「本当にそれでいいのか?」
「何がだ?」
「いや、いいならいいんだけどさ」
リュードたちはドワガルを出発して鉱山の一つに向かっていた。
デルデからは鉱山の魔物の討伐を依頼される形にはなったが無茶はできない。
チャレンジはしてみるつもりだけど、様子を見て無理そうならリュードたちだけで討伐することは断念することも念頭に置いてある。
鉱山までの道のりはデルデが案内役を買って出てくれた。
似たような山も多くて鉱山に行くのも大変そうだったのでありがたい限りなのであるが問題はそのデルデであった。
戦いに行くということでしっかりと準備をしてデルデ自身も身を守れるように装備してきてくれているのだけど、それがちょっと問題なのである。
「重たくないの?」
「重いが身の安全が大切だ」
鍛冶を行う上で必要なのでデルデもある程度は戦えるけれど戦うことはデルデの専門ではない。
なので装備も戦うよりも守ることに特化しているのだが今デルデは誰だか分からなくなるほどガチガチに全身を鎧で固めていた。
デルデが鎧を着ているというよりも鎧が勝手に歩いているぐらいに見える。
騎士のフィギュアのようなデルデはあたかも防御力は高そうでそれはいいのだけど、歩くたびにガチャンガチャンとけたたましく音が鳴る。
これでは魔物に存在をお知らせしているようなものである。
それにそのような音がなる防具だと機動力があるようにはとても見えない。
走ることも出来なきゃ防御力があっても魔物と戦えもしないし逃げられもしない。
ただ本人は真面目そうでドラゴンに潰されても傷つかないなんて豪語しているので何も言えない。
ドワーフたちが討伐に失敗したのもみんなこんなだったからではないかと疑いが湧いてくる。
「これから行く鉱山は良質の鉄鉱石が採れる鉱山なんだ」
別に今は上げときゃいいのにフルフェイスのヘルムのフェイスガードを下ろしているのでデルデの声はこもって聞こえる。
事前にも軽く説明はあったけれどこれから向かう鉱山は小規模ながら高品質の鉄鉱石が採れて、まだまだ埋蔵量もある稼働中の鉱山だった。
なのにいきなり魔物がやってきてドワーフたちはなす術もなく魔物に鉱山を奪われてしまった。
比較的新しめの鉱山でまだ普通に採掘もしていたのにどうして魔物が来たのかは全然分かっていなかった。
「奥の方に巣を作っているみたいでな。全然奥まで辿り着いていないから状況も全部は把握しておらんのだ」
ドワーフとの戦いで数は減っているはずだけど、魔物の繁殖力を持ってすればもう戻っているか、もしかしたら増えているかもしれない。
無理に奥まで入っていった若いドワーフはそのまま帰ってこなかった。
程なくしてドワーフは仕方なく鉱山を閉鎖扱いとして封鎖して近寄らないようにした。
不思議なことに棲みついた魔物はあまり鉱山の外に出てこないのでそれ以上の被害もなかった。
鉱山までの道すがらに立ち入り禁止の看板を何枚も見た。
何人か俺が鉱山を取り戻してやると勇んで出て行ったきりのものが出たため冷静になってくれればと願いを込めた看板たちだった。
「それでは良いか? 心して行くぞ」
二日ほどかけて鉱山まで辿り着いた。
表で待っていてくださいと言葉に出かかったが鉱山内部の地図もデルデの頭の中に入っているので案内は欠かすことが出来ない。
置いていくにももう鉱山の入り口まで来てしまった時点で手遅れなのた。
入り口から入ったデルデの鎧の音が反射して鉱山の中から返ってくる。
中にいるのが耳のない魔物でないならどう考えても聞こえているはずだ。
どんな知能の低い魔物だって音には大体敏感で警戒する。
ただこの鎧が有れば大体の攻撃は効かないから守ってやるからなと自信満々のデルデに鎧脱げよとは言えなかった。
デルデが悪いんじゃない、意志の弱いリュードが悪いんだと諦めるしかなかった。
「とりあえずデルデは後ろに」
これだけ音がするものが近くにいるなら魔物は警戒していると見るべきだ。
最大限の警戒を持ってリュードたちは鉱山に入って行く。
想像よりも広めの坑道は剣を振り回すぐらいなら苦労のないぐらいの幅がある。
先頭を歩くリュードがデルデに渡された魔道具のランプを高く上げてみるが、暗闇広がる坑道の先を見通すことはできない。
新しめの鉱山なので中はそれほど複雑ではない。
古い鉱山ならあっちいったりこっちいったりすることもあるけれど、ここはキレイに掘られているので案内もさほど必要なところではなかった。
「リューちゃん!」
「みんな止まれ!」
一番前を歩くリュードがみんなを止める。
ルフォンの耳がピクピクと動いて音を察知する。
リュードやラストにも聞こえ始め、すぐにデルデにも聞こえる。
パラパラと天井から土が落ち、遠くから聞こえてきた足音が近づいてくる。
「デルデさん、下がってて!」
「任せたぞ!」
リュードはデルデにランプを渡して剣を抜く。
ラストが矢をつがえて戦いの準備をする。
「……来た!」
暗闇に強いルフォンの目が一足先に敵の姿をとらえた。
「……アリか!」
坑道の奥からワラワラと押し寄せてくるのは巨大なアリだった。
1匹1匹がリュードよりも一回りほど大きく、いかにも魔物のアリって感じであった。
「何がだ?」
「いや、いいならいいんだけどさ」
リュードたちはドワガルを出発して鉱山の一つに向かっていた。
デルデからは鉱山の魔物の討伐を依頼される形にはなったが無茶はできない。
チャレンジはしてみるつもりだけど、様子を見て無理そうならリュードたちだけで討伐することは断念することも念頭に置いてある。
鉱山までの道のりはデルデが案内役を買って出てくれた。
似たような山も多くて鉱山に行くのも大変そうだったのでありがたい限りなのであるが問題はそのデルデであった。
戦いに行くということでしっかりと準備をしてデルデ自身も身を守れるように装備してきてくれているのだけど、それがちょっと問題なのである。
「重たくないの?」
「重いが身の安全が大切だ」
鍛冶を行う上で必要なのでデルデもある程度は戦えるけれど戦うことはデルデの専門ではない。
なので装備も戦うよりも守ることに特化しているのだが今デルデは誰だか分からなくなるほどガチガチに全身を鎧で固めていた。
デルデが鎧を着ているというよりも鎧が勝手に歩いているぐらいに見える。
騎士のフィギュアのようなデルデはあたかも防御力は高そうでそれはいいのだけど、歩くたびにガチャンガチャンとけたたましく音が鳴る。
これでは魔物に存在をお知らせしているようなものである。
それにそのような音がなる防具だと機動力があるようにはとても見えない。
走ることも出来なきゃ防御力があっても魔物と戦えもしないし逃げられもしない。
ただ本人は真面目そうでドラゴンに潰されても傷つかないなんて豪語しているので何も言えない。
ドワーフたちが討伐に失敗したのもみんなこんなだったからではないかと疑いが湧いてくる。
「これから行く鉱山は良質の鉄鉱石が採れる鉱山なんだ」
別に今は上げときゃいいのにフルフェイスのヘルムのフェイスガードを下ろしているのでデルデの声はこもって聞こえる。
事前にも軽く説明はあったけれどこれから向かう鉱山は小規模ながら高品質の鉄鉱石が採れて、まだまだ埋蔵量もある稼働中の鉱山だった。
なのにいきなり魔物がやってきてドワーフたちはなす術もなく魔物に鉱山を奪われてしまった。
比較的新しめの鉱山でまだ普通に採掘もしていたのにどうして魔物が来たのかは全然分かっていなかった。
「奥の方に巣を作っているみたいでな。全然奥まで辿り着いていないから状況も全部は把握しておらんのだ」
ドワーフとの戦いで数は減っているはずだけど、魔物の繁殖力を持ってすればもう戻っているか、もしかしたら増えているかもしれない。
無理に奥まで入っていった若いドワーフはそのまま帰ってこなかった。
程なくしてドワーフは仕方なく鉱山を閉鎖扱いとして封鎖して近寄らないようにした。
不思議なことに棲みついた魔物はあまり鉱山の外に出てこないのでそれ以上の被害もなかった。
鉱山までの道すがらに立ち入り禁止の看板を何枚も見た。
何人か俺が鉱山を取り戻してやると勇んで出て行ったきりのものが出たため冷静になってくれればと願いを込めた看板たちだった。
「それでは良いか? 心して行くぞ」
二日ほどかけて鉱山まで辿り着いた。
表で待っていてくださいと言葉に出かかったが鉱山内部の地図もデルデの頭の中に入っているので案内は欠かすことが出来ない。
置いていくにももう鉱山の入り口まで来てしまった時点で手遅れなのた。
入り口から入ったデルデの鎧の音が反射して鉱山の中から返ってくる。
中にいるのが耳のない魔物でないならどう考えても聞こえているはずだ。
どんな知能の低い魔物だって音には大体敏感で警戒する。
ただこの鎧が有れば大体の攻撃は効かないから守ってやるからなと自信満々のデルデに鎧脱げよとは言えなかった。
デルデが悪いんじゃない、意志の弱いリュードが悪いんだと諦めるしかなかった。
「とりあえずデルデは後ろに」
これだけ音がするものが近くにいるなら魔物は警戒していると見るべきだ。
最大限の警戒を持ってリュードたちは鉱山に入って行く。
想像よりも広めの坑道は剣を振り回すぐらいなら苦労のないぐらいの幅がある。
先頭を歩くリュードがデルデに渡された魔道具のランプを高く上げてみるが、暗闇広がる坑道の先を見通すことはできない。
新しめの鉱山なので中はそれほど複雑ではない。
古い鉱山ならあっちいったりこっちいったりすることもあるけれど、ここはキレイに掘られているので案内もさほど必要なところではなかった。
「リューちゃん!」
「みんな止まれ!」
一番前を歩くリュードがみんなを止める。
ルフォンの耳がピクピクと動いて音を察知する。
リュードやラストにも聞こえ始め、すぐにデルデにも聞こえる。
パラパラと天井から土が落ち、遠くから聞こえてきた足音が近づいてくる。
「デルデさん、下がってて!」
「任せたぞ!」
リュードはデルデにランプを渡して剣を抜く。
ラストが矢をつがえて戦いの準備をする。
「……来た!」
暗闇に強いルフォンの目が一足先に敵の姿をとらえた。
「……アリか!」
坑道の奥からワラワラと押し寄せてくるのは巨大なアリだった。
1匹1匹がリュードよりも一回りほど大きく、いかにも魔物のアリって感じであった。


