何回も死んだと思った場面があったが生き延びることができた。
どれもこれもリュードたちのおかげである。
「俺、一からやり直します。もう一度初めから頑張ってみることにします!」
初心を見失っていたとウロダは気がついた。
実力が上がらないことを周りのせいにして、どうにかできたかもしれない失敗を最後まであがかずに甘んじて受け入れた。
冒険者になった頃のがむしゃらに挑み続ける自分の姿はそこになくなっていたのである。
だけどリュードたちの姿を見て考えを改めた。
強大な敵にも、過酷な環境にも、そして隣にいない相手がどうなっているかも分からない大きな不安にも、リュードたちは諦めずに立ち向かった。
ウロダはそんな姿を見て目を覚ましたのだ。
もう冒険者としては若くなく、大きな失敗をしたレッテルも貼られているだろう。
けれどもう一度立ち上がって努力してみようと思った。
それが助けられなかった仲間たちに対する弔い、償いにもなる。
「頑張ってください」
「……ありがとうございます」
リュードたちは強い。
実力もさることながら、その精神も強い。
諦めないことがリュードたちを強くしている。
リュードの諦めない姿勢を見習いたくて、ウロダは心の中でひっそりと焼き付けたリュードの姿を師匠と呼ぶことにした。
リュードにはいらんと一蹴されたけれど、この国を出るまではどうか身の回りの世話をさせてほしいとまでウロダは申し出た。
少しでも恩返ししたいと勝手にリュードのお世話をしていて、リュードもウロダの熱意を買って何も言わなくなった。
ーーーーー
「準備ができました」
顔の右半分をひどく腫らした女性兵士がリュードを呼びにきた。
リュードを丁寧でない態度で扱った女性兵士のことはリュードからグチとして聞いていた。
リュードが圧倒的な力を見せて勝ったので女性兵士は起きた時に何が何だか分からずにまたリュードにかかっていってしまった。
当然周りは止めようとしたのだけど先に動いたのはルフォンだった。
お怒りのルフォンは強かった。
女性兵士の顔の右だけを狙うという離れ技で女性兵士はボッコボコにされた。
ウバにも怒られて女性兵士はとてもしおらしい態度になった。
起きたタイミングでたまたまリュードがそばにいて、たまたま素手でかかってきてよかったと思う。
剣でも持っていたら今頃女性兵士は顔の腫れじゃ済まなくて、ここにいなかったかもしれない。
「今行きます」
リュードたちは女性兵士に呼ばれてウバの妹の部屋に行った。
全身に石化が進み、服も着替えさせられないので布で隠してあるだけのウバの妹はもはや耳も石化して聞こえなくなっていたが、筆談で治療の了承を得た。
「聞こえちゃいないと思うが始めるぞ?」
「よろしくお願いします……」
聞こえてはいないが口を動かして何かを言っている。
治療を開始することは知っているので言っていることは大体予想できてウバの妹は弱々しく返事を口にした。
リュードは薬とハケを取り出した。
針はまだ使わない。
なぜなら全身が石化していて針が通らないのでまずは表面の石化を治療していく必要があるからだ。
正直リュードはいなくてもよい。
今のところやるのは全身に薬を塗る作業なのでむしろいない方がいいのだけど何か緊急事態があった時にとリュードも部屋にいることになった。
医者でもないのだからいたところで何が出来るのでもないが、薬を作ったのはリュードだから責任は取らなきゃいけない。
女性兵士や侍従の女性を含めてルフォンたちでハケで全身に薬を塗っていく。
「グッ……グアアアア!」
すぐに効果は出始めて、ウバの妹が苦痛の声をあげる。
クゼナよりも病状が進んでいるので相当な苦痛が全身苛んでいた。
薬を塗ったら後できることはない。
触れるわけにもいかず祈るようなウバはハラハラと涙を流し、代われるなら代わってあげたいと何度も呟いていた。
ウバの妹はしばらくなんの感覚もなかった全身が燃えているように熱いと感じていた。
しかし石化した体を動かすこともできずにただ苦痛の声を出すしかない。
「妹は……大丈夫なんですか?」
苦しむ妹の様子を見てウバが心配そうにリュードに話しかける。
「苦しんでいるのは良い兆候というのは表現としてどうかと思うけど、苦しいということは薬が効いているということだ。辛いかもしれないが後は本人が頑張るしかない」
せめて手でも握れたらと思うけれど、手にも薬は塗ってある。
ただ祈る、それしか今はできないのである。
しばらくして石化した灰色の肌の上に灰色の水滴が浮かび始める。
下に敷いてもらったシーツに灰色の汗が滲んでシミを作る。
ここまで来ると少しやることもできる。
ウバはタオルを優しく押し当てるようにして体の汗を吸い取っていく。
息が荒く、次々と灰色の汗が噴き出してきて、みんなでそれを布で吸い取っていく。
何枚もの清潔な布が灰色で染まり、クゼナの時よりもは長い時間がかかってようやく肌の灰色が薄まってきた。
一回でウバの妹の肌は戻りきらず、時間をおくとまた灰色になった。
日を跨ぎ、ウバの妹の体力と相談しながら3回目の治療でようやく針で刺せるほどウバの妹の体は柔らかさを取り戻した。
そこまでいくと表面の大部分は肌色を取り戻し、体が動くようになっていた。
ウバは泣きながらリュードに頭を下げたがまだ終わりではない。
このまま放っておけばまた石化は始まってしまう。
体内に残る全ての石化の原因を取り除くためにリュードは針での治療を行った。
一体どれだけの布やシーツがダメになったことだろうか。
何度か針治療も繰り返すと灰色の汗が出なくなり、そこからさらに数日様子を見てもウバの妹に石化病の再発の兆候は見られなかった。
もう大丈夫だろうと告げると姉妹は抱き合って泣いていた。
どれもこれもリュードたちのおかげである。
「俺、一からやり直します。もう一度初めから頑張ってみることにします!」
初心を見失っていたとウロダは気がついた。
実力が上がらないことを周りのせいにして、どうにかできたかもしれない失敗を最後まであがかずに甘んじて受け入れた。
冒険者になった頃のがむしゃらに挑み続ける自分の姿はそこになくなっていたのである。
だけどリュードたちの姿を見て考えを改めた。
強大な敵にも、過酷な環境にも、そして隣にいない相手がどうなっているかも分からない大きな不安にも、リュードたちは諦めずに立ち向かった。
ウロダはそんな姿を見て目を覚ましたのだ。
もう冒険者としては若くなく、大きな失敗をしたレッテルも貼られているだろう。
けれどもう一度立ち上がって努力してみようと思った。
それが助けられなかった仲間たちに対する弔い、償いにもなる。
「頑張ってください」
「……ありがとうございます」
リュードたちは強い。
実力もさることながら、その精神も強い。
諦めないことがリュードたちを強くしている。
リュードの諦めない姿勢を見習いたくて、ウロダは心の中でひっそりと焼き付けたリュードの姿を師匠と呼ぶことにした。
リュードにはいらんと一蹴されたけれど、この国を出るまではどうか身の回りの世話をさせてほしいとまでウロダは申し出た。
少しでも恩返ししたいと勝手にリュードのお世話をしていて、リュードもウロダの熱意を買って何も言わなくなった。
ーーーーー
「準備ができました」
顔の右半分をひどく腫らした女性兵士がリュードを呼びにきた。
リュードを丁寧でない態度で扱った女性兵士のことはリュードからグチとして聞いていた。
リュードが圧倒的な力を見せて勝ったので女性兵士は起きた時に何が何だか分からずにまたリュードにかかっていってしまった。
当然周りは止めようとしたのだけど先に動いたのはルフォンだった。
お怒りのルフォンは強かった。
女性兵士の顔の右だけを狙うという離れ技で女性兵士はボッコボコにされた。
ウバにも怒られて女性兵士はとてもしおらしい態度になった。
起きたタイミングでたまたまリュードがそばにいて、たまたま素手でかかってきてよかったと思う。
剣でも持っていたら今頃女性兵士は顔の腫れじゃ済まなくて、ここにいなかったかもしれない。
「今行きます」
リュードたちは女性兵士に呼ばれてウバの妹の部屋に行った。
全身に石化が進み、服も着替えさせられないので布で隠してあるだけのウバの妹はもはや耳も石化して聞こえなくなっていたが、筆談で治療の了承を得た。
「聞こえちゃいないと思うが始めるぞ?」
「よろしくお願いします……」
聞こえてはいないが口を動かして何かを言っている。
治療を開始することは知っているので言っていることは大体予想できてウバの妹は弱々しく返事を口にした。
リュードは薬とハケを取り出した。
針はまだ使わない。
なぜなら全身が石化していて針が通らないのでまずは表面の石化を治療していく必要があるからだ。
正直リュードはいなくてもよい。
今のところやるのは全身に薬を塗る作業なのでむしろいない方がいいのだけど何か緊急事態があった時にとリュードも部屋にいることになった。
医者でもないのだからいたところで何が出来るのでもないが、薬を作ったのはリュードだから責任は取らなきゃいけない。
女性兵士や侍従の女性を含めてルフォンたちでハケで全身に薬を塗っていく。
「グッ……グアアアア!」
すぐに効果は出始めて、ウバの妹が苦痛の声をあげる。
クゼナよりも病状が進んでいるので相当な苦痛が全身苛んでいた。
薬を塗ったら後できることはない。
触れるわけにもいかず祈るようなウバはハラハラと涙を流し、代われるなら代わってあげたいと何度も呟いていた。
ウバの妹はしばらくなんの感覚もなかった全身が燃えているように熱いと感じていた。
しかし石化した体を動かすこともできずにただ苦痛の声を出すしかない。
「妹は……大丈夫なんですか?」
苦しむ妹の様子を見てウバが心配そうにリュードに話しかける。
「苦しんでいるのは良い兆候というのは表現としてどうかと思うけど、苦しいということは薬が効いているということだ。辛いかもしれないが後は本人が頑張るしかない」
せめて手でも握れたらと思うけれど、手にも薬は塗ってある。
ただ祈る、それしか今はできないのである。
しばらくして石化した灰色の肌の上に灰色の水滴が浮かび始める。
下に敷いてもらったシーツに灰色の汗が滲んでシミを作る。
ここまで来ると少しやることもできる。
ウバはタオルを優しく押し当てるようにして体の汗を吸い取っていく。
息が荒く、次々と灰色の汗が噴き出してきて、みんなでそれを布で吸い取っていく。
何枚もの清潔な布が灰色で染まり、クゼナの時よりもは長い時間がかかってようやく肌の灰色が薄まってきた。
一回でウバの妹の肌は戻りきらず、時間をおくとまた灰色になった。
日を跨ぎ、ウバの妹の体力と相談しながら3回目の治療でようやく針で刺せるほどウバの妹の体は柔らかさを取り戻した。
そこまでいくと表面の大部分は肌色を取り戻し、体が動くようになっていた。
ウバは泣きながらリュードに頭を下げたがまだ終わりではない。
このまま放っておけばまた石化は始まってしまう。
体内に残る全ての石化の原因を取り除くためにリュードは針での治療を行った。
一体どれだけの布やシーツがダメになったことだろうか。
何度か針治療も繰り返すと灰色の汗が出なくなり、そこからさらに数日様子を見てもウバの妹に石化病の再発の兆候は見られなかった。
もう大丈夫だろうと告げると姉妹は抱き合って泣いていた。


