ここで低ランク冒険者の集まりだったのならすぐさま出発しようとでもなるところだったが、流石の高ランク冒険者は違う。
余裕と冷静さが段違いで渡された情報だけを鵜呑みにして動かない。
ドワーフが見逃したところや気づかないところ、時間が空いて変化が起きたことはないかと自分たちでさらにチェックする。
それだけでなく鉱山周辺の地形や逃げるルート、鉱山の出入り口や魔物の分析まで行ってリスクを極限まで減らそうとしている。
確実性を重視して、より細かな情報はドワーフにも共有されるので時間がかかっても納得のできる仕事をしていた。
魔物の様子を確認して分かったのは何故か魔物はあまり外に出たがらないようで、日中は鉱山の中に引きこもっていることが多いと言うことだった。
鉱山周辺にも自然はあるがエサ場としてはやや不足気味なところもあるので、もっと積極的に外に出てエサ探ししてもおかしくないのに行動に異常が見られるとリザーセツたちは感じていた。
外に出ないことはドワーフたちにとって安全でいいのかもしれないが、そのせいで相手の魔物の規模が分からない。
ついでに外に出ないから誘き出して数を減らすことも難しいというデメリットもあった。
「やはり直接鉱山の中に乗り込んで魔物を倒していくしかないですね」
「ふむ、やはりお主らの力を借りるしかないな」
リザーセツの報告はデルデに行われていた。
冒険者たちの結論として乗り込んで魔物を討伐するしかないとなった。
鉱山にはいくつか出入り口があるので冒険者を二つに分けてそれぞれから進入していく作戦を立てる。
全員で乗り込んでも全員で戦える広さはないし、二パーティー大体十人前後が一つの出入り口から乗り込む。
一度に全員乗り込むよりも分散させた方がドワーフに対するアピールとしてもいいと判断したのだ。
「それでは行ってきます」
冒険者に加えて鉱山の道案内兼活躍見届け人として何人かのドワーフもつれていき、一つ目の鉱山を取り戻す冒険者たちが出発した。
その冒険者たちにリュードたちは同行しなかった。
なぜならリュードたちは依頼を受けた冒険者ではなく依頼主側だからである。
五パーティーのうち二パーティーずつがそれぞれの出入り口から突入する。
つまり一パーティーはドワガルで念のために待機となる。
なぜなのかリュードたちも一応待機組という扱いではあった。
ということでリュードはドワーフたちと腕相撲で戦った。
お酒は飲まんのかとドワーフに詰め寄られたりもしたけれど、他の人が鉱山で戦っているのにお酒を飲んでいるのは気が引けたので断っていた。
代わりに腕相撲大会なんて御大層な呼び方した競技が始まったけれど内容はいつもと変わらない。
ドワーフがリュードに献上品を持ってきてリュードが受け取って腕相撲勝負が始まる。
大会も何もリュード固定でドワーフが入れ替わって腕相撲をしていくだけだ。
冒険者たちは一日かけて鉱山まで行き、二日かけて魔物を倒して、また一日かけて帰ってきた。
「戻りました。鉱山を一つ取り戻してきました」
そろそろお酒勝負の圧力に負けそうになっていたところだった。
ケルタの金床の前には腕相撲大会を肴に酔い潰れたドワーフが転がっており、リュードは一人毎夜限界を迎えた腕の痛みで眠れぬ日々を過ごしていた。
鉱山奪還の報は瞬く間にドワガルを駆け巡り、大きな騒ぎを起こしている。
鉱山にいたのはケイブマンティスという巨大なカマキリみたいな魔物であった。
両手の鎌から繰り出される素早い攻撃は侮れるものではなく、鉱山の中では戦いにくかっただろうが、ケガ人もなく討伐してきた。
流石高ランク冒険者たちは強い。
一日休んで次の鉱山の調査に取り掛かる冒険者たちになんの心配もなく攻略できそうだとリュードも期待を持てた。
「リュード君のところに行ってみようか」
休みのパーティーは順番で決まる。
五つの鉱山があるのでちょうど五パーティーで一回ずつ休むことになる。
二ヶ所目の鉱山の攻略は疾風の剣がお休みの番となった。
リュードたちと一緒におらずに町中を歩くと良い顔をされないことはわかっているけれど、部屋にこもっていても暇なだけだ。
どうせならドワーフと仲良くなりたいと思い、リュードにドワーフと仲良くなる秘訣でも聞いてみようとリザーセツは思った。
リザーセツはリュードが泊まっている宿に向かう。
その時間は朝なのだけれどすでに宿の前にはドワーフたちが集まっていた。
聞かずとも目で見て秘訣がわかるかもしれない。
リザーセツは気配を消してドワーフたちとリュードがどう交流を始めるのかを見学し始めた。
単なる興味であった。
もうすでに酒盛りを始めているドワーフがいるし、みんななぜかお酒を持っている。
樽を背負ってるドワーフや荷台に積んできているドワーフもいて何をするつもりなのかと不思議そうに眺めていた。
ドワーフたちはお酒の他に持ってきた武器やら宝石やらを比べてやんややんやと議論している。
そうしていると宿からすごい嫌そうな顔をしたリュードが出てきた。
ドワーフたちが先ほどまで議論していた武器について尋ねて、リュードがそのうちの一つを指差すと一人のドワーフが喜んだ。
リュードが指差した武器をリュードに渡し、ついでにカップを渡すと並々とお酒を注いだ。
周りのドワーフもワッと盛り上がり、リュードと向かい合うドワーフのカップにも並々とお酒を注ぐ。
一度リュードがガックリと項垂れて大きく息を吐き出すと覚悟を決めた様に顔を上げた。
余裕と冷静さが段違いで渡された情報だけを鵜呑みにして動かない。
ドワーフが見逃したところや気づかないところ、時間が空いて変化が起きたことはないかと自分たちでさらにチェックする。
それだけでなく鉱山周辺の地形や逃げるルート、鉱山の出入り口や魔物の分析まで行ってリスクを極限まで減らそうとしている。
確実性を重視して、より細かな情報はドワーフにも共有されるので時間がかかっても納得のできる仕事をしていた。
魔物の様子を確認して分かったのは何故か魔物はあまり外に出たがらないようで、日中は鉱山の中に引きこもっていることが多いと言うことだった。
鉱山周辺にも自然はあるがエサ場としてはやや不足気味なところもあるので、もっと積極的に外に出てエサ探ししてもおかしくないのに行動に異常が見られるとリザーセツたちは感じていた。
外に出ないことはドワーフたちにとって安全でいいのかもしれないが、そのせいで相手の魔物の規模が分からない。
ついでに外に出ないから誘き出して数を減らすことも難しいというデメリットもあった。
「やはり直接鉱山の中に乗り込んで魔物を倒していくしかないですね」
「ふむ、やはりお主らの力を借りるしかないな」
リザーセツの報告はデルデに行われていた。
冒険者たちの結論として乗り込んで魔物を討伐するしかないとなった。
鉱山にはいくつか出入り口があるので冒険者を二つに分けてそれぞれから進入していく作戦を立てる。
全員で乗り込んでも全員で戦える広さはないし、二パーティー大体十人前後が一つの出入り口から乗り込む。
一度に全員乗り込むよりも分散させた方がドワーフに対するアピールとしてもいいと判断したのだ。
「それでは行ってきます」
冒険者に加えて鉱山の道案内兼活躍見届け人として何人かのドワーフもつれていき、一つ目の鉱山を取り戻す冒険者たちが出発した。
その冒険者たちにリュードたちは同行しなかった。
なぜならリュードたちは依頼を受けた冒険者ではなく依頼主側だからである。
五パーティーのうち二パーティーずつがそれぞれの出入り口から突入する。
つまり一パーティーはドワガルで念のために待機となる。
なぜなのかリュードたちも一応待機組という扱いではあった。
ということでリュードはドワーフたちと腕相撲で戦った。
お酒は飲まんのかとドワーフに詰め寄られたりもしたけれど、他の人が鉱山で戦っているのにお酒を飲んでいるのは気が引けたので断っていた。
代わりに腕相撲大会なんて御大層な呼び方した競技が始まったけれど内容はいつもと変わらない。
ドワーフがリュードに献上品を持ってきてリュードが受け取って腕相撲勝負が始まる。
大会も何もリュード固定でドワーフが入れ替わって腕相撲をしていくだけだ。
冒険者たちは一日かけて鉱山まで行き、二日かけて魔物を倒して、また一日かけて帰ってきた。
「戻りました。鉱山を一つ取り戻してきました」
そろそろお酒勝負の圧力に負けそうになっていたところだった。
ケルタの金床の前には腕相撲大会を肴に酔い潰れたドワーフが転がっており、リュードは一人毎夜限界を迎えた腕の痛みで眠れぬ日々を過ごしていた。
鉱山奪還の報は瞬く間にドワガルを駆け巡り、大きな騒ぎを起こしている。
鉱山にいたのはケイブマンティスという巨大なカマキリみたいな魔物であった。
両手の鎌から繰り出される素早い攻撃は侮れるものではなく、鉱山の中では戦いにくかっただろうが、ケガ人もなく討伐してきた。
流石高ランク冒険者たちは強い。
一日休んで次の鉱山の調査に取り掛かる冒険者たちになんの心配もなく攻略できそうだとリュードも期待を持てた。
「リュード君のところに行ってみようか」
休みのパーティーは順番で決まる。
五つの鉱山があるのでちょうど五パーティーで一回ずつ休むことになる。
二ヶ所目の鉱山の攻略は疾風の剣がお休みの番となった。
リュードたちと一緒におらずに町中を歩くと良い顔をされないことはわかっているけれど、部屋にこもっていても暇なだけだ。
どうせならドワーフと仲良くなりたいと思い、リュードにドワーフと仲良くなる秘訣でも聞いてみようとリザーセツは思った。
リザーセツはリュードが泊まっている宿に向かう。
その時間は朝なのだけれどすでに宿の前にはドワーフたちが集まっていた。
聞かずとも目で見て秘訣がわかるかもしれない。
リザーセツは気配を消してドワーフたちとリュードがどう交流を始めるのかを見学し始めた。
単なる興味であった。
もうすでに酒盛りを始めているドワーフがいるし、みんななぜかお酒を持っている。
樽を背負ってるドワーフや荷台に積んできているドワーフもいて何をするつもりなのかと不思議そうに眺めていた。
ドワーフたちはお酒の他に持ってきた武器やら宝石やらを比べてやんややんやと議論している。
そうしていると宿からすごい嫌そうな顔をしたリュードが出てきた。
ドワーフたちが先ほどまで議論していた武器について尋ねて、リュードがそのうちの一つを指差すと一人のドワーフが喜んだ。
リュードが指差した武器をリュードに渡し、ついでにカップを渡すと並々とお酒を注いだ。
周りのドワーフもワッと盛り上がり、リュードと向かい合うドワーフのカップにも並々とお酒を注ぐ。
一度リュードがガックリと項垂れて大きく息を吐き出すと覚悟を決めた様に顔を上げた。


