「お前さん方も薄々感じているだろ? このドワガルの異様な雰囲気を」
門が封鎖されてラストですら入ることを許されないということは気になっていた。
他種族に対して排他的であることは知っているので話で聞いていたよりも他種族に厳しくて中に入れないのかととりあえず納得はしていた。
噂の方が誇張されている場合も有れば逆もまた然りであることがある。
ただ実際にドワガルに入ってみると全員が全員リュードたちに嫌悪感のこもった目を向けてくることもなかった。
中の雰囲気が異様かどうかは普段の雰囲気を知り得ないリュードにはあまり分からなかったけど、確かに異様といえば異様なのかもしれない。
「今この国は二つの問題を抱えておる。それは火山の休止とドワガルが所有する鉱山が魔物の巣窟になってしまったことだ」
国であり都市であるドワガルが収まっている巨大な山は実は火山である。
噴火こそしないが未だに活火山であって、ドワガルの奥には溶岩の川があったりもする。
ドワーフは鍛冶の神の祝福を受けし子などと言われることがあるが、同様に火の神からも祝福を受けているとされている。
それはドワーフが熱や火にとても強く、燃え盛る火の前で鍛冶仕事をしても全く苦にならないからそう言われているのだ。
むしろ熱ければ熱いほど、火に近ければ近いほどドワーフは調子が良く力が増す。
だから鍛冶を仕事にしているドワーフも多く、熱を与えてくれる活火山もドワーフに力を与えてくれる存在であった。
けれどドワガルを擁する火山カファデラは少し前から段々と活動が落ちてきていて、今では休止状態になってしまった。
それでドワーフが死ぬこともないが、ドワーフに力を与えていてくれた火山が休止状態になってしまったのでドワーフの力が落ちてしまっているのだ。
「まあ火山の方は自然の活動だから仕方がない。過去に休止状態になったこともあるから活動に波があるのは当然のことだ」
勝手に火山に身を寄せているので活動が休止状態になっても文句を言える立場にもない。
火山に文句を言っても何も変わらないし休止したことは問題ではあるが、時間が解決してくれることを待つしかない問題である。
火山の活動周期があって活発な時は非常に危ういほどに活発になることもあった。
休止状態までなることは稀なので問題と言っているがそこはリュードに相談するものじゃない。
「目下の問題は鉱山が魔物に奪われちまったことだ。気づけば鉱山は魔物の巣窟になっちまった……」
デルデは深いため息をついた。
ドワガルの周辺には巨大な火山の影響なのか多くの鉱山が存在している。
火山に身を置いているのはただ力を得られるだけでなく、周辺に良質の鉱石が取れる鉱山があることも大きな要因であった。
他種族に排他的ではあるが土壌的には農業に向いているとは言いがたく、どうしても食料に関しては周りと交易する必要があった。
そのために自分で鉱山を掘って自分で金属製品を作り、それを売って外貨を獲得して食料などを買っている。
その基本ともなる鉱山が魔物に奪われてしまった。
正確には鉱山の中に魔物が住み着いた。
もちろんドワーフも鉱山を取り戻そうとした。
指をくわえて見ていただけでなく何回か魔物の討伐に挑みはしたのであった。
ただ今の現状を見れば結果は言うまでもない。
ドワーフは屈強な肉体を持つ優れた戦士であった、のは過去の話となってしまっていた。
「もはやドワーフは過去とは比べ物にならなくなってしまったのだ」
デルデは悲しそうに首を振った。
世に名高いドワーフ製の装備を身にまとい、自慢の力を活かしたドワーフの戦士たちは非常に強い戦士なのであった。
真魔大戦が起きて魔人族の一員と見られたドワーフがすぐに滅ぼされなかったのには鍛冶技術が優れていただけでなく、孤立無縁でありながらも真人族の侵略を押し止められるだけの力があったのだ。
しかし今のドワーフはどうか。
およそその当時のドワーフの戦士の姿など見る影もない。
長い平和な時間がドワーフを軟弱にした。
ドワガル周辺は徹底してドワーフの先祖たちが魔物を片付けた。
安心して安全な場所にしようとしたのであるがその結果魔物がいなくなった土地になった。
食料となる他の魔物もいないので新たに魔物が住み着くこともなく平和な土地となったことでドワーフは戦い方を忘れてしまった。
自国から出ないドワーフは魔物と戦うことがなく引きこもった世界でしか強さを知らず、優れた装備であることにかまけて余計に戦いの腕を磨かなくなった。
かつてがどうだったのかもう知らないが、今は手足が短く相手に接近しなければいけないのに筋肉質で速さが遅くてひどく劣った戦士になったのである。
魔法もドワーフは得意でないので鉱山の魔物に全く歯が立たなかったのだ。
「せめて火山の活動が活発だったら……いや、それでも変わらないか」
防具も物は優秀であるがために死者こそ少なかったが多くのケガ人を出してしまった。
火山が活発であればドワーフの力が増していて少しはマシだったろうがそれでも厳しいことに変わりはない。
「事情は分かりました。ですがその話について知恵を借りたいとはどういうことですか?」
ドワーフの窮地とも言える状況である。
いくつかあった鉱山も気付けば全て魔物が住処としていた。
このまま魔物を放置しておけばいつかドワガルの方にまで魔物がくるかもしれない。
なのにドワガルの門は固く閉ざされ、このような現状にあることの情報は一切漏れ伝わってこない。
ドワーフが助けを求めていないことは一目瞭然である。
門が封鎖されてラストですら入ることを許されないということは気になっていた。
他種族に対して排他的であることは知っているので話で聞いていたよりも他種族に厳しくて中に入れないのかととりあえず納得はしていた。
噂の方が誇張されている場合も有れば逆もまた然りであることがある。
ただ実際にドワガルに入ってみると全員が全員リュードたちに嫌悪感のこもった目を向けてくることもなかった。
中の雰囲気が異様かどうかは普段の雰囲気を知り得ないリュードにはあまり分からなかったけど、確かに異様といえば異様なのかもしれない。
「今この国は二つの問題を抱えておる。それは火山の休止とドワガルが所有する鉱山が魔物の巣窟になってしまったことだ」
国であり都市であるドワガルが収まっている巨大な山は実は火山である。
噴火こそしないが未だに活火山であって、ドワガルの奥には溶岩の川があったりもする。
ドワーフは鍛冶の神の祝福を受けし子などと言われることがあるが、同様に火の神からも祝福を受けているとされている。
それはドワーフが熱や火にとても強く、燃え盛る火の前で鍛冶仕事をしても全く苦にならないからそう言われているのだ。
むしろ熱ければ熱いほど、火に近ければ近いほどドワーフは調子が良く力が増す。
だから鍛冶を仕事にしているドワーフも多く、熱を与えてくれる活火山もドワーフに力を与えてくれる存在であった。
けれどドワガルを擁する火山カファデラは少し前から段々と活動が落ちてきていて、今では休止状態になってしまった。
それでドワーフが死ぬこともないが、ドワーフに力を与えていてくれた火山が休止状態になってしまったのでドワーフの力が落ちてしまっているのだ。
「まあ火山の方は自然の活動だから仕方がない。過去に休止状態になったこともあるから活動に波があるのは当然のことだ」
勝手に火山に身を寄せているので活動が休止状態になっても文句を言える立場にもない。
火山に文句を言っても何も変わらないし休止したことは問題ではあるが、時間が解決してくれることを待つしかない問題である。
火山の活動周期があって活発な時は非常に危ういほどに活発になることもあった。
休止状態までなることは稀なので問題と言っているがそこはリュードに相談するものじゃない。
「目下の問題は鉱山が魔物に奪われちまったことだ。気づけば鉱山は魔物の巣窟になっちまった……」
デルデは深いため息をついた。
ドワガルの周辺には巨大な火山の影響なのか多くの鉱山が存在している。
火山に身を置いているのはただ力を得られるだけでなく、周辺に良質の鉱石が取れる鉱山があることも大きな要因であった。
他種族に排他的ではあるが土壌的には農業に向いているとは言いがたく、どうしても食料に関しては周りと交易する必要があった。
そのために自分で鉱山を掘って自分で金属製品を作り、それを売って外貨を獲得して食料などを買っている。
その基本ともなる鉱山が魔物に奪われてしまった。
正確には鉱山の中に魔物が住み着いた。
もちろんドワーフも鉱山を取り戻そうとした。
指をくわえて見ていただけでなく何回か魔物の討伐に挑みはしたのであった。
ただ今の現状を見れば結果は言うまでもない。
ドワーフは屈強な肉体を持つ優れた戦士であった、のは過去の話となってしまっていた。
「もはやドワーフは過去とは比べ物にならなくなってしまったのだ」
デルデは悲しそうに首を振った。
世に名高いドワーフ製の装備を身にまとい、自慢の力を活かしたドワーフの戦士たちは非常に強い戦士なのであった。
真魔大戦が起きて魔人族の一員と見られたドワーフがすぐに滅ぼされなかったのには鍛冶技術が優れていただけでなく、孤立無縁でありながらも真人族の侵略を押し止められるだけの力があったのだ。
しかし今のドワーフはどうか。
およそその当時のドワーフの戦士の姿など見る影もない。
長い平和な時間がドワーフを軟弱にした。
ドワガル周辺は徹底してドワーフの先祖たちが魔物を片付けた。
安心して安全な場所にしようとしたのであるがその結果魔物がいなくなった土地になった。
食料となる他の魔物もいないので新たに魔物が住み着くこともなく平和な土地となったことでドワーフは戦い方を忘れてしまった。
自国から出ないドワーフは魔物と戦うことがなく引きこもった世界でしか強さを知らず、優れた装備であることにかまけて余計に戦いの腕を磨かなくなった。
かつてがどうだったのかもう知らないが、今は手足が短く相手に接近しなければいけないのに筋肉質で速さが遅くてひどく劣った戦士になったのである。
魔法もドワーフは得意でないので鉱山の魔物に全く歯が立たなかったのだ。
「せめて火山の活動が活発だったら……いや、それでも変わらないか」
防具も物は優秀であるがために死者こそ少なかったが多くのケガ人を出してしまった。
火山が活発であればドワーフの力が増していて少しはマシだったろうがそれでも厳しいことに変わりはない。
「事情は分かりました。ですがその話について知恵を借りたいとはどういうことですか?」
ドワーフの窮地とも言える状況である。
いくつかあった鉱山も気付けば全て魔物が住処としていた。
このまま魔物を放置しておけばいつかドワガルの方にまで魔物がくるかもしれない。
なのにドワガルの門は固く閉ざされ、このような現状にあることの情報は一切漏れ伝わってこない。
ドワーフが助けを求めていないことは一目瞭然である。


