「やれやれ、この年でこんなに走らされる事になるとは思いもせんかったわい」
当然の如く焚き火のそばに腰を下ろしたドワーフはビューランデルデと名乗った。
ビューランデルデは背負った自分の身の丈ほどもありそうなリュックを下ろして足を揉む。
ルフォンが水を渡してやると一気に飲み干してしまい、リュードの呆れたような視線を乾いた笑いでごまかした。
「酒はないのか?」
「残念ながら」
「ハッハッハッ、冗談だよ!」
ビューランデルデも実は酒があるなら本当に要求するつもりだった。
ないなら出しようもないので冗談だったと笑って終わりにする。
帰りの分の酒を残しておくんだったとビューランデルデは後悔した。
大変だろうからと高い酒を持ってきてしまったがばかりにあっという間に飲み干してしまった。
「本当に助かった。お前さんたちはこんなところで何を? どこかへ行く途中か?」
焚き火を囲んで座る中で自然に溶け込んでいるビューランデルデだけど、お座りくださいとも一言も言っていない。
夜に魔物に追われていた人を追い出すことはしないけどいささか気さくが過ぎる。
「俺たちはドワーフの国に向かっていたんだ」
今更文句を言っても仕方がない。
相手が気さくに接してくるならリュードも相応に対応する。
「なに? ドワガルに行くつもりなのか? あそこは魔人族であっても簡単に入れるところではないぞ」
「分かっています。けど今回はちょっとツテがありまして」
チラリとラストを見る。
ドワーフと交流がある血人族の紹介状があれば中に入れるはずである。
今はなんと紹介状どころか王様の娘、いわゆる王女様が直接来ているのだ。
入れる事にあまり疑いは持っていない。
「そうか……ワシもドワガルに帰るところなんだが一緒に行かせてもらってもいいか? 道案内ぐらいはできる……と言ってもほとんど一本道だかな」
「じゃあ、お願いします」
行き先と進む道が同じなら特に断ることもない。
拒否したところで同じ道を行くのに距離でも空けて歩くことになるだけだ。
命の恩人だから是非デルデと呼んでくれというドワーフのデルデと共にドワーフの国であるドワガルに向かう事になった。
「見れば見るほどデルデはドワーフだな」
ややずんぐりむっくりした体型だが太っているのではなく筋肉質。
髭も含めて毛量が多くて、固そうな毛質をしている。
性格は明るく気さくで細かいことを気にしない。
少し無遠慮だと思えるところもあるがどこか憎めず、一緒にいて楽しいオッサンである。
リュードがイメージしていたドワーフとほとんど同じであった。
「あんなか何入ってるんだろうね?」
デルデは体と同じくらいの大きなリュックを背負っていてラストは中身が気になっていた。
野営の時に退かそうとしてひどく重たく、何が入っているのか聞いてみたら自分で掘ってきた鉱石が入っているのだと言った。
あれをずっと背負っているのだと考えるとドワーフの力は結構強い。
話を聞くと一人で鉱石を掘りに行って、帰ってくる時にミスリルリザードに見つかって追いかけられてしまったらしい。
執念深くてどれほど逃げても追いかけてくるので限界が近かったところにリュードたちが現れた。
道は一本だがドワーフしか知らないような抜け道なんかを教えてもらってドワガルまで予想よりも早く到着することができた。
「申し訳ございません。それでもお通しできません」
「なんでぇ!」
ドワガルは巨大な山の麓の一部をくり抜いて作られた都市である。
そしてドワガルの特殊なところはその立地もそうなのであるが、都市が1つしかないというところである。
つまりドワガルとはドワガルという国であり、ドワガルという都市でもある。
山周辺もドワガルの領土となっているが他にドワガルの居住地はないのだ。
そんなドワガルは入るのには巨大な門を通らなければならないのだけれど、その門は今固く閉ざされていた。
門の前にはリュードたちも含めて困り果てたような表情の人がたくさんいた。
なんのツテもなく武器を求めて訪ねてきた冒険者が入れないのはもちろんのこと、交流のある商人や紹介状を持つ王女様まで入ることを断られた。
誰も入れられないのですと髭のない若いドワーフが困ったように繰り返している。
これがリュードたちに対するお礼であるのに入れてもらわねば困る王女様は食い下がるが、相手は申し訳なさそうに謝罪を繰り返す。
王女様アピールも紹介状も効果がなく、これじゃラストがドワーフをいじめているみたいにも見えてしまう。
「やはりな……」
デルデがため息をついた。
ツテがあっても入れないだろうことはデルデには分かっていた。
「ちょっとよいか?」
「はっ……ビューランデルデ様ではございませんか! 皆さまお探しでしたよ!」
「ふん、どうせ時間を浪費するだけの話し合いのためにだろう? ならワシなぞ必要ないわい。そんなことよりこやつらはワシの客じゃ。中に入れてやってくれ」
「ビューランデルデ様のお客様ですか? ……少々お待ちください」
若いドワーフでは中に入れてよいかの判断がつかない。
上の者に判断を仰ぎにドワーフが中に入っていった。
そして程なくして戻ってくる。
「お待たせいたしました。ビューランデルデ様がご責任を持たれるというのであらばお入れになっても構わないとのことでした」
「ワシの客だ、ワシが当然責任を持つに決まっている! またくだらんことで時間を使いおってに」
「分かりました。それでは中にお入りください」
若いドワーフは巨大な門ではなく、その横にある小さい門を開く。
当然の如く焚き火のそばに腰を下ろしたドワーフはビューランデルデと名乗った。
ビューランデルデは背負った自分の身の丈ほどもありそうなリュックを下ろして足を揉む。
ルフォンが水を渡してやると一気に飲み干してしまい、リュードの呆れたような視線を乾いた笑いでごまかした。
「酒はないのか?」
「残念ながら」
「ハッハッハッ、冗談だよ!」
ビューランデルデも実は酒があるなら本当に要求するつもりだった。
ないなら出しようもないので冗談だったと笑って終わりにする。
帰りの分の酒を残しておくんだったとビューランデルデは後悔した。
大変だろうからと高い酒を持ってきてしまったがばかりにあっという間に飲み干してしまった。
「本当に助かった。お前さんたちはこんなところで何を? どこかへ行く途中か?」
焚き火を囲んで座る中で自然に溶け込んでいるビューランデルデだけど、お座りくださいとも一言も言っていない。
夜に魔物に追われていた人を追い出すことはしないけどいささか気さくが過ぎる。
「俺たちはドワーフの国に向かっていたんだ」
今更文句を言っても仕方がない。
相手が気さくに接してくるならリュードも相応に対応する。
「なに? ドワガルに行くつもりなのか? あそこは魔人族であっても簡単に入れるところではないぞ」
「分かっています。けど今回はちょっとツテがありまして」
チラリとラストを見る。
ドワーフと交流がある血人族の紹介状があれば中に入れるはずである。
今はなんと紹介状どころか王様の娘、いわゆる王女様が直接来ているのだ。
入れる事にあまり疑いは持っていない。
「そうか……ワシもドワガルに帰るところなんだが一緒に行かせてもらってもいいか? 道案内ぐらいはできる……と言ってもほとんど一本道だかな」
「じゃあ、お願いします」
行き先と進む道が同じなら特に断ることもない。
拒否したところで同じ道を行くのに距離でも空けて歩くことになるだけだ。
命の恩人だから是非デルデと呼んでくれというドワーフのデルデと共にドワーフの国であるドワガルに向かう事になった。
「見れば見るほどデルデはドワーフだな」
ややずんぐりむっくりした体型だが太っているのではなく筋肉質。
髭も含めて毛量が多くて、固そうな毛質をしている。
性格は明るく気さくで細かいことを気にしない。
少し無遠慮だと思えるところもあるがどこか憎めず、一緒にいて楽しいオッサンである。
リュードがイメージしていたドワーフとほとんど同じであった。
「あんなか何入ってるんだろうね?」
デルデは体と同じくらいの大きなリュックを背負っていてラストは中身が気になっていた。
野営の時に退かそうとしてひどく重たく、何が入っているのか聞いてみたら自分で掘ってきた鉱石が入っているのだと言った。
あれをずっと背負っているのだと考えるとドワーフの力は結構強い。
話を聞くと一人で鉱石を掘りに行って、帰ってくる時にミスリルリザードに見つかって追いかけられてしまったらしい。
執念深くてどれほど逃げても追いかけてくるので限界が近かったところにリュードたちが現れた。
道は一本だがドワーフしか知らないような抜け道なんかを教えてもらってドワガルまで予想よりも早く到着することができた。
「申し訳ございません。それでもお通しできません」
「なんでぇ!」
ドワガルは巨大な山の麓の一部をくり抜いて作られた都市である。
そしてドワガルの特殊なところはその立地もそうなのであるが、都市が1つしかないというところである。
つまりドワガルとはドワガルという国であり、ドワガルという都市でもある。
山周辺もドワガルの領土となっているが他にドワガルの居住地はないのだ。
そんなドワガルは入るのには巨大な門を通らなければならないのだけれど、その門は今固く閉ざされていた。
門の前にはリュードたちも含めて困り果てたような表情の人がたくさんいた。
なんのツテもなく武器を求めて訪ねてきた冒険者が入れないのはもちろんのこと、交流のある商人や紹介状を持つ王女様まで入ることを断られた。
誰も入れられないのですと髭のない若いドワーフが困ったように繰り返している。
これがリュードたちに対するお礼であるのに入れてもらわねば困る王女様は食い下がるが、相手は申し訳なさそうに謝罪を繰り返す。
王女様アピールも紹介状も効果がなく、これじゃラストがドワーフをいじめているみたいにも見えてしまう。
「やはりな……」
デルデがため息をついた。
ツテがあっても入れないだろうことはデルデには分かっていた。
「ちょっとよいか?」
「はっ……ビューランデルデ様ではございませんか! 皆さまお探しでしたよ!」
「ふん、どうせ時間を浪費するだけの話し合いのためにだろう? ならワシなぞ必要ないわい。そんなことよりこやつらはワシの客じゃ。中に入れてやってくれ」
「ビューランデルデ様のお客様ですか? ……少々お待ちください」
若いドワーフでは中に入れてよいかの判断がつかない。
上の者に判断を仰ぎにドワーフが中に入っていった。
そして程なくして戻ってくる。
「お待たせいたしました。ビューランデルデ様がご責任を持たれるというのであらばお入れになっても構わないとのことでした」
「ワシの客だ、ワシが当然責任を持つに決まっている! またくだらんことで時間を使いおってに」
「分かりました。それでは中にお入りください」
若いドワーフは巨大な門ではなく、その横にある小さい門を開く。


