負けて下に見られるぐらいなら今の状態をキープすることを選んだ。
戦わねば一応対等なのである。
「まあ私も貰うよ」
ラストはハチの差し出したお皿を受け取る。
何もしたくない宣言をしていたハチだが、根は働き蜂的なところがあるのか意外と気が利いて細かいところは見ている。
ドワーフにもお酒が飲めない人が少数ながらいる。
そんな人にもお酒っぽいけどアルコールの入っていない飲み物があったりする。
ルフォンとラストはそんな飲み物を飲んでいた。
せこせこと働くハチに対してルフォンは意外と優しい。
リュードを慕ってそうする人はいるのだけど、ルフォンを慕ってそうしてくれる人はこれまでいなかった。
お姉様なんて呼ばれること初めてだし、気分は悪くない。
リュードもルフォンも一人っ子なのでちょっと兄妹的なものが欲しいとルフォンは思っていたこともある。
ハチの人懐っこさも結構レベルが高いこともあるのだろう。
そうしてステージの上でのんびりとしていると、賛成のお酒に群がっていたドワーフたちもおおよそ一巡して片手に大きなジョッキやグラスをもっていた。
賛成なのか反対なのか実態は分からないけど多くのドワーフがお酒の方に行っていて、用意したお酒の樽があっという間に空になっていっていた。
水の方も減っているのだけど、それはお酒を割ったりするのに使われているので反対票を投じたくて水ばかり飲んでいるドワーフはいないと言っていい。
それでも思いの外減ってないな、なんて思っているとリュードは見てしまった。
酒樽の方は空になると別のものが置かれて投票されたと示すのに横にどけて積まれているのに対して、水の樽は水が継ぎ足されていたのだ。
「あれじゃあいつまで経っても反対票は増えていかないな……」
不正じゃないかと思うけど、あれは反対票じゃなくて水が欲しくて持っていくドワーフ分を足してるだけだと笑うデルデにリュードも気にするのをやめた。
宴と投票は三日間行われることになっている。
一日目でリュードたちや冒険者は引き上げたけれどドワーフたちは飲んでは寝て、起きては飲んでを繰り返していた。
広場で酒を飲むのでリュードも心安らかに宿で休むことができて三日が経った。
「賛成多数につき、我々は魔物の友を迎えることにする!」
ほとんどのドワーフが酔っていて、寝ている人も多い中ドゥルビョが高らかにハチを受け入れることを宣言した。
賛成の酒樽はうずたかく積み重なっていて、誰の目にも結果は明らかだった。
ドゥルビョも赤ら顔で宣言を終えた瞬間倒れて寝てしまったのであった。
ーーーーー
ドワガルの町の中心部にある大きな広場には町中のドワーフが集まっていた。
ステージが設けられ、その前には布がかけられた山がある。
「この度我々ドワーフは魔物に奪われてしまった鉱山を取り戻すことに成功した!」
ドッとドワーフが沸く。
鉱山を取り戻すのに犠牲になってしまったドワーフもいる。
完全な閉鎖によって生活も厳しくなってきていたのでドワーフたちも大喜びである。
「鉱山を取り戻すことに成功したのは真人族の冒険者たち、それにリュード、ルフォン、ラストという友があってのことだ!」
名指しはやめろと言いたい。
ドワーフが広場に作ったステージの上にデルデたちドワーフのトップ四人とリュードたちとリザーセツたち冒険者が上がっていた。
ついでにハチもいる。
ドゥルビョが広場全体に聞こえるほどにしっかりと腹から声を出して、ドワーフたちに集まってもらった理由を述べようとする。
「そしてさらに! 我々は魔物の友も迎え入れようとしている。しかしこれに関してはドワーフ全ての総意である必要がある。なので同胞に問いたい!」
ドゥルビョが手を振るとステージ前に置かれていた大きな山にかけられた布が取られた。
「話は単純。賛成なら酒の樽から酒を飲み、反対なら水の樽から水を飲むといい! その投票結果によって賛否が決まる!」
「えっ!? そんな方法あり?」
ドワーフ以外のリュードたちが驚く。
公平でも公正でもなく、正確性もない、投票とも言えない行為でハチのことを決めようとしていた。
リュードがデルデを見るとニヤリと笑って見返してきた。
「なるほどな……」
こんなもの結果が見えているやり方だが、誰かの勝手な行いではなかった。
「わざとやってるんだな」
もはやドワガルの世論はほとんど賛成の意見が占めていた。
根強い反対の意見もあったけど、若いドワーフが酒を飲み交わしながら説得を重ねていた。
頭の固かったドワーフたちも若いドワーフの熱意に押されていつの間にかドワガルに新しい動きをもたらすことに積極的になっていたのである。
ついでに賛成で酒が飲めるなら文句があるドワーフも少ない。
「鉱山も奪還した宴のついでに投票してくれればよい。さて、同胞が意見を示してくれ!」
こうして宴が始まった。
もう結構な量をリュードたちがいる間にも飲んでいたはずなのにドワーフたちはどこから酒を持ってくるのか疑問である。
ドワーフたちが一斉に賛成に集まり、酒を持っていく。
「お姉様、おつまみはいかがですか?」
「もらおうかな」
「ご主人様はいかがですか?」
「俺ももらっておこうかな。ありがとう、ハチ」
ハチはルフォンに負けて以来ルフォンのことをお姉様と呼んでいた。
リュードのことはなぜかご主人様である。
誰が教えたのか知らないけどいつの間にか呼んでいたので正すタイミングも逃してしまった。
「ラストは?」
「私は呼び捨てなの納得いかない……」
ラストのことはラスト呼び捨てなのでラストは不満そうだけど、接近戦が得意ではないラストはハチに勝負は挑まない。
ルフォンとの戦いも見ていたラストは接近戦では勝てないと察したので完全に勝敗をつけることは避けた。
負けて下に見られるぐらいなら今の状態をキープすることを選んだ。
戦わねば一応対等なのである。
「まあ私も貰うよ」
ラストはハチの差し出したお皿を受け取る。
何もしたくない宣言をしていたハチだが、根は働き蜂的なところがあるのか意外と気が利いて細かいところは見ている。
ドワーフにもお酒が飲めない人が少数ながらいる。
そんな人にもお酒っぽいけどアルコールの入っていない飲み物があったりする。
ルフォンとラストはそんな飲み物を飲んでいた。
せこせこと働くハチに対してルフォンは意外と優しい。
リュードを慕ってそうする人はいるのだけど、ルフォンを慕ってそうしてくれる人はこれまでいなかった。
お姉様なんて呼ばれること初めてだし、気分は悪くない。
リュードもルフォンも一人っ子なのでちょっと兄妹的なものが欲しいとルフォンは思っていたこともある。
ハチの人懐っこさも結構レベルが高いこともあるのだろう。
そうしてステージの上でのんびりとしていると、賛成のお酒に群がっていたドワーフたちもおおよそ一巡して片手に大きなジョッキやグラスをもっていた。
賛成なのか反対なのか実態は分からないけど多くのドワーフがお酒の方に行っていて、用意したお酒の樽があっという間に空になっていっていた。
水の方も減っているのだけど、それはお酒を割ったりするのに使われているので反対票を投じたくて水ばかり飲んでいるドワーフはいないと言っていい。
それでも思いの外減ってないな、なんて思っているとリュードは見てしまった。
酒樽の方は空になると別のものが置かれて投票されたと示すのに横にどけて積まれているのに対して、水の樽は水が継ぎ足されていたのだ。
「あれじゃあいつまで経っても反対票は増えていかないな……」
不正じゃないかと思うけど、あれは反対票じゃなくて水が欲しくて持っていくドワーフ分を足してるだけだと笑うデルデにリュードも気にするのをやめた。
宴と投票は三日間行われることになっている。
一日目でリュードたちや冒険者は引き上げたけれどドワーフたちは飲んでは寝て、起きては飲んでを繰り返していた。
広場で酒を飲むのでリュードも心安らかに宿で休むことができて三日が経った。
「賛成多数につき、我々は魔物の友を迎えることにする!」
ほとんどのドワーフが酔っていて、寝ている人も多い中ドゥルビョが高らかにハチを受け入れることを宣言した。
賛成の酒樽はうずたかく積み重なっていて、誰の目にも結果は明らかだった。
ドゥルビョも赤ら顔で宣言を終えた瞬間倒れて寝てしまったのであった。
ーーーーー


