「それでは歩きながらでも改めて自己紹介を」
他の人の視線が痛いのでまずはさっさと移動する。
「私はダリル・アステバロン。創造主であり、主神であるケーフィス様にお仕えする創主教の使徒でございます!」
創主教とは簡単に言えばケーフィス教である。
「えっ、使徒、なんですか!?」
「はい、ありがたいことに」
この世界における聖職者の中でもさらに特別な人たちも存在する。
それが聖者と使徒である。
どちらも神に大きな力を与えられたものなのであるが聖者と使徒には大きな違いがある。
聖者は神に愛されし者。
聖職者の持つ神聖力は魔力とトレード関係に近いものがあり、神聖力が強ければ強いほど聖職者の持つ魔力は少ないものとなる。
どれほど神聖力が強なっても魔力がゼロになることはないのだが聖者は違う。
聖者は一切の魔力を持たない代わりに強力な神聖力を与えられた存在なのである。
神聖力しか持たない、それが聖者である。
それに対して使徒は神に認められし者。
神聖力が強ければ強いほど魔力は少なくなるのだけれど、使徒は魔力の量を保ったまま多くの神聖力も持ち合わせることを許された存在である。
故に神聖力も魔力も高いレベルで扱うことができる戦う聖職者のトップが使徒であり、神により神の目的のために戦う義務があるとされている。
愛の神なら愛のためとか、信者を守るためとかそうした理由から戦う定めも負っている。
戦うのが嫌ならそれでもいいがそうすると使徒としての力は剥奪されてしまう。
使徒にしても聖者にしても聖職者の中でも敬意を払われる立場の高い人たちであり、そこらにポンポンといるものではない。
神様に対して何人もいたり、神様ごとにもいるのでその時代に一人とかのものではないが、沢山いるものではないことも確かなのである。
高い責任感と敬虔な信仰心を持つ人たちで聖者や使徒は非常に尊敬されるべき人たち。
なのでそうしたことを知っているラストは驚いていた。
リュードやルフォン、デルデの反応はやや薄く、知らないわけじゃないけど、そうした宗教的な立場にはあんまりこだわっていないからである。
ケーフィスとは顔見知りだし聖職者としてすごいのはわかるけど必要以上に謙る必要もない。
問題なのはその使徒がリュードに何の用があるか、である。
「是非とも! シューナリュードさんに助けていただきたく! こうしてお探していたのです!」
「……少し声のボリュームを落としてくれると聞きやすいかな」
「すまんな、声の大きさは元々デカくてな」
「うるさいよぅ……」
ルフォンはミミを手で押さえつけて聞こえる声を緩和しようとしている。
我慢していたけどちょっと限界だった。
ミミのいいルフォンにとってこれ以上はかわいそうだ。
「う、ゴホン……これでどうだ?」
「まだダメ……」
「これならどうだ」
「うん……それぐらいなら大丈夫」
かなり声の大きさを落としてようやくルフォンからオーケーが出る。
「それでは話の続きといこうか。実はシューナリュードさんに頼みがあって、テレサという聖者がいるのだが、彼女のことを助けてほしいのだ」
「テレサ? 聖者?」
全く聞き覚えのない名前だった。
リュードの知り合いじゃない。
「どうしてわざわざ俺なんだ? 使徒や聖者なら教会の方で何とでもしてくれるだろ?」
「教会でも何ともできないのだ」
聖者が何かしらの問題を抱えたとすれば教会は全力を上げて解決しようとしてくれるはずだ。
リュード個人でできることよりもはるかに多くのことをやってくれるはずなのに、どうしてリュードの力が必要なのか。
そもそもの話、どこからリュードの名前が出てきて助力を求めることになったのだろうかと不思議に思う。
多少の武力的な知名度はリュードのことを調べれば出てくるだろうけどもっと上の人もいるし教会ならそんな人とも接触することだって難しくない。
流浪の冒険者を探さなくたっていいのだ。
「どうしようもなく困っていたところに神からの神託があった。そしてその神託にあった人物を探した結果見つけたのが君だったのだ」
「へぇ?」
「ケーフィス様からこの問題を解決できる人の特徴を教えてもらった。信託などでは個人の名前を直接告げられることはできないのであくまでも特徴だけだったが、分かりやすい特徴だったからな」
ケーフィスが何でと思って記憶を辿ってみる。
そういえばだいぶ前にケーフィスから何かをお願いされていたことを思い出した。
あれも確か聖者がどうとか言っていた気がする。
内容は何だっただろうか。
神物を探せとかそんな話だった気がする。
ただ何年か先まで大丈夫とかそんなことも言っていたようなこともうっすら思い出した。
「テレサを助けられるのはあなたしかいないのです!」
「本当に俺がどうかも怪しいけど、とりあえず話は聞くよ。違ったり協力できなさそうなら断るからな」
「もちろんです。しかし私は確信しております。シューナリュードさんが神のおっしゃられるお方であると。テレサを救ってくれるお方であると信じています!」
ケーフィスに聞いた話も内容が朧げだ。
何があったのかも細かく聞かなかったし事情を詳しく聞いてみることが必要である。
「分かりました。ではお話しいたします」
町まで向かう中でダリルの話を聞くことになった。
時々興奮するとボリュームが壊れるのでそこら辺を注意しながらだが、声のバカさ加減にも関わらず頭はそれなりにちゃんとしているのか話はまとまっていて聞きやすかった。
他の人の視線が痛いのでまずはさっさと移動する。
「私はダリル・アステバロン。創造主であり、主神であるケーフィス様にお仕えする創主教の使徒でございます!」
創主教とは簡単に言えばケーフィス教である。
「えっ、使徒、なんですか!?」
「はい、ありがたいことに」
この世界における聖職者の中でもさらに特別な人たちも存在する。
それが聖者と使徒である。
どちらも神に大きな力を与えられたものなのであるが聖者と使徒には大きな違いがある。
聖者は神に愛されし者。
聖職者の持つ神聖力は魔力とトレード関係に近いものがあり、神聖力が強ければ強いほど聖職者の持つ魔力は少ないものとなる。
どれほど神聖力が強なっても魔力がゼロになることはないのだが聖者は違う。
聖者は一切の魔力を持たない代わりに強力な神聖力を与えられた存在なのである。
神聖力しか持たない、それが聖者である。
それに対して使徒は神に認められし者。
神聖力が強ければ強いほど魔力は少なくなるのだけれど、使徒は魔力の量を保ったまま多くの神聖力も持ち合わせることを許された存在である。
故に神聖力も魔力も高いレベルで扱うことができる戦う聖職者のトップが使徒であり、神により神の目的のために戦う義務があるとされている。
愛の神なら愛のためとか、信者を守るためとかそうした理由から戦う定めも負っている。
戦うのが嫌ならそれでもいいがそうすると使徒としての力は剥奪されてしまう。
使徒にしても聖者にしても聖職者の中でも敬意を払われる立場の高い人たちであり、そこらにポンポンといるものではない。
神様に対して何人もいたり、神様ごとにもいるのでその時代に一人とかのものではないが、沢山いるものではないことも確かなのである。
高い責任感と敬虔な信仰心を持つ人たちで聖者や使徒は非常に尊敬されるべき人たち。
なのでそうしたことを知っているラストは驚いていた。
リュードやルフォン、デルデの反応はやや薄く、知らないわけじゃないけど、そうした宗教的な立場にはあんまりこだわっていないからである。
ケーフィスとは顔見知りだし聖職者としてすごいのはわかるけど必要以上に謙る必要もない。
問題なのはその使徒がリュードに何の用があるか、である。
「是非とも! シューナリュードさんに助けていただきたく! こうしてお探していたのです!」
「……少し声のボリュームを落としてくれると聞きやすいかな」
「すまんな、声の大きさは元々デカくてな」
「うるさいよぅ……」
ルフォンはミミを手で押さえつけて聞こえる声を緩和しようとしている。
我慢していたけどちょっと限界だった。
ミミのいいルフォンにとってこれ以上はかわいそうだ。
「う、ゴホン……これでどうだ?」
「まだダメ……」
「これならどうだ」
「うん……それぐらいなら大丈夫」
かなり声の大きさを落としてようやくルフォンからオーケーが出る。
「それでは話の続きといこうか。実はシューナリュードさんに頼みがあって、テレサという聖者がいるのだが、彼女のことを助けてほしいのだ」
「テレサ? 聖者?」
全く聞き覚えのない名前だった。
リュードの知り合いじゃない。
「どうしてわざわざ俺なんだ? 使徒や聖者なら教会の方で何とでもしてくれるだろ?」
「教会でも何ともできないのだ」
聖者が何かしらの問題を抱えたとすれば教会は全力を上げて解決しようとしてくれるはずだ。
リュード個人でできることよりもはるかに多くのことをやってくれるはずなのに、どうしてリュードの力が必要なのか。
そもそもの話、どこからリュードの名前が出てきて助力を求めることになったのだろうかと不思議に思う。
多少の武力的な知名度はリュードのことを調べれば出てくるだろうけどもっと上の人もいるし教会ならそんな人とも接触することだって難しくない。
流浪の冒険者を探さなくたっていいのだ。
「どうしようもなく困っていたところに神からの神託があった。そしてその神託にあった人物を探した結果見つけたのが君だったのだ」
「へぇ?」
「ケーフィス様からこの問題を解決できる人の特徴を教えてもらった。信託などでは個人の名前を直接告げられることはできないのであくまでも特徴だけだったが、分かりやすい特徴だったからな」
ケーフィスが何でと思って記憶を辿ってみる。
そういえばだいぶ前にケーフィスから何かをお願いされていたことを思い出した。
あれも確か聖者がどうとか言っていた気がする。
内容は何だっただろうか。
神物を探せとかそんな話だった気がする。
ただ何年か先まで大丈夫とかそんなことも言っていたようなこともうっすら思い出した。
「テレサを助けられるのはあなたしかいないのです!」
「本当に俺がどうかも怪しいけど、とりあえず話は聞くよ。違ったり協力できなさそうなら断るからな」
「もちろんです。しかし私は確信しております。シューナリュードさんが神のおっしゃられるお方であると。テレサを救ってくれるお方であると信じています!」
ケーフィスに聞いた話も内容が朧げだ。
何があったのかも細かく聞かなかったし事情を詳しく聞いてみることが必要である。
「分かりました。ではお話しいたします」
町まで向かう中でダリルの話を聞くことになった。
時々興奮するとボリュームが壊れるのでそこら辺を注意しながらだが、声のバカさ加減にも関わらず頭はそれなりにちゃんとしているのか話はまとまっていて聞きやすかった。


