「普段から閉鎖的で話し合いしかしないからそうなるのだ」
「ならばお主に良い考えがあるのか?」
「もちろん。何も考えずにワシがこんなことを言っていると思ったか?」
デルデは自信満々に笑った。
「ではどうするのだ?」
「ふん、ワシらはドワーフだぞ」
「なんだと?」
「農耕したり金勘定したりする奴もいるがワシらは、ワシらの価値は鉄を叩くことにあるだろう。ドゥルビョ、サッテ、ゾドリアズム、お前らの腕も鈍ってはいなかろう?」
簡単な話だ。
みんながドワーフに何を求めるのか。
それは武器や防具、つまるところ鍛冶の腕を求めているのである。
みんなドワーフに武器を作ってもらうことやドワーフ製の武器を手に入れることを望んでいる。
別にそのまんまお金でなくてもいいのではないか。
リュードのところには酒と腕相撲で信頼と、エントリー料としての武器類が多く集まっていた。
勝負を挑むためにそこそこ良いものを寄越してきたのだけど使ってくれる人がいないので使ってほしい、どこかで誰かが使ってくれるなら売ってくれても構わないというドワーフもいた。
さらにそれらの武器の質は高くて、欲しがる人は多くいると思った。
ドワーフ側だってせっかく作ったのなら誰かに使ってほしいものだ。
そこでデルデが提案する。
お金ではなく武器、あるいは技術を対価として提供するのだ。
ドワガルにおける入国権と武器の優先購入権。
まずはこれが基本報酬となる。
ドワガルには鍛冶をするドワーフが多く、武器も多く売っていた。
ドワーフ同士ではあまり買わないけれど他の人たちにとってはとんでもない価値を秘めた市場になる。
他種族、つまり冒険者たちを雇うことになるだろうから報酬としてドワガルに入って武器を買うことをできる権利を差し出すのだ。
これだけでもやる気を出してくれるだろうけどさらに冒険者たちのやる気を最大限に引き出すために報酬を上乗せする。
最も貢献したものについてはデルデを含めたドワガルの中でも指折りの名工たちが特別にオーダーメイドで武器を作るというものだ。
やる気爆上がり間違いなしだと思うこの提案は実はデルデが考えたものではなく、リュードが考えたものだった。
アリの巣掃除が終わった後、デルデはこの鉱山を取り戻した事を引っ提げてみんなを説得しようと考えていた。
もちろんデルデもドワガルの現状を知っている。
仮に他種族を引き入れることを説得できてもその先が続かないことを悩んでいた。
外に大きな支払いが出来るほどの貯えがないことも当然分かっている。
リュードたちのような人は稀だ。
多くの場合足りない信頼関係は金銭で補うもので足りない信頼関係を補う先立つものがないのではみんなを説得しきれない。
そんな悩ましそうなデルデの話を聞いて、別に金でなくても良いのではないかとリュードが言ったのだ。
ドワーフと他種族との繋がりは細く、信頼はない。
けれど今の世の中においても絶対的な信頼があるのはドワーフの鍛冶の腕だ。
ドワーフとしてはお金も払うことなく武器も使ってもらえる。
冒険者としてはドワーフの武器を買える、あるいは上手くやれば作ってもらえる。
いくらお金を積んでも作ってほしい人までいるドワーフ製の武器はお金で考えると大きな価値を秘めている。
自分たちの武器の価値をよく分かっていないデルデだったがリュードの言うことならばそうなのだろうと信じた。
そしてデルデは現実に一つの案としてみんなにそう提案したのだ。
「それではまるで……」
自分たちの技術を安売りするような感じがした。
しかしデルデのした提案はそんな思い込みのような安いプライドを守ること以外のところは至極真っ当、ちゃんとした案だった。
「先に言ったがお前らがやらないというならそれでも構わんのだ。ただ許可は欲しい。ワシとワシに賛同してくれる者でやるつもりだ。責任はワシが負う。……許しもせんし、他のドワーフを巻き込むなというならワシの腕一つでもやってもらえないか頼み込んでみるわい」
やってくれるかどうかは半々だった。
プライドを突き通して拒否されることもデルデは考えていた。
頭の固い年寄りの集まりなのだ、ウダウダと言って判断すら下さないことだってあり得る。
でもここまで言えば、責任を負って一人でもやると言えばその許可ぐらいはしてくれるだろうと思っている。
そのようなことすら許さないほど腐ってはいない、はずであるとは信じている。
口だけではなくダメだったら本当に1人でもやるつもりだ。
たとえ追放されようと、口汚く罵られることがあろうとも、この難局を乗り切るために己を犠牲にすることも厭わぬ覚悟をしてきたのである。
せめて何人か賛同者を募ることを、弟子ぐらいは動員できたら冒険者を雇う対価にはなるだろう。
「ワタシもやるよ」
これまで沈黙を貫いてきたドワーフが口を開いた。
他の三人よりも艶やかな顎髭を一つの三つ編みにしてリボンでまとめているドワーフから飛び出してきた声は女性だった。
「ならばお主に良い考えがあるのか?」
「もちろん。何も考えずにワシがこんなことを言っていると思ったか?」
デルデは自信満々に笑った。
「ではどうするのだ?」
「ふん、ワシらはドワーフだぞ」
「なんだと?」
「農耕したり金勘定したりする奴もいるがワシらは、ワシらの価値は鉄を叩くことにあるだろう。ドゥルビョ、サッテ、ゾドリアズム、お前らの腕も鈍ってはいなかろう?」
簡単な話だ。
みんながドワーフに何を求めるのか。
それは武器や防具、つまるところ鍛冶の腕を求めているのである。
みんなドワーフに武器を作ってもらうことやドワーフ製の武器を手に入れることを望んでいる。
別にそのまんまお金でなくてもいいのではないか。
リュードのところには酒と腕相撲で信頼と、エントリー料としての武器類が多く集まっていた。
勝負を挑むためにそこそこ良いものを寄越してきたのだけど使ってくれる人がいないので使ってほしい、どこかで誰かが使ってくれるなら売ってくれても構わないというドワーフもいた。
さらにそれらの武器の質は高くて、欲しがる人は多くいると思った。
ドワーフ側だってせっかく作ったのなら誰かに使ってほしいものだ。
そこでデルデが提案する。
お金ではなく武器、あるいは技術を対価として提供するのだ。
ドワガルにおける入国権と武器の優先購入権。
まずはこれが基本報酬となる。
ドワガルには鍛冶をするドワーフが多く、武器も多く売っていた。
ドワーフ同士ではあまり買わないけれど他の人たちにとってはとんでもない価値を秘めた市場になる。
他種族、つまり冒険者たちを雇うことになるだろうから報酬としてドワガルに入って武器を買うことをできる権利を差し出すのだ。
これだけでもやる気を出してくれるだろうけどさらに冒険者たちのやる気を最大限に引き出すために報酬を上乗せする。
最も貢献したものについてはデルデを含めたドワガルの中でも指折りの名工たちが特別にオーダーメイドで武器を作るというものだ。
やる気爆上がり間違いなしだと思うこの提案は実はデルデが考えたものではなく、リュードが考えたものだった。
アリの巣掃除が終わった後、デルデはこの鉱山を取り戻した事を引っ提げてみんなを説得しようと考えていた。
もちろんデルデもドワガルの現状を知っている。
仮に他種族を引き入れることを説得できてもその先が続かないことを悩んでいた。
外に大きな支払いが出来るほどの貯えがないことも当然分かっている。
リュードたちのような人は稀だ。
多くの場合足りない信頼関係は金銭で補うもので足りない信頼関係を補う先立つものがないのではみんなを説得しきれない。
そんな悩ましそうなデルデの話を聞いて、別に金でなくても良いのではないかとリュードが言ったのだ。
ドワーフと他種族との繋がりは細く、信頼はない。
けれど今の世の中においても絶対的な信頼があるのはドワーフの鍛冶の腕だ。
ドワーフとしてはお金も払うことなく武器も使ってもらえる。
冒険者としてはドワーフの武器を買える、あるいは上手くやれば作ってもらえる。
いくらお金を積んでも作ってほしい人までいるドワーフ製の武器はお金で考えると大きな価値を秘めている。
自分たちの武器の価値をよく分かっていないデルデだったがリュードの言うことならばそうなのだろうと信じた。
そしてデルデは現実に一つの案としてみんなにそう提案したのだ。
「それではまるで……」
自分たちの技術を安売りするような感じがした。
しかしデルデのした提案はそんな思い込みのような安いプライドを守ること以外のところは至極真っ当、ちゃんとした案だった。
「先に言ったがお前らがやらないというならそれでも構わんのだ。ただ許可は欲しい。ワシとワシに賛同してくれる者でやるつもりだ。責任はワシが負う。……許しもせんし、他のドワーフを巻き込むなというならワシの腕一つでもやってもらえないか頼み込んでみるわい」
やってくれるかどうかは半々だった。
プライドを突き通して拒否されることもデルデは考えていた。
頭の固い年寄りの集まりなのだ、ウダウダと言って判断すら下さないことだってあり得る。
でもここまで言えば、責任を負って一人でもやると言えばその許可ぐらいはしてくれるだろうと思っている。
そのようなことすら許さないほど腐ってはいない、はずであるとは信じている。
口だけではなくダメだったら本当に1人でもやるつもりだ。
たとえ追放されようと、口汚く罵られることがあろうとも、この難局を乗り切るために己を犠牲にすることも厭わぬ覚悟をしてきたのである。
せめて何人か賛同者を募ることを、弟子ぐらいは動員できたら冒険者を雇う対価にはなるだろう。
「ワタシもやるよ」
これまで沈黙を貫いてきたドワーフが口を開いた。
他の三人よりも艶やかな顎髭を一つの三つ編みにしてリボンでまとめているドワーフから飛び出してきた声は女性だった。


