「えっと、この音って……?」
「キラービーだ」
聞き覚えのある音だったけれど、パッと思い出せなくてラストが首を傾げた。
音の正体に気づいたリザーセツが答える。
大森林周辺で活動していない冒険者には分からなかったが、リザーセツは普段大森林で活動している高ランク冒険者なので分かったのだ。
「みんな、隠れるんだ」
みんなで木が密集して空から見にくいところに移動する。
少し待って羽音が振動にまで感じられるほどに聞こえてきてキラービーの姿が見えた。
「あれがキラービー……」
キラービーを初めて見る者もいた。
もうすでにリュードたちは何回も名前を耳にしているけれど、どこにでもいるような魔物じゃない。
生息域が限定され巣の規模によって危険度も変わる魔物で、他に巣が見つかると早めに処理されてしまうので広く知られていなかった。
ハチミツでも採ろうと考えて冒険者ギルドがしっかり管理でもしない限りは身近な魔物ではない。
「キラービーは面倒だな」
キラービーを知っているリザーセツなど何人かは険しい顔をしていた。
キラービーは面倒な魔物である。
なぜなら空を飛んでいる魔物だからだ。
太い針は脅威的だし、キラービーの持つ毒は冒されると致命的になる。
巣から離れた単体の個体はそうでもないが巣を作り、集団でいるキラービーを相手取るのは簡単なことではない。
「ただこんなところにキラービーがいるということは……」
「まあそうだろうな」
鉱山の近くはキラービーがいるような場所ではない。
事前調査でもキラービーの報告はないので、こんなところにキラービーがいることを考えるに鉱山に何がいるのか予想がついた。
「キラービーを倒してしまおう」
リザーセツの指示で戦闘の準備をする。
鉱山まではあと少しなのに急激に木々が減って身を隠せる場所がかなり減っている。
このまま進もうにもキラービーに見つかる危険がはるかに高い。
下手に隠れようとするよりも見つかったキラービーを早く倒した方が効率的だとリザーセツは考えた。
「まだこちらに気づいていないな」
声をひそめて会話する。
風向きも味方してくれていた。
キラービーの嗅覚について聞いたことがある人は誰もいないが虫系は大体嗅覚的に優れていないことが多い。
それでも臭いでバレることは魔物相手でよくあることなので警戒するに越したことはない。
今はキラービーの風下にいるので鼻が敏感でもバレにくい場所どりができている。
先ほど見かけたキラービーは一匹だけだったが、他のキラービーも合流してきて今は三匹いた。
見回りでもしているかのように低空をゆっくりと飛んでいた。
「よし、仲間を呼ばれる前に倒してしまおう」
逃げられて仲間を呼ばれたら面倒なことになる。
速攻で勝負を仕掛ける。
「いけ!」
冒険者の中でも足の速い者が飛び出していく。
ルフォンもその一人として選ばれていた。
「放て!」
近づいてくる人の気配を察知したキラービーが振り返る。
そのタイミングでラストを含めた遠距離攻撃組が一斉に攻撃する。
ドワーフ製の強弓を使うラストの矢は他の人の魔法などに比べて攻撃が飛んでいく速度が速い。
一番奥にいたキラービーの眼にラストの矢が深々と突き刺さる。
一瞬遅れて矢に込められた魔力が爆発する。
脆いキラービーの頭はそれだけで吹き飛び、一発で一匹が戦闘不能になる。
迫り来る魔法と冒険者に気を取られて後ろのキラービーがやられたことに残りのキラービーは気づかなかった。
二匹のキラービーたちは魔法を回避して冒険者たちに襲い掛かろうとする。
ただ冒険者たちはキラービーよりも上手だった。
「逃がさないわよ!」
キラービーを狙った魔法もあれば、キラービーを直接狙っていない魔法もあった。
外れて飛んでいた魔法も技術不足でそうなったわけでも、なんの目的もないわけでもなかった。
高めに放たれた魔法はキラービーが上空に逃げることを防ぐ目的があったのだ。
高く飛び上がると魔法に当たってしまうのでキラービーは左右に魔法をかわし、相変わらず地面付近の低空を飛んでいる。
手の届く位置にいてくれるならキラービーは脅威ではない。
手練れの冒険者たちは素早く羽から狙い、あっという間にキラービーを倒した。
「怪我人もいないな」
「どうしてこんなところにキラービーが?」
キラービーのことを知る疾風の剣の冒険者は困惑したような表情を浮かべた。
森の奥などの自然が豊かな場所に巣を作るキラービーは鉱山などの自然の少ないところでは活動しない。
一匹だけ何かの理由で巣を離れて普段見ないようなところで見る可能性があっても今は三匹もキラービーが飛んでいた。
「理由は思いつかないんですか?」
「ううむ……あるにはある」
「なんですか?」
「三匹もキラービーがまとまって動いているのは……経験上巣の周りの見張りぐらいだろうな」
鉱山、そしてミスリルリザードの異常な移動、キラービー。
一つに繋がったような気がして、誰も口にそれを出せなかった。
ミスリルリザードの異常な移動はキラービーが関わっている。
いやもしかしたら鉱山に次々と魔物が現れたのも、とリュードは思った。
ここから先にはキラービーがいる可能性が高い。
みんなが一層の警戒を強める。
「いやー……あれは」
鉱山近くにある林の中にある休憩小屋までリュードたちは移動してきた。
そこから鉱山の様子をうかがう。
リュードは遠視の魔法を使うが、他の冒険者は望遠鏡を取り出す。
「キラービーだ」
聞き覚えのある音だったけれど、パッと思い出せなくてラストが首を傾げた。
音の正体に気づいたリザーセツが答える。
大森林周辺で活動していない冒険者には分からなかったが、リザーセツは普段大森林で活動している高ランク冒険者なので分かったのだ。
「みんな、隠れるんだ」
みんなで木が密集して空から見にくいところに移動する。
少し待って羽音が振動にまで感じられるほどに聞こえてきてキラービーの姿が見えた。
「あれがキラービー……」
キラービーを初めて見る者もいた。
もうすでにリュードたちは何回も名前を耳にしているけれど、どこにでもいるような魔物じゃない。
生息域が限定され巣の規模によって危険度も変わる魔物で、他に巣が見つかると早めに処理されてしまうので広く知られていなかった。
ハチミツでも採ろうと考えて冒険者ギルドがしっかり管理でもしない限りは身近な魔物ではない。
「キラービーは面倒だな」
キラービーを知っているリザーセツなど何人かは険しい顔をしていた。
キラービーは面倒な魔物である。
なぜなら空を飛んでいる魔物だからだ。
太い針は脅威的だし、キラービーの持つ毒は冒されると致命的になる。
巣から離れた単体の個体はそうでもないが巣を作り、集団でいるキラービーを相手取るのは簡単なことではない。
「ただこんなところにキラービーがいるということは……」
「まあそうだろうな」
鉱山の近くはキラービーがいるような場所ではない。
事前調査でもキラービーの報告はないので、こんなところにキラービーがいることを考えるに鉱山に何がいるのか予想がついた。
「キラービーを倒してしまおう」
リザーセツの指示で戦闘の準備をする。
鉱山まではあと少しなのに急激に木々が減って身を隠せる場所がかなり減っている。
このまま進もうにもキラービーに見つかる危険がはるかに高い。
下手に隠れようとするよりも見つかったキラービーを早く倒した方が効率的だとリザーセツは考えた。
「まだこちらに気づいていないな」
声をひそめて会話する。
風向きも味方してくれていた。
キラービーの嗅覚について聞いたことがある人は誰もいないが虫系は大体嗅覚的に優れていないことが多い。
それでも臭いでバレることは魔物相手でよくあることなので警戒するに越したことはない。
今はキラービーの風下にいるので鼻が敏感でもバレにくい場所どりができている。
先ほど見かけたキラービーは一匹だけだったが、他のキラービーも合流してきて今は三匹いた。
見回りでもしているかのように低空をゆっくりと飛んでいた。
「よし、仲間を呼ばれる前に倒してしまおう」
逃げられて仲間を呼ばれたら面倒なことになる。
速攻で勝負を仕掛ける。
「いけ!」
冒険者の中でも足の速い者が飛び出していく。
ルフォンもその一人として選ばれていた。
「放て!」
近づいてくる人の気配を察知したキラービーが振り返る。
そのタイミングでラストを含めた遠距離攻撃組が一斉に攻撃する。
ドワーフ製の強弓を使うラストの矢は他の人の魔法などに比べて攻撃が飛んでいく速度が速い。
一番奥にいたキラービーの眼にラストの矢が深々と突き刺さる。
一瞬遅れて矢に込められた魔力が爆発する。
脆いキラービーの頭はそれだけで吹き飛び、一発で一匹が戦闘不能になる。
迫り来る魔法と冒険者に気を取られて後ろのキラービーがやられたことに残りのキラービーは気づかなかった。
二匹のキラービーたちは魔法を回避して冒険者たちに襲い掛かろうとする。
ただ冒険者たちはキラービーよりも上手だった。
「逃がさないわよ!」
キラービーを狙った魔法もあれば、キラービーを直接狙っていない魔法もあった。
外れて飛んでいた魔法も技術不足でそうなったわけでも、なんの目的もないわけでもなかった。
高めに放たれた魔法はキラービーが上空に逃げることを防ぐ目的があったのだ。
高く飛び上がると魔法に当たってしまうのでキラービーは左右に魔法をかわし、相変わらず地面付近の低空を飛んでいる。
手の届く位置にいてくれるならキラービーは脅威ではない。
手練れの冒険者たちは素早く羽から狙い、あっという間にキラービーを倒した。
「怪我人もいないな」
「どうしてこんなところにキラービーが?」
キラービーのことを知る疾風の剣の冒険者は困惑したような表情を浮かべた。
森の奥などの自然が豊かな場所に巣を作るキラービーは鉱山などの自然の少ないところでは活動しない。
一匹だけ何かの理由で巣を離れて普段見ないようなところで見る可能性があっても今は三匹もキラービーが飛んでいた。
「理由は思いつかないんですか?」
「ううむ……あるにはある」
「なんですか?」
「三匹もキラービーがまとまって動いているのは……経験上巣の周りの見張りぐらいだろうな」
鉱山、そしてミスリルリザードの異常な移動、キラービー。
一つに繋がったような気がして、誰も口にそれを出せなかった。
ミスリルリザードの異常な移動はキラービーが関わっている。
いやもしかしたら鉱山に次々と魔物が現れたのも、とリュードは思った。
ここから先にはキラービーがいる可能性が高い。
みんなが一層の警戒を強める。
「いやー……あれは」
鉱山近くにある林の中にある休憩小屋までリュードたちは移動してきた。
そこから鉱山の様子をうかがう。
リュードは遠視の魔法を使うが、他の冒険者は望遠鏡を取り出す。


