「な……」
「退け!」
「リューちゃん!」
均衡はほんの一瞬だった。
リュードの剣が真っ二つに折れて飛んでいく。
驚愕するリュードを殴り飛ばしてデルゼウズはさらに前進する。
「お前らも邪魔をするな!」
デルゼウズを止めようとルフォンとラストも武器を手にかかっていくが、デルゼウズが剣を振ると魔力が衝撃波となってルフォンとラストを吹き飛ばした。
「やめろ! うおおおっ! グワっ!」
勇気を出したウロダも剣を振りかぶってデルゼウズを攻撃するが、拳一発で簡単に地面を転がっていって気を失ってしまう。
卑劣なデルゼウズの狙いが分かった時にはもう誰も間に合わなかった。
リュードの剣ですら叩き折られる黒い魔力をまとった剣がミュリウォの首筋に迫る。
しかし、刃は、止まった。
「ダメ……その…………人だけは……」
「ト、トーイ……?」
トーイの体から涙が流れる。
デルゼウズとはまた違う、少しなよっとした優しい声が聞こえた。
体の統率はトーイにはない。
けれどトーイの体の中にあるトーイの意思は死んだわけではない。
確実にトーイはいて、トーイ自身も微力ながら戦っていた。
自分の体が人を傷つけることも止められず、好き勝手にされてしまっていたけれど1つだけ、ただ1つだけどうしても譲れないものがトーイにもあった。
揺れる瞳が動揺するデルゼウズなのか、それとも戦うトーイのものなのか、誰にも分からない。
だけどミュリウォはそこにトーイの意識を見た。
「はあああっ!」
トーイの抵抗にダリルを囲む壁の噴き出す勢いが弱くなった。
盾を構えて壁を突破したダリルはそのまま盾を投げ捨てて未だに動かないデルゼウズの頭を鷲掴みにする。
そして地面に頭を押しつけて倒した。
「ブレア!」
「わかっています!」
ブレアが真っ直ぐに手を伸ばしてカッと目を見開いた。
「聖壁!」
デルゼウズとダリルを包み込むように正四面体の結界がブレアによって生み出された。
「やめろ……やめろー!」
「その体はお前のものではないのだろう? ならば、出ていってもらおう!」
ダリルが一気にトーイの体に神聖力を流し込んだ。
掴んだ頭から神聖力の淡い光に包まれてデルゼウズの黒い魔力が消えていく。
全身に広がっていく神聖力に黒い魔力が抵抗しているようにも見えるが神聖力の勢いの方が強く、あっという間に頭から体、手足へと神聖力が広がる。
体の中にいるのか、体の神聖力の広がりが遅く、背中に残った最後の魔力と神聖力が押し合う。
「ふぅ……ふん!」
一呼吸おいてダリルが力を込めるようにグッと神聖力を押し流す。
すると黒い魔力が押されて消えて、最後の最後に残ったお尻のところから黒い丸い塊が飛び出してきた。
黒い丸い塊はフラフラと空中を漂って逃げようとするがブレアの張った結界に阻まれて外に出ることができない。
「極悪非道な悪魔よ。己のやったこと、悔い改めるといい!」
「やめろぉぉぉぉ!」
ダリルの持つメイスが神聖力で強い光を放つ。
高く掲げたメイスを振り下ろし、ダリルは黒い丸い塊を殴りつけた。
パンッと音がして黒い丸い塊が弾け飛び、デルゼウズの消えゆく悲鳴が響き渡った。
「終わった……のか?」
「いや、まだ終わっていない!」
ダリルが上を見上げる。
天井の大穴から見える空にはまだ低級悪魔のビクエが飛んでいる。
親玉は倒したけれど安心するにはまだ早いと言わざるを得なかった。
事態の完全な収拾がついて初めて終わったと言える。
「ブレアはここを頼む。私は残りの悪魔を片付けてこよう」
「……んじゃ俺たちの戦いは終わったってことでいいのかな」
リュードは気が抜けて地面に倒れ込む。
最後にデルゼウズに殴られた顔が痛い。
いや、全身が痛い。
まだ肩の治癒も完全ではないし、デルゼウズの攻撃を散々食らった体はぼろぼろだった。
もう体を起こしているのも辛い。
リュードが体を投げ出して寝転がる。
「リューちゃん」
「リュード」
「二人とも来てくれてありがとう」
「例え空の上でも、地面の下でも私はリューちゃんを探すよ」
「火の中だろうと水の中だろうとリュードがいるならどこにだっていくよ」
ルフォンとラストはは地面に大の字になるリュードの腕を枕に寝転んだ。
「会いたかったよ、リューちゃん」
「また会えて嬉しいよ、リュード」
「そうだな……俺も嬉しいよ。抱きしめでもしたいところだけど体が動かなくてな……今は感謝の言葉だけにさせてくれ」
まだ空にはビクエが見えるが魔法が飛び、撃ち落とされているのが見える。
そう時間もかからずに空の掃除も終わるだろう。
久々に見た空、心地よい風。
信頼できる仲間の顔が見れてこんなに安心するものだったとはと清々しい気分になる。
町中では聖職者たちが協力して悪魔を倒し、兵士たちが市民などの誘導を行っていた。
人と悪魔の戦い。
被害者は存在している。
しかし大悪魔が呼び出されるなんて過去に引き起こされた悲劇の中で最も悲劇が小さく悪魔との戦いが終わったのであった。
「退け!」
「リューちゃん!」
均衡はほんの一瞬だった。
リュードの剣が真っ二つに折れて飛んでいく。
驚愕するリュードを殴り飛ばしてデルゼウズはさらに前進する。
「お前らも邪魔をするな!」
デルゼウズを止めようとルフォンとラストも武器を手にかかっていくが、デルゼウズが剣を振ると魔力が衝撃波となってルフォンとラストを吹き飛ばした。
「やめろ! うおおおっ! グワっ!」
勇気を出したウロダも剣を振りかぶってデルゼウズを攻撃するが、拳一発で簡単に地面を転がっていって気を失ってしまう。
卑劣なデルゼウズの狙いが分かった時にはもう誰も間に合わなかった。
リュードの剣ですら叩き折られる黒い魔力をまとった剣がミュリウォの首筋に迫る。
しかし、刃は、止まった。
「ダメ……その…………人だけは……」
「ト、トーイ……?」
トーイの体から涙が流れる。
デルゼウズとはまた違う、少しなよっとした優しい声が聞こえた。
体の統率はトーイにはない。
けれどトーイの体の中にあるトーイの意思は死んだわけではない。
確実にトーイはいて、トーイ自身も微力ながら戦っていた。
自分の体が人を傷つけることも止められず、好き勝手にされてしまっていたけれど1つだけ、ただ1つだけどうしても譲れないものがトーイにもあった。
揺れる瞳が動揺するデルゼウズなのか、それとも戦うトーイのものなのか、誰にも分からない。
だけどミュリウォはそこにトーイの意識を見た。
「はあああっ!」
トーイの抵抗にダリルを囲む壁の噴き出す勢いが弱くなった。
盾を構えて壁を突破したダリルはそのまま盾を投げ捨てて未だに動かないデルゼウズの頭を鷲掴みにする。
そして地面に頭を押しつけて倒した。
「ブレア!」
「わかっています!」
ブレアが真っ直ぐに手を伸ばしてカッと目を見開いた。
「聖壁!」
デルゼウズとダリルを包み込むように正四面体の結界がブレアによって生み出された。
「やめろ……やめろー!」
「その体はお前のものではないのだろう? ならば、出ていってもらおう!」
ダリルが一気にトーイの体に神聖力を流し込んだ。
掴んだ頭から神聖力の淡い光に包まれてデルゼウズの黒い魔力が消えていく。
全身に広がっていく神聖力に黒い魔力が抵抗しているようにも見えるが神聖力の勢いの方が強く、あっという間に頭から体、手足へと神聖力が広がる。
体の中にいるのか、体の神聖力の広がりが遅く、背中に残った最後の魔力と神聖力が押し合う。
「ふぅ……ふん!」
一呼吸おいてダリルが力を込めるようにグッと神聖力を押し流す。
すると黒い魔力が押されて消えて、最後の最後に残ったお尻のところから黒い丸い塊が飛び出してきた。
黒い丸い塊はフラフラと空中を漂って逃げようとするがブレアの張った結界に阻まれて外に出ることができない。
「極悪非道な悪魔よ。己のやったこと、悔い改めるといい!」
「やめろぉぉぉぉ!」
ダリルの持つメイスが神聖力で強い光を放つ。
高く掲げたメイスを振り下ろし、ダリルは黒い丸い塊を殴りつけた。
パンッと音がして黒い丸い塊が弾け飛び、デルゼウズの消えゆく悲鳴が響き渡った。
「終わった……のか?」
「いや、まだ終わっていない!」
ダリルが上を見上げる。
天井の大穴から見える空にはまだ低級悪魔のビクエが飛んでいる。
親玉は倒したけれど安心するにはまだ早いと言わざるを得なかった。
事態の完全な収拾がついて初めて終わったと言える。
「ブレアはここを頼む。私は残りの悪魔を片付けてこよう」
「……んじゃ俺たちの戦いは終わったってことでいいのかな」
リュードは気が抜けて地面に倒れ込む。
最後にデルゼウズに殴られた顔が痛い。
いや、全身が痛い。
まだ肩の治癒も完全ではないし、デルゼウズの攻撃を散々食らった体はぼろぼろだった。
もう体を起こしているのも辛い。
リュードが体を投げ出して寝転がる。
「リューちゃん」
「リュード」
「二人とも来てくれてありがとう」
「例え空の上でも、地面の下でも私はリューちゃんを探すよ」
「火の中だろうと水の中だろうとリュードがいるならどこにだっていくよ」
ルフォンとラストはは地面に大の字になるリュードの腕を枕に寝転んだ。
「会いたかったよ、リューちゃん」
「また会えて嬉しいよ、リュード」
「そうだな……俺も嬉しいよ。抱きしめでもしたいところだけど体が動かなくてな……今は感謝の言葉だけにさせてくれ」
まだ空にはビクエが見えるが魔法が飛び、撃ち落とされているのが見える。
そう時間もかからずに空の掃除も終わるだろう。
久々に見た空、心地よい風。
信頼できる仲間の顔が見れてこんなに安心するものだったとはと清々しい気分になる。
町中では聖職者たちが協力して悪魔を倒し、兵士たちが市民などの誘導を行っていた。
人と悪魔の戦い。
被害者は存在している。
しかし大悪魔が呼び出されるなんて過去に引き起こされた悲劇の中で最も悲劇が小さく悪魔との戦いが終わったのであった。


