「ありがとうございます。なんとお礼をしたらよいのか……妹がまた元気でいられるのとリュード様のおかげです」

「いいさ、治せるなら治してやるのが人情ってもんだからな」

 ウバの罪は重いしいまだに許しきってはいない。
 しかし事情は理解できるし、ウバの妹に罪はないのだから治せるなら治してやる。

 ここで見捨ててしまえば人としての大事なものを失うことになる。

「その……厚かましいお願いなのですが1つお願いしたいことがあるのです」

 ウバは非常に申し訳なさそうな表情を浮かべている。

「……なに?」

「石化病の治療法を探す中でわかったのですがこの国には今何人か石化病患者がいるのです」

「この珍しい奇病の?」

「はい……理由は分からないのですが貴族の子供ばかり何人かがこの病気を発症しているようで、私の友人の娘さんもこの病気に冒されているのです。どうか、お救いくださいませんか?」

 厚かましいお願いであることはウバも理解している。
 しかし不治の病と言われた石化病を治すことができるのは今のところリュードだけである。

 ウバのところだけ治してもらったらきっと他の人もどうやったのかと興味を持つはず。
 もしかしてリュードならば他の人も治してくれるのではないかと思った。

「なぜそんなに石化病が……」

「分かりません……うつる病気ではありませんし、そもそも調べるまで石化病患者がいるなんて知りませんでした。石化病繋がりで今は交流を持たせていただいてますがそれまで娘さんと妹も会ったこともありませんでした」

「まさか、誰かがこの病気を広めている……のか?」

「……今回の事件には悪魔が関わっていました。もしかしたらその可能性も……」

 まことしやかに囁かれる天才的な医者の存在がトゥジュームの中で急に現れた。
 誰にも治せなかった石化病を突然現れた黒い男が治していったという噂が広まったのだ。

 対価も求めず静かに治療だけをして去っていくその医者のことを黒角の医師と誰かが呼び始めていた。
 ただ本人はそんなこと知らず、さっさといかなきゃ石化病に冒された人が手遅れになると思って治療をして回っていた。

 原因の分からぬ奇病、石化病が同時期に二人もいれば珍しく、三人もいれば奇跡と言える。
 リュードはトゥジューム中を回って何人もの石化病患者を治療した。

 なぜまでこの奇病がいきなりほとんど同時期に複数人に発症したのか。
 そして発症したほとんどが貴族の関係者であった。

 娘、息子、夫だったりと家長に近い人物が石化病になっていた。
 そしてさらにみんな石化病の治療法を探す中で大会の優勝賞品にエリクサーがあることを聞いて、大会へ奴隷を参加させていた。

 偶然で片付けるには何がおかしい。
 しかし証拠もなく、結局石化病の原因は分からなかった。

 妙な引っ掛かりを覚えながらも、石化病を治療し終えたリュードたちはトゥジュームを出発することなったのであった。