「見返りは命令に従うだけでいいのか?」
聞けば聞くほど破格の条件ではある。
力も国もくれるというなんて、そんなことを提案してくれる者が他にいるだろうか。
ただし美味しい話には裏があると思う。
悪魔のする提案に善意なんてあるはずもない。
「ふふふっ、愚かな者ならそんなことを気にせず飛びついてくるものなのにな。この大会に関わっていた者でも軽く力をやると言ったら喜んで手を血に染めていた。ただ少し体を変えてやっただけで大喜びあった……」
デルゼウズが口にする者の一部がルフォンたちが戦ったものであるとはリュードは知らない。
「ちゃんと教えてやろう。見返りは魂の服従だ。私に絶対の忠誠を誓い、裏切ることは許さず、死ねと言われたら死ぬ。一度交わしたら逆らえない契約ではあるがお前の能力なら必要な時以外は好きにするといい」
「…………少し考えさせてくれ」
「よかろう。上に立つものとして少しの忍耐力を見せることも時には必要だ」
顎に手を当てて分かりやすくポーズをとってどこかを見つめて考える。
わざとらしい考え方だとデルゼウズは思うけれど各々の癖など様々ある。
それだけ真剣に考えているのだと好意的に考える。
何にしてもリュードが逆転するような手立てはないのだから時間稼ぎでも構わないと余裕を持って構える。
「……何者だ!」
だが所詮は悪魔の忍耐力である。
少し待っただけで遅いなと思い始めたデルゼウズはわずかに感じた魔力を感じて振り返りざまに剣を振り上げた。
振り向くとデルゼウズ目がけて飛んできている矢が見えた。
剣で矢を叩き切って防ごうとしたのだがそれが出来る能力の高さが仇となった。
「ぬっ!?」
矢尻から真っ二つに矢を切り裂こうとした。
剣が矢尻を切り裂いて二つに切れ始めた瞬間矢が粉々になるほどの威力で矢が爆発した。
予想もしなかった爆発の衝撃に剣が飛んでいく。
腕が弾かれて肩が外れかけ強い痛みが走り、デルゼウズが顔を歪めた。
爆発の向こう、矢を放ったのはラストであった。
「あの方向は……」
リュードがどこかを見つめていたのをデルゼウズは思い出す。
適当に虚空を見つめているのかと思っていたが、リュードの視線の方向とラストがいる方向は一緒であった。
ぼんやりとどこかを見つめるのがリュードの考える癖なのだと思い込んで確認もしなかった。
ということはと再びリュードの方に振り返るデルゼウズの目の前には拳が迫っていた。
まともに顔に拳がめり込んで、デルゼウズの頭が後ろに弾き飛ばされる。
しかしリュードはそのままデルゼウズの首を掴んで体を当てて壁までタックルする。
「提案は断らせてもらう。
俺の魂は俺のものだ。
そしてその体はお前のものじゃない!」
「貴様、俺を騙したのか!」
デルゼウズの提案を受けて悩むようなそぶりを見せたリュードであったが、悪魔の手先になることを本気で考えるわけがなかった。
実はその時ちょうど状況を覗き込むルフォンやラストと目があったのだ。
なぜ二人がここにいるのか分からないけれど体力の回復と二人の行動を待つためにあえて話に乗るふりをした。
目があって動揺してしまったリュードは咄嗟に考えるふりをして不自然に視線を向けたことを誤魔化したのである。
「リューちゃん!」
「リュード!」
久々に会えた、無事だった。
リュードらしくもなく二人の方をそのまんま見つめてしまったが結果オーライでデルゼウズは疑わなかった。
少し前から状況を見ていたルフォンとラストも嬉しさがありながら状況を冷静に把握しようとしていた。
リュードが戦っているのでデルゼウズが何者かは確認できていないが敵だと認識して機会をうかがっていたのである。
多くの兵士はデルゼウズに倒され、残った兵士や奴隷は逃げてしまっていた。
状況的にはリュードとデルゼウズが2人きりで周りに敵はいなかったのでデルゼウズもさほど警戒していない。
上手く助けられればと思っていたのだけどリュードと目があってしまって二人も行動を始めた。
まだラストとは旅してきた歴史は短いがリュードとラストの考えは一致した。
ラストは矢を引き絞り、魔力を込めた矢を放ったのであった。
よくその魔力を感知出来たものだが、切って防ぐのではなく避けるべきであった。
「ト、トーイ!?」
当然二人の後ろにはミュリウォとウロダもいた。
状況を覗いていたミュリウォが振り向いたデルゼウズの顔を見て驚きに目を見開いた。
その顔はまさしくトーイであったのだ。
当然トーイの体なのだからトーイの顔であるのは当然である。
「ふふっ、悪魔を騙すとはやるな。しかし、甘いな」
デルゼウズは手のひらをリュードに向けた。
リュードとデルゼウズの間に黒い魔力の球が生み出されて爆発する。
「リューちゃん!」
「リュード!」
「ど、どういうことなの……」
なぜトーイがルフォンとラストが探していたリュードという人と戦っているのか。
魔法を使えなかったはずのトーイがどうやって魔法を使ってみせたのか。
自爆覚悟で魔法を使うほどの気概だってトーイにはない。
トーイを見つけた喜びよりも困惑が大きくてミュリウォは訳がわからず戦いに参加するルフォンとラストの背中をただ見送るしかできない。
「あれが……本当にあんたの婚約者か?」
ウロダは移動をしながら軽く話を聞いていた。
トーイと名前を聞いた時にはウロダも驚いた。
まさか探している側と探される側がそれぞれ一緒にいるなんて奇跡のような話である。
聞けば聞くほど破格の条件ではある。
力も国もくれるというなんて、そんなことを提案してくれる者が他にいるだろうか。
ただし美味しい話には裏があると思う。
悪魔のする提案に善意なんてあるはずもない。
「ふふふっ、愚かな者ならそんなことを気にせず飛びついてくるものなのにな。この大会に関わっていた者でも軽く力をやると言ったら喜んで手を血に染めていた。ただ少し体を変えてやっただけで大喜びあった……」
デルゼウズが口にする者の一部がルフォンたちが戦ったものであるとはリュードは知らない。
「ちゃんと教えてやろう。見返りは魂の服従だ。私に絶対の忠誠を誓い、裏切ることは許さず、死ねと言われたら死ぬ。一度交わしたら逆らえない契約ではあるがお前の能力なら必要な時以外は好きにするといい」
「…………少し考えさせてくれ」
「よかろう。上に立つものとして少しの忍耐力を見せることも時には必要だ」
顎に手を当てて分かりやすくポーズをとってどこかを見つめて考える。
わざとらしい考え方だとデルゼウズは思うけれど各々の癖など様々ある。
それだけ真剣に考えているのだと好意的に考える。
何にしてもリュードが逆転するような手立てはないのだから時間稼ぎでも構わないと余裕を持って構える。
「……何者だ!」
だが所詮は悪魔の忍耐力である。
少し待っただけで遅いなと思い始めたデルゼウズはわずかに感じた魔力を感じて振り返りざまに剣を振り上げた。
振り向くとデルゼウズ目がけて飛んできている矢が見えた。
剣で矢を叩き切って防ごうとしたのだがそれが出来る能力の高さが仇となった。
「ぬっ!?」
矢尻から真っ二つに矢を切り裂こうとした。
剣が矢尻を切り裂いて二つに切れ始めた瞬間矢が粉々になるほどの威力で矢が爆発した。
予想もしなかった爆発の衝撃に剣が飛んでいく。
腕が弾かれて肩が外れかけ強い痛みが走り、デルゼウズが顔を歪めた。
爆発の向こう、矢を放ったのはラストであった。
「あの方向は……」
リュードがどこかを見つめていたのをデルゼウズは思い出す。
適当に虚空を見つめているのかと思っていたが、リュードの視線の方向とラストがいる方向は一緒であった。
ぼんやりとどこかを見つめるのがリュードの考える癖なのだと思い込んで確認もしなかった。
ということはと再びリュードの方に振り返るデルゼウズの目の前には拳が迫っていた。
まともに顔に拳がめり込んで、デルゼウズの頭が後ろに弾き飛ばされる。
しかしリュードはそのままデルゼウズの首を掴んで体を当てて壁までタックルする。
「提案は断らせてもらう。
俺の魂は俺のものだ。
そしてその体はお前のものじゃない!」
「貴様、俺を騙したのか!」
デルゼウズの提案を受けて悩むようなそぶりを見せたリュードであったが、悪魔の手先になることを本気で考えるわけがなかった。
実はその時ちょうど状況を覗き込むルフォンやラストと目があったのだ。
なぜ二人がここにいるのか分からないけれど体力の回復と二人の行動を待つためにあえて話に乗るふりをした。
目があって動揺してしまったリュードは咄嗟に考えるふりをして不自然に視線を向けたことを誤魔化したのである。
「リューちゃん!」
「リュード!」
久々に会えた、無事だった。
リュードらしくもなく二人の方をそのまんま見つめてしまったが結果オーライでデルゼウズは疑わなかった。
少し前から状況を見ていたルフォンとラストも嬉しさがありながら状況を冷静に把握しようとしていた。
リュードが戦っているのでデルゼウズが何者かは確認できていないが敵だと認識して機会をうかがっていたのである。
多くの兵士はデルゼウズに倒され、残った兵士や奴隷は逃げてしまっていた。
状況的にはリュードとデルゼウズが2人きりで周りに敵はいなかったのでデルゼウズもさほど警戒していない。
上手く助けられればと思っていたのだけどリュードと目があってしまって二人も行動を始めた。
まだラストとは旅してきた歴史は短いがリュードとラストの考えは一致した。
ラストは矢を引き絞り、魔力を込めた矢を放ったのであった。
よくその魔力を感知出来たものだが、切って防ぐのではなく避けるべきであった。
「ト、トーイ!?」
当然二人の後ろにはミュリウォとウロダもいた。
状況を覗いていたミュリウォが振り向いたデルゼウズの顔を見て驚きに目を見開いた。
その顔はまさしくトーイであったのだ。
当然トーイの体なのだからトーイの顔であるのは当然である。
「ふふっ、悪魔を騙すとはやるな。しかし、甘いな」
デルゼウズは手のひらをリュードに向けた。
リュードとデルゼウズの間に黒い魔力の球が生み出されて爆発する。
「リューちゃん!」
「リュード!」
「ど、どういうことなの……」
なぜトーイがルフォンとラストが探していたリュードという人と戦っているのか。
魔法を使えなかったはずのトーイがどうやって魔法を使ってみせたのか。
自爆覚悟で魔法を使うほどの気概だってトーイにはない。
トーイを見つけた喜びよりも困惑が大きくてミュリウォは訳がわからず戦いに参加するルフォンとラストの背中をただ見送るしかできない。
「あれが……本当にあんたの婚約者か?」
ウロダは移動をしながら軽く話を聞いていた。
トーイと名前を聞いた時にはウロダも驚いた。
まさか探している側と探される側がそれぞれ一緒にいるなんて奇跡のような話である。


