「今では若いドワーフもお前さんに興味を持っているそうじゃないか」
「若いドワーフ……ですか?」
「若い女性のことだよ」
酒が強いとそれだけで尊敬されるのだけど、異性関係においても酒が強い相手というのは魅力的な相手であると言うことができる。
今やリュードの酒の強さはドワーフ中に知れ渡っているし、もっさりとしてスマートさのないドワーフと違うリュードに心を掴まれる人まで出てきていた。
何をしていたんだと思うけど、ドワーフが他者に酒飲み勝負を仕掛けることはあることだし断って断り切れるものでないこともデルデは知っている。
悪いことじゃないし非難もできない。
酒が飲みたい欲求と暇つぶし、そこにリュードが強いために起こる負けず嫌いのプライド。
ドワーフの性格を考えるとしょうがないことかとデルデはため息をついた。
むしろデルデもリュードがどれほどのものか気になってきた。
デルデだって若い頃は負け知らずの酒飲みだった。
「作業中悪いがワシの用事を先でも構わんか?」
「こっちの作業はいつでもいいから大丈夫」
細かい確認作業は後でもいい。
大体大きな分類はできたのでそれでも十分だった。
「では、ほれ、お前さんの剣だ」
デルデは背中に背負っていた細長い袋を下ろすと中からリュードの剣を取り出した。
「おおっ! ありがとう! 結構かかったような、あっという間だったような、どちらとも言えない感じだな」
連日酒とドワーフに飲まれたせいで時間の感覚が結構狂ってしまった。
意外と早かったなと今は思う。
「どれどれ、ちゃんと直った……」
手にかかる重さの違いを感じながらもリュードは鞘から剣を抜いた。
「オホン。聞いて驚くなよ? その剣は芯に普通の鉄を使っておったのだがそれではこの黒重鉄の頑丈さを生かしきれていなかった。なので今回はなんとワシの好意で芯の部分にミスリルを使ってみた! これにより魔力の伝導率も上がって……」
「これは……」
リュードは剣を一眼見て息を飲んだ。
見た目は以前と変わらない黒い剣なのに冷たいほどの鋭さを感じさせる雰囲気をまとっていた。
同じ剣なのに全く異なっている。
そしてさらに剣に魔力が吸い上げられるような感覚がある。
いや、吸い上げられてはいるのだけど少し違う。
まるで自分の体の一部であるかのように馴染んで、スッと魔力が通るのだ。
手足に魔力を通すかの如く抵抗なく魔力を剣に通すことができてしまうので吸い上げられるような感覚を覚えたのだ。
見た目はほとんど変わらないのに剣としてのレベルは一段上になっている。
「これは、なんですか?」
「なんだとはなんだ? お前さんの剣だろう。話も聞いておらんのか、ミスリルを使ったと言っただろうに」
「ミスリルって……あの?」
「あのがどのを指しているのか知らんが高級な金属ではあるぞ」
この世界にはミスリルという金属がある。
そしてそのミスリルを使った武器というのは憧れの武器である。
ミスリルを使った武器は値段が跳ね上がり、誰もが手にしてみたい代物になる。
そのミスリルを使った武器だとはとまた剣のことを見る。
「えっと……」
剣に夢中でミスリルの話を聞いていなかった。
改めてミスリルを使ったと聞いて途端に心配になった。
ミスリルは少量であっても高価なものである。
これだけ体に馴染むような感覚になるほどのミスリルとはどれだけの量を使ったのだろうか。
金額的な心配が胸を占めた。
「心配するな。これはワシが勝手にやったことだ。黒重鉄を扱ったのは初めてだが中々面白くてな。勝手にやったことで金を払えなどと言うつもりはない」
デルデの好意と好奇心でやったことである。
リュードの心中を察したようにデルデは笑った。
詐欺でもあるまいし勝手にミスリルを使って直したからミスリルの代金を寄越せという気はない。
むしろ黒重鉄について勉強になったぐらいに思っていた。
「そうか……ありがとうございます。それにしても……」
それを聞いて安心したリュードは剣の具合を確かめる。
触ったことも見たこともなかったので特にミスリルに興味を持ったことがないリュードだったが考えを改めた。
今まで悪かったなどとは言いはしないが魔力の通りが段違いである。
剣先に至るまで魔力が通って繋がっているような感じがする。
「黒重鉄というやつは魔力の伝導率は悪いが定着率はいい。これまでは剣で魔力を扱うのが難しかったろう。そこをミスリルで改善した」
リュードは悪かったとは思わないがデルデにとっては悪かったらしい。
「まだどのような作用を及ぼすのか分からないが伝導率のいいミスリルと定着率のいい黒重鉄を合わせると、もしかしたらその剣は将来魔法剣になれる剣かもしれないな」
「魔法剣になれる剣、だって?」
なんだかよく分からない表現だとリュードは首を傾げる。
「魔法剣というと普通は魔力を剣にまとわせて属性化をして戦う技法のことを指す。しかし武器における魔法剣というものも存在する。長年使ってきたり、作る際に膨大な魔力を込めることによって剣に魔力が定着して魔力を込めずとも剣が魔力をまとう。そうするとそれだけで自分で魔力をまとわせたのと同じような効果が得られるし自分でさらに強化もできる。それを魔法剣と呼ぶのだ」
「はぇ〜」
リュードも知らない話だった。
本来の魔法剣は魔力を持った剣のことを魔法剣と言い、それを擬似的に再現する方法として剣に魔力を込める魔法剣の技法が生まれたのである。
「若いドワーフ……ですか?」
「若い女性のことだよ」
酒が強いとそれだけで尊敬されるのだけど、異性関係においても酒が強い相手というのは魅力的な相手であると言うことができる。
今やリュードの酒の強さはドワーフ中に知れ渡っているし、もっさりとしてスマートさのないドワーフと違うリュードに心を掴まれる人まで出てきていた。
何をしていたんだと思うけど、ドワーフが他者に酒飲み勝負を仕掛けることはあることだし断って断り切れるものでないこともデルデは知っている。
悪いことじゃないし非難もできない。
酒が飲みたい欲求と暇つぶし、そこにリュードが強いために起こる負けず嫌いのプライド。
ドワーフの性格を考えるとしょうがないことかとデルデはため息をついた。
むしろデルデもリュードがどれほどのものか気になってきた。
デルデだって若い頃は負け知らずの酒飲みだった。
「作業中悪いがワシの用事を先でも構わんか?」
「こっちの作業はいつでもいいから大丈夫」
細かい確認作業は後でもいい。
大体大きな分類はできたのでそれでも十分だった。
「では、ほれ、お前さんの剣だ」
デルデは背中に背負っていた細長い袋を下ろすと中からリュードの剣を取り出した。
「おおっ! ありがとう! 結構かかったような、あっという間だったような、どちらとも言えない感じだな」
連日酒とドワーフに飲まれたせいで時間の感覚が結構狂ってしまった。
意外と早かったなと今は思う。
「どれどれ、ちゃんと直った……」
手にかかる重さの違いを感じながらもリュードは鞘から剣を抜いた。
「オホン。聞いて驚くなよ? その剣は芯に普通の鉄を使っておったのだがそれではこの黒重鉄の頑丈さを生かしきれていなかった。なので今回はなんとワシの好意で芯の部分にミスリルを使ってみた! これにより魔力の伝導率も上がって……」
「これは……」
リュードは剣を一眼見て息を飲んだ。
見た目は以前と変わらない黒い剣なのに冷たいほどの鋭さを感じさせる雰囲気をまとっていた。
同じ剣なのに全く異なっている。
そしてさらに剣に魔力が吸い上げられるような感覚がある。
いや、吸い上げられてはいるのだけど少し違う。
まるで自分の体の一部であるかのように馴染んで、スッと魔力が通るのだ。
手足に魔力を通すかの如く抵抗なく魔力を剣に通すことができてしまうので吸い上げられるような感覚を覚えたのだ。
見た目はほとんど変わらないのに剣としてのレベルは一段上になっている。
「これは、なんですか?」
「なんだとはなんだ? お前さんの剣だろう。話も聞いておらんのか、ミスリルを使ったと言っただろうに」
「ミスリルって……あの?」
「あのがどのを指しているのか知らんが高級な金属ではあるぞ」
この世界にはミスリルという金属がある。
そしてそのミスリルを使った武器というのは憧れの武器である。
ミスリルを使った武器は値段が跳ね上がり、誰もが手にしてみたい代物になる。
そのミスリルを使った武器だとはとまた剣のことを見る。
「えっと……」
剣に夢中でミスリルの話を聞いていなかった。
改めてミスリルを使ったと聞いて途端に心配になった。
ミスリルは少量であっても高価なものである。
これだけ体に馴染むような感覚になるほどのミスリルとはどれだけの量を使ったのだろうか。
金額的な心配が胸を占めた。
「心配するな。これはワシが勝手にやったことだ。黒重鉄を扱ったのは初めてだが中々面白くてな。勝手にやったことで金を払えなどと言うつもりはない」
デルデの好意と好奇心でやったことである。
リュードの心中を察したようにデルデは笑った。
詐欺でもあるまいし勝手にミスリルを使って直したからミスリルの代金を寄越せという気はない。
むしろ黒重鉄について勉強になったぐらいに思っていた。
「そうか……ありがとうございます。それにしても……」
それを聞いて安心したリュードは剣の具合を確かめる。
触ったことも見たこともなかったので特にミスリルに興味を持ったことがないリュードだったが考えを改めた。
今まで悪かったなどとは言いはしないが魔力の通りが段違いである。
剣先に至るまで魔力が通って繋がっているような感じがする。
「黒重鉄というやつは魔力の伝導率は悪いが定着率はいい。これまでは剣で魔力を扱うのが難しかったろう。そこをミスリルで改善した」
リュードは悪かったとは思わないがデルデにとっては悪かったらしい。
「まだどのような作用を及ぼすのか分からないが伝導率のいいミスリルと定着率のいい黒重鉄を合わせると、もしかしたらその剣は将来魔法剣になれる剣かもしれないな」
「魔法剣になれる剣、だって?」
なんだかよく分からない表現だとリュードは首を傾げる。
「魔法剣というと普通は魔力を剣にまとわせて属性化をして戦う技法のことを指す。しかし武器における魔法剣というものも存在する。長年使ってきたり、作る際に膨大な魔力を込めることによって剣に魔力が定着して魔力を込めずとも剣が魔力をまとう。そうするとそれだけで自分で魔力をまとわせたのと同じような効果が得られるし自分でさらに強化もできる。それを魔法剣と呼ぶのだ」
「はぇ〜」
リュードも知らない話だった。
本来の魔法剣は魔力を持った剣のことを魔法剣と言い、それを擬似的に再現する方法として剣に魔力を込める魔法剣の技法が生まれたのである。


