「殺される……よなぁぁぁぁぁ」
深いため息をついたリュードは天を仰いだ。
せっかくルフォンとラストと再会しトゥジュームを脱したリュードたち一行であったが、リュードの足取りはやや重い。
リュードの愛剣である真っ黒な刃をした黒剣はデルゼウズの最後の足掻きによる一撃で折れてしまった。
俺だ刃を乗っけて、そっと手を放してみても当然くっつくはずもなく落ちる。
ラッツの親父さんが心を込めて打ってくれた一振りを折ってしまった。
なによりも自分の武器を雑に扱われることを嫌うラッツの親父さん。
リュードが子供の頃の話だがふざけた扱いをして剣をダメにしてしまった人がいたのだけれど、使っていた剣がたまたまラッツの親父さんの作ったものであった。
直してもらおうとラッツの親父さんのところに持っていったのだけれど、経緯を聞いたラッツの親父さんはとんでもなく怒ってしまった。
剣を直すどころか槍を持って剣をダメにしてしまった人を追いかけ回していた。
子供ながらにちょっと怖かったのを覚えている。
「やばいなぁ……」
大事にしろよと何度も念押しされた剣なのに折られてしまったなんてラッツの親父さんが知ったら怒り狂うこと間違いないと思った。
しかも剣が折れましたとオメオメと村に帰るなんてできもしない。
村までは相当遠いし、ラッツの親父さんのこともある。
それにそんなことで一々帰ってはいつまで経っても村離れが出来なくなる。
運が良いのか悪いのか、リュードたちは元よりティアローザの王様であるヴァンにご紹介いただいてドワーフの国に向かうところであった。
トゥジュームで攫われて悪魔と戦うなんて寄り道と言っていいのかも分からない長い寄り道をすることになったが、剣も折れてしまったので当初の予定通りドワーフの国に向かうことにした。
剣をメンテナンスするつもりだったが剣を直してもらわねばいけなくなった。
ある意味でタイミングが良いと言えるかもしれない。
けれど旅路を特に急ぐことはない。
トゥジューム国内から出るときはさっさと出たかったので急いだけどトゥジュームから出たらあとはのんびりと旅をする。
一応予備の武器はあるので大きく困ることもない。
「もうできたよ〜」
それでもだいぶドワーフの国には近づいてきた。
ラストもすっかりと慣れっこになった野営の準備をしてルフォンが料理の腕を振るう。
日が落ちてきて薄暗くなってきたので焚き火の明かりを頼りに食事を取る。
しばらく大きな街に寄れていないので食料の残りが心もとなくなってきた。
「た、助けてくれぇ!」
「なんだ?」
野太い声がどこからか助けを求めている。
「よいしょ」
ルフォンが近くにあった木の上に登って周りを見渡して確認する。
「どうだ、何か見えるか?」
「んー見えな……あっ! あっちの方、魔物に追われてるみたいだよ!」
「分かった。……さて、どうするかね?」
こんな時に三人というのは少し不便である。
一人と二人に分けると一人の方は不安であるし、かといって三人まとめて動いてしまうと野営の準備で置いてある荷物が心配だ。
四人なら半々でいいのだけどと悩ましいところだ。
「おーい、こっちだ!」
仕方ない。
リュードは火の魔法を打ち上げながら声をかけた。
ルフォンから見える距離なら声も聞こえるし魔法も見えるはず。
行けないなら来てもらおう。
あちらが無視するならリュードたちとしても無理に助けに行くことはない。
呼び込むことのリスクは当然にあるけれど三人いて敵わない相手ならどの道呼び込まなくても危険は変わらない。
「気づいたみたい。こっち来るよ」
魔法か声かは知らないがリュードが呼んでいることに相手が気づいた。
魔物に追われながらリュードたちの方に走ってくるのは異様に背の低い男であった。
その後ろにはトカゲのような魔物が見える。
背中が金属のような鉱物が生えている不思議なトカゲはもうほとんど男に追いつきかけていた。
「助けはいるかー?」
「見たらわかんだろ! 助けてくれぇ!」
言質は取った。
とっさだったからか雑な言葉遣いだけどちゃんと助けを求められた。
世知辛い世の中、助けたとて後で文句を言う輩もいる。
ちゃんと助けてくれと言われたから助けたのだと言えることも必要なのである。
「うぇ、硬いよ!」
助けを求める声とほとんど同時ぐらいにはルフォンは動き出していた。
木の上から飛びかかって、勢いを活かしてトカゲの背中にナイフを突き立てた。
金属同士がぶつかるような甲高い音がして、ルフォンのナイフが弾かれた。
見た目に金属っぽかったが手応えで分かる。
まさしく背中は何かの金属である。
非常に硬くて切り付けたルフォンの手の方が痺れてしまった。
横をすり抜けて逃げる男と入れ替わるようにリュードが前に出る。
「……マジか」
ルフォンに気を取られて視線をそちらに向けたトカゲの頭にリュードが剣を振り下ろした。
背中だけでなく全身硬い。
リュードの一撃はトカゲを切ることができず、剣で殴りつけたようになるだけになった。
殴られた衝撃でトカゲは一瞬グラついたが、大きなダメージはないようで頭を振っただけで立ち直ってしまった。
トカゲが攻撃の対象に選んだのはリュードであった。
地面を蹴って飛びかかり、鋭い爪でリュードを切り裂こうと狙う。
リュードはそれを剣で防いで体に力を込めてトカゲを押し返す。
爪で切り裂く、尻尾で叩きつける、噛み付く。
幸いにしてそれほど動きが俊敏なわけではない。
攻撃パターンを見る限り特別な攻撃もない。
しかしながらただただ硬い。
トカゲの動きを見ながら軽く反撃でトカゲの体を切りつけた。
けれどどこも硬くて傷もつかずダメージもない。
深いため息をついたリュードは天を仰いだ。
せっかくルフォンとラストと再会しトゥジュームを脱したリュードたち一行であったが、リュードの足取りはやや重い。
リュードの愛剣である真っ黒な刃をした黒剣はデルゼウズの最後の足掻きによる一撃で折れてしまった。
俺だ刃を乗っけて、そっと手を放してみても当然くっつくはずもなく落ちる。
ラッツの親父さんが心を込めて打ってくれた一振りを折ってしまった。
なによりも自分の武器を雑に扱われることを嫌うラッツの親父さん。
リュードが子供の頃の話だがふざけた扱いをして剣をダメにしてしまった人がいたのだけれど、使っていた剣がたまたまラッツの親父さんの作ったものであった。
直してもらおうとラッツの親父さんのところに持っていったのだけれど、経緯を聞いたラッツの親父さんはとんでもなく怒ってしまった。
剣を直すどころか槍を持って剣をダメにしてしまった人を追いかけ回していた。
子供ながらにちょっと怖かったのを覚えている。
「やばいなぁ……」
大事にしろよと何度も念押しされた剣なのに折られてしまったなんてラッツの親父さんが知ったら怒り狂うこと間違いないと思った。
しかも剣が折れましたとオメオメと村に帰るなんてできもしない。
村までは相当遠いし、ラッツの親父さんのこともある。
それにそんなことで一々帰ってはいつまで経っても村離れが出来なくなる。
運が良いのか悪いのか、リュードたちは元よりティアローザの王様であるヴァンにご紹介いただいてドワーフの国に向かうところであった。
トゥジュームで攫われて悪魔と戦うなんて寄り道と言っていいのかも分からない長い寄り道をすることになったが、剣も折れてしまったので当初の予定通りドワーフの国に向かうことにした。
剣をメンテナンスするつもりだったが剣を直してもらわねばいけなくなった。
ある意味でタイミングが良いと言えるかもしれない。
けれど旅路を特に急ぐことはない。
トゥジューム国内から出るときはさっさと出たかったので急いだけどトゥジュームから出たらあとはのんびりと旅をする。
一応予備の武器はあるので大きく困ることもない。
「もうできたよ〜」
それでもだいぶドワーフの国には近づいてきた。
ラストもすっかりと慣れっこになった野営の準備をしてルフォンが料理の腕を振るう。
日が落ちてきて薄暗くなってきたので焚き火の明かりを頼りに食事を取る。
しばらく大きな街に寄れていないので食料の残りが心もとなくなってきた。
「た、助けてくれぇ!」
「なんだ?」
野太い声がどこからか助けを求めている。
「よいしょ」
ルフォンが近くにあった木の上に登って周りを見渡して確認する。
「どうだ、何か見えるか?」
「んー見えな……あっ! あっちの方、魔物に追われてるみたいだよ!」
「分かった。……さて、どうするかね?」
こんな時に三人というのは少し不便である。
一人と二人に分けると一人の方は不安であるし、かといって三人まとめて動いてしまうと野営の準備で置いてある荷物が心配だ。
四人なら半々でいいのだけどと悩ましいところだ。
「おーい、こっちだ!」
仕方ない。
リュードは火の魔法を打ち上げながら声をかけた。
ルフォンから見える距離なら声も聞こえるし魔法も見えるはず。
行けないなら来てもらおう。
あちらが無視するならリュードたちとしても無理に助けに行くことはない。
呼び込むことのリスクは当然にあるけれど三人いて敵わない相手ならどの道呼び込まなくても危険は変わらない。
「気づいたみたい。こっち来るよ」
魔法か声かは知らないがリュードが呼んでいることに相手が気づいた。
魔物に追われながらリュードたちの方に走ってくるのは異様に背の低い男であった。
その後ろにはトカゲのような魔物が見える。
背中が金属のような鉱物が生えている不思議なトカゲはもうほとんど男に追いつきかけていた。
「助けはいるかー?」
「見たらわかんだろ! 助けてくれぇ!」
言質は取った。
とっさだったからか雑な言葉遣いだけどちゃんと助けを求められた。
世知辛い世の中、助けたとて後で文句を言う輩もいる。
ちゃんと助けてくれと言われたから助けたのだと言えることも必要なのである。
「うぇ、硬いよ!」
助けを求める声とほとんど同時ぐらいにはルフォンは動き出していた。
木の上から飛びかかって、勢いを活かしてトカゲの背中にナイフを突き立てた。
金属同士がぶつかるような甲高い音がして、ルフォンのナイフが弾かれた。
見た目に金属っぽかったが手応えで分かる。
まさしく背中は何かの金属である。
非常に硬くて切り付けたルフォンの手の方が痺れてしまった。
横をすり抜けて逃げる男と入れ替わるようにリュードが前に出る。
「……マジか」
ルフォンに気を取られて視線をそちらに向けたトカゲの頭にリュードが剣を振り下ろした。
背中だけでなく全身硬い。
リュードの一撃はトカゲを切ることができず、剣で殴りつけたようになるだけになった。
殴られた衝撃でトカゲは一瞬グラついたが、大きなダメージはないようで頭を振っただけで立ち直ってしまった。
トカゲが攻撃の対象に選んだのはリュードであった。
地面を蹴って飛びかかり、鋭い爪でリュードを切り裂こうと狙う。
リュードはそれを剣で防いで体に力を込めてトカゲを押し返す。
爪で切り裂く、尻尾で叩きつける、噛み付く。
幸いにしてそれほど動きが俊敏なわけではない。
攻撃パターンを見る限り特別な攻撃もない。
しかしながらただただ硬い。
トカゲの動きを見ながら軽く反撃でトカゲの体を切りつけた。
けれどどこも硬くて傷もつかずダメージもない。


